目次
はじめに
嶋戸悠祐
自己紹介 嶋戸悠祐
六つの檻 1
六つの檻 2
六つの檻 3
六つの檻 4
六つの檻 5
六つの檻 6
六つの檻 7
六つの檻 8
六つの檻 9
齊藤想(サイトー)
自己紹介 齊藤 想(サイトー)
『オオカミと少年』  イソップ寓話 『嘘を付く子供』(『オオカミ少年』) より
『アリとキリギリス』  イソップ寓話『アリとキリギリス』より
『北風と太陽』  イソップ寓話『北風と太陽』より
カミツキレイニー
自己紹介 カミツキレイニー
【赤ずきん喫茶】
【うんこの話】
【冬オズ】
いづみみなみ
自己紹介 いづみみなみ
赤ずきんちゃん 1
赤ずきんちゃん 2
赤ずきんちゃん 3
赤ずきんちゃん 4
赤ずきんちゃん 5
まるたん
自己紹介 まるたん
八川克也
自己紹介 八川克也
ダンシング・リム 1
ダンシング・リム 2
ダンシング・リム 3
ダンシング・リム 4
ダンシング・リム 5
井上裕之
自己紹介 井上裕之
R大学民俗舞踊愛好部設立前史 1
R大学民俗舞踊愛好部設立前史 2
R大学民俗舞踊愛好部設立前史 3
R大学民俗舞踊愛好部設立前史 4
R大学民俗舞踊愛好部設立前史 5
R大学民俗舞踊愛好部設立前史 6
平渡敏
自己紹介 平渡敏
『アンデルセン童話による3つの変奏』
『北風と太陽』
『本』
一田和樹
自己紹介 一田和樹
昏倒少女 1
昏倒少女 2
昏倒少女 3

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赤ずきんちゃん 4

ひたすら歩いて数十分、やっと小さなレンガ造りの家が見えた。
扉を開ける。
中に入る。
ベットが、人間一人分膨らんでいて―――――そこに、干からびた死体があった。
当然だ。
こんな辺鄙なところでろくな食料もなしに、老婆が一人暮らしていける道理がない。わかっていたことだった。
「狼」に荒らされた形跡がないだけでも奇跡に近い。

 

こみあげてくる嗚咽をこらえながら、おばあちゃんに教えられたとおりに、生き残っていた鳩を籠から出す。
おばあちゃんが可愛がっていた鳩は、久しぶりでも私を覚えていてくれたようだった。
多めに餌をもらっていたのか――後々「おつかい」に出される私達兄弟のために、鳩を残しておいてくれたに違いない。
バスケットの奥から手紙を出す。
村の偉い大人達がしてきたことを、事細かに記した手紙。
村の偉い連中よりも、もっともっと偉い人がいる場所に、鳩は手紙を運んでいってくれるという。
偉い人達というのは、責任というものを果たさないと、死刑になることがあるのだ、とおばあちゃんは言っていた。
もし運がよければ、この国の偉い人が、村の窮地を救ってくれるかもしれない。
だからもしお前がここに「おつかい」にくることがあれば、こうして手紙を出すのだよと、おばあちゃんはそうも言った。
鳩の足に手紙をくくりつけて、空に離してやる。


そうして、私は泣きながらおばあちゃんの死体を家の裏に埋葬した。


赤ずきんちゃん 5

涙が枯れて、嗚咽が底をついたとき、私はしばらくはこの家を拠点に「狼」たちを狩ることに決めた。
食料は、バスケットの中にあるパンと葡萄だけだから、大切に食べなければいけない。
近くを流れる川で、魚を釣ることは出来るだろうか?
危険な森で小動物を捕まえて火で炙ることは?
やるしかない。
私は生きる。
搾取され、打ち捨てられて、ただ死んでいくだけの運命なのだとしても―――
せめて、命の灯火が消える前に、運命の喉元を噛み千切ってやる。

 

 

決意を新たにしていると、とんとん、と扉が叩かれた。
「お嬢さん、こんな場所までおつかいかい?
ここは危ないよ。
おじさんが家まで送っていってあげよう。
さあ、出ておいで」

ああ―――早速次の「狼」だ。
埋葬している様子を遠くから見ていたのだろうか?
一日で二匹も「狼」を狩れるなんて、なんてラッキーなのかしら!
「ありがとう、親切なおじさま。今行くわ」
そう言うと、私は銃を持ちゆっくりと扉を開けて―――

 

 

 


気付くと、白いはずの頭巾が、返り血で赤く染まっていた。

 

 

 


 


自己紹介 まるたん

 

初めまして、まるたんと申します。
普段はこんな感じの絵を描いております。
ハッカージャパン(白夜書房・刊)にて、この『オーブンレンジは振り向かない』の作画をしております。
原作は一田和樹先生。今回はその縁もあってお誘いいただきました。ありがとうございました。
下記HPにて3話まで無料で掲載しております。よろしければご覧ください。

 

