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はじめに

この度は「liferデジタルシナリオ」より短編『mono optikos』をお手にとっていただきまして、誠にありがとうございます。

こちらはlifer(http://lifers.jp/) にて上演しました戯曲を、使用時ほぼそのままの形(下「原本より変更点」参照)で掲載しております。加えて、少々特殊な書き方となっている部分などもござ いますので、「読んだだけでは状況が解らない」などシナリオとしては至らない点もアルかと思いますが、どうぞご了承の上お楽しみください。
なお、テキストは「青文字」がト書き、他が台詞となります。

※なお、今作は別途上演したstg:4『Diopticon』のプロローグと位置づけています。よろしければそちらもご覧ください。

原本より変更点
  • 細かい演出上の説明を加筆。
  • ほか誤字など訂正。
  • 読みやすさを考慮の上、本編を分割していますが、今作は30分ほぼノンストップで行いましたので、若干区切りが不自然な点、ご了承ください。

1
最終更新日 : 2012-01-10 03:20:32

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登場人物

佐山さやま
三田みた坊や
みなみ
2
最終更新日 : 2012-01-10 03:20:32

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目次

はじめに

はじめに
登場人物
目次

本編

0 準備前
1 準備から終幕まで(1)~(3)

おわりに

上演
追記

3
最終更新日 : 2012-01-10 03:20:32

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0 準備前

仄暗く明転。ぽつりと台が一つ。
佐山、重く現れて粛々と準備している。テレビをセットする姿など。暗転。
また明転。時間を確認する。メールに気付いて確認。暗転。

4
最終更新日 : 2012-01-10 03:20:32

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1 準備から終幕まで(1)

