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04

04
 エレベーターを降りると大きなワゴン車が止まっている。
 黒にネオン字でラブウィッチーズのロゴが大きく書かれた窓のないワゴン。
 それに乗り込む。
 中に入るとスタイリストとメイクの人・・・・
 てきぱきとわたしたちの衣装やメイクを調える・・・
 そう、わたしたちの戦いはライブと同じ。
 常にビデオで撮影されている。
 そして編集されてDVDとして発売される。

 敵は基本的には捕らえるだけだけど、場合によっては殺してしまうこともある。
 卑弥香さんが国家に認めさせたんだけど、基本的には正当防衛の延長ってことらしい。
 研修所で習ったんだけど、いまいちよくわからない。
 自分の身を守るためなら、相手を殺してしまっても大丈夫ってこと???
 そんな感じだ。

 作戦内容のビデオが流れる。
 基本的には愛莉さんとわたしが魔獣をひきつけて、
 沙耶香さんがウィザードを捕らえるって作戦。
 作戦担当の人がCGを使いながら説明する。
 特にわたしと愛莉さんは敵を公園から出さないことにも注意しなくてはならない。
 一般人に被害がおよばないようにする。
 これが第二の目的。
 それと、ウィザードを捕らえたら魔獣使いは無理に追いかけなくてよい。
 作戦内容を頭に叩き込む。

 その間、愛莉さんと沙耶香さんはずっとしゃべっている。
 画面なんて見ていないし、作戦なんてぜんぜん聞いていない感じ。
 大丈夫なの?この人たち。
 
 ワゴンが止まる。
 目的地に着いたみたい・・・

 スライドドアが開けられ、
 わたしたちは外に飛び出す・・・・

 騒然としている公園・・・・
 何人ものスタッフがあわただしく動き回っている・・・
 カメラの準備をする人・・・・
 敵を食い止めている人・・・・
 スタッフの中にも相当な実力者がいるらしいけど・・・・
 スタッフはみんな同じ制服とヘルメットで、表舞台に出ることはない・・・・

「ご苦労様、あとは任せて・・・」
 沙耶香さんが、敵の前にいるスタッフの肩をポンと叩く。
 そのあとに続く愛莉さん・・・・
 わたしも愛莉さんに並ぶようにして歩く・・・
 戦闘もショーのひとつだって教えられている・・・
 観客はスタッフの張ったロープの外にいる・・・

「我々は刃根麻衣を出すことを要求する。さもないと。ん」
 ハンドマイクでしゃべっている男。
 年齢は30くらい・・・・
 黒いフレームの眼鏡・・・・
 長髪に痩せた身体・・・・
 服もネルシャツに刃根麻衣のTシャツ・・・・
 頭に鉢巻まで巻いている・・・
 漫画に出てくるオタクの典型的なパターン・・・
 こいつがウィザードの桂木だ。

「バラエティチームか・・・わたしが会いたいのはおまえらじゃないんだ・・麻衣ちゃんをだせ。」
 沙耶香さんと愛莉さんを指さす。
「それから・・・あとのは・・・・」
 眼鏡のフレームを持ち上げながら、手帳をめくる・・・・
「新人の海崎美月ちゃんじゃないかぁ」
 眼鏡の奥から細い目でわたしを睨む・・・・
 正直・・・きもい・・・・
 ジロジロと品定めするようにわたしを見る・・・
 やめろっ・・・・
「ハハハ・・・デビュー戦というわけだな。わたしは桜沢美那子のユニットに入ると思っていたのだが・・・」
 わたしも入りたかったよ。
 それから、眼鏡は携帯をいじり始める。

「いいだろう。現在、ラブウィッチーズ新人人気ランキング1位、ラブウッチーズ人気ランキング5位・・・人気急上昇中の新人のデビューだ。思う存分戦ってやろう。」
 サイト見てたの?新人ランキング1位だったの?
 わたしたちの人気投票はネットでリアルタイムに行われている。
 嫌なやつだけど、人気ランキング1位は嬉しい。

「では、先生がた、むちゃくちゃにやっちゃってください。美月ちゃんは捕らえるだけね。」
 闇の中から4人の男が現れる。
 そして、その前に魔獣たち。
 そう、彼らの力だ。
 巨大なカマキリとムカデ・・・・
 ゴリラみたいな獣人。手には剣と楯を持っている。
 あとは西洋の鎧に身を包んだ武者・・・

