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時空間の旅人(霧生秀一編)

 1

西暦2201年、物理学者の霧生秀一は、自分が作り上げた腕時計型タイムマシーンで逃れようとしている、争いの絶えない世の中から。 何時からだろう・・・父の世代? もっと前かもしれない・・・ 武装した警備隊も、数が少なくなりつつある。 父は、政治家だった。 反対勢力の凶弾に倒れてからというもの、敵の攻撃が激しくなってきた。 父がよく言っていた・・・タイムマシーンがあれば・・・過去に遡って世直しするのに・・・と、そのための研究費用は十分出してくれた。

この研究室も包囲されて、今にも施錠したドアが破られようとしていた。 霧生は取りあえず、100年前に設定する、初めてなので成功するか否か不明・・・ 家族も失い・・・恋人までも失った。 タイムスリップのボタンを押そうとした瞬間、ドアが破られレーザー銃の光が左肩を掠めていく・・・

 

*****

 

霧生秀一は、気がつくと、窓から月明かりの射す部屋に倒れていた。 外からは、音楽が流れ込んでくる。 奇妙な古い音楽だ。 しかし、左肩に激痛が・・・ 首から下げていたマフラーで傷を覆う。 激痛が治まるまで・・・しばし辛抱した。

 

 2

 

痛みが治まった霧生秀一は、窓から外を眺めてみる。 そこは、自分の居た時代から想像することが出来ないほど、賑わっていた。 自分が居た時代は、窓がないのである。天井から採光のためのファイバースコープがあるだけで、外界とは遮断されていた。 それは防犯上から当然のことだったのである。 100年前は、こんなに穏やかだったのだろうか・・・これが「平和」という物なのだろうか?

秀一は父の言葉を反芻していた・・・『タイムマシーンがあれば・・・過去に遡って世直しするのに・・・』しかし、秀一がタイムトラベルを研究していると、必ず出てくる言葉がある。(時代の流れは必然である、もし変えるようなことをすると、パラドックスを狂わせ、この世は消えて無くなるだろう) 確かに、そうだと心で思ってきた。 歯車一つ狂えば、機械は動きを止める。 それが、時の流れなら・・・

では何故、タイムマシーンを作ったか・・・秀一は愛を求めていた。 物心つく前に亡くなった母、写真でしか見たことのない優しい笑顔をもった母だった、そして初めて愛した女性・・・浜野百合・・・にもう一度会いたかったからである。

ここには、爆音がない、秀一の居た時代は、爆音が絶え間なく聞こえてくる。 また、ここには笑い声も聞こえてきた・・・ そっと覗くと、親子が並んで歩いている。 みんな明るい顔をしていた。 それを、見ただけで、気持ちはぐらつく・・・変えなければと・・・ このまま、現代に戻っても・・・待っているのは死!それが必然・・・秀一の運命なのだ。 窓の外を眺めながら、一粒頬に涙が零れた。

 

 3

 

物思いに浸っている秀一・・・ はっと気付いた時には、隣に人が立っていた。 白髪が目立つ老人である。 まるで、秀一が目に入っていないように、後ろを振り返り・・・「亮子・・・今日はお祭りだ。人々は楽しんでいる。良い光景だ~~」 亮子「あなたのお陰です・・・」 「うん、霧生家が頑張れば・・・」 そこで玄関チャイムが鳴った・・・使用人が首を出して「浜野様です」と伝える。 「通してくれ・・・」 その人物は、霧生清一・・・時の総理大臣であった。 訪ねてきたのは、官房長官の浜野重吉。 あくまでも2101年当時だ。

秀一は、みんなの名前を知っている。自宅に肖像画があったから・・ 清一の孫・・・清和は秀一の祖父である。 亮子が片時も離さず抱いていた。 浜野重吉は百合の先祖に当たる。

それよりも、秀一が見えないのだろうか? まるで無視されているように・・・ これには驚いた。 亮子は清和を抱いて、部屋を出て行く。 清一と重吉は、側に立っている秀一を意識することなく密談を始めた。

秀一『何故だ?自分の肉体は、完璧に保たれている。』と掌を見た。 ちゃんと見えるのに・・・ 秀一が窓辺から離れようとした時、置物に触れてしまった・・・ ポトリと床に落下する・・・

清一「んっ?誰か居る・・・」 重吉「そんなわけは・・・誰もいません・・・」 清一「気のせいか?」 重吉「置物が落ちたのは・・・偶々でしょう・・・」 清一は、浮かない顔をしていた。

秀一は、一つの結論を見出していた。 (今のこの時代に、存在するはずがない人物だから見えないのだと。)

 

 4

 

姿が見えないと言うことは・・・歴史も変えられないと言うことか? いや、違う!物は動かせる・・・確かに存在している。 声は、どうなのだろう・・・ 空気振動だから・・・聞こえるはず。 しかし・・・混乱を招くだけ・・・

秀一は、自分が生まれた年に行ってみようと決心した。 この2101年は2201年より、遙かに平和だった。 この時代はこのままで幸せだろうと感じた。 祖父清和の父一政は、確か科学者だったと伝えられていた。

清和は政治家を志し、総理大臣になった。 清和が75歳。父和秀は8人兄弟の末っ子で28歳のとき秀一が生まれた。 父和秀も、政治家を志し代議士となっていた、秀一が成人する頃には、次期総理とまで言われていたのに、2200年10月10日、反対勢力の凶弾に倒れたのである。 母の康子は、秀一が生まれて1歳頃、やはり反対勢力の凶弾で死んでいた・・・秀一を守るように抱えたまま・・・ 和秀の兄弟も、ことごとく反対勢力に・・・抹殺されていた。 だから・・・父は過去に遡って世直しと口癖のように言っていたのだろう。 そして、霧生家の良き理解者である浜野家も同じ境遇だった。一人娘の百合・・・ 秀一と子供の頃から一緒であった。いつしか秀一と百合は愛し合い、結婚しようと約束までしていたのである。 2200年3月20日、百合の乗っていた車がロケット砲撃を受け大破してしまった。 変わり果てた、百合の亡骸・・・その時、秀一はタイムマシーンを作ろうと決心した。 父のように、政治手腕があるわけではない、物理学を得意とする秀一にはそれしか残っていなかった。

