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プレゼント

 背中に隠していたプレゼントを渡すと彼女の顔は朝陽のように輝いた。「開けてもいい?」「もちろん」中身を目にした彼女の表情が急に曇る。「気に入らなかった?」「わたし、ピアスはだめなの」「だって今も」「これはイヤリング。穴は開けられないのよ。わたしの身体は風船だから」

ゴミ捨て

 一人でゴミ捨てに行った。本当は二人で行く決まりになっていたけど佐々木くんは私一人に掃除当番を押しつけて先に帰ってしまった。先生に告げ口すんなよと言い残して。クラス一チビの私には大きすぎるゴミ箱と格闘しているうちに焼却炉に落ちた。 暖くて嬉しかった。家はいつも寒かったから。

パンツ何色?

「今日のパンツは何色?」第一声がそれである。付き合いが長くなるとかくもデリカシイを欠くようになるものか。私は彼女に小一時間説教をする。「君が私と出会った頃にはね。廊下ですれ違うだけで頬を染めていたものだよ。いい加減にし給え」「ごめんなさい」「よろしい。パンツは白だ」

産卵

 茂みをかき分け川辺へ辿り着くと青い月の光がざわざわと水面に跳ねている。鮭だ。産卵の為に遡上する母鮭の背。私はお腹の子を気遣いながら水に足を差し入れる。上流に向けて泳ぎはじめる。母鮭たちが躰をぶつけてくる。負けてられない。私も元気な赤ちゃんを産まなければならない。

矢印

 ホテルの中に入った矢印は点滅する矢印に導かれるまま廊下を進んでゆく。108。突き当たりの部屋の番号がチカチカと光っている。部屋の中に入るとベッドに下着姿の女の子が座っている。矢印は女の子の中に入ってゆく。「やっと入り口にたどり着いた気がするよ」「残念ね。そこは出口よ」

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