閉じる


<<最初から読む

6 / 8ページ

 

 それが最初で、僕の生き方を殆(ほとん)ど根こそぎ変えてしまった。

 彼女の名前を考えたとき、君は、

「ここからが、私たちの始まりね。」

 と、言った。

 彼女を、

 

 レイ

 

 と、名付けた。

 最初の一歩を僕らに作ってくれた最初の人だったからだ。

 僕と君と彼女は確かに溶け合っていた。

 僕らを結びつけたこと、それが、彼女が僕らに一番最初に与えてくれたことだった。

 その彼女がいま、僕らのために泣いているんだよ。

 君を愛しているからだ。

 そして、僕らを想っているんだよ。

 世界がまだ、こんなにも理不尽だとは知らないまま、僕らを愛しているんだ。

 

 なあ、人生はこれ一度じゃない。

 僕らが彼女の中で生き続けて、その後、ずっと長い間、誰かが僕らのことを憶えているのなら、僕らはそれに呼び寄せられるように何度も繰り返される。彼女の中で、たった一度だけ、生きたパパとママではなくて、彼女の中では、永遠に彼女のパパとママなんだ。

 解るかい?

 言い訳は通じない。

 彼女は僕らを誰よりも知っている。

 彼女は僕らよりも、僕らを知っているんだよ。

 僕らが自分自身に嘘を吐くことは出来ないように、彼女は僕らの真実を持っている。

 君の弱さを彼女の強さにしたくはない。

 僕の不甲斐なさを、彼女の優しさにしたくはないんだ。

 僕らは本当は、彼女に愛を証明しなくてはならないんだよ。

 もう、忘れ去られて、この時代には何もかもが喪われてしまった想いだったとしても。

 眼に視える光だけが、幸福ではないんだ。

 幸福は眼に視えるものとは、何一つ関係ない。

 君は偶然、僕を愛したと考えている。

 だが、彼女には生まれてきた理由があるんだ。

 僕らが愛し合った理由がある。

 彼女は偶然から生まれて来た訳じゃない。

 僕らはそれを感じていたはずだ。ただ、彼女のためだけじゃない。

 僕らの何よりも大切なもののためだ。

 僕は君を愛しているんだ。

 出会った頃からずっと変わらずに。

 そしてより強く、彼女がそれを確かなものにする。

 こんな年老いた男にも、あの頃のままの愛があるんだ。君に恋している。君を抱き締めている。出会った頃からずっと、ね。それで、何を失っても、僕は君を抱き締めているよ。

 僕を疑わないで。

 君を愛しているのだから。

 それが、僕らにたった一つ見える真実なのだから。

 それが、僕らを支えていて、彼女を支えていて、そして、これからの僕の人生を支えていてくれるのだから。

 僕を疑わないで。


 

                             ♥     

 

 

 欲しいものなんて、何もなくなってしまって、今さら、買える物なんてそれほど必要ではないだろう。

 繰り返されていることに気付かないのかい?

 抜け目のない連中が君を狙っているんだよ。いくぶん君が魅力的になったのかと。

 僕は君のために、僕らの娘のために成功した。

 僕には僕らが何の不満も感じずに生きるられるだけで充分だった。

 もう欲しくはなかった。

 君がいて、レイがいる。

 海辺の家もある。

 それでよかった。

 君はこれ以上、何を求めて何処にいこうというんだ。それが必ずしも君を倖せにするというのかい?

 僕らはもう有り余るほど、持っていて、他に必要なものは休日と思い出だけだ。

 それでも君は何処かに行こうとする。

 この時代には、それが必要でも、僕らにはもう、何も必要ではないんだよ。

 愛はどんな事柄をも些細なことに変えていく。

 君の娘が、今夜も君を呼んでいる。

 僕の隣りでそう言っている。

 君はその声を知っているか?

 僕では君の代わりにはなれないんだ。

 彼女に必要なのは、僕ら、なんだ。

 誰よりも、この地球上の誰よりも、僕らなんだよ。

 どんな素敵な出会いよりも僕らなんだよ。

 僕はこんなにも求められたことはなかったよ。こんなにも僕らを愛してくれる誰かに出会うことなんて考えもしなかった。

 彼女が待っていてくれる。

 

 帰っておいで。

 誰よりも僕らの下へ。

 そして、僕は君を抱き締めるよ。そうしたいんだ。君と彼女を幸せにしたいんだ。

 僕は誰よりも弱く、そして、誰よりも強い。

 君たちが命なんだ。

 僕の命なんだよ。

 僕の愛。

 そして、すべて。

 いつまでも。

 いつまでも、ね。

 いつまでも、

 愛してるよ。

 

 愛しているよ。

 

 

 

 

 

 

                                                                                                                                                                                                               end


 

                               

 

 さてさて、お久しぶりです。

 

 毎度お世話になっております。皆様如何お過ごしですか?

 この冬、風邪を引きまくりの朝森です。

 

 思いつきで書きまくり!!の文章を最後まで読んで下さって誠ににありがとうございました。

 

 早いものでついに7,8冊目(?)、とにかくPC苦手な自分がよくもまあここまで奮闘したなあと出来上がった作品を眺めながらホコホコした気持ちで頷いて、眺めております。

 相変わらず、ボチボチと書いたり書かなかったり(主に書かなかったり)と、のらりくらい執筆(・・・というか妄想)を続けています。

 

 そうそう今回の表紙の画は、僕自身が、水墨で描きました。洋菊です。タイトルは《菊花》。まんまですね。

 霜を恐れず風雪の中も、香り高く咲く姿・・・そういう家族愛もいいなあと思って、自分の作品を久方ぶりに表紙に使ってみました。(肝心の現物の方は、もう手元にはないのだけれど・・・)

 ほんと、いろんなことがあって家族愛について考えさせられる一年だったなあと思い、昔、家族について書いていた文章を公開させて戴きました。

 

 表紙を含めて、コメントや感想など明るい気持ちで、お待ちしております。

 

 ほんといろんなことがありますが、本年もどうぞよろしくお願いします。

 これを読んで下さっている皆様もどうか風邪には気をつけて。

 では、またいつか。

 重ね重ね読んで下さって本当にありがとうございました。

 

 

                                    

 

 

 

                                                    朝森 顕   拝

 

 

 

 

 

 


この本の内容は以上です。


読者登録

朝森 顕さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について