反対勢力が力を付けてきたのは、秀一が生まれた後である。 明智光義が膨大な財産を駆使し、霧生清和から総理の座を奪い取ってからである。 初めは闇の軍団を動かし、敵対する人間を闇から闇へ巧妙な手口で抹殺してきた。 法律なんて、あってないような物・・・司法組織まで思いのままにする。 独裁者であった。

秀一は、タイムトラベル教本を熟読していた。 過去に戻って世界を変えると言うこと・・・いけないことだと思って来たのである。 しかし、呪われた霧生家・・・救う手立てがないのか? 可能の筈だ!しかし・・・それを実践すると・・・泣く人が変わる・・・ 罪もない人が、消え去るかもしれない・・・思い悩む秀一・・・ 過去を変えるとどうなるか、まだ一度も実験結果がないのである。 未来は暗黒の世と化している。 各個人も、自衛のため武器を持つようになった。 何れは滅びるだろう・・・その前に手を打たなくては。

秀一はタイムマシーンを西暦2175年10月5日とセット・・・自分が生まれた日である。 GOボタンを押した。

 

*****

 

 5

 

瞬間、暗くなったが、直ぐに明るくなる。窓のない部屋にいた。 なんか良いにおいがする、懐かしい~香り・・・ 隅の方にベッドがあって、1冊の本が載っていた。 見ると・・・「赤ちゃんの育て方」と記されていた・・・ 家具類も女性らしい物だった。 秀一『そうか・・・私の研究室は・・・母の部屋だったんだ・・・』

数十分後・・・部屋の外が騒がしい・・・ 父・和秀の声が一番大きい。 部屋の外に出て様子を窺っていると・・・父が大声を出していた。 「探せ~~!!」 警備隊のリーダーらしき人間も部下に命令している。 そこに老人が、杖をついて現れた。 清和「何を騒いでおる!」 和秀「ああ・・お父さん、生まれたばかりの赤ん坊が・・・消えたのです。」 清和「何~~~っ!!」

その時、秀一は突然、後ろから銃口を突きつけられた。「動くな」 その声で、和秀達が振り向く・・・ 和秀「待て・・無駄な殺生はするな!、おまえは誰だ!何処から進入した!」 スタスタと近寄ってきて、胸ぐらを掴む。 秀一「・・・」『えっ、見えるのか?何故・・・』 清和が「何処かで・・・見たことのあるような・・・」 和秀「お父さんの、知り合いですか?」 清和「そ・そうか~~一政父さんの若い頃にそっくりだ・・・」 和秀「えっ・・・と言うことは・・・親戚?」 清和「いや、この位の親類は居ないはずじゃ。」 和秀「じゃ・・・誰?」 秀一は正直に言った方が良いと思った。理解できないだろうけど・・・いざとなったら、リターンボタンを押せばいい。

秀一「お父さん・・・銃を持っている、警備の人を部屋の外へ出てもらって下さい」 和秀「お・お父さん?」と絶句している。 清和「武器も持っていないようだ・・・警備員一端部屋の外へ」 警備員「判りました・・・何かありましたら、直ぐ駆けつけますので・・・」

清和「さあ、話を聞こう、おまえは誰だ?どこから来た?」 秀一「霧生秀一です、和秀父さんの子です。」 和秀「た・確かに、秀一と命名しようと思ってた・・・しかし先ほど生まれたばかりだ・・・」

秀一はタイムトラベルで新しい発見をした。同時刻に同人物は存在しなくなると言うことを。だから赤ん坊の秀一が消えたのだ。 と言うことは・・・歴史が変わった瞬間である。 母のことが気がかりでならなくなった。ショックを受けているだろうと・・・

 

 6

 

見つめる祖父と父に正直に答えた。 秀一「私は、2201年の未来から来ました。26歳になります。タイムマシーンを作り上げたのですよ、お父さん。」 和秀「???」 清和「な・なんと・・・」 秀一「2201年は、ひどい世の中になっています。命からがら逃げてきたのですから・・・」 和秀「明智光義からか?」 秀一「その息子・・・光昭です・・・」 清和「20歳そこそこの若造が居たな~~そう言えば・・・」 秀一「お父さん・・・これから霧生家の滅亡が始まります。それを食い止めないとと思い立ち、タイムマシーンを作り上げました。」 和秀「・・・」 秀一「お父さん・・・赤ん坊が消えたのは、成長した私と入れ替わりになったのです。同じ時に同人物が二人いると言うことが出来ないみたいです。だから年数の若い、赤ちゃんが消えたのです。」 和秀「康子が悲しむ・・・」 秀一「その通りです・・・母さんが気がかりなんです。」

頭の良い霧生家、祖父も父も納得したようだ。

秀一「あの・・・パソコンありますか?使わして下さい・・・」 和秀「ああ、使ってくれ・・・」 秀一が目の当たりにしたパソコンは、未だ透明フィルムに表示する方式だった。 型は古いが、使い物になりそうだ。 キーボードも薄くはなっているが、存在する。 秀一が使っていた物は、光キーボードだ。フェザータッチするだけ。 表示も空間に浮かぶもの、操作している人からしか見えない物だ。 本体はグラスファイバーのように床から伸びている。 建物と一体になっているため、盗難の心配もない。 使用するには、持ち主のID(遺伝子情報)を関知し作動する仕組みである。

秀一は、早速そのパソコンへ腕時計からデータを移し、タイムマシーンプログラムの再検討をしてみた。(何故、同時代に同人物が居ると消えるか・・・) 十数分、パソコンと格闘する。

