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蛞蝓

 なにかを引きずるような音で目がさめる。意識ははっきりとしているのに身動きがとれない。横向きで寝ていたわたしの目に大きなナメクジの姿が映る。ナメクジはしとしととシーツを這い、わたしの枕に登ってくる。ナメクジはわたしの唇をこじあけて口の中に入ってくる。このナメクジは温かくて、苦い。

 いつもの家路のはずが見知らぬ町に迷いこんでしまう。ここはいったいどこなのだろう? 向こうから子供の集団が走ってくる。道を尋ねようとすると何かを投げつけられる。私の体に当たって地面に落ちたのは豆。福は内、人は外。頭に角を生やした子供たちは豆を撒きながら私を追いかけてくる。

回転木馬

 回転木馬の馬の手入れをしていた。ペンキの剥げ落ちた部分を塗り直し、錆のこびり付いた金属部分を磨き上げてやる。木馬とはいえお前たちはいつも同じところをぐるぐると回るばかり。たまには大草原を駆けたいよなあ。わたしは馬に語りかける。馬は優しい目を閉じて、こくりと頷いた。

納豆かき混ぜ士

 納豆かき混ぜ士の資格を取ることにした。かき混ぜる回数や時間はもちろんのこと、力の入れ具合、回転速度、箸の進入角まで。納豆の種類や状態によって最適なかき混ぜ方を選択しなければならない。筆記試験はなんとかパスした。実技試験も恐らくクリアできるだろう。問題は、試食だ。

荷物

 梱包が済んだ。電話をかけて宅配便業者に引き取りに来てもらう。送り状の品名のところで手が止まる。離婚はまだ成立していない。迷った末に「夫」と書いた。こわれものシールは貼りますか? 業者のお兄さんは爽やかな笑顔で言う。わたしも笑顔で返す。いいわ。もうこわれてるから。

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