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注射

 注射券を手にして行列に並ぶ。 前の人に「ここが最後尾です」と書かれた看板を渡される。行列の先頭は遙か彼方。とてもじゃないが見えない。向こうから注射を終えた人たちが歩いてくる。痛かった? 痛かった? みな口々に尋ねる。気持ち良かったよ。最高だよ。みな黒目が反復横跳びしている。

取っ組み合い

 肩と肩をぶつけた二人の男が取っ組み合いを始める。組んず解れつするうちに腕やら足やら頭やらが地面に落ちる。勝手にレフェリーを買って出ていた通行人が慌てて二人を分ける。芋虫たちはもごもごもごもごと蠢いている。レフェリーが適当に部品を取り付けると二人はふたたび取っ組み合いを始める。

UFO

 燃料が切れそうになったのでやむを得ずUFOを着陸させる。のぞき窓から外を窺うとカメラを構えた地球人がびっしりと周りを取り囲んでいた。これでは出るに出れない。いかにも宇宙人然とした宇宙人の登場が期待されている中にただのねこが現れたら彼らはきっと卒倒するに違いにゃい。 

空っぽ

 血で払うよ。無銭飲食の男はそう言うとコートのポケットから注射器を取り出した。金がなければ臓器でも売ればいいだろう。皮肉の一つも言いたくなった。内臓はもうないんだ。男は止める間もなくコートの前をはだけた。空っぽだった。空っぽの腹の中に萎れた血管だけが虚しく張り巡らされていた。

 実は膣の中で暮らしている。居心地が良いので日頃は引き篭もっているのだが毎月決まって数日は宿主から追い出される日がある。今月は今日がその日だった。私はしぶしぶシャワーを浴びる。内壁から分泌される粘液をきれいさっぱり洗い流してから私は膣を出る。ひと月ぶりの外は眩しい。 

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