秀一『・・・そうか~~そうだったのか~~自分の居る時間が作用するんだ・・・私が違う時間に飛ぶと・・・赤ちゃんは復活する・・・時間が自分中心だからだ。故に自分の存在は点であり、赤ちゃんが弾き出されてしまった。線になる為には出発した時間(2201年)に戻るほかない・・・と言うことは・・・何も変わってはいないと言うことが考えられる・・・待てよ?・・・』

和秀「どうだ?」 秀一「赤ちゃんは無事です、違う次元に押し出されているだけです。私が今という時間から出れば復活します。そして私がいたという事実もなくなるのです。お父さんの記憶からも。」 和秀「う~~む、どうも判らない・・・」 秀一は暫く画面を睨んでいた。 プログラムの文字を追っていて、ギクリとする。 秀一「はっ、そうか・・・赤ちゃんが違う次元に押し出されたわけではないのだ。今あるこの状況が仮想時間と考えると、辻褄が合う、主時間を投影しているだけなのだ・・・」

 

 7

 

秀一は、気落ちした。 主の時間は、延々と流れていて変えることが出来ない。 今側にいる父も全て主時間の投影なのだ。あるはずのない時間・・・ そして、主時間に赤ん坊の秀一が存在するから、成長した秀一の姿が見えるのだ。

時間を旅する秀一こそが仮想である。 物理的に言っても、主時間を遡るのは不可能である。 そう考えていくと、秀一はリアルな夢を見ていることになる。

秀一の現実は、2201年にあるのだ。 ・・・と言うことは・・・過去へのタイムボタンを押した以降、秀一は死ぬ運命。

・・・戻れない・・・このまま時空間を彷徨い歩くことになるのか・・・

和秀「どうした?悲しそうな顔をして・・・」 秀一「母さんに・・・生きていた時の母さんに会いたくて、タイムマシーンを作りました。願わくば、未来も変えることが出来るかと・・・思ってもみました。」 和秀「生きていた時の母さん?・・・死ぬというのか!!」 秀一「はい、私が1歳半の時、明智のヒットマンに射殺されました。」 和秀「な・なんと言うことを~~」 秀一は、仮想空間での情報はあくまで仮想だからと未来の情報を置いていくことにした。 秀一「それと・・・父さんも2200年10月10日に亡くなります・・・」 和秀「うっ・・・」 秀一「そして、私の恋人・・・浜野百合さんまで2200年3月20日に殺されたのです。あわせて、お父さんの兄弟もことごとく・・・」 和秀「・・・」

秀一「タイムトラベルが無意味だという結論に達しました。今、悲しんでいる母さんを見たくない・・・ここから去ります。」 和秀「戻るのか?・・・先ほど、命からがらと言っていたではないか、大丈夫なのか?」 秀一「研究室から飛ぶ間際・・・乱入してきた敵に左肩を撃たれました。戻れば・・・死があるのみです。それが私の運命なのです。父さんに逢えただけでも嬉しかった・・・」

秀一は、目的時間をセットし「GOボタン」を押した。 瞬間、父の「秀一~~~っ」という叫び声が聞こえたが・・・

 

*****

 

2176年12月8日7時00分・・・母さんが射殺された日の朝だ。 母の部屋に佇む秀一。 ベッドの上で、何が起きたか判らないという表情をした母がいた。 康子「秀一~~?どこ~~~?・・・はっ・・・あなたは誰?秀一をどうしたの?」 秀一は『やはり・・・1歳半の私が消えたんだ・・・』 秀一「母さん・・・安心して、ここにいるよ。」 康子は、見たこともない若い男に母さんと呼ばれ・・・唖然とした。 秀一「母さん・・・今日はどこも出掛けないで、ジッと家にいて欲しい・・・」 秀一は、無駄と知りながら微かな希望で言ってみた。 康子「何を言ってるの?秀一を何処にやったの?」 康子「誰か~~~~っ」と叫び始めた。

秀一は、再び目的時間をセットし「GOボタン」を押す。

 

*****

 

 8

 

2200年3月20日8時30分。 秀一の研究室だ。 「急がねば・・・」と飛び出していく。 浜野家は、目と鼻の先・・・走っていけば5分とかからない。

丁度、百合が車に乗り込むところだった。 百合「はっ、秀一さん!(笑)なに?早いのね~~ふふっ」 秀一は、回りを気にすることなく、百合を抱きしめていた。 秀一「駄目だ、今日は家にいてくれ!!」 百合「どうしたの?・・・苦しいわ・・・(笑)」 秀一「お願いだから・・・家にいてくれ・・・!!」 百合「ふふっ、今日、どうしても見たいロードショウの最終日だもの・・・秀一さん?今日は大事な研究会があったのでは?」 秀一「研究会なんて・・・」 百合「駄目!ロードショーに誘っても・・・研究会を休むわけに行かないと言っていたじゃない・・・夕方・・・パンフレット、買っておくわ、その時にね(笑)」と言って、車に乗り込んで行ってしまった。 秀一は、百合の最期の詳細を知らない・・・ 走った・・・映画館まで・・・しかし映画館は閉まっていたのである。 当然である、時間が早く開館前なのだ。 百合の車は・・・どのコースを通ったのか? 他に寄ったところがあるのかもしれない・・・ 時ばかり過ぎていく・・・ 秀一は時間の流れと、運命を変える難しさを感じていた。 無力感に苛まれながら、研究室に戻る。

 

*****

 

