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 ワゴンは、わたしのマンションにつけられる・・・
 本部横のマンション・・・
 それは私たちの寮となっていた。
 養成所の時と違って個室ですごく広い部屋・・・・
 10階は同期の部屋になっていて・・・
 隣が胡桃、向かいが希美と栞になっていた。

 やっと昨日片付いたばかりの部屋・・・
 長い一日だったデビューと初めての現場・・・・
 部屋に入るとすぐにリビングのソファーに倒れこむ。
 でも、自分が夢にまで見た道の第一歩・・・・
 心地よい疲れかもしれない・・・・
 
 その時、ドアベルが鳴る・・・
 だれっ・・・
 わたしは立ち上がって、キッチンのビデオカメラを見る・・・・
 胡桃が手を振ってるのが見える・・・・

 やっぱり、完全セキュリティのこのマンション・・・
 胡桃くらいしかない・・・・
 話したいことがたくさんあった・・・
 聞きたい事もたくさんある・・・
 わたしがドアを開けると胡桃が飛び込んでくる・・・

 ついでに希美と栞まで入ってくる。
「お菓子もってきたよっ」
 お菓子のいっぱい入ったビニール袋をテーブルに置く。
 希美と栞はジュースを置く。

「どうだった」
「うん、もうクタクタ」
「こっちも・・・・」
「でも、美耶子さんと仕事できるからいいじゃん」
 コップとかお皿とかを用意する。
「でも、完全に体育会系のノリ。挨拶から始まって、今日も顔見世だけかなって思ったら、即トレーニング。それも半端じゃないの」
「うーん、そうなんだ」
 美耶子さんならありそう。でも、もともと体育会のノリの胡桃が音を上げるなんてどういうトレーニングなの?
 わたしはダベってただけだけど、ユニットによって全然違うみたい。

 栞と希美は勝手にテレビをつけて、勝手にネコ型ロボットのアニメのDVDを見ている。
 何しに来たんだ、こいつら。
 2人を見てるだけで、こっちのユニットの雰囲気もわかる。

「美月って、今日は大活躍だったらしいじゃん」
「えっ・・・・」
「メールみたよ。美月って雷を操れるんだ」
 わたしも携帯を見る。
 ビデオ付きのニュース・・・・
 ラブウィッチーズの今日の活動記録・・・・
 ビデオを見ると、ムカデを倒したとき、ウィザードを倒したとき・・・・
 ウィザードの映像を見ると、あの少年は映っていない・・・・
 黄色い光の玉が映っているだけ・・・・
 あの子・・・他の人には見えないの・・・・
 声も入っていない・・・・
「うん・・・まあねっ」
 いくら胡桃でも信じてくれないよ。
 
 栞と希美が口げんかし始める。
 だから、こいつら何をしにきたの?

「優菜はグラビア撮影らしいよ。さっきメールきてたから」
「そうなんだ。」
 グラビア組も忙しいみたい。

「で、なんでみんなこの部屋にきたの?胡桃はわかるけど・・・」
「うん、ここが一番かたずいてそうだから・・・わたしの部屋なんて寝るとこもないし」
「もしかして?こいつらも?」
「そうみたい・・・・」
「・・・・」
「でもさぁ、美月、今度スタッフが来て片付けてくれるらしいし・・・」
 それまで、ここにいるの?
 栞・希美のけんかがエキサイトする。
 どうやら、お菓子の取り合いが原因らしい。
 いつもなら、優菜が彼女たちをまとめてくれるんだけど・・・・

「うるさぁい。けんかやめろぉ!」

 希美と栞が驚いたようにこっちを見る。
 
「いい子ね」
 冷蔵庫から惜しいけどとっておきのプリンを取り出す。
 たしか2個あったはず。
 わたしの大好物なんだけど・・・・
 お皿の上に乗せて、スプーンを添えて、彼女達の前に・・・・