明転。
中央に木製の古いちゃぶ台が一つ。台上には水差し。脇には猿轡を噛まされた男女。
男が一人入って来る。若干息は切れ、時々時間を気にしている様子。フィッシャーズベストはガサガサと音を立てて耳障り。
ビデオカメラをセット。コードは延びてテレビへ。身体をほぐし、留まる。ラジカセ。曲を再生し、水で喉を潤すと、気合いの入った風でスタート。
佐山  あなたやあなたや、まぁあなたでもいいけどもし家族が居るならそれで、居ないなら居ると想定して。親兄弟ではなく。半生、生きてきて己で選んだ妻、夫、生まれ落ちた子供そういうの、つまり自分の家族。それが瞬時に消え去ったとしたらどうなるかという想像をしてください。それも綺麗な様じゃない、残虐を極める過程によって。ご存じの通り私自身が正にそうだがそれはいい。大事なのはあなた方がもしそうならどうだという空想の問題だからここはしっかり本腰を入れて考えてもらわないと困るわけだよその為にここに来てるわけだから。私がね。時間が、無いの。そろそろなんだ時間がないんだ、前振りを終えておこうかと思うわけだ。その為にも皆々さん、真剣になっていただきたい。これはもう譬えではなく木刀ではない真剣そのもの。
三田坊  うぅーー・・・(おい)
佐山  (気付くも続ける)つまり一つ判断を誤れば切り捨てられる覚悟をしていただきたいのです。
三田坊  うぅーー・・・(おいあんた)
大きく咳払い。
佐山  もういい、前振りをいくらやったところで大方あと30分もすればそんなこた憶えちゃいないんだから。
三田坊  うぅーー、うーあ・・・(どうしようってんだ?)
佐山  あ?なに?
三田坊  おーあーう、おーあーぅ(その30分で一体ぼくらをどうしようってんですか?)
佐山  ♪(曲のそのとき鳴ってる部分で唄)
三田坊のUAに便乗する形で南もUAUA言い出す。いつしか佐山も混じって音楽も混じってお茶目感。
佐山  終わっちゃいないが前振りも終わったとしましょうか。
南の猿轡を外す。途端に言いたいことを言い出す。それは気にせず三田坊の猿轡も外しにかかる。なお、三田坊の方は外れるまで相変わらずUA。
南  おかしいでしょ?なんでこういうコトになるの?何やろうとしてるか知らないけど何の解決にもならない…
佐山  解決?
南  何の解決にも
佐山  解決って言いますか?
南  ならないって分かるでしょう?
佐山  仮に私がもし私の件を解決しようとするなら
南  違うの?
佐山  あなたが今どうこう言うこっちゃゃないし
南  じゃあ何。
佐山  そもそも解決など考えるわけがないでしょう。
南  じゃあなんで・・・
三田坊のも外れる。三田坊のほうは言葉はナメくさってるが序盤からトップで動揺。
三田坊  ねぇもうもういいじゃないっすか、止めませんか、ね?
佐山  何を言ってるんだ君は。
南  なんでよ。
三田坊  そちらさんはともかく僕なんかそもそも
佐山  関係ないってか?
三田坊  あんたなら分かってるでしょ?
佐山  関係あるかどうかそんなことはどうだっていいんだよ。
三田坊  わけわかんね。
佐山  お宅らに限らず今目撃している者していない者全部。
三田坊  は?
佐山  全部。
南  そりゃ
佐山  ん?
南  私のせいだって言うんでしょマイが
三田坊  マイちゃん(笑)
南  奥さんが助かったかもしれない
佐山  そうですか。
南  そういうことでしょ?
佐山  だからどうでもいいんです。
三田坊  僕らあなたに復讐されるわけですか?
佐山  そんなわきゃ無いだろう。
南  どうしたらよかったの。
三田坊  そちらさん(=南)がいるのは分かりますよ?
佐山  そうか?
三田坊  読んだよ週刊誌の。あんたがなんて言おうがこれが復讐的なイベントとすれば、必要なキャストなんじゃないの?
佐山  君も。
三田坊  僕だって見方を変えりゃそうでしょうけど、お宅がそういうやり方する人じゃないってことだよ。僕がいるってコトは僕が憎いってコトでしょうから?
佐山  (笑)それは解るわけだ。
三田坊  あのね、こんなに普通に喋ってるから信じられないってんなら変えようか?僕だってね、ショック?受けてるんですよ。
その佐山vs三田坊の間、南は前の自分の台詞後くらいからずっと一方で
南  私のせいでっていくら言ったって今さらどうにもならないでしょう?何?マイ生き返るの?それをどうこう言われたってしょうがないのよ。申し訳ないって思うけどじゃあ例えば替わりに私が被害にあったら満足だった?こんなことホントに思ってないのよ。でもしょうがないでしょう?
三田坊  あっちの奥さんだってお宅だって今さらどうしたってしょうがないんだから。
佐山  しょうがないしょうがないしょうがないっていう話はもういいんだよ!
南  どうしたらよかったのって聞いてるのよ。
三田坊  (南に)とりあえず説明聞いてみたらいいんじゃないっすか?
佐山  どうも。
三田坊  ふん。
佐山  今日これからあなた方お二人にどうこうしてもらおうとは思っちゃいませんよ。そこはご安心ください。
三田坊  だってさ。
佐山  二人にはまず手荒な手段でここに連れてきたことについて、まず謝罪しておきます。それから今見ている皆さん、見ているかもしれない皆さんにも。ここに三人いる。妻の友人だった人、それから戸田の弟さん。そして私。私は今日、まず始めに殺された家族の中でただ一人残った遺族であり、また被害者であると同時に、今日ご覧の諸氏方の前で被告であるということが重要です。
三田坊  どういうこと?
南  なに私?
佐山  言うからちょっと待ってろ。
南  ほら。
佐山  先に前提を明らかにしておきたい。私の心が何処にあるのかという参考にする為にまずこちらの婦人は其の一、妻の友人でありました。のみならず親友でありました。どういうことか、つまりこちらは真に妻の死を悼んでいる一人だということをまず把握していただきたい。必然的に私は仮に彼女に法に触れる以下のささやかな過失があったとしてもこれっぽっちも怨んじゃいないということを明言しておきます。事実そのような過失はなかった。