2201年11月1日22時30分 秀一が、過去に飛ぶ前日に戻ってくる。 これも仮想時間・・・しかし誰もいない時間だ。 じっくりと考えることの出来る時間・・・

父の時も、何処で何があったか、何も知らないのである。 無駄に走り回るだけだ・・・

タイムマシーンがあったって・・・なんにもならない・・・ 歴史の詳細を知らなすぎる。 明智の事も満足に知らないのだから・・・防ぎようもない・・・

何も変えることが出来ない・・・ 運命という物は、人の力ではどうすることも出来ないのか・・・ 秀一は、疲れ果てた・・・ もう、目的も何もない・・・もういい・・運命に任せようと・・・最終手段のレッドボタンにふれ・・・押した・・・これで現実に戻る・・・

 

 9

 

2201年11月2日19時22分に戻った瞬間、ドアが破られ、敵のレーザー銃が左肩を掠めていった。 秀一『やはり・・・これが現実・・・』 反射的に、右へ回転レシーブ・・・机の影に隠れ「GOボタン」を押す・・・

 

*****

 

秀一は、設定したままだった2201年11月1日22時30分にタイムスリップ。 この時間・・・秀一が丸一日、研究室に籠もっていた時間だ。

再び左肩の火傷の熱さをこらえる。 左肩を見ると、煙が上がっているが・・・肉の焼ける臭いは微かだ。 それほど深手ではない。 この時間、この空間には何でも揃っている。 まずパソコンがある、冷蔵庫には食べ物もある。 勿論火傷の薬も・・・

手当をし、空腹だった胃袋も満たし・・・ パソコンの前に座る、クウィ~~ンと起動してきた。

適度な距離の空間に、女性の顔が現れた・・・ スクリーンピクチャーに表示させてある百合の写真であった。 暫し見つめているうちに、怒りが湧いてきた。 未来を変えることの出来なかった自分に対して。 秀一「許さない!時間はどうにでもなる。プログラムの見直しだ!!」

収納庫にジャイロ社製の護身スーツがあることを思い出した。 物理学、司教授が趣味でパワーアップした代物・・・当時は眉唾と思っていたが・・・今は藁にもすがる気持ちである。

護身スーツを身に纏い、机の上に表示された「光キーボード」を叩く・・・ 秀一「何故・・・仮想時間なのだ?!!主の時間に入り込むにはどうしたら・・・」 パソコンとの格闘数時間・・・ 秀一「パワーが欲しい・・・アップは出来るが・・・腕時計をはめている手がもつだろうか・・・試してみるか・・・護身用スーツの切れ端があったはず・・・それを介せば・・・」

秀一「次は・・・歴史を知ること・・・」 パソコンから、当時の事件を検索してみる・・・しかし、無い。 明智光昭の周知さ・・・に舌を巻く。 これは、警察組織まで手中に収めている証拠だ。 明智光昭で検索すると、光義時代からインターネットで莫大な資金を稼いでいる。 記録は2155年からだ。 秀一「46年前からか~~~それも、子供だましのような催眠ネット商法・・・」

気付くと・・11月2日18時になっていた・・・「敵の乱入まで、あと1時間・・・どうしよう・・・時間が足りない・・・」

 

 10

 

秀一は思い直した。 時間はどうにでもなる、十分体勢を整えて行かなければ。 そして、護身スーツを素肌にまとうことが出来ている。 これなら敵とも戦えるし・・・怖いものはない。 護身スーツは実時間にもある物、消えたりしないはず。

しかし、このまま仮想時間内で出発した11月2日を迎えたらどうだろう・・・ 敵と戦っても実時間は何ら変わらないのである。 自分の起点は2201年11月2日19時22分で止まったままなのだ。 肉親の居ないたった一人だった現実・・・ 仮想空間でも独りぼっちに変わりはない、それでは駄目なのだ。 どうしても実時間の過去に飛び、歴史を塗り変えなければ・・・幸せは訪れない。 レッドボタンは、現実に戻る為の最後の手段。 一度戻ったが・・・何ら変わっていなかった。

秀一は、2201年11月1日22時30分に、再度飛ぶ。 さあ、タイムマシーンのパワーアップと飛ぶ時間を決定しなければならない。 計算上では、仮想時間から実時間に入るためのマシーンが必要である。 故に、時間を遡るマシーン(仮想時間用)と実時間に進入するマシーンの2台必要になる。 プログラムをデュアル化して、もう一つのマシーンには実時間に入るため電力をアップした命令を書く。 出来上がったものは『デュアルタイムマシーン』だ。 操作法として、「GOボタン」の二度押しとなる。 実時間で作業を終え、仮想時間に戻る時も「GOボタン」に割り振った。・・・三つの機能になったのである。 プログラムは、コピーペーストが使えて楽な作業である。

次は、どの時間に行ったらいいかだ。 母の事件か、百合の事件か、父の事件か? どれも記録がない・・・ 唯一可能性があるのは・・・

 

 11

 

秀一は2155年に飛んだ。

*****

研究室は、殺風景と化して大きなテーブルと椅子が置かれていた。 そこに、ガチャリと使用人が入ってきた。 掃除をするためだろう、バケツをもっていた。 瞬間、凍り付いている。 秀一はハッとした。『見えている』と。 秀一『どういうことだ?46年前、私は生まれていない・・・それなのに・・・』 秀一『そうか・・・実時間に入ったからだ。・・・厄介になったぞっ』 使用人は、とって返している。 間髪を入れず、ごつい男達がなだれ込んできた。 問答無用であった。 ピストルを発砲してきたのである。

ドンと胸に衝撃が走る。 秀一『撃たれた・・・』 しかし、痛みはあったものの・・身体に異状はない。 護身スーツが守っているのだ。

秀一は、側にある窓を開け、表に飛び出す。 走りながら、振り向くと先ほど発砲してきた警備員が追いかけてくる。 流石に、人の目があるから発砲はしない・・・

何とか、警備員達を振り切り、荒い呼吸を整えながら状況を考えた。 秀一『いきなり、撃ってきた。なぜ?・・・明智光義が力を付け始めた頃である、祖父の清和は55歳、代議士であり総理を目指していた筈だ・・・そして父は8歳。・・・・・・もう、影の争いが始まっていたと言うことか?・・・すると私を明智のスパイと思ったに違いない・・・勢力的には祖父の方が大きかったはず・・・12年後には総理になっているのだから・・・』

