目次
はじめに
嶋戸悠祐
自己紹介 嶋戸悠祐
六つの檻 1
六つの檻 2
六つの檻 3
六つの檻 4
六つの檻 5
六つの檻 6
六つの檻 7
六つの檻 8
六つの檻 9
齊藤想(サイトー)
自己紹介 齊藤 想(サイトー)
『オオカミと少年』  イソップ寓話 『嘘を付く子供』(『オオカミ少年』) より
『アリとキリギリス』  イソップ寓話『アリとキリギリス』より
『北風と太陽』  イソップ寓話『北風と太陽』より
カミツキレイニー
自己紹介 カミツキレイニー
【赤ずきん喫茶】
【うんこの話】
【冬オズ】
いづみみなみ
自己紹介 いづみみなみ
赤ずきんちゃん 1
赤ずきんちゃん 2
赤ずきんちゃん 3
赤ずきんちゃん 4
赤ずきんちゃん 5
まるたん
自己紹介 まるたん
八川克也
自己紹介 八川克也
ダンシング・リム 1
ダンシング・リム 2
ダンシング・リム 3
ダンシング・リム 4
ダンシング・リム 5
井上裕之
自己紹介 井上裕之
R大学民俗舞踊愛好部設立前史 1
R大学民俗舞踊愛好部設立前史 2
R大学民俗舞踊愛好部設立前史 3
R大学民俗舞踊愛好部設立前史 4
R大学民俗舞踊愛好部設立前史 5
R大学民俗舞踊愛好部設立前史 6
平渡敏
自己紹介 平渡敏
『アンデルセン童話による3つの変奏』
『北風と太陽』
『本』
一田和樹
自己紹介 一田和樹
昏倒少女 1
昏倒少女 2
昏倒少女 3

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平渡敏

自己紹介 平渡敏

小説現代ショートショートコンテストなどに挑戦中のアマチュア小説家、平渡敏です。
本職は弁護士で、好きな作家はウィリアム・サローヤン、O・ヘンリーなど。
今回はプロ作家と肩を並べて作品を発表できるということなので、武者震いをしながら作品を仕上げました。
他の方の作品は短編が多そうですので「箸休めもあっていいかな」などと考えて、オチのあるショートショートを中心に選んでみました。
お付き合いのほど、どうぞよろしくお願いいたします。

平渡敏のブログ


『アンデルセン童話による3つの変奏』

第1話 「恐怖~~マッチ売りの少女~~」
 少女が売るマッチを擦ると恐ろしい幻覚が見える。「火が消えたあと、現実が素晴らしく思える」ということで大人気だった。しかし、恐怖というものは長続きしない。人々はより刺激の強いマッチを求め、あまりの恐怖に発狂する人が続出した。(自分のせいで……)と頭を抱え込んだ少女は、耐えきれずに「きゃーっ!」と叫び声をあげた…………ところでマッチの火が消えた。


第2話 「賢者の苦悩~~はだかの王さま~~」
 王さまのきらびやかな行列が目の前を進んでいる。豪華絢爛とはまさにこのことだ。中でも王さまのお召し物の美しさときたら……。その柄といい、色合いといい、たとえようのないほどの素晴らしさではないか。噂に聞いていただけのことはある。私が感極まっていると、突然、子どもの声がした。「王さまは何も着ていないじゃないの」。(えっ?)私が驚いていると皆は口々に言い始めた。「何もお召しになっていない」「王さまは裸だ」……。すると王さまは恥ずかしそうになさいながら、私に声をおかけになった。「おまえにもこの服が見えぬか」。私は村で正直者と目されているからお尋ねになったに違いない。私は困惑した。どうやらご自身も含めて皆が皆、王さまの衣服が見えていないらしい。ならばここで私が見えないと言っても罰を与えられることはなかろう。だが、服が見えると言ってしまえばどうだろう。ご機嫌取り、見栄っ張り……。皆が私を非難する声が聞えるようだった。いや、そのくらいですめばよい。下手をすると魔物扱いだってされかねないだろう。私は静かに答えた。「王さまは裸でございます」


第3話 「白鳥~~みにくいアヒルの子~~」
「こ、これがボク?」湖の水面を見て、ボクは喜びに震えた。そこに映っているのは、まぎれもなく白鳥、あの清楚で真っ白な美しい鳥の姿だった。ボクはとっても幸せだった。ボクはみにくいアヒルではなくて美しい白鳥だったのだ。(そうだ、大空を飛んでみよう)ボクは羽を広げて飛び上がった。しかし、10メートルほどしか飛べずに着水してしまう。(うーん、白鳥になったばっかりだからうまく飛ぶのは難しいな)。「ねえ、君、飛び方を教えてくれないか」ボクは仲間の白鳥に声をかけた。「教えてあげてもいいけど、君たちアヒルは長くは飛べないと思うよ」。「えっ、アヒル? でも、さっき湖に……」。「映っていたのはボクの姿さ」


 (了)


▼ 作品について  △ ▼ △ ▼ △ ▼ △
アンデルセンにリスペクトを込めた3つのパロディ作品です。
実はもっとたくさん作っています。
ボツにした作品はブログで公開していますので、よろしければ読んでみて下さい。

 


