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 文字を文字とも思わぬ人の振る舞いに腹を立てた文字たちは人の通り道にくにがまえを仕掛けた。人は文字の思惑通りまんまと罠に引っ掛かった。堅牢な口の中にすっぽりと嵌まった人はかくして囚われの身となった。人はもはや文字の奴隷だった。文字の呪縛から逃れることは出来なかった。

髑髏

 隣のレーンで骸骨の子が自分の頭を投げていた。だが髑髏は真っ直ぐ転がらない。あまりにもガターばかりなので不憫になり、いちばん軽い球を渡してやった。骸骨の子は綺麗なフォームでそれを投げた。ピンは全て倒れた。私は骸骨の子とハイタッチをした。彼はあ・り・が・と・うと歯を鳴らして消えた。

闘牛士

 闘牛士が海に迷い込む。さあ牛を呼べ。闘牛士は通りがかりの魚に催促する。牛などいない。魚がそう言っても彼は聞く耳を持たない。困り果てた魚は海牛を連れてくる。闘牛士の目が光る。赤い布を振って挑発する。だが海牛は見向きもしない。それでも闘牛士は布を振り続ける。故に今日も波は止まない。

ミサイル

 大陸間弾道ミサイルは恋に落ちた。飛行中の一目惚れだった。ミサイルは高度を下げ、速度を落とし、飛び魚に話しかける。貴女が好きです。飛び魚はミサイルの顔をじっと見つめて、怖いわ。と言った。ミサイルの尻尾の火が消える。推進力が失われる。大陸間弾道ミサイルは海に墜ちた。

キスキス

 見送りはいいと言っているのに彼女は玄関までついてくる。行ってくるよ。僕がそう言うと彼女は背伸びをしてキスをせがむ。そしていつものように背中からコードが抜ける。だから言ったのに。僕は固まってしまった彼女にキスをする。すると少しだけ電流が走って彼女の頬が赤く染まるのだ。

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