閉じる


<<最初から読む

134 / 140ページ

キスキス

 見送りはいいと言っているのに彼女は玄関までついてくる。行ってくるよ。僕がそう言うと彼女は背伸びをしてキスをせがむ。そしていつものように背中からコードが抜ける。だから言ったのに。僕は固まってしまった彼女にキスをする。すると少しだけ電流が走って彼女の頬が赤く染まるのだ。

水切り

 今日は川で水切りをして遊んだ。タン、タン、タン。と耳は綺麗に三つ跳ねた。鼻は平たくないから一つも跳ねなかった。最後に頭を砲丸投げのように投げた。正に迫撃砲が着弾したみたいに派手に水飛沫が上がった。川下から釣り人が睨み付けてきた。撒き餌だよ! 僕はそう叫ぶと走って家に帰った。

マッチ売りの少女

 また仕事でへまをしてしまった。もうおれはだめだ。行くあてもなくとぼとぼと歩いていると街角にかごを持った少女が立っていた。「なんだい? マッチ売りの少女かい? あいにくおれは煙草は吸わないんだ」彼女は首を横に振る。「これはマッチじゃないのよ。折れた心にする添え木」

家畜

 家畜は激怒した。粗悪な餌に、劣悪な衛生管理に。家畜達は共謀して牧場から逃げ出した。ところがすぐに腹が減る。餌は出てこない。牛や羊は雑草を、鶏は虫を食べた。不味い。腹も膨れない。そこへ牧場主のトラックがやってきた。家畜達は顔を見合わせると、黙って荷台に登っていった。

綿毛と花びら

 たんぽぽの綿毛と桜の花びらは恋に落ちました。ふたりは見晴らしのよい丘にふわりと舞い降りました。ところが花びらはたんぽぽの腕の中で日に日に萎れていきます。ついに花びらは姿を消しました。それでもたんぽぽは彼女を想い続けました。春が来て彼は花を咲かせました。淡い桜色の花でした。

読者登録

laybackさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について