『北風と太陽』

 どっどど どどうど どどうど どどう

 

(北風のやつ、調子こいてやがる。最近あいつが人気者になっているみたいじゃないか。ちくしょうめ。大空の主役は俺様だと決まっているのに)
 太陽はどうも気分がよくありません。
「北風くん、クルミやカリンは吹き飛ばせても、旅人のコートは脱がせる事が出来なかったよね」
「いいや、できるさ」
(ケッ、なんて進歩のない奴)「じゃあ勝負しよう」
「よーし」
 北風はぴゅうと吹きました。すると、旅人の前を歩いていた女の子のミニスカートがまくれあがって、パンツのお尻が丸見えになってしまいました。
「きゃあ」
 女の子がスカートの後ろを押さえると、今度は前から風が吹いてまためくれてしまいます。前を押さえるとまたうしろ。見かねた旅人がコートを脱いで、女の子に着せてあげました。
 今度は太陽の番です。女の子がコートを着ているので、そっちを脱がせる事になりました。
 太陽はじりじりと照りつけます。
 旅人を好きになりかけていた女の子は、コートを返すと旅人が行ってしまいそうでしたので、「紫外線が強いみたいだから、もう少しコートを借りていていいですか」と言って、コートを脱ぎませんでした。

 

 北風は気持ちよさそうに「どっどど どどうど どどうど どどう」とうたいながら去っていきました。
 スカートのことは少しかわいそうでしたが、愛が芽生えたのですからよしとしようではありませんか。

(了)

 

▼ 作品について  △ ▼ △ ▼ △ ▼ △
小説を書き始めた頃の作品です。
イソップと宮沢賢治とO・ヘンリーを足して3で割ったら出来上がりました。
シンプルな作品で個人的には気に入っています。


『本』

 ふと気がつくと、あなたの目の前にすてきな本が置かれている。表紙にはアルフォンソ・ミュシャの絵画。あなたは本を開く。人間関係に少し行き詰まってしまった今の現実から離れたくて。すると、目の前に幻想的な世界が広がる。霧にかすんだ向こうの方からバクがあなたを手招きしている。胴体が黒で頭とお尻は白。どうも色が反対のような気もするけれども、それでよかったのかな。それにしたって、案内役はふつうウサギでしょう。あなたはそんなことをブツブツとつぶやきながらバクの方に近付く。バクは「ついておいで」と言わんばかりに、意外なスピードで走っていく。でも、あなたはなぜか全く疲労を感じることなく、バクをどこまでも追いかけることができる。周りには見たこともない植物が嗅いだこともない匂いをまき散らしている。見慣れない風景の中をずいぶんと長い間走った末、バクは深い穴に飛び込んで行く。あなたは「やっぱり」とひとりごちて、バクに続いて飛び込む。長い長い時間が過ぎて、あなたはふさふさした草の上に落っこちる。穴の中ではパーティが行われている。とっても小さな象の鼻の上には、色とりどりのろうそくが明かりを灯している。テッポウウオが天井にぶら下げられた風船を撃つと、割れた風船からキラキラした紙吹雪が舞い散る。頭にダーバンを巻いたハンサムなインド人が一輪車で走り回っている。向こう側ではチンパンジーのグループがラッパを吹き鳴らしている。中近東の音楽だろうか。(あの子たちシンバル以外も演奏できるんだ)あなたは変なところに感心しながら、ふと、子供の頃母親につれていってもらったサーカスを思い出す。(ピエロの衣装が薄汚れていたのよね)。なんだかもの悲しくて楽しむことはできなかったけれども、どこか懐かしい思い出だ。あなたはお肉の焼けた香ばしい匂いに気付く。(そういえばサーカスを見に行ったときにはお母さんとホットドッグを食べたのよね)そんなことを思い出しながら振り向くと、バクが二本足で立って、湯気の立つお皿を配っている。おなかが空いたな、と思うあなたの気持ちを見透かしたように、肉の皿が前に置かれる。けれどもナイフもフォークもないから、あなたは仕方なく手で食べようとするが、熱くてとても持てない。そこにハンサムなインド人がナイフとフォークを持ってきてお肉を切ってくれる。「ありがとう」とナイフを受け取ろうとするあなたの右手をインド人のナイフが切り刻む。あなたの指が先の方からトントントントンという小気味のよいリズムと共に落ちていく。しかし、痛みは全く感じない。「痛くないならまあいいか。インド人すてきだし」あなたはなすがままにされて、右腕をなくしてしまったけれども、インド人に抱かれる。あぁ、これがカーマ・スートラの秘技なのかしら。あなたはめくるめく時間を過ごして、ふと気がつくと、目の前にすてきな本が置かれている。表紙にはアルフォンソ・ミュシャの絵画。あなたは残された左手で本を開くのだろうか。現実からさらに離れるために。

 

(了)


▼ 作品について  △ ▼ △ ▼ △ ▼ △
2人称・改行なしという実験的なスタイルで書いてみた「不思議の国のアリス」のサイドストーリーです。
最近は2人称の小説も珍しくなくて、長編なども見かけますが、かなりの力業にならざるを得ないようです。
掌編は向いていると思うのですが、本作はその形式を活かすことができたのか、少し不安ですがいかがでしょう?