秀一は周囲に気を配りながら林立するビルの谷間を歩く。 エコ対策で街路樹が生い茂っているのがこの時代の特徴だ。 また、ビルの窓も特種ガラスで、室内気温の上昇および防寒対策に効果があり、電力を押さえている。 その努力があって、2201年も良環境で過ごせているのだ。

目的を達成するためには、パソコンが不可欠・・・ 秀一『私が生まれた時より20年も前・・・パソコンも当然古い・・・何処まで発展しているのか楽しみでもある・・・』 しかし、昔あったと言われている「ネットカフェ」が見あたらない・・・ 道行く人は、コンパクトなカードを持っている。 秀一『あっ、そうか・・・あれが情報端末カードと言われていた物なんだ・・・指紋認証が主流だったな~~』 そんなことを、思い出しながら歩いていると・・・ 突然、後ろから男が密着してきた。筒状の物が感じられる。 耳元で「やっと見つけた、言うとおりにしろ!・・・風穴が空くぞ!!」

 

 12

 

秀一はピストルを突きつけられて怯えた。 こんなに至近距離で撃たれたら、いくら護身スーツを着ていても防げないだろうと・・・ 今逃げてきた道を、戻るはめになった・・・ 秀一『致し方あるまい・・・当たって砕けろだ。いざとなったら、「GOボタン」を押せばいい・・・』

その時である、行く手を女性が塞いだ・・・ そのひとは・・・30歳半ばくらいのスーツを着た聡明な感じの女性であった。 女性「どうしました?霧生さんの所の方ではないですか・・・」 警備員「あっ、浜野奈津子様!」 秀一『えっ、浜野奈津子?』 奈津子「珍しいと思ったのですよ・・・霧生家に詰めている方なので・・・」 警備員「いや・・・特命事項でして・・・」 奈津子「私の従兄弟に・・・ですか?」と、意味ありげな視線を向けている。 警備員「えっ、い・従兄弟?」 奈津子「判りましたね!これから従兄弟とロードショーを見る約束なんです・・・いいですね!!」 警備員「・・・」 奈津子「さあ・・・行きましょう?」と手を取られた。

見た映画は、百合と一度見たことのある古い名作だった。 奈津子「ふふっ、あなた・・・お名前は?」 秀一「秀一です・・・」 奈津子「そう・・・良い名前ね・・・そして・・・いい男・・・ふふっ」 秀一「・・・」 奈津子「清和先生に・・・似ているのだけれど・・・隠し子かしら?・・・ふふっ(笑)」 秀一「いえ、遠い親戚です。あっそう言えばまだお礼も言っていなかった・・・有り難うございます。」 奈津子「なんか意味ありげね~~」 秀一はどう説明しようか思い悩んだ。 浜野奈津子は、浜野家の一人娘で、霧生清和の秘書をしていた有能な人物。 そして百合の祖母である。 奈津子「どうする?霧生家に戻る?・・・でも霧生の警備員に追われていた・・・何故?」 秀一「・・・」 奈津子「まあ・・・いいわ、私の家に来なさい。」

浜野家は、霧生家と深いつながりがある。先代の総理を務めていた清和の祖父、清一と浜野重吉以来のつきあいであった。 浜野奈津子は婿を迎え、重之という子をもうけている。 浜野重之は、父の霧生和秀とともに明智の反対勢力として戦っていた。 重之の子が百合なのである。

 

 13

 

奈津子「さあ~どうぞ~~」と秀一を自宅に招じ入れた。 途端に「ママ~~ッ」と言って、6歳の重之が走ってくる。 奈津子「重ちゃん・・・お利口にしてた?(笑)」 重ちゃんは、奈津子にかじりつきながら、奇異な目で秀一を見ている。

秀一「ご主人は?・・・」 奈津子「あの人?・・・もう半年も帰ってこない・・・メイドさん数人と私たちだけ・・・」 秀一「はあ・・・」 奈津子「父の下で考古学の助教授をしているの、今頃・・・エジプトでミイラと話をしているんじゃない?(笑)」 秀一「考古学ですか~~私は物理学と・・・電子工学が得意です・・・」 奈津子「へえ~~凄いのね~~やはり家庭より学問が大事なほう?」 秀一「いえ、そうでもないです・・・今独りぼっちなので、家庭が恋しい・・・」 奈津子「そう・・・一人?・・・ご両親は?」 秀一「母は、小さな頃死にました・・・父も昨年死にました。そして恋人も・・・」 奈津子「なんという・・・」と言葉を詰まらせている。 秀一は、あなたの孫である百合を好きだったと、のど元までこみ上げてきたが・・・飲み込んだ。不必要に悲しませたくない。 奈津子「家庭ね~~うちはあるのだろうか・・・唯一重之が居てくれる・・・」

重之は、母が帰ってきたので安心したのか、オモチャで遊び始めた。 秀一「ご主人の研究は、世界各国まわるのですか?」 奈津子「年に1・2回、帰ってくるだけ・・・数日居てまたすぐ、飛び出していくわ・・・鉄砲玉幸介と呼んでるわ(笑)」  ※浜野幸介(奈津子の配偶者) 秀一は奈津子の寂しさを慮った。

奈津子は、秀一のことを根掘り葉掘り聞いてきたが、誤魔化した。 奈津子も、薄々感じ取る。 奈津子「さて・・・これから清和先生の所に行かなければ・・・私・・・清和先生の秘書をしているの。」 重之は途端に、奈津子所へ来てぐずり始めた。 奈津子「秀一さん、ユックリしていって!」 秀一「有り難うございます・・・ひとつお願いがあります・・・」 奈津子「なんでしょう・・・」 秀一「パソコン・・・お借りできないでしょうか・・・」 奈津子「良いわよ・・・私のを使って。」 持ってきたのは、薄型ノートパソコンである。 秀一「ネットに繋がりますか?」 奈津子「勿論よ、最新鋭のデジタル無線ラン!何処でも安定接続(笑)」

