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 困った。昨日の味噌汁の具が思い出せない。自ずと作業の手が止まっていた。どうした? 班長が飛んでくる。昨日の味噌汁の具が思い出せなくて。もう帰っていいと言われて俺は家へ帰る。昨日の味噌汁の具は何だった? 妻に尋ねる。昨日はカレーライスよ。そうか。そうだったな。で、具は何だった?

ドーナツ

「お嬢さん。なぜドーナツに穴が開いているか知ってるかい? ある店が警官に無料でドーナツを提供し始めた。防犯になると考えたんだな。ところがそこで警官同士の諍いが起きる。銃撃戦になり、弾丸がショーケースのドーナツに穴を開けた。それが始まりだ」「知ってるわ。撃ったのは私だもの」

 目が覚めたら猫になっていた。今夜は集会だよ。クロに言われて付いてゆく。クロの報告によると君は少々キビキビしすぎているようだ。もっとダラダラとアンニュイに猫らしく振る舞うことを覚えてくれたまえ。議長に叱責される。猫も楽じゃない。にゃ。クロに肩を叩かれて目が覚めた。

大学芋

 周りは皆大学生なのに私だけが大学芋だった。ひそひそと噂する声が聞こえてくる。あいつ何だよ。ベトベトしてて気持ち悪ぃ。元々はただの芋だった。それを皆に喜んで貰えるようにと母がわざわざ大学芋にしてくれたのだ。情けなくて涙が滲んでくる。まっさらな大学ノートに甘蜜が零れた。

刺青の男

 刺青を背負った初老の男性が大浴場に入ってくる。見ちゃダメ。私は小声で娘に言う。「きれい。あの絵みたい」娘は壁の富士山を指差して大声で言う。「お嬢ちゃんよう分かったなぁ。この背中の絵を描いたんはあの富士山を描いたんとおんなじ絵師や。なかなか見る目があるで」男性はにんまりと笑った。

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