 栞と希美は顔を見合わせる・・・・

「どうぞ・・・」
 大人の笑顔で・・・・
 たぶん、優菜がするみたいな。

 希美は相変わらず無表情で・・・
 栞は満面の笑顔を浮かべて・・・
 お皿を引き寄せる・・・

 まあ、これで大丈夫だろう・・・

 胡桃に向き直って、テーブルに座る・・・・
 わたしたちは、いつものようにとりとめもないおしゃべりを始めた。


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 インターフォンの音で
 朝起きると
 ベットを占領する2人の子供たち・・・・
 胡桃は起きてベランダで筋トレ・・・・
 それを横目に目をこすりながらドアの方へ・・・

 昨日紹介されたマネージャーの小松原さんが立っている・・・
 美那子さんのマネージャーもしてたらしいベテランだ。
 
 わたしは朝食しながら、マネージャーと今日の打ち合わせ・・・
 なんかお仕事してるって感じ・・・
 昨日までと違って、いきなり大人になった気分・・・

 でも、スケジュールもすごい・・・
 もう分刻みって感じで・・・
 
 胡桃や栞・希美のマネージャーもわたしの部屋にくる。
 特に栞・希美のマネージャーは兼任だけど、なんか大変そう。
 しきりにわたしに謝って、
 今日中に2人の部屋をなんとかするらしい。
 どうみても、新人マネージャーって感じ。
 鼻までずれた眼鏡が彼女のあせりを表している。
 大変そう。
 スケジュールを言っても、栞はまだ寝てるし、
 希美は超不機嫌。
 この子の寝起きの悪さは筋金入りって聞いたことある。
 
 胡桃もマネージャーに怒られている。
 昨日、連絡せずに私の部屋に泊まったこと。
 かなり絞られてる。
 やっぱ、体育会系???

 マネージャーに連れられて本部ビルに・・・
 マンションと地下でつながってるから、ジャージ姿で大丈夫。
 マスコミ、ファン対策。
 表に出たら大変なことになるらしい。
 昨日までは普通の女の子だったのに・・・
 
 すれ違うスタッフの人たちと挨拶を交わす。
 わたしもだんだん戦闘モードになる。
 って言っても明るく振舞うだけなんだけど。
 アイドルらしく。

 案内されたお部屋にはいると、もう愛莉さんがいる。
 まだ沙耶香さんはいないけど。

「おはようございます!」
 元気に挨拶する。
「あぁ、おはよう。遅かったじゃん」
「ごめんなさいっ」
 愛莉さんは鏡の前でダンスの練習中。
 しなやかな身体、長い四肢・・・・
 見ていてうっとりするほど・・・・

 とりあえず、ダンスのレッスンだった。
 髪をくくって、
 愛莉さんの横で身体をほぐす・・・

「じゃあ、一緒に、ついてきて。昨日のステージ、間違いだらけだったよ。」
 あっ、ばれてたんだ。
 うまくごまかしたと思ってたのに。
 小さく舌を出す。

「ステップはこう・・・一回しかやんないよ」
 なんかダンスの時の愛莉さんって別人みたい。
 愛莉さんのステップを真似る。
「うん、そんな感じ。じゃあ、最初から。あわせて」
 研修所の時のレッスンと全然違う。
「止めるときはピタッと止めて」
 ちょっと緩慢になりがちなわたしのダンスの弱点を一発で見抜く。
「そうそう。でもそんなに息があがってちゃ。歌えないよ。ちゃんと基礎体力つけてね。」
 一緒に踊ってるのに、愛莉さんは息ひとつ乱れない。
 やっぱ、すごい。

「おはよっ」
 沙也香さんが入ってくる。
「おはようございます!!」
 踊るのをやめて挨拶。
「おっ、やってるねっ。感心・・・感心・・・愛利のいうことちゃんと聞くんだよ」
 私の頭をポンポンって叩く。
「はいっ」
 笑顔になってしまう。
「それから、歌はわたしが見るからね。厳しいよ」
「よろしくお願いします」
 ハスキーな沙也香さんの歌声が大好きだった。
 大人っぽいバラードも。
 わたしも沙也香さんみたいになれるかな。

 踊りの練習が終わったら、
 休憩タイム。
 もう、愛莉さんとおしゃべりができるようになっている。
 この先輩ってほんとうにとっつきやすい。

 もう、汗でベトベト・・・
 でもタオルで拭いて、歌の練習に・・・
 沙也香さんがピアノを奏でる・・・
 愛利さんとわたしは発声練習。
 今夜PVの撮影とかあるっていうし、新曲の練習しておかなくては。
 
