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すれ違う思い

ある南の島に狼と羊たちの住む村がある。

 

狼たちは、どうやって村の羊たちを守ろうか常に考えている。

でも羊たちは、狼に食べられてしまうのではないかといつも怯えている。

 

羊たちを守る為の狼の遠吠えも、

羊たちにとっては、自分たちを食べる前の垂涎を飲み込む行為にしか見えてない。

 

いつも遠くを見つめて警戒する狼

目の前にあるものしか見えない羊たち

 

この村をまもる狼のボス、名はスノー。

 

彼が信頼するのは、リバー。

リバーは優秀なハンターでその腕を買ってスノーがほかの村からつれてきた。

スノーが一番信頼する右腕である。

 

そこへふくろうのハピネスがやってきた。

ハピネスも元は狼であるが、宇宙の使命を受けふくろうの姿に変えられた。

ハピネスは家族を離れその使命のもと、流浪の旅を続ける。

ハピネスは、その幾多の経験から何でも見通す大きな目をしているが、狼のような強い力はない。


出会い

子羊のハッピーも新たにこの村にやってきた。

この村の秩序を維持するクオリーという警備団に入った。

 

ハッピーは新人だからなにもわからない。

だから全てを謙虚に学ぶ立場である。

 

ハッピーはこの村を良く知る羊のアテネとハピネスに守られながら

クオリーの一員として暮らしていたが

ある日、思いつきのままこの村をでる決心をした。

この村を去ることをスノーに伝えた。

 

「私はこんなに頑張っているのにだれもわかってくれない」

「わたしはもっと評価されるべきだわ」

 

評価は始めにあるものでなく、結果に過ぎない。

この娘は何を学んできたのであろうか。

ハピネスは、宇宙の使命とはいえ家族を置き去りにした自分の運命を悔やむだけである。

 

クオリーの仕事は、この国の秩序を守る法の番人であり、司法の最高の機関である。

警備だけでなく法と礼節についても学ばなければならず、

新人ハッピーには学ぶことが多い。

ハッピーは自らクオリーに志願したのである。

本来なら新人がつく仕事ではない。

 

クオリーには志願してもなれない者たちも多くいる

事件

しかし、ハッピーには以前クオリーをしていたとても優秀な鷹のプレシャスを彷彿させるものがあり新人ながら抜擢されたという裏の事情がある。

 

そんな中でハピネスは、きちんとした仕事が身につく前に

『私のことをわかってくれない、評価してくれない』

『わたしに腹いっぱいご飯を食べさせてくれない』からという理由でこの村を去ろうとしていた。

 

それをハピネスが諌めてもう少しの努力と謙虚さが必要と説きハッピーも納得した。

 

ハピネスは見かけの姿こそ違うが記憶も遠のくくらいの遠い昔ハッピーの父親であった。

名前が似ているのもそのせいだ。

 

ハピネスは、『ハッピーはいつか村を象徴するものになる』と見通していた。

 

『私が責任を持ってハッピーを育てるから』とスノーから許しを乞い、わが娘ハッピーを預かった。

 

それから幾日が過ぎこの村に事件が起こった。

失うもの

経験不足のハッピーが、本当は何も知らないのに知ったかぶりの狐から教わったことを

吹聴したことで、隣の町から攻撃を受けたのである。

 

村は、リバーを隣町に派遣した。

リバーは隣町との関係の修復に努力した。

失うものもあった。

 

リバーの判断は決して間違っていなかったのだが、

スノーから見ると思慮不足に見えた。

スノーは、村とハッピーを守る為の奇策に打って出た。

 

村は守られた。

ハッピーも守られた。

 

しかし、リバーはプライドが傷つき村を去っていくことを決断した。

 

ハピネスはスノーから相談をうけた。

 

リバーを失うと村の大きな損失になる。

スノー自体も村人からの信頼を失うことになりかねない。

 

しかし、無理してとめることは、リバーのプライドを更に失墜させるものになる。

 

去ろうというものを強引にとめると代わり失うものがある。

 

宇宙には法則があるからだ。


崩れ去る思い

リバーに気持ちだけはしっかり伝え、判断はリバーに任せるべきだとスノーに伝えた。

 

スノーとリバーはよく話し合いその上で、リバーは去ることを決断した。

リバーのプライドは高潔である。

 

スノーは

 

ハッピーを守ろうとして

 

村とクオリーを守ろうとして

 

リバーを失ってしまった。

 

それからまもなくしてのことだ。

 

ハッピーもこの村を去ると言い出した。

 

『私の気持ちも能力もだれも理解してくれないわ』

『私のことをとても大切にしてくれた昴の元へいく』と言い出した。

やはり同じことの繰り返し。

 

ハピネスがわが娘ハッピーに見出した『村の象徴』としての姿は、

もろくも崩れ去ってしまった。



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