「べつに俺たちはどうでもいいんだが、雇われた身だからな」
 ひとりの中年男が言う。
「じゃあ、仕事にかかりますか」
 腰を上げる禿げた男・・・・

「傭兵か・・・・」
 携帯にメールが入る。
 チラッと見ると、彼らのことが解析できたみたい・・・
 過去の事件とか細かく書いてあるけど、そんなの見てる暇ない・・・
 とりあえずランクだけ確認・・・
 ランクB・・・・
 ウィザードがランクBだったから・・・・
 魔獣使いとしては強い方だ・・・

「こいつら、強いよ。気を抜くなよ!」
 沙耶香さんが緊張気味に言う・・・・
 戦闘モード・・・・
「うん・・・・」
 沙耶香さんがカマキリに・・・
 ゴリラに愛莉さんが対峙する・・・・

 そしたら・・・・
 わたしは?
 必然的に中央の大ムカデの前に・・・・
 待ってよ・・・
 こんなの・・・・
 わたし・・・虫・・・めっちゃ苦手だし・・・・
 特に足の多いの・・・

 わさわさと動く足を見てるだけで、めまいがする。

 でも、カメラがわたしに構えられると、そんなことは言ってられない・・・
 練習したポーズを作る・・・・
 ロッドで宙に円を描く、7つの色とりどりの玉が現れる。
 上半身を起こして、攻撃の機会をうかがう大ムカデの前に対峙する。
 やっぱ脚が多いのダメェ・・・
 逃げ出したい気分を必死で抑える。

「レインボーシュート!」
 空間に浮いている玉がひとつづつムカデに向かって飛び出す。
 赤・青・黄・橙・紫・緑・ピンク
 そう、玉は弾丸となって敵を襲う。
 それもわたしの思ったとおりの弾道を描く。
 わたしの一番初歩的な技。
 とりあえず、相手を確かめる時にこれを使う。

 でも、小さな玉はすべて弾き飛ばされる。
 ムカデの身体は固い鎧みたいになっているみたい・・・
 なんのダメージも受けずにわたしを見下ろすムカデ・・・・

 そういえば、魔獣学の講義でやったことある。
 昆虫系の魔獣って基本的にAランクに位置づけられる。
 知能以外の部分、動きの早さ・パワーどれをとっても最高の部類に位置する。
 それだけじゃなくて、鈍いところも武器。
 脚の一本くらいとれても、戦闘意欲を失わないらしい。

 最初からこんなのに当たっちゃうなんて。
 それも、わたし虫が苦手だし。
 でも、わたしはラブウィッチーズの一員。
 逃げるわけにはいかない。

 ムカデがいきなり攻撃をしてくる。
 大きな身体を倒して、わたしを押しつぶしにくる。
 速い。
 でも、わたしもスピードには自信がある。
 横転して避ける。

 すぐに次の一撃・・・
 それもよけられる。
 この程度なら大丈夫。
 
 隣では先輩たちの戦いも始まっている。
 足をひっぱるわけにはいかない。
 ぎゅっと唇をかみ締める。

 わたしのまわりを回りだす玉・・・・
 そう必殺技しかない。
「レインボーイリュージョン!」
 そう、玉を刃に変えて切り刻む。
 多分、身体の節の部分は弱いはず。
 
 色とりどりの玉が楕円形の軌跡を残して、ムカデの節にぶつかる・・・・
 そう、シュミレーションではゴーレムでも切り裂いた刃・・・・

 これで終わり。
 わたしはポーズを決める。

 でも、すべての玉ははじき返される。

 どうして?