 一通り、今日の新曲の練習をする。
 時々はいる沙也香さんの厳しいチェック・・・・
 でも、乗せるのもうまいから乗り切れる。
「美月は歌うまいんだから、基本に忠実にね。くずすのはいくらでもできるからね」
 とりあえず、3回くらいでOKがでる。

「美月、これ、歌ってみない?」
 楽譜が渡される。
「知ってるよね」
 コクンって首を縦に振る。
 うん、わたしの大好きな曲。
 沙也香さんがこの前のアルバムでソロで歌ってた歌。
 よく知ってるイントロが流れる。
 わたしは沙也香さんの目を見て歌い始める。

『この冷たい世界で
 なにができるのかな?
 戦いにあけくれて
 疲れ果て傷ついた心

 この荒れ果てた大地で
 何ができるのかな?
 苦しみもがいても
 明日はかわらないけど』
 
 沙也香さんの目が微笑む。
 そして沙也香さんが歌を重ねる
 
『瓦礫の中に埋もれて
 凍えきったこの身体
 暖めてくれるのは
 あなたの思い出

 あなたと笑ったこと
 あなたとケンカしたこと
 あなたとともに闘ったこと
 あなたとKissしたこと』

「うん いいよ。次のコンサートでやるからね」
 沙也香さんが言う。
「えっ、はい」
「じゃあ、最初からねっ」
 わたしたちは沙也香さんのピアノにあわせて歌の練習を続けた。

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 サインを100枚書いて・・・
 ティーンズ雑誌のインタビュー・・・
 ブログに載せるコメント書いたり・・・・
 気がついたら夕方・・・
 まだスケジュールは終わらない。
 あと、PVの撮影がある。
 愛莉さんによると、NGだらけで日付を超えることもあるらしい。
 やばいっ、わたしってNGメーカーだし。
 でも、胡桃とかと一緒に仕事できるってなんか嬉しい。

 スタジオに行くために外にでたら、
 すごいっ・・・・
 わたしたちに会うためにファンの子がたくさんいて、
 美月って書いたボードとか用意してくれてて・・・・
 一昨日まで、ただの女の子だったのに・・・・
 でも、わたしのファンは男の子が多くて、
 愛莉さんと沙耶香さんは女の子のファンが多い。
 とりあえず、ガードされながら車に乗り込む・・・
 時々手を振ると、ファンの子たちが答えてくれる・・・・
 なんかすごいっ・・・

 それから、スタジオに着くといきなり打ち合わせ・・・
 胡桃としゃべる間もなし。
 美那子さんが歌とダンスの説明をする。
 やっぱ美那子さんってカッコイイ。
 いちファンに戻ってしまう。
 愛莉さんが美那子さんのフォロー。
 ダンスのポイントを解説する。
 やっぱダンスは愛莉さん。
 
 今日のPVは新曲「ロックンロール・ウィッチーズ」って曲
 曲はノリだけで、すごい激しいダンスが売り。
 
「じゃあ、いっぺんやってみようか」
 そのままの服で、みんな自分の位置につく。
 わたしたちは美那子さん、沙耶香さん、麻衣さん、睦美さんを囲むように・・・
 曲が流れたらスタート・・・
 うまくできるかな。
 隣は胡桃・・・・
 目で合図する。
 胡桃もニコって笑う。

 音楽が始まる。
 いきなり激しいんだけど、愛莉さんとの練習のおかげで自然と身体が動く。
 どっちかっていうと胡桃が遅れ気味・・・・
 美那子さんから胡桃にNGがでる。
「すみません!」
 また最初っから。
 3度目でようやくOK。
 
 でも、本番はもっと厳しいらしい。
 カラフルなドレスに着替えて、頭に大きなリボン。
 なんか昔はやった格好らしい。
 胡桃はレザーのホットパンツに白いシャツとレザーのジャケット・・・
 男の子を模した格好・・・・
 みんなどちらかの衣装。

 休憩もなく集められて、リハーサル・・・
 今度のリハは簡単にOKが出ない。
 美那子さんと愛莉さんの怒声が飛ぶ。
 わたしも1度NGを出してしまう。
 みんなの冷たい視線が痛い。
 
