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現代の日本人よ(7)

  「わしは日本に生まれ、日本に育った男ぜよ。

  だから日本が好きなんじゃ。

  水は澄み、空気も美味い。

  だから米も美味けりゃ、鰹も美味い。

  これが土佐で最高の贅沢なんじゃ。

  日本には四季があり、それを愛でる安らぎがある。

  日本人に生まれたからこそ得られる贅沢があるがよ。

  きっと異国人は思うちゅうじゃろう。何故日本人はそれを嫌うのかって、何故それを汚してしまうのかって。

  そこが田舎だからか。

  今は田舎だって十分に便利じゃろうが。

  これまでは都会を目指したもんじゃが、これからは田舎を目指すぜよ。

  そこに本当の贅沢があるがやきに」


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― その1 ―  狂気の大老

  ギリギリギリギリ・・・。

  幕府の大老・井伊直弼は怒りに震えていた。

  「私は徳川幕府大老だ! 藩主であろうが老中であろうが逆らう事は許さん!」

  水戸が、朝廷が、学者が、諸士が、反幕府の声を上げて暗躍し、追いつめられていく心。

  「許さんぞ、許さんぞ!」

  静まることのない怒りが次々と湧き上がる。

  「徳川家の権力を強化し、再び天下の乱れを抑え込んでやる・・・」

  そんな心の隙間に、ふっ、と狂気が忍び込んだ。

  「殺してやる、殺してやる・・・」

  そして宿る。

  「徳川幕府顛覆てんぷくを謀る者は皆殺しだ・・・。ひひひひひ・・・、お前達が悪い、殺されるお前達が悪いのだよ・・・」

  残忍な目付きに変わっていた。

  「鮮血の赤さだけが人の心を恐怖に陥れ、国を支配できる・・・、それが歴史だ・・・」

  徳川家に纏まとわり憑ついてきた魂が憑依したのだろうか、一つの体に無数の魂が宿る。

  「・・・血が必要なのだ・・・」

  そんな姿を晒す直弼に逆らおうと考える者は無い。

  既に心ある者は江戸城内から逃げ出し、左遷されてもいる。

  「死を支配した者が、世を支配する・・・」

  井伊直弼の魂は魔物に心を支配されていた。

 

  そもそもは異国の脅威が迫る中、徳川家には無力な征夷大将軍しか居らず、それに代わって幕府を司る立場の大老に就いた事が彼の不幸の始まりである。外圧に屈し、天皇の許しを得られぬままで、西洋諸国と修好通商条約を調印してしまい、

  「専断で異人に国土上陸を許したのか!」

  と、それが大問題化しているのだ。それに異を唱えた尾張・徳川慶勝、福井・松平慶永、水戸・徳川斉昭・慶篤と一橋慶喜に対して隠居謹慎をも下し、その上、新将軍をも独断で紀州徳川家茂に決定してもいる。

  「天皇の御意志を無視し、独断専行で世を動かそうとする独裁だ!」

  人々の怒りはそこにあった。

  更に、そこで仰天の事実が判明した。薩摩藩・島津斉彬の上洛計画失敗に落胆した孝明天皇が、直接に水戸藩へと密勅を下したと言うのだ。

  「水戸が朝廷と組んで幕府潰しを企てておるのか!」

  井伊直弼は水戸家と朝廷が結託して倒幕を計画していると思い込んみ、

  「水戸の斉昭め、奴が張本人であろうが!」

  と、これが怒りに火を点けた。

  そして大老・井伊直助は老中・間部詮勝らを上洛させ、開明家や尊皇家から公家の家臣まで捕縛するという大弾圧を始めたのである。・・・それが安政の大獄と呼ばれる悪の所業となるのである。

 

  この時、日本を魔が覆っていた。


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奥付



竜馬外伝i-22 桜田門外の変


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著者 : 中祭邦乙
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