 一瞬、呆然とする。
 その後ろにムカデのしっぽがわたしを捉えようとしのびよっているのも知らずに。

05

05
「なかなかやるわねっ」
 大金槌を肩に担ぐ愛莉さん。
 肩で大きく息をしている。
「まったく、バカのひとつ覚えみたいに。」
 すごいスピードの金槌をすべてかわしきった獣人の後ろで中年の男があきれた表情をする。
「まったく、素早いわねっ。ちょっとは止まりなさいよっ。」
 サロペットの肩紐をひとつ外した服・・・
 あくまで、モデルっぽくアクティブな格好・・・・
 ウィッチーズのファンションリーダー的な存在・・・・
 
 獣人の動くままに金槌を振り回す・・・・
 これじゃあ、いつまでたっても終わらないよ。
 さすがランクB・・・・
 シュミレーションとは全然違う・・・
 
 でも、向こうも踏み出せないのは確か・・・・
 逃げながらも愛莉さんの隙を窺っている。

 男の指示も的確。
 戦い慣れしているって感じだ。
 
 しかし、だんだん表情が険しくなる。
 魔獣の方も、余裕でにげまわっていたのに、ギリギリで避ける程度になる。
 普通、大金槌を振り回しているほうが、つかれるのに・・・
 だんだん、スピードが速くなっていく。
 その上、金槌はだんだん長く大きくなっていくみたい。
 そう、DVDで見たことあるけど、愛莉さんは進化する武器の使い手・・・
 
「悪魔の鉄槌!」
 愛莉さんは、おもいっきり金槌を振り下ろす・・・・
 逃げる魔獣・・・・
 でも、その魔獣を空から大きな鉄の塊が押しつぶした。

「粉砕完了っ」
 愛莉さんはポーズを取る。
 現実の魔獣もコアを潰されれば消える・・・・
 コアどころか身体ごと潰されたって感じだ。
 魔獣は魂みたいに魔獣使いの身体に戻る。

 魔獣を操っていた男はその場に倒れこむ・・・・
 放心状態で・・・
 
 そう、魔獣を壊されても術者は肉体的なダメージは受けない・・・
 でも、精神的に大きなダメージを受ける・・・・
 普通は気絶するらしい・・・・
 男はかろうじて意識を持っている・・・
 でも、身体は動かないみたい・・・・

 サポートの人が彼に集まり手錠を掛け確保する。
 このまま逮捕ってことになるみたい・・・・

 わたしは敵に注意しながら沙耶香さんの方に目をやる・・・・

 大きなカマキリと対峙する沙耶香さん。
 でも、冷たい感じさえする表情もいつものまま・・・・
 長い鞭を自由自在に振る・・・・
 大丈夫・・・・
 沙耶香さんの技ってウィッチーズでも最強だから・・・・
 さっきから鞭を受けてもカマキリはビクともしない・・・・
 まるでハエを追い払うように鎌を動かすだけ・・・・
 そして時々、鋭い動きで鎌を沙耶香さんに振り下ろす・・・・
 ヒラリとかわす沙耶香さん・・・・
 こっちも余裕だ。

「このままじゃ終わらないね。仕方ないわ」
 沙耶香さんが円を描くように鞭を振る・・・・
 そこに黒い玉が生じる・・・・・
 ゆっくりしたスピードでカマキリに向かう・・・・・
 そう、沙耶香さんの必殺技「ブラックホール」・・・・
 周りのなんでも飲み込む空間を作り出す能力。

 だんだん大きくなっていく黒い玉・・・・・
 周りの空間を吸い込んでるんだ・・・・
 その動きにしたがって、地面のものが浮かび上がり吸い込まれていく・・・・
 沙耶香さんは鞭でその動きをコントロールするだけ・・・・
 カマキリの動きが止まる・・・・
 必死で地面を踏みしめ吸い込まれるのを防ぐ・・・・
 でも、もう無理みたい・・・・
 地面から引き剥がされるように巨体が浮き上がる・・・・・
 そのまま、黒い玉に向かって吸い込まれていく・・・・
 信じられないような力・・・・
 直径1メートルくらいの玉に3メートルはある巨大な昆虫が吸い込まれていく・・・・
 そして、後には魔獣をコントロールしていた男だけが残る・・・・
 恐怖の表情で座り込んでいるだけ・・・・
 そう、このまま行けば男まで吸い込んでしまう・・・・
 宇宙空間とつながっているとかいう噂もあるけど・・・・
 吸い込まれたら、たぶん死んでしまう・・・・・

 早く消さないと・・・・
 でも、沙耶香さんは笑っているだけ・・・・
 だんだんと大きくなる黒い宇宙・・・・
 男は恐怖の表情を浮かべるだけしかできない。
 殺しちゃうよ。

