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心解脱

 観は、真実の真相を知るための方法である。これ以外の方法によって真実の真相を知ることはできない。それゆえに、観は修行者が当然行うべき重要な修行の一つだと言われる。そして、公案は観の一手段となり得るものである。ただし、公案は観そのものではない。公案に取り組むことが観(=止観)になる場合があるということである。その場合に限り、公案に取り組むこともまた真実の真相を知る手段となるのである。

 ところで、真実の真相を知ることは何の役に立つのであろうか。結論を先に言えば、それは名称(nama)からの解脱に役立つのである。名称(nama)とは、ユング心理学の用語を借りれば個人的無意識のことであると考えて大過ない。この名称(nama)からの解脱を果たした人を、「心解脱者」と呼ぶ。

 心解脱者は、名称(nama)作用によって起こる世間のさまざまなことがらに翻弄されることがなくなり、人間関係にまつわる苦悩から脱れた境地である。なお、これは完全な解脱ではないが、一定の条件下において解脱と同じ境地と見なすことができるものであり、輪廻を脱しているという点において解脱の一種であると認められるものである。よって、心解脱者を不還とも呼ぶ。

 心解脱者は、自分が解脱したという明確な覚知が無いかも知れない。しかしながら、心解脱者が社会生活を送ると、自分が世間のさまざまな煩労からすでに解放されていることを実感するであろう。経済的なことについても、人間関係においても、自分を縛りつけるものが基本的に無くなっていることを事あるたびに知ることになるからである。

 また、心解脱者にもいわゆる好相が現れることがあるようである。カッシー長老の報告によれば、肉髻を生じつつあると言う。もちろん、こんなものは解脱の証とはならない。大人になると髭が生えるようなものに過ぎない。それでも、自分が根底において苦を大きく減じたことをいろいろな形で実感することになるのは間違いないことである。心解脱者は、何があろうとも、何が起きようとも、揺らぐことのない堅固な心を獲得する。これは一つの安らぎである。

 このようなことから、心解脱は覚りの一つの階梯であると知られるのである。


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認定書の例(ぼかしあり)


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通過できない解答の事例

 公案は、基本的に正解を明かせない。そこで、ここでは通過できない解答の事例を挙げておく。

事例1) 所持金が一円
 所持金が、一円しかない。それを相手に差し上げるという誤解答例。この場合の問題点は、通常あり得ないシチュエーションであるという点である。所持金が一円しかないのに、それを誰かに差し上げるシチュエーションなど現実的ではないからである。

事例2) 相手の所持金が一円足りないだけ
 買おうと思った品の値段に対して、その人は一円足りなかった。それを補填してあげるという誤解答例。この場合の問題点は、相手がそのことを感謝するという点である。相手に感謝されるのでは、公案の正解とはならない。

事例3) 偶然の遭遇
 相手に一円を差し上げるそのシチュエーションが、偶然の遭遇である場合。公案のシチュエーションには、必然性がなければならない。

事例4) 誰でもよかった
 相手に一円を差し上げるのが、私でなくても誰でもよかったという場合。公案は、傍観者であってはならない。必ず自分がその当事者でなければならないのである。

事例5) いつでもよかった
 相手に一円を差し上げるのが、今でなくてもいつでもよい、つまり別の機会に譲ってもよかったという場合。公案の答えは、たった今、この一瞬における咄嗟の行為でなければならないのである。

事例6) 相手が最初から平静
 相手に一円を差し上げるとき、相手は動揺していなければならない。その動揺を静め、かつその帰結が平静でなければならない。相手が歓喜して、それによって動揺を来すようでは話にならない。そのときも、その後も、相手にいかなる危険を生じせしめてはならないのである。

事例7) 自分が動揺する
 相手に一円を差し上げた結果、自分自身が動揺してしまうのでは話にならない。その行為は、喜怒哀楽を超えたもので、お涙頂戴では無く、自分自身に完全な静寂をもたらし、平静さを取り戻す高貴なものでなければならない。


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奥付



『一円の公案』


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著者 : SRKWブッダ
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/buddha1219/profile


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販売価格480円(税込)
『覚りの境地』 』 『 『感興句』 』 『 『観』 』 『 『功徳』 』 『 『信仰』 』 『 『解脱(げだつ)』 』 『 『仏道の真実』 』 『 覚りの境地(2019改訂版) 』 を購入した方は 200円(税込)

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