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大学芋

 周りは皆大学生なのに私だけが大学芋だった。ひそひそと噂する声が聞こえてくる。あいつ何だよ。ベトベトしてて気持ち悪ぃ。元々はただの芋だった。それを皆に喜んで貰えるようにと母がわざわざ大学芋にしてくれたのだ。情けなくて涙が滲んでくる。まっさらな大学ノートに甘蜜が零れた。

刺青の男

 刺青を背負った初老の男性が大浴場に入ってくる。見ちゃダメ。私は小声で娘に言う。「きれい。あの絵みたい」娘は壁の富士山を指差して大声で言う。「お嬢ちゃんよう分かったなぁ。この背中の絵を描いたんはあの富士山を描いたんとおんなじ絵師や。なかなか見る目があるで」男性はにんまりと笑った。

 妻は変わり者だ。帰宅した私はまず呼鈴を鳴らす。するとドアの中ほどに開いた穴から妻が生尻を突き出す。私は妻の穴に鍵を挿し入れる。すると妻はロックを解除し、ドアを開けてくれるのだ。もし他の人だったらどうするんだ。私は妻に抗議する。あら、間違えた事なんてないわ。妻は聞く耳を持たない。

C

 Cは視力検査表の中でうずうずしていた。逃げ出したくて仕方がなかった。まあまあ、落ちついて。となりのUがたしなめる。いや、もうおれはがまんならん。Cはついに検査表の外に飛び出した。保健室の床を駆け抜け、窓枠に足を掛ける。アイ・キャン・フライ。Cは空中でカラスに喰われた。

ブラ

 ブラジャーは不満だった。ペアのパンツは毎回洗って貰えるのに私は三日に一回。どう考えてもおかしい。それに相方と離れ離れになるのは寂しかった。ブラがそう訴えると香織は言う。分かったわ。洗濯は二日に一回。あと同じ柄のパンツをもう一枚買えばいいんでしょ? ブラは首を横に振る。二股は嫌。

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