 わたしが目を閉じようとした瞬間・・・・
 沙耶香さんが素早く鞭を振る・・・・
 一瞬で閉じる漆黒の空間・・・・
 そして残されたのは精神を破壊された男だけだった。


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06
 わたしの身体が一瞬で後ろから捉えられる・・・・
 そう、沙耶香さんの方に気をとられた隙に、
 背後から迫っていたムカデの尻尾・・・・
 それに巻きつかれたのだ。
 やばいっ・・・・
 そう思ったけど、もう遅い・・・・
 沙耶香さんと愛莉さんの方を見る・・・・・
 仕方ないねって顔・・・・
 でも、助けようとはしない・・・・
 2人で何かしゃべってるだけ。

 わたしはむちゃくちゃに7色の玉をムカデに当てる・・・・
 でも、固い身体にはぜんぜん通じない・・・・
 わたしを掴む力が強くなり、大きく上に持ち上げられる・・・・
 足をバタバタさせるだけ・・・・

 その背後に鎧を纏った漆黒の武者が控える・・・
 それを操る長身の男。
 時代遅れの黒いマントを羽織っている・・・・
 その中から鋭い目が光る・・・・
 この人・・・・・
 他の人たちと何か違う・・・・
 30代くらいだけど、けっこうイケメンの部類・・・
 そして、他の人は欲望に紛れた目をしている。
 でも、この人は違う・・・・
 うまくいえないけど、そんなのを超越した目・・・・
 なにか懐かしい感じさえする・・・・
 その男が前に手を突き出す・・・・
 わたしの方へ・・・・・

 何・・・・・
 手のひらが熱い・・・・
 その手の平を見ようとする。
 
 そこから飛び出す黒い鉄球・・・・
 そう、こんな玉が出るのは初めてだった。
 いつも7個まで・・・・
 黄・橙・赤・緑・紫・青・ピンク
 
 男はわたしを見てうなづく・・・・

 黒い玉・・・・
 どんな意味があるの?
 1つくらい増えたところで意味ないのに・・・・

 でも、ムカデはわたしを捕らえたまま上下に振る・・・・
 地面に叩きつける寸前で持ち上げる・・・・

「ハハ・・・そう、美月ちゃんをこっちへ渡すんだ。傷つけないようにな。」
 ウィザードが魔獣使いに指示をだす。
 ムカデの尻尾はわたしをウィザードの元に連れて行く。
 だめっ。
 何とかしないと。

「まぁ、仕方なないね。愛莉」
「そうですね。沙耶香さん」
 2人がこっちに向かおうとする。
 その前に鎧武者が立ちふさがる。
 やっぱ敵なの。あの人。

 わたしは黒い玉を振り回す・・・・
 いけーーーっ。
 たぶん効かないと思うけど・・・・
 ムカデの目に向けて精神を集中する。
 黒い玉はすごいスピードで飛び出す・・・・
 ムカデの目に向けて・・・・
 でも、素早い動きでくねると頭で跳ね返そうとする。
 そう、目以外に当たったとこで効かないと思う。

 でも、予想に反して黒い玉はムカデの装甲を貫く・・・・
 えっ・・・・
 そのまま、また目に向けて飛び出す・・・・
 逃げても別の部分に当たりそこを貫く玉・・・・

 ムカデはそれに気をとられ、わたしを放す・・・
 かなり高いところで離されるわたし・・・・
 でも、こういうのは訓練している。
 猫のように回転して地面に下りる。

 そのままロッドを振る・・・・
「レインボーイリュージョン」
 わたしの周りを8個の玉が回り始める・・・・
 そのまま射出する。
 たぶん、光の玉の中では黒い玉は見分けにくいはず。
 黒い玉は目に向けて・・・
 他の玉は顔全体に向けて・・・・・
 
 黒い玉がムカデの目を捉える・・・・
 横から両目を貫く・・・・
 大きくうねる長い身体・・・・
 その身体が崩れていく・・・・
 そう、コアを捕らえたんだ・・・・