奈津子「それと・・変わった腕時計をしているのね~~それ・・・クランチ?」 秀一「クランチ?ああ・・爆発的にヒットしたけど・・・重くて・・・シンプルが良いよ~~」 奈津子「???今流行なのに・・・」 秀一は危険な会話であると瞬時に悟った。 秀一「こ・これ・・・自分用に作った物・・・」 奈津子「文字が・・・二列あるし・・・大きなボタンも二つある・・・」 秀一「ストップウォッチなんだ・・」と何とか誤魔化した。

奈津子は重之をなだめ・・・家を後にした。 重之は大泣きしていたが、メイドの言葉で直ぐに静かになった。 秀一はそれを見て、哀れと思う・・・ しかしそうもしていられない・・・計画実行のためパソコンに向かうのである。

 

 14

 

秀一は、まず奈津子のIDを使わず秀一のIDで起動できるよう、バイオスを書き換える作業を行った。 アクセス解析されても、奈津子のPCだと判らないようにするためだ。迷惑は掛けられない。 準備が整い、ネットに接続。 この時代の、セキュリティーは強固である。 しかし、秀一の技術・・・それも46年先の未来の技術だ。 数分操作しただけで、セキュリティーホールを見つけられ、進入することが出来た。

さあ、これからが一仕事・・・明智のサーバーに進入。 構築されているシステム一覧とバックアップ体制を掴んだ。 明智の全体像が手に取るように判った。 政治のことには疎い秀一だが・・・問題になりそうな秘密情報をプリントアウトしておく。 そして、資金源と成る「催眠ネット商法」のプログラムとサーバーを破壊するためのウィルスの作成に入る。 ブロックされているサーバー内部まで、進入しなければならない・・・ これは一苦労である。

キーボード上を激しくタイピングする秀一の指・・・ ふと気付くと重之が側で食い入るように見つめていた。 重之「おじちゃん・・・凄~~い・・・」 秀一「(笑)そう?~~これ終わったら・・遊んであげるね!」 重之「うん(笑)」

1時間後、ウィルスプログラムが完成し送信・・・すぐさま秀一のIDを切り離す。 奈津子のパソコンから秀一のIDを抹消。 一息ついた。

次は、重之の為に簡単なゲーム作りに入り、重之を膝の上にのせゲームの仕方を教えた。 子供は覚えが良い、夢中になって遊び始めた。

秀一は、目的達成・・・帰るための方法を考えた。 必須条件としては、秀一の研究室に戻らなければならない。タイムトラベルは場所まで移動できないから・・・ どうする・・・と考えても名案は浮かばない・・・

思い悩んでいると、奈津子が帰ってきた。

 

 15

 

奈津子「あら~~~、重ちゃん、もうおじさんと仲良しになったの?(笑)」 重之「うん、おじちゃん・・凄いんだよ~~今ゲームしてるの・・・新しいゲーム・・・おじちゃんが作ってくれたの~~~」 奈津子「なるほど~~電子工学を専門にしているものね~~」

秀一「あの・・・そろそろ・・・おいとましないと・・・」 奈津子「泊まっていって下さっても良いのよ~~(笑)」 秀一「そう言うわけには・・・」 奈津子「どこに帰るの?・・・」 秀一「霧生家に・・・」 奈津子「何故?狙われていたのに・・・」 秀一「あそこが・・・私の出発点なのです・・・」 奈津子「しゅ・・出発点???」

奈津子「霧生家には、秀一と名乗る人は居なかったですよ・・・調べてきました・・・」 秀一「・・・調べても出てきません・・・」 奈津子「・・・本当に清和先生に・・・うり二つというくらい似ているのですよ・・・血の繋がりがある方と思っていました・・・」 秀一「奈津子さん・・・有り難う・・・色々と・・・私の時間に戻らなければ・・・」 奈津子「私の時間???」 秀一「そうです・・・理解できないでしょう・・・たった半日・・・変なのが迷い込んだと思って下さい・・・さようなら・・・」といって走り出ていく。 「秀一さん!!」と叫ぶ声が・・・百合そっくりであった。

街は賑わっていた。 カップルや親子連れ・・・みんな幸せそう・・・ しかし何年か後には・・・街は暗黒化する・・・ 武器を持った男達が徘徊し始めるのだから・・・祖父の清和が明智光義の策略で失脚してから・・・弱肉強食の世界になり・・・金持ちが幅をきかせ始める。

ふと、電気店を見つけた。 ニュース番組を放送している・・・ そこには、40歳後半の明智光義が喋っていた。 光義「大変なことが起こりました、皆さんに御好評頂いているサイトがストップしたのです。バックアップしてある所まで・・・何者かがウィルスを混入させたと思われます・・・でもご安心下さい、新たなコンピュータを導入し再度サイトを構築しますので、それまでは電話によるご注文を承ります。ご不便でしょうが今しばらくお待ち下さい。」

秀一は、それを聞いて・・・ショックに打ちのめされた・・・ 『思い付いた計画は、水の泡・・・なんと浅はかなのだろうと・・・収入源のサイトを破壊しても・・・新たに作られれば同じ事・・・流れを変えられない・・・』

 

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秀一は、公園のベンチに腰を下ろしてボーッとしていた。 『どうしたらいい・・・どうすれば歴史を塗り替えることが出来るのだ?明智光義を消さなければならないのか?・・・そんな野蛮なことを出来るわけがない・・・』 秀一は疲れ果てていた・・・

