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矢印

 ホテルの中に入った矢印は点滅する矢印に導かれるまま廊下を進んでゆく。108。突き当たりの部屋の番号がチカチカと光っている。部屋の中に入るとベッドに下着姿の女の子が座っている。矢印は女の子の中に入ってゆく。「やっと入り口にたどり着いた気がするよ」「残念ね。そこは出口よ」

注射

 注射券を手にして行列に並ぶ。 前の人に「ここが最後尾です」と書かれた看板を渡される。行列の先頭は遙か彼方。とてもじゃないが見えない。向こうから注射を終えた人たちが歩いてくる。痛かった? 痛かった? みな口々に尋ねる。気持ち良かったよ。最高だよ。みな黒目が反復横跳びしている。

取っ組み合い

 肩と肩をぶつけた二人の男が取っ組み合いを始める。組んず解れつするうちに腕やら足やら頭やらが地面に落ちる。勝手にレフェリーを買って出ていた通行人が慌てて二人を分ける。芋虫たちはもごもごもごもごと蠢いている。レフェリーが適当に部品を取り付けると二人はふたたび取っ組み合いを始める。

UFO

 燃料が切れそうになったのでやむを得ずUFOを着陸させる。のぞき窓から外を窺うとカメラを構えた地球人がびっしりと周りを取り囲んでいた。これでは出るに出れない。いかにも宇宙人然とした宇宙人の登場が期待されている中にただのねこが現れたら彼らはきっと卒倒するに違いにゃい。 

空っぽ

 血で払うよ。無銭飲食の男はそう言うとコートのポケットから注射器を取り出した。金がなければ臓器でも売ればいいだろう。皮肉の一つも言いたくなった。内臓はもうないんだ。男は止める間もなくコートの前をはだけた。空っぽだった。空っぽの腹の中に萎れた血管だけが虚しく張り巡らされていた。

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