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はじめに

サッカーでは、ヘディングというテクニックがよくつかわれる。ご存知のようにこれは、空中に浮かんでいるサッカーボールを頭で弾き飛ばしてゴールに入れる技術である。

 

これを物理学や数学で解析してみようと試みると、なかなか容易でない。物理学で考えるならば、ボールの質点とサッカー選手の質点を考えて、それぞれの質量をm、Mなどと置き、衝突直前のそれぞれのベクトルをそれぞれv、Vとおく。衝突直後のそれぞれのベクトルを、v'、V'とおくと。運動量保存則からmv+MV=mv'+MV'がいえる。

 

式を変形すると、v'=v+M(V-V')/m

 

よくサッカー選手を観察しているとわかるのだが、ヘディング直後のサッカー選手の体はスピードをなくしまっすぐに地面にぽとりと落ちてくる。だから一番簡単なモデルとして、ヘディング直後のサッカー選手の速度がV'=0となる場合を考えてみよう。

 

その場合上式は、v'=v+(M/m)Vとなる。

 

これは、中学生でもわかる、力の合成問題である。ボールの重さmは一定なので、問題はMが大きくなったらどうなるか、小さくなったらどうなるか。ベクトルVとベクトルvの交錯角度、スカラーが変わるとどうなるか。紙に矢印を描いてみればいろいろとわかる。

 

だが、これはサッカー選手をひとつの質点として考え、単純に物理学的に導き出された結果である。実際のサッカーのヘディングにおいては、サッカー選手の体勢はどうか、サッカー選手の足の裏が地面についているか、首の筋肉は強いか、腹筋背筋は強いか、額の真ん中の髪の生え際を当てているのか、側頭部を当てているのか、ボールに大きな力積を与える技術を持っているのかなどによって、弾き出されるボールの性質が変わってくる。

 

これらのパラメーターすべてを導入して数学的に計算することは非常に難しい。ニュートン力学だけでなく、剛体の運動も複雑に絡み合ってくる。だがあきらめることはない。物理学には計算という大事な側面があることは事実だが、実験というものも同じくらい大事な側面である。

 

世界には無数のサッカー選手が存在し、ヘディングのうまい選手もたくさんいれば、それほどでもない選手もたくさんいる。それらをつぶさに観察してみればかなりの実験データが集まる。また、自分でもいろいろなやりかたでヘディングをしてみていろいろな実験データを集めることができる。

 

本書では三人の世界的に優秀な選手をサンプルとして、三種類のヘディングについて論じる。一つ目が元ブラジル代表カレッカ選手が多用した高いヘディング。二つ目が現アメリカ女子代表のワンバック選手が多用する、速いヘディング。三つ目が元日本代表の中田英寿選手が得意とした、走りながら体ごと飛び込んでいくヘディングだ。

 


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最終更新日 : 2012-01-09 00:34:47

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