 気絶した魔獣使いをスタッフが捕らえる。
 とりあえず、戦闘終了・・・・
 他の人みたいにカッコよくないけど。
 なんとかって感じ・・・・

 でも、愛莉さんの声・・・・
「ウィザードを倒して!」
 後ろを振り返る。
 愛莉さんと沙耶香さんは鎧武者に足止めされている。

 作戦とは違うけど・・・・
 わたしは、ウィザードの方に駆け出した。


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 愛莉さんが金槌を振り回す・・・・
 だんだん大きく長くなっていく鉄槌・・・・
 それと動きも速くなっていく。
 でも、鎧武者は避け続ける・・・・
 それも、かわすとかいうより瞬間移動するっていうのが正確かも・・・・
 消えては他のところに現れる・・・・
 まるで、もぐらたたき・・・・

「すばしいっこいねっ。この魔獣・・・」
「魔獣?」
 マントの男は愛莉さんにたずねる。
「そう、そいつ。逃げ回るしか能がないの?」
「そいつ・・・あぁ・・・黒騎士ランスロットことか?」
「そう、そいつ」
「魔獣ではない。わたしたちは彼のことを魔神とよんでいる。」
「逃げるだけの魔神ね。時間を稼ぐのにちょうどいいわね。」
 挑発する愛莉さん。
 でも、息が上がっている。
「逃げるだけではない。」
 魔神の動きが止まる。
 剣を抜く魔神。
 愛莉さんの挑発成功かも。
 力勝負に持ち込む作戦だ。
 愛莉さんは鉄槌を思いっきり振り下ろす。
 粉砕っ・・・・
 そう見えただけ・・・・
 黒い魔神は剣の切っ先で鉄槌を止めている・・・・
 鉄槌にありったけの力を込める愛莉さん。
 黒騎士は軽々と受け止めてる感じ・・・
 そして、鉄槌に亀裂が走る・・・・
 粉々に砕け散る鉄槌・・・・
 粉砕は愛莉さんの方・・・・
 その場にうずくまる愛莉さん・・・・
 そう、魔獣を壊された魔獣使いと同様に・・・・

「大丈夫?」
 愛莉さんをかばうように立ちはだかる沙耶香さん・・・・
「あんまり、大丈夫じゃない」
「休んでなよ。すぐに片をつけるから」
 そう、ブラックホール・・・
 あれなら、いくら強くても関係ない・・・・

 鞭を振ると黒い空間が現れる・・・・
 バチバチと電気を纏いながら飛ぶ黒い球体・・・・
 でも、あの瞬間移動を捕まえられるの?
 
 わたしの想像に反して、鋼鉄の騎士はじっと動かない・・・・
 剣を構えてブラックホールを待っている・・・

「吸い込んじゃうよ。逃げても無駄だけど」
 鞭を振って左右に球体を揺らせる・・・・
 球体は当たる必要がない。
 近くに届けば、すべてを吸い込んでしまう。
 少しくらい逃げても意味がない。
 それにだんだんと大きくなっていき、吸い込む力は増していく。
 まさに最強無敵の技。

「我らに切れぬものはなし・・・」
 マントの男が言う。
「なに?」
 沙耶香さんの顔に動揺が走る。
 騎士にブラックホールが近づいた瞬間。
 騎士は剣を振り下ろす。
 ブラックホールが真っ二つに割れる・・・・
「友の剣は空間さえ切り裂く。」
 次に左右に払われる剣・・・・
 ブラックホールは4つに裂かれる・・・・
 そのまま空間は閉じていく・・・・
「くっ・・・」
 その場で立ちすくむ沙耶香さん・・・・
 でも立っているのがやっとって感じ・・・・

 強すぎる・・・・
 でも、黒い騎士はそれ以上の深追いはしない・・・・
 愛莉さんと沙耶香さんの前に立ちふさがるだけ・・・・

「まだ、仕事は終わっていない。」

 次はわたし???
 あの黒い玉が通じるの?
 沙耶香さんでも勝てないのに・・・・

「そうですよ。先生。この小娘を捕らえてください。先ほどの謝礼以外にボーナスも払いますから。」
 強い味方を得てテンションがあがるウィザード・・・・

「謝礼?これのことか?」
 懐からお金を取り出すマントの男・・・・
 それを空に投げる・・・・
 風にお札が舞う・・・・

「ふん、しかし、小娘一人だ。わたしが特別に相手をしてやろう」
 宙を指で指す電人桂木・・・・
 それを振り下ろすと、その動きにあわせて雷が落ちる・・・・
 わたしはそれを避ける・・・・
 次のいかづちがわたしを襲う・・・・
 こいつ当てるつもりはないの?
 こんな攻撃でわたしを倒せると思ってるの?
 軽々と雷をよける・・・・
 たぶん、遊んでいるんだ・・・・
 桂木の顔に薄ら笑いさえ浮かんでいる・・・・