『オーブンレンジは振り向かない』

 

 

久しぶりのリアルタッチな絵が描けました。
また機会があれば色々と描かせていただけたらと思います。

 

STUDIO M


自己紹介 八川克也

 闘えない虚弱プログラマー、八川克也(やつかわかつや)です。
 最近三人目が産まれ、てんてこ舞いの日々を送っております。
 前回、一田さんに誘われて「セラエノ」に参加させていただいたつながりで、そのまま今回の「セラエノ2」にも参加させていただきました。SFマガジンのリーダーズストーリィに投稿していた、ということからもわかるように、SF好きです。
 最近は「子育てSF」に興味があります。今作った言葉ですが。何かしらネタにならないかなと考える日々です。子供にあれだけ時間を割いているのにもったいない! と思うのです。
 それでは、楽しんでいただけたなら幸いです。

 RoomNumber "i"

 


ダンシング・リム 1

 病室のベッドで目覚めた時、顔に包帯が巻かれていないことに気が付き、蓮華はほっとした。次の競技会までまだ三か月以上ある。顔はなんだかんだ言っても重要なファクターだ。幸い、世間並み以上の顔を持っていて、マスコミにも徐々に取り上げられ始めている。
 それから手を動かし、足を動かし――違和感を感じた。
「あら、目が覚めた?」
 蓮華の母親が入ってきた。手には花瓶を持っている。
「お母さん、なんか足が変なの」
 母親の、台に花瓶を置く手が止まった。
「もしかして、ひどいケガだった?」
 母親は、蓮華に背中を向けたままうなずく。
「……そっか」
 蓮華はため息をついた。なんとなく予想はしていた。
「リハビリ、しなくちゃね。どのくらいかかるかなあ。次の競技会はダメでも、その次くらいは出られるかな」
 母親は、まだ背中を向けたままだ。なんとなくいやな予感を抱いたまま、努めて明るく蓮華は続ける。
「大丈夫、私頑張るから。競技ダンスの世界で一位を取るって決めたんだもん、簡単にはあきらめないからね」
「……ごめんね」
 振り向いた母親は泣いていた。そのままベットの蓮華に覆いかぶさるようにして号泣する。
「ごめんね、本当にごめんね。もうダンスなんて」
「ど、どうしたの、お母さん」
「足は――切るしかなかったの」
「切るって――え?」
「ごめんね、ごめんねぇ……」
 蓮華にはまだ何が何だかわからなかった。足の感触もまだあった。足首や指を動かす――ふわふわした、実感のない反応。
(幻肢――とか言ったっけ、こういうの?)
 泣き止まない母親の背中に手を置いて、蓮華はぼんやりと考えていた。

 

 ビジネス的な意味合いがまったくないといえば嘘になる。仮にも大山は義肢メーカー4U社のソリューション課長だ。
 それでもこの商売の基本は誰かの役に立ちたいという感情。そうでなければ義肢メーカーの、それも個別対応を強いられるソリューション課など成り立たない。
 WEBの片隅に乗った小さな記事を元に、大山は情報を集めた。
 十七歳の蓮華は競技ダンス界で将来を期待された選手の一人だった。学生大会ならいくつもメダルを取り、インターナショナル大会でも確実にファイナリストになる実力を持つ。その彼女が、交通事故で足を失った。
 幸いというべきか不幸というべきか、全身としては恐ろしく無傷で、しかしトラックに巻き込まれた足――右足は膝から下、左足もすねの中ほどから先が失われた。
 通常の自律義肢で歩けるようになるのは簡単だ。しかし彼女はダンサーだ。4U社で開発中の義肢ならどうだろうか、と大山は考えた。彼女を手助けすることが出来るのではないか。
 自律制御型義肢――ACAIリムは、ナノレベルでの神経接続と、学習チップによる筋電フィードバックで完璧な動作を再現するはずだ。ダンスにも耐えうる、というのがエンジニアたちの見解だった。
 本人さえ望めば、これを彼女に提供したい。彼女は以前と変わらない動きを取り戻すことができ、4U社はその実績を大きく広報できる。
 ソリューション課は軽いフットワークが売りだ。すぐさま、大山はエンジニアの水村とともに彼女の病室を訪ねた。
「われわれは、最新の技術を蓮華さんに提供できます」
 ベッドの体を起こした蓮華の前で、スレートPCの画面を示しながら、大山は熱心に説明した。
「こちらがその概念図です。生体電流を得るための結合手術のみ必要となりますが――」
「いいの、いくつかのメーカーさんから同じ話を聞きました」
 蓮華はあきらめたように首を振った。
「歩けるようになるのは知ってるわ。でも私がしたいのはダンス。どこのメーカーも……」
「できます!」
 水村が蓮華の言葉をさえぎるように力強く答えた。蓮華はえっ、というように目を見開いた。
「私たちのACAIリムはそれを可能にします。私たちはあなたに踊ってほしいと思ってこちらのシステムを説明させていただいています」



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