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 響が目覚めると、飛行機はいつしか目的地に着いていた。
「しまった!」
 慌ててベッドから飛び降りようとする響をジョンが後ろから抱いて止めた。
「大丈夫だよ。若葉君達に名波ちゃんは疲れて寝ているって伝えてあるから」
「……そうか」
 響は落ち着きを取り戻し、ことんっとジョンに寄りかかった。
 もう夢のような時間は終わったのだ。
 この暖かい温もりを感じ続けるわけにはいかない。
 伊藤家嫡男としての、伊藤苑社員・名波響としての時間が始まる。
 響は少しでもジョンと一緒にいられればいいのにと思った。だがこれはシンデレラのような一時の幻に過ぎない。それを誰よりも名波響は知っていた。
「あ……水着」
「新しいのを用意してあるから、そちらを穿いていくといい」
「ありがとう」
 そう言って響はジョンにキスをした。
 ぴくんっと体を震わせ、響はジョンから離れる。
「……おい、あのジェルの効果、まだ続いているぞ」
「48時間続くって言ったでショ?」
「まったく……今日は若葉も一緒に来ているっていうのに。こういう日は特別なジェルを使うなよ。まぁ、自制心を持っていれば、なんとかなりそうだ」
「そうそう、自制心を持っていれば大丈夫だヨ。普通の生活を送っていればネ」
 ジョンは意地悪そうににやりと笑った。
 響は窓の外を見た。仲良く歩く若葉と円青樹の姿が見える。そして浜辺でくつろぐ世界各国のセレブ達。
「……ん? R先輩とバッティングしてるのか。あの人、苦手なんだよな」
「響はRのお気に入りだからねぇ。まぁ気に入られていて損はないよ。適当にあしらっておくといい」
「適当にって……軽く言うけど、お断りするのは大変なんだぞ。ジョンがいないと大胆に迫ってくるし……誰も助けてくれないし……」
「ふふふっ、頑張れ、可愛い響ちゃん」
 響は水着を穿いた。
 恥ずかしくなる程、まだ体が興奮している。彼は頬を染め、俯いた。
「……なぁ、水着でいかないとダメか?」
「ビーチにスーツで行くわけには行かないだろう? 若葉君が待っているよ。早くお行き」
「え? ジョンは一緒に来てくれないのか?」
「ああ。私はしばらくビーチを歩く君を見物しているよ」
 ジョンはにやりと笑い、窓から外を見た。
「フェロモンを撒きながら彼らの中を歩く君の姿が見てみたくてね」
「この……変態サド男が」
「んふふふっ、さっきも言ったけど触られ過ぎると興奮の暴走が止まらなくなるから気を付けてネ。公衆の面前で恥ずかしい姿を晒すことになるヨ」
 ジョンは響の乳首をきゅっと摘んだ。
「あっ! あっああっ! 止め……!!」
「ずっと乳首を勃起させちゃって。私が行くまで我慢するんだよ、愛しい響」
 ジョンの手がすっと、響の水着へと滑り込む。
「もう……止めろって……ああっ! あんっ! それ以上されると……あっ! また!」
 どくんっと白い精液がジョンの掌へと放たれた。
 ジョンは精液をぬるぬるっと響の体に塗った。そのまま乳首をぬめぬめと刺激する。
「私のスペルマと響のスペルマが君の体の上でミックスされていい感じだ。興奮を呼び起こすような薫りがするネ」
 響はぼんやりと宙を見つめながら、体をびくん、びくん、と震わせた。
「綺麗だよ、響。私の男だ。私だけの男だよ。だからもう誰にも触れるな。誰にも触れられるな。私だけの男だって、覚えておくんだよ」
 ジョンは響の首筋にキスをした。
 響はこくんっと頷く。
「さぁ、お行き。みんなの所へ」
 ジョンがそっと背中を押す。
 シンデレラの鐘の音が鳴る。
 響はうっすらと涙を浮かべながら、再び頷き、立ち上がり、扉へと向かうのだった。