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家出

 パンツが家出した。全員だ。困った。風呂上がりなのに穿くものがない。ふと机を見ると書き置きが残されている。「乾燥機の導入以来、我々は日光浴もできません。お日様が恋しいのです。パンツ一同」俺は一人取り残された使用済みパンツに使いを頼む。仲間に伝えてくれ。明日からは毎日天日干しだと。

 五年ほど前から雨が降らない。不思議なものだ。晴天が何年も続くとあれほど忌んでいた雨空が妙に恋しくなってくる。妻と相談して傘を買うことにした。新式の傘の内張りは曇天。柄に付いたボタンを押すと雨が降りはじめる。そうそうこれこれ。妻と私は目を細めて笑い合う。五年ぶりの相合い傘の下で。

掃除機

 掃除機の吸いが悪い。ゴミが溜まっているかフィルターが詰まっているかどちらかだろうなと思い本体を開けてみるとお父さんが入っていた。ぶはーっ。お父さんはほうほうの体で出てきてぐちぐちと文句を言いはじめる。うるさい上にお酒くさい。私は掃除機をセットしてもう一度お父さんを吸い込んだ。

メモ

 閃きを逃してはならない。作家の私は寝室にもメモを用意する。ちょうど妻とのセックス中にアイデアが閃いた。私はメモに手を伸ばす。ところが妻は快楽の虜。私を掴まえて離してくれない。なんとかペンを手にした私は妻の恥丘にメモを取る。なにそれすごい、ああっ。妻は私のペンで昇天した。

 眠れない時は執事を数える。以前は羊を数えていたのだが想像力の逞しい私には向かなかった。奴らはやたらと毛ばかりで一処に群れ始めると紛らわしくて仕方がない。そこで執事を数えることにした。「ご主人様」一人。「ご主人様」二人。「ご主人様」三人。「メェ」お前は牧舎へ帰れ。

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