南  あったわよ
佐山  無かった。そのお気持ちはありがたいが無かった。そして同じく彼にも法の上での過失はない。さてご承知のように
三田坊  なぁ!もっと言ってくんないかなもっとフォローをさ。
佐山  フォローだ?
三田坊  奥さんばっかずるいじゃないの?責めるか護るかどっちか・・・
佐山  お前黙れよ。見てみろ首を回して見てみろ。
三田坊  んだよ
佐山  今巫山戯てるのはお前だけだってのが解るか?
三田坊  フザケてねぇよ!あんたのせいでなんで俺までこんなとこいんだよ、(ちゃぶ台に・・・カメラに寄っていって)どうせ顔なんてバレてんだろ?あんたらもきたねぇのな、コソコソ調べて何様だ?あ?ウチに石投げたヤツいるだろ?こん中に。じゃなきゃ石投げるヤツ見に来たろ。(笑)知ってっか?それ犯罪なんだぞ!お前ら全員俺より悪いヤツなんだぞ!文句あったら出てこいよ!
佐山、後方からゴソゴソと取り出してきた鉈を手に歩み寄り、三田坊の頭をちゃぶ台に叩き付けて鉈を下ろす。南、三田坊の動揺っぷりに若干当てられてたところへそんなアレで結構叫ぶ。勿論三田坊も(チビる方向)。
佐山  私が今君を殺らないのは法律があるからだ、解るか?
三田坊  あ、いや・・・
佐山  逆に言うとそれさえなければ殺ってるんだよ解るか?
三田坊  あ、うぅ・・・
佐山  ん?何だって?解ったか?聞くか?
三田坊  聞く、聞く、聞く・・・
佐山  (抑え付けたまま)確かに説明が不足したが其の二、彼はしかし説明も要らない、最早誰でも知ってるだろう、私の妻、娘を殺害した戸田の弟さんだ。先ほども言った通り彼には法の上での過失は全くないし事実「無い」と言える。彼がここにいるたった一つの理由は彼が弟だというただそれだけ。要点は、勿論その「彼に過失はない」ということも解っておいてもらいたいが、それにも関わらず私は十分この男を憎めるということです。彼は全くもって事件には関係ない。仮に或るところで悪意をもって報道されたように、また皆さんがそう感じているように彼が?戸田と同じ血を引いた素行の悪いモンスターだとしてもだ、彼には全く関係がない話なんです。にもかかわらず、やはり私は油断すれば彼を殺したいとも思います、正直なところ。清々する、それだけの為に。
三田坊を放してあげます。
三田坊  じゃあどうしたらいいの・・・
佐山  まずは黙ってろ
三田坊  だって黙ってたらあんた・・・
佐山  少なくともカメラの前だよ君、もっと大人しくしてれば世間から色々言われずに済むとかそういう頭は回らんもんかね。脅しとはいえさっきのは流石に言い過ぎた、君への殺意は少なくとも私には無いし、今日どういう結果に転んだって君に危害を加えることはなかろうよ。
三田坊  でも・・・
佐山  安心して、いいからそこに座ってろ、まずは。
この間、時間を確認するも時計がいっちゃっているのに気付いて
佐山  すまない、見て分かるように私もタガが外れてる。今何分ですか?
南  時間・・・
佐山  七時?
南  あっ、○○分。
もう分かりやすくリアルタイムで進めましょう。その時の時間で。
佐山  ありがとうございます。それからあなたにも勿論危害を加えるようなことはありませんから。
南  だったら
佐山  ん?
南  じゃあ、やっぱりなんで?
佐山  そんなに後悔してるんですか?
南  おかしいでしょ?アイツにあんなにまでしてなんで・・・
佐山  本当に申し訳ないと思う。あなたのその貯まってるモノを全部とっぱらいたいんですよ。(再びカメラに)説明を戻しましょう。現在逃亡中とされている戸田、容疑者、つまり彼の兄だが容疑者とはいえ最早あなた方は疑問を挟むこともないでしょう。戸田が私の家族を殺したというのが周知の事実です。少なくとも、これから彼が逮捕され、そして私自身の手に依ってではないでしょうが相応の証拠でもって起訴され調べられ裁かれ、そして最終的にこの国の名の下に何らかの罰を受けることになるまで私の口からそれを言うことはできない、表向きは。確かにそれを待つことも考えました。考えましたというのもおかしい、当然そのようにするつもりでした。しかしどうにも私の中で消えなかったそれは、このまま法律の手に渡してしまっても私の心は晴れないに違いないという確証。凡そ人類がただの動物である以上沸き上がってくるのを止められない怒りというモノを我々は穏やかな話し合いと決まりによって、そして人知れずコッソリと行われる犯罪者の一定期間の労役ないしは命の代償でもって慰める・・・違う言い直しましょう。遥か頭上の、そう国とかから「彼奴は相応の代償を支払いました」という報せを耳で聞いてなんとかなだめすかす。私は日頃から確かに私自身、その流れの中に身を置いていました。遺族と話をしたこともあった。決して軽くはなかったが口上の慰めを述べたことさえありました。しかしおかしい。いざ我が身に降りかかってみるとどうか、あっというまにそんな茶番が信じられなくなった。ですから皆々様、賭をすることにしました。万一優秀と言われる警察の捜査よりも私自身とそれからとある興信所の調査のほうが先に戸田を捕らえ、さらに私自身は勿論皆様が満足するに足る証拠を揃えることに成功したなら私は、佐山昭博は、戸田を法律に引き渡す以外の手段を執ろうと。私が少なからず信じて仕事としてきた法律によってではなく、私自身の怒りと刃物によって結論を出そうと考えました。
三田坊  待てよ、待てよ待てよあんた何言ってンの?
佐山  そして私は
三田坊  あんたまさか
佐山  私はあろうことかその試みに成功しました。
ちゃぶ台に腰掛けて二人を見やる。理想的には背中の後ろにさっき突き刺した鉈。多分あるさ。まず一つ目の谷。

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最終更新日 : 2012-01-10 03:20:32


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