どのくらいたった頃だろう・・・暗闇に紛れて数人の男達が周囲を取り囲んでいた。 「浜野の従兄弟さん・・・どうしました?ふふっ」 見上げると、霧生家の警備員が立っていた。 「霧生先生が・・・お連れしろとのご命令なので・・・」 秀一は、願ってもない・・・これで研究室に戻れる。 二つ返事でついて行く。

霧生家に、もうすぐという位置に帰って来た時・・・ プスッという音とともに警備員の一人が倒れた。 すぐさま、リーダー格の警備員が秀一の盾になる。 警備員「建物内へ走って下さい・・・援護しますから!!」 秀一「あの人・・・」と気遣いを見せたが・・・ 警備員「明智のヒットマンだ!!早く!!」

シュッシュッと・・・何かが飛んでくる・・・ 秀一『消音銃だ!!』 警備員達は、素早い身のこなしで消音銃を構え動き回る・・・ リーダー格の警備員に背中を叩かれた。 警備員「はやく!!!」

秀一は霧生家に飛び込んでいく。 そこには、清和代議士が待っていた。 清和「おまえか~~明智のシステムを破壊したのは!!(笑)良くやった。奈津子から電話があった。パソコンを貸したと・・・ふふっ電子工学のオーソリティーとか(笑)」 秀一「いえ・・失敗しました~~・・・」 清和「なに?」 秀一「途中電気店のテレビで・・・明智が新しいシステムを導入すると言っていました。」 清和「・・・あのサイトがあると、どういう影響が出るのだ?」 秀一「資金源なんです。」 清和「ふ~~ん、私もサイトを持っている。」 秀一「いや、資金の使い道が問題なのです。」 清和「ほう~~どんな使い道だ?」 秀一「詳しくは・・・判りません・・・」未来のことを、知らせるのは危険と判断した。

そこに警備員が入ってきた・・・ 警備員「一人・・・犠牲になりました。」 清和「そうか~~・・・敵は倒したのか?」 警備員「はい、明智側のヒットマンでした・・・」 清和「仕方あるまい、滅多に仕掛けてこない筈だが・・・」 警備員「そこの若い方を狙ったのではと・・・私たちがガードするように戻ってきたためかと・・・」 清和「そうか・・・明智のサイトを破壊すると言えば、我々側からと判断するだろうな・・・プログラマーは専用のIDで登録されている。ID解析すれば誰だか判る・・・それ以外の人物・・・」と秀一を見つめてきた。 この時代に、秀一のIDは存在しないのである・・・

 

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清和「そう言えば、君の名前を聞いていない・・・」 秀一「秀一と言います。」 清和「どういう字を書く?」 秀一「優秀の秀です。」 清和「ほほーぅ・・・息子の和秀と同じ字か・・・」

清和「秀一君は、プログラマーと言ったな・・・」 秀一「専門は・・・物理学なんですが・・・」 清和「明智のサイトを破壊したと言うことは・・・我々の同盟者か?」 秀一「ある意味では・・・」 清和「そうか・・・私のサーバーを見て貰いたい・・・やることなすこと、どうも裏目に出る・・・」

秀一は、どうするか迷っていた。 もう、自分に出来ることはないと思っていたのである・・・ そんな時、奈津子が訪問した。数枚の紙を抱えて・・・ 奈津子「秀一さん・・・あなたがこれをプリントアウトしたのね。」 秀一は忘れていた。明智のサイトに侵入した時、手当たり次第シークレットになっている情報を打ち出したのを・・・ 清和代議士の手に渡り吟味している。 清和「な・なんと!こ・これは・・・」 秀一「なんですか?私には、意味がわからないので忘れていましたが・・・」 清和「う~~む、もう少し肝心なところが欲しい。でも、これでも明智を何とか落とせるか・・・」 奈津子「出来ます。政治生命に打撃を与えるまでは行かなくとも、霧生先生が有利になります。」 秀一は思った、『それが無くとも、総理になれますよ』と・・・

清和「もっと、詳細が欲しいな~~」 秀一「明智のサイトは、いま封鎖状態・・・全て真っ新になっています。」 清和「そうか~~惜しいことをした。」 奈津子「私が居れば・・・適切な情報を・・・とれたかもしれない・・・」 清和「秀一君!ますます君の目的を知りたい。」 秀一「・・・強いて言えば・・・明智に殺された家族の恨みでしょうか・・・」 清和「なんと言うことを~~~何時?どうやって?」 秀一「・・・話せません・・・明智のヒットマンにとだけは言えます・・・」 清和「政治がらみか・・・?」 秀一「・・・」 清和「話したくないなら、無理に聞くまい・・・ところで・・・私のサーバーを点検していただきたい。お願いできるかな?」 秀一「それなら、おやすいご用です。」

秀一が、清和のパソコンから、霧生家のサーバーを覗いてみた。 おりしも、不正アクセスされているのを発見。 秀一は、解析し相手のIDを突き止めた。 秀一「清和先生、この(iru***+@・・・;;::;00382・・・・・・)というIDは?」 清和「それならプログラマーズ登録センターに照会してみてくれ。」 奈津子「その照会は、私がやります。秀一さんはそのままサーバの点検をお願いします。」

秀一は、霧生家のサーバーを吟味してみて、セキュリティーホールが数カ所見つけることが出来た。 秀一『これでは、進入されてしまう。よし、私の時代のアクセスブロッカープログラムを入れておこう、私の時代でも突破されたことはない物だ。』

 

