閉じる


<<最初から読む

136 / 140ページ

マッチ売りの少女

 また仕事でへまをしてしまった。もうおれはだめだ。行くあてもなくとぼとぼと歩いていると街角にかごを持った少女が立っていた。「なんだい? マッチ売りの少女かい? あいにくおれは煙草は吸わないんだ」彼女は首を横に振る。「これはマッチじゃないのよ。折れた心にする添え木」

家畜

 家畜は激怒した。粗悪な餌に、劣悪な衛生管理に。家畜達は共謀して牧場から逃げ出した。ところがすぐに腹が減る。餌は出てこない。牛や羊は雑草を、鶏は虫を食べた。不味い。腹も膨れない。そこへ牧場主のトラックがやってきた。家畜達は顔を見合わせると、黙って荷台に登っていった。

綿毛と花びら

 たんぽぽの綿毛と桜の花びらは恋に落ちました。ふたりは見晴らしのよい丘にふわりと舞い降りました。ところが花びらはたんぽぽの腕の中で日に日に萎れていきます。ついに花びらは姿を消しました。それでもたんぽぽは彼女を想い続けました。春が来て彼は花を咲かせました。淡い桜色の花でした。

猫カフェ48

 猫カフェ48の支配人は青ざめる。店の前に報道陣が溢れていた。集団自殺についてどう思われますか! 聞けば猫48の新曲の振り付けを見た若者が集団自殺をしたと言うのだ。バカな。振り切って店に入るなり電話が鳴る。社長の春元だった。だからあの振り付けはダメだと言っただろ!

 人は鏡を見て唖然とした。入になっていた。入になっていたので人は鏡の中に入った。入は鏡の中の世界の全てを独り占めできた。ところが次第に入の数が増えてゆく。入が増えると人口ならぬ入口も増えてますます入が入ってくる。入口爆発に辟易した最初の入は鏡の前に立った。人が映っていた。

この本の内容は以上です。


読者登録

laybackさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について