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教えてあげる

 ちょっとした奇跡なら簡単さ。男が指を鳴らすと空から100ドル札が降ってくる。人々は我先にと札に飛びつく。ね? 男は笑う。でも本当の願いは叶わないんだな。おじさんふられたの? まあね。いいこと教えてあげる。うちのママは最初の告白は必ず断るの。死んだパパの時もそうだったわ。

ダンス

 宇宙船は壊れてしまった。もう二度と地球には帰れない。クルー達が絶望の淵に沈んでいた時に一人の日系人が踊り始めた。彼は不思議なステップを踏みながら優雅に手を振り上げる。その姿が余りにも美しかったので一人また一人と真似をし始めた。それがスペース盆踊りの始まりだった。

人間山

 もはや人間の力士は人間山だけだった。ラジコン行司にラジコン親方。観客さえもラジコンだった。人間山は何としても人間の意地を見せたかった。千秋楽結びの一番は優勝決定戦。人間山はラジコン横綱を豪快に投げ飛ばす。人間山は雄叫びを上げる。空にはラジコン座布団が舞っていた。

廃れた街

「ごめんなさい。私は行けない。お父さんをこの街に置いていくわけにはいかないの。どれだけ廃れていてもお父さんにとっては大切な街だから」「おれが受かったら一緒に行くって」「あれは嘘。そうでも言わないと此処に残るって言ったでしょ? あなたみたいに未来のある人が東京なんかにいちゃだめ」

 腐った花が温室を取り囲んでいた。厚い雲から月が顔を覗かすと泥塗れの花々が青白く浮かび上がる。季節感などお構いなしにありとあらゆる花の屍が蘇ってしまったようだ。半分顔の溶けた向日葵がぬめついた葉で温室の扉を開けようとする。私は手近にあった鍬で扉にかんぬきを掛けた。

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