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荷物

 梱包が済んだ。電話をかけて宅配便業者に引き取りに来てもらう。送り状の品名のところで手が止まる。離婚はまだ成立していない。迷った末に「夫」と書いた。こわれものシールは貼りますか? 業者のお兄さんは爽やかな笑顔で言う。わたしも笑顔で返す。いいわ。もうこわれてるから。

苺ショートケーキ

 わたしは苺のショートケーキをひとつだけ買って帰る。苺とスポンジがだめな同居人が生クリームを食べる。苺と生クリームがだめなわたしがスポンジを食べる。スポンジと生クリームがだめなリクガメのピーターが苺を食べる。おいしいね。おいしいね。わたしたちは笑い合う。それが我が家の毎夜の儀式。

 月日は過ぎ、無人島での孤独な生活にもいくらか慣れてきた。それでも私は浜にガラス瓶が漂着するたびに中に救助を求める手紙を入れては沖へと投げ続けた。ある朝、ついに船が島にやってきた。見覚えのある色艶、形。たしかに私が投げたガラス瓶だった。その瓶の中に小さな船が入っていた。

曲線

 今度の神様は曲がったことが大嫌いだった。その神様の一存で世界から曲線が消える。太陽も月もみな四角。電車やバスの車輪も四角だから揺れが酷い。僕の愛する彼女のお尻や胸の優美なカーヴも失われてしまう。色気も何もあったもんじゃない。クラスで一人。コージだけが天パが直ったと喜んでいる。

工場

「B工程の者が一人、腕を切断しました」生産ラインから連絡が入る。「そいつは従業員食堂に回せ」「はい」「ラインは止めてないな?」「勿論です」ゾンビを労働力として利用し始めてからこの国の製造業は再び競争力を取り戻した。なにしろ人件費が安い。餌に屑肉を与えておくだけで良いのだから。

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