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うそつき

 教室で待ってて。今日は早めに終わるから。ほんと? 彼の「早め」はまるであてにならない。本を読み終えて窓の外を眺めた。陸上部の練習はとうに終わっているのに彼はまだ仲間たちと遊んでいた。時計を見る。もう出ないとバイトに間に合わない。私は白のチョークで黒板いっぱいに書く。うそつき!

子の生る木

 私は謝礼のフルーツバスケットをクマに渡す。クマは厳かにそれを受け取る。ではどうぞ。私は巨木に蹴りを入れる。ぽとりぽとりと赤ん坊が落ちてくる。おめでとうございます。双子ちゃんですね。クマが笑顔で拍手をしてくれる。なお謝礼も二倍となりますのでまた後日お持ち下さい。では次の方どうぞ。

 将来は何になるのかな? そう訊くと彼女は花と答えた。素敵な笑顔だった。君ならきっとなれるよと言って私は彼女の頭をなでた。花壇の手入れをする度にあの笑顔を思い出す。掘り返したくなる衝動に駆られる。もう少しで花になれるよ。私は植え替えたばかりのひなげしの蕾をそっとなでた。

やさしい小説

 ザラメで綿菓子を作るように活字を入れると小説ができる機械があった。作家の夫は毎晩活字を枡で量っては機械へ入れてゆく。ある日そこへ娘が花を混ぜてしまった。活字の花ではなく本物の花を。私が叱ろうとすると夫は止める。きっとやさしい小説ができるだろう。気難しい夫が珍しく笑った。

触れたいよ

 娘にせがまれて花を見せる。再生ボタンを押すとすぐにすみれがあらわれる。娘は花びらにふれようとする。小さな手は空振りしてしまう。お花さわりたいよ。ごめんね。今のきみにはできないんだ。私は娘の頬に手をのばす。指先は虚しく空を切る。パパももう一度きみを抱きしめたいよ。

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