閉じる


<<最初から読む

104 / 140ページ

触れたいよ

 娘にせがまれて花を見せる。再生ボタンを押すとすぐにすみれがあらわれる。娘は花びらにふれようとする。小さな手は空振りしてしまう。お花さわりたいよ。ごめんね。今のきみにはできないんだ。私は娘の頬に手をのばす。指先は虚しく空を切る。パパももう一度きみを抱きしめたいよ。

フォークボール

 彼女はいつもフォークボールを投げる。そして僕が捕りそこねるのを見て楽しむのだ。たまには真っ直ぐを投げてくれよ。私がフォークボールしか投げられないの知ってるでしょう? 彼女はよく手入れされた指にボールを挟む。大きく振りかぶって投げる。やっぱり僕は彼女の球が捕れない。

ブクブク

 バスタブに潜る。今日はいつもより深い。どこまでも潜っていける。しかも全然息が苦しくない。これは世界新が出せそうだぞと私は思う。バスタブダイビングの記録は確か115m。今日の私ならいける。ブクブクブク。白い天井が見えた。脱衣所に寝かされていた。隣で母が泣いていた。

ハンバーガー

 ハンバーガーが男の寝床だった。掛けバンズと敷きバンズ。二枚のバンズの間で男は眠る。今月から其処へレタスとベーコンが追加された。厚みが増して快適になるかと思いきやレタスの水気は冷たいわベーコンの脂はべとつくわで散々だった。男は月を見ながら嘆く。嗚呼、玉子が恋しい。

ほくろ

 ほくろが気になるのならおれが取ってやろうか。宇宙人のポールが言う。できるの? 太陽の黒点を取ってやったこともあるくらいだからな。寝てる間にやっといてやるよ。朝起きると本当に顔のほくろは消えていた。ありがとポール。ついでに全身のほくろを取っといたぜ。胸のおっきなやつ2つもな。

読者登録

laybackさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について