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奈津子「清和先生!!、判りました。やはり明智のサイトを作ったプログラマーです。以前、霊感商法サイトを作って逮捕された経歴があります。」 清和「そうか~~~明智に拾われたんだな。すると・・・明智のサイトにはリンクが張られ個人情報が盗まれる危険があるわけだ・・・」 奈津子「でも・・・まだ被害が出たとの情報はありません。」 清和「いや・・・これから、何かを始める為、個人情報を集めていたのかもしれない・・・それを秀一君に破壊された・・・・・・・・・んっ奈津子君の家が危険だ。使用パソコンを解析され・・・狙われる。」 奈津子「はっ重之・・・」と電話に飛びつく・・・ それを耳にした秀一は「大丈夫ですよ。安心して下さい。」 清和「???それは・・・どうして?」 秀一「パソコン自体のアドレスを、書き換え・・・架空のパソコンアドレスを用意したからです。それを元に私のIDを使いました。」 清和「そんなことが出来るわけ無い・・・」 秀一「出来るのです・・・(笑)」 清和「君には出来る・・・ということか?」 秀一「はい。ここでは、それをできるのは、私だけです。」秀一の居た時代で数年前に発見されたものだからである。

PCの部品には、それぞれシリアルナンバーというのが付けられている。 その部品を制御するプログラム、バイオスがありその上にOSが関連づけられ(インストール)そして色々なプログラムが動くのだ。 その基本のバイオス上で仮想バイオスを作るのだ。そうすることにより全く異なるパソコンが出来上がる。解析されても奈津子のパソコンではない。 秀一は、そのことは二人に説明しない。混乱するだけだからだ。

秀一「さあて・・・霧生家のサーバーもセキュリティーをアップしておきました。もう覗かれる心配はありません。」 清和「そうか・・・有り難う・・・これから会議があって出掛ける。ユックリするが良い。」 秀一「有り難うございます。」

霧生家には、秀一と奈津子だけになった。勿論別室には警備員達が待機している。 奈津子「これからどうするの?・・・聞きたいことがあるのだけれど・・・」 秀一「私に出来ることは全てしました、後は戻るのみです・・・」 奈津子「秀一さん・・・「私の時間に」という意味不明なことを言っていたけど・・・どういうこと?」 秀一「・・・どういったら・・・ここの人間ではないのですよ・・・。奈津子さんのPCにメッセージを残しておきました。2200年まで大切に保存しておいて下さい。その時立ち上がりますから・・・」2200年1月1日に自動でメッセージが立ち上がるようにしていたのだ。 奈津子「??」 秀一「そろそろ、戻ります・・・」 奈津子「なんか寂しそう・・・どうして?」 秀一「戻るところは、独りぼっちの所なんで・・・」

そう、言い残し、研究室に足を向けた。 研究室に入って、「GOボタン」を押した。

奈津子は、秀一が気になり後をついて行った。 なんか胸の中が熱いのだ、奈津子『何年ぶり?(笑)私が恋するなんて・・・』 研究室を開けたら目の前で・・・秀一が霞のように消えていった。

 

 エピローグ

 

秀一は、目を瞑り暫く膝をついたままでいた。 しかし、なんの変化も起きない・・・ 腕時計型タイムマシーンを確認する。 2201年11月2日19時23分。 まぎれもなく、出発した時間から1分が経過していた。

敵の攻撃がない・・・ どうしたことかと、周囲を見回す。 ハッとした、窓があるのである・・・ 歩み寄っていくと、家族三人が笑顔で歩いている・・・ 小さな女の子が「お父さん!お祭り楽しみね~~」と言う声も聞こえてきた。

秀一は、もう一度腕時計を確認する。 2101年?・・・いや確かに2201年だ。 間違えたのだろうか・・・?

ふと気付くと、お腹が減っている・・・ タイムトラベルしていた時間はどのくらいだろう・・・ 何も食べていない・・・ 研究室も・・・何か違和感がある。

・・・・・

その時、コーヒーとトーストを持って、百合が入ってきた。 百合「あなた、根を詰めると身体に毒ですよ」 秀一は、目を白黒させた。 秀一「百合・・・どうして?」 百合は綺麗な目で見つめ返している。 秀一は、走っていき百合を抱きしめた。 百合「あなた・・・どうなさったの?」 秀一「逢いたかった~~~」 百合「ふふ、変な秀一さん。」

秀一は、徐に聞いてみた「父さんは?」 百合「居間におりますよ、お義母様と一緒に・・・」 秀一は何が何だか判らないが・・・胸が熱くなり居間に飛び込んで行く・・・

和秀「どうした?息せき切って~~(笑)」 秀一「こ・これは・・・」 秀一の知っている居間ではない・・・様変わりしている。 そこに、少し老けた母と、80歳くらいの年老いた女性が椅子に腰を下ろしていた。

「秀一さん(笑)メッセージを読みましたよ・・・『2200年3月20日、百合を家に引き止めて下さい・・・百合の身に大変なことが起きるのです・・・』ふふふっ、だから早めに百合を秀一さんの嫁として出しました(笑)。それと・・・ハッカーによる極秘情報を読み取られることもなく、清和先生は確たる地位を手にされましたよ(笑)。」 秀一「あっ・・・奈津子さん・・・」

秀一は心の中で飛び上がるくらい喜んだ『やった~~~もう最高~~』 そう思うとともに秀一はクシャクシャな顔になり、瞳から大粒の涙がこぼれていった。

 

 <完>

 

 

[あとがき]

 

タイムトラベル・・・実際には不可能のものと自分では思っています。 これはあくまで、空想の物語(SF)です。 そして、パソコンを主とした内容となりました。 パソコンのことは、少しだけ知識があるので・・・(一部、専門の方には違うと言われそうですが・・・)

また、最後は詳細を省きました。(感動を大きくしたいためです) 霧生清和は総理となり、明智の策略にも陥ることはなかったのです。 それは、明智側に霧生家の情報が筒抜けだった物を阻止したから。 歴史を秀一自体がねじ曲げるのではなく、的確な情報と防御を置き、後は流れに任せた形としました。 一科学者の秀一に、歴史を変える力などありません。 霧生家の持っていた、底力による物です。

 


この本の内容は以上です。


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