 わたしはよけながら光球を呼び出す・・・・
 男が手を振り下ろすと、わたしの出した玉を雷がつつむ・・・・
 こんどの雷はその前と違って持続している。
 光の玉を動かせない・・・・
 あの黒い球も・・・・

「フフフ・・・・まだまだだな。あいつら2人がいないと軽いものだ。」
 こいつこんなに強かったんだ。
 DVDで見たときは単なるやられ役って思ってたけど・・・・
 自分の力のなさがくやしい・・・・

「じゃあ、軽く気絶してもらおうか」
 今度は本気の雷、スピードも半端じゃない・・・・
 だめっ、やられる・・・・
 
 そのとたん黄色い球がわたしの上に飛んでくる・・・・
 雷を受ける黄色い球・・・・
 他の球は野球のボールくらいなのに、
 バスケットボールくらいになってる。

「な・・・なにっ・・・・」
 ウィザードは狂ったようにわたしに雷を落とし続ける・・・・
 それを全部黄色い球が受け止める・・・・
 そのたびに大きくなる球・・・・
 この球は雷を吸収するんだ。

 よしっ、いけるっ・・・
 わたしは立ち上がる・・・・

 そう黄色い球で守りながら、体術で奴を倒す。
 これしかない・・・・
 たぶん、あいつ格闘とか弱いはず。

 わたしは桂木に向かって駆け出す・・・・

「フフ・・・こういうのもあるんだがな」
 男は懐から銃を取り出す・・・・
 うそっ・・・・
 わたしは足を止める・・・・

「手荒なまねはしたくないんだがな。足ぐらいなら打ち抜くぞ。」
 汚い奴・・・・
 その時、心の中で声が聞こえる・・・・
『ぼくを解放して・・・・』
 えっ??????
 誰っ?????
『ぼくを解放して・・・早く・・・』
 頭上で黄色い玉が左右に小さく揺れる。
 あなた・・・なの?
 うなづくように縦に揺れる玉・・・・

「さあ、こっちに来るんだ」
 勝ち誇ったようなウィザード。
「解放?」
『うん、心の中で祈るんだ。魔神トールを解放するって』
「魔神・・・トール・・・・」
「何をごちゃごちゃ言ってるんだ。恐怖で気でもふれたのかなぁ」
 わたしは桂木に向かってゆっくりと歩く。
『わかんない・・・でも・・・・試すくらいなら・・・・心の中で願うだけ・・・』
『うん・・・届いてるよ・・・・』
 わたしの心の声に反応する声。
 わたしはコクンと首を縦に振って微笑む。
 じっとウィザードを見上げる。
『魔神トールを解放する!!』
 黄色い球が弾ける。
 どんな魔神が現れるの?

 目の前に金髪の男の子・・・・・
 10歳くらい・・・・
 この子が????
 想像と違う魔神・・・・

「あとは任せといて」
 男の子は振り向いてウィンクする。
 キレイな顔・・・・
「なんだ。このガキは?」
 ウィザードは目を丸くしている。
「ガキは嫌いなんだよっ」
 すぐに怒りの表情に戻って、雷を男の子に落とす。
 でも、男の子はそれを手のひらで受け止める。
「ふぅん。まあまあじゃん。両手で雷を操れるなんてね」
 余裕の表情・・・・・
「でも、これくらいはしないとね」
 男の子が天を指差す。
 雷鳴・・・・・
 雲が光って、空から本当の雷が落ちる。
 ウィザードに向かって・・・・・
 ウィザードはうろたえて場所を離れる・・・・
 すごい音・・・・
 ウィザードがさっきいた辺りに大きなクレーターができる・・・・
「久しぶりだからね。外しちゃった」
 頭を掻く少年・・・・
「このガキっ」
 拳銃を抜いて男の子に構える。
 あぶないっ。
 雷には強いのかもしれないけど・・・・
 拳銃では。