 でも、胡桃はもう10回以上NGを出している。
 目が潤んで、すみませんって謝る声が震えている。

「きゅうけーい。一息いれようよっ」
 睦美さんが絶妙のタイミングで声をかける。
「そうだねっ。じゃあ10分休憩っ」
 胡桃が泣き出してしまう。
 胡桃をなぐさめるわたし。
 研修の時は逆だった。
 いつも胡桃に元気づけられていた。

 美那子さんは、沙耶香さん愛莉さんと話をしている。
 時々、こっちを見てるような感じ。
 ちょっと落ち着いた胡桃と2人でダンスの練習をする。
 愛莉さんが近寄ってきて、見てくれる。

「集合っ!」
 美那子さんが手を叩く。
 もう10分たったの?
 わたしたちは美那子さんの前に並ぶ。

「じゃあ、再開っ。それと美月」
 えっ、わたし?
「麻衣と交代」
 麻衣さんと?
 っていうことは・・・・
 真ん中じゃん。
 相手は美那子さん・・・・
 それも、間奏の間ずっとクローズアップされるみたいな・・・・
 よぉし、がんばるぞ。
 こういうときのわたしって案外大胆になる。
「よろしくおねがいします・・・」
 美那子さんの前に行ってあいさつ。
「うん、がんばってねっ」
 美那子さんも笑顔になる。
 胡桃に言わせると、わたしって練習はボロボロでも、本番には強いって・・・
 音楽が始まる・・・・
「カメラを意識してねっ」
 美那子さんが言う。
 夢にまであこがれた美那子さんとの共演・・・
 それが、こんなに早くかなうなんて・・・
 わたしは夢心地の中、音楽にあわせてダンスを続けた。


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 収録は3回目でOKになる。
 胡桃も気をとりなおして、NGなし。
 歌の収録もあんまり問題なく終わる。
 今日は白い背景の中でやったんだけど、
 あとは合成で背景とかつけてくれるらしい。
 どんなのになるかすごい楽しみ。

「おつかれさん」
 美那子さんがわたしの肩をポンって叩く。
「お疲れ様です」
 満面の笑顔で返す。

「ねぇ、沙耶香っ。この子わたしのユニットにくれない?」
 美那子さんがわたしの肩に手をまわす。
「だめだよっ。わたしの妹なんだから」
 愛莉さんがすかさずわたしの手をひっぱる。

 先輩たちがじゃれている中にいるわたし。
 なんかくすぐったい感じ。

「じゃあ胡桃をもらうよっ」
 沙耶香さんが胡桃の後ろに行く。
「あっ、それだめっ」
 美那子さんが胡桃を取り戻す。
 落ち込んでた胡桃に笑顔が戻る。
「胡桃はわたしの妹なんだから」
「じゃあ駄目ジャン。4人になっちゃうし」
「リーダーの権限でユニット4人づつにしようかなぁ」

 その時、美那子さんの携帯が鳴る。
「あ・・・はい・・・」
 
 携帯をたたむと険しい顔になる美那子さん・・・

「出動だよ。麻薬の売人がビルに立てこもってる。胡桃っ、美月いくよっ」
「はいっ」
 胡桃と声がそろう。
 顔をみあわせてニコッって笑う。

 美那子さんについて車に走る。
「ぐずぐずするんじゃないよ」
「はいっ」
 動く車の中で着替えるわたしたち。
 胡桃はグローブをつける。
 わたしはロッドを持つ。
「敵は3人。全部魔獣使い。一人づつ相手するよっ。倒したら他の子のフォロー。カメラ回ってないから秒殺でいいよ」
 作戦は単純。
 ドアが開いて、わたしたちは外に飛び出す。

 美那子さんに続いて走る。
 目の前のドアに美那子さんの出す光弾があたる。
 爆発音と閃光。
 その音に気がついた男たちがドアから飛び出てくる。
 3人・・・・
 よぉし、やるぞぉ
 わたしと胡桃は身構える。
 わたしたちのLOVE☆WITCHESははじまったばかりだった・・・

 TO BE CONTINUE 第1話「魔女狩り」
 


この本の内容は以上です。


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