 銃声・・・・
 
 わたしは男の子に駆け寄る・・・・
 間に合わない・・・・・

 命中する・・・・

 でも男の子は倒れない・・・・

 空間に小さな雷をまとった弾丸が止まっている・・・・

「ぼくにもこれくらいのことできるよ」
 得意そうにわたしを振り返る。
 ほっとするわたし。

 ウィザードは狼狽する。
「こ・・・こいつ・・・邪魔しやがって」
 でも、もう桂木には打つ手がない。
 こいつの技はこれだけ。

 男の子はウィザードを睨んで、天を指差す。
「動いちゃだめだよっ」
 雷鳴・・・・
 そして、空を切り裂くような雷がウィザードに向かう・・・・
 少年の声に直立するウィザード・・・・
 それをかすめるように落ちる雷・・・・
 前髪が燃え眼鏡が弾け飛ぶ・・・・
 後ろに尻餅を付くウィザード・・・・

 それを両脇からスタッフが取り囲む・・・・
 手錠をかけられ、素直にスタッフに従う桂木・・・・

「さてっ。あいつもかたずけるの?」
 わたしを振り向いて男の子はマントの男を指差す。
 片付けるって・・・・
 愛莉さんや沙耶香さんでも歯が立たない人を?
 でも、わかんない・・・・
 どうするかなんて・・・・

 沙耶香さんの方を見る・・・・
 でも、何の指示もしない・・・・

 わたしの方をマントの男が見る・・・・
 なぜか満足そうな笑顔を浮かべて・・・・
 なぜ???

 そして、鎧の騎士と共に消える・・・・
 一瞬で・・・・

「逃げたみたいだね・・・」
 トールがわたしの方を見る・・・・
 サファイアの瞳で・・・・
 そして、わたしはその場に立ち尽くした・・・・
 スタッフに戻るように促されるまで・・・・


08

08
 ワゴンの中・・・・
 もっと張り詰めた空気が流れてるのかなって思っていた。
 でも、普通みたいな雰囲気。
 マントの男に誰一人歯が立たなかった・・・・
 任務は一応成功だけど・・・・
 なんか・・・やったぁ・・って感じはしない・・・
 
 普通に会話する沙耶香さんたち・・・・
 
「何・・考えてるのっ」
 愛莉さんがわたしに話しかける・・・・
 びくっとして現実に戻るわたし・・・

「あぁっ・・・さっきの戦いのこと考えてたなぁ」
 わたしの首に腕を回す・・・・
「えっ・・・うぅん・・・」
「わっかりやすいねっ。この子。でもねっ。あんなの本気だしたら楽勝だよっ」
 負け惜しみ?
「リミッター・・・って知らない?」
 沙耶香さんが笑いながら言う・・・
「リミッター???」
「この子、まだつけられてないみたいだよっ」
「そう、じゃあつけられるかもね」
「うん、最後の技って反則ぽぃもんね」
 どういうこと???
 わたしの頭の周りに?が飛び交う。
「わかんないみたいだから、説明してやりなよ。愛莉」
「うん、わたしたちの力って封印されてるの。
 たとえばね。
 沙耶香さんのブラックホールが美月のボールくらいのスピードだったら?」
「無敵だと思う・・・・」
「そう、でも戦いを見てて面白くないでしょ」
「わたしも・・・そう・・・」
「たぶん・・・スピードが10分の1くらいにされてると思う・・・」
 両腕にはめたシルバーのブレスレットをわたしの前に出す・・・
 沙耶香さんはゴールドのブレスレットをわたしに見せて、ニコッって笑う・・・・
 そういうことかっ・・・・

「でも、それって危険すぎじゃないですか?」
 そう、敵がすごい強かったら・・・・
「そうかもねっ。でも、絶対に負けちゃならないの。わたしたちはラブウィッチーズだからねっ」
「愛莉の言うのも本当。わたしたちは負けられないの。それと、1チームに一人『影』がついてるの」
「わたしも見たことないけどねっ。本当にやばくなったら出てくるらしいよ。それで、半端じゃなく強いって話。でもこのチームにはいらないけど。わたしと沙耶香さんがいるし。美月だってなかなかじゃん。たぶん、最強のユニットだよっ」
 沙耶香さんも微笑みながらうなづく。
 なんか照れくさいっていうか。嬉しい。
 愛莉さんや沙耶香さんに認められたみたいで。
 わたし、このユニットでよかったかも。



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