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読む前に

2012.1/3あたりに人気本四位ありがとうございましたっ。

基本的なことを書いてますが、あえて小説で触れていな部分をば。

Q・口が悪い人がたまにいるが誰か。
A・黒い翼の、本と鎌を持っていないうちの三人のどれかです。本と鎌の人は、基本的に丁寧口調。
Q・「お黙り!!」を毎回いう理由。
A・決まり文句です。ついでにいうと裁判を始めます。も決まり文句です。
Q・ジャッジメントの白と黒の本の書かれ方。
A・何かその場のノリで書いてます。時々寝ながら考えています。
Q・6で出てくる黒い翼の男はロリコン?
A・notロリコン!!

天秤で羽を乗せるとなんたら→エジプト方面の裁判方法
白い翼の女→天使系
黒い翼の男→悪魔系

神様を信仰しているマイキのことを「偶像崇拝」と言っているので、神様なしの世界設定です。
だって全世界の神様集めると愉快なことになってしまうんですもの。

と、いうのを前提でお願いします。

1.裁判-孤独なマイキ-
典型的善人の例。
死因・事故
2.裁判-早苗、奈々子、悠木-
男女のもつれのせいで引き起こしたヤンデレ的な話。
死因・他殺、自殺
3.裁判-英雄テフィルス-
英雄として神の加護を受けたというテフィルス。しかし神は存在しない。
死因・病死
4.裁判-物書きリージ-

物書きの彼は借金を抱え、妻子と別れて自殺した。
死因・自殺
5.裁判-魔女アフェルタ-
魔女裁判で処刑された、アフェルタ。人間の裁判と死後の裁判。
死因・火あぶり

6.裁判-無垢な子供サニャ-
八歳のサニャは、義母による虐待を受けていた。全て自分が悪いのだといわれて。
死因・虐待

7.裁判-電子の人間正行-
羨ましかった。だからネットで誹謗中傷を書き込んだ。相手のことなんて何も知らないから、気軽に出来た。
死因・事故
8.裁判-約束と裏ぎりの辰之助-
辰之助は第二次世界大戦、生き延びるために仲間を食ったことを言えず、家族に見守られて老衰した。
死因・老衰

9.裁判-復讐者シリフ-
殺すか殺されるか。壊滅しかける国を救うため、医師のシリフは英雄を殺した。
死因・事故

10.裁判-作者香吾悠理-
これで最後になります。
死因・死んでない



ジャッジメント1-7に出てくる人たちのセリフと影絵

本にしたいけど、ページ数えたら、コストがかかりまくったので、やめました。

2012.4/17完結

1.裁判-孤独なマイキ-

女は三十年間神を崇拝し、薬を作っては、体の弱い者へ配り続けた。
女の名前はマイキという。
生きるために沢山の動物を殺した。
時に人を裏切ったこともある。
さて、彼女は死を迎えた。
いつもの様に薬の材料をとっていた時、足を滑らせて崖の下へ転落した。

この世界の裁判の仕方を教えよう。

マイキは裁判所にいた。
押しつぶされそうなほど暗い場所、目の前には、一体何メートルあるか分からない黄金の天秤がある。
見回してみると、右手に白い扉、左手に黒い扉。天秤を囲むように、男と女がいた。
白い鳥の様な翼の生えた女が四人、白い扉の前に。
黒い蝙蝠のような翼が生えた男が四人、黒い扉の前に。
天秤の上には黒い翼の生えた大きな鎌を持った男、その隣に、見たこともないほど大きな羽を持っている白い翼の生えた女。
マイキはここが死後の裁判所だと気付いた。

「裁判を始めます」
天秤の上の二人が同時に喋る。
黒い翼の四人のうち一人は黒い本を持っていて、その本にはマイキの名前が記されていた。
「名はマイキ=ベル。人間を一人殺しています」
その言葉に、マイキが震えあがった。
天秤の前に座り込むと、手を組んで膝をついた。
「母親を一人、マイキが生まれた際、出産によって死んでいます」
マイキはずっと孤独だった。
マイキは村で愛された女性だったが、両親はいなかった。父親はマイキが生まれる前に死亡、母親はマイキを生んだ際の出血多量により死亡。
「殺した生物の数は七千と百七十。更に仲間を三人裏切っている。地獄へ落としてもよいと思われる」
「そもそも人間は罪深すぎる、全て地獄へ落とすべきだと…」
その言葉に待ったをかけたのは、白いを本を持った白い翼の女。
「ではマイキの行動を述べます」
透き通った声が響く。マイキがなすすべもなく、手を組んで震えている。
冷たい床の感触しか感じない。
「マイキは大変神への信仰が強く、薬を作っては配っていた。その薬によって救われた人間は最低でも三十。マイキは人望熱い女性です」
「偶像崇拝ではないか。薬だってそれによって摘み取られた草は数え切れない。殺した生物も先ほど述べたとおりだ」
天秤の上の黒い翼の男が口をはさむ。
「お黙り!では続けなさい」
その隣の羽をもった女が一喝する。
「無意味な惨殺はしていません。全て食べるために殺しています。このマイキという女は天へ行かせるべきです」
「素晴らしい人間ではないか!」
女たちが感心しているが、男たちはそれに対して異議を唱える。
「人間を裏切っている、この女が生きてさえいなければ死んでいなかった生物の数は!」
「肉を食べず、虫や花をあやまって踏みつぶさない人間などいるのでしょうか」
マイキは彼らのやり取りを聞きながら、震えている。
「どう思いますか?」
天秤の上の二人がやり取りをする。
この二人が、善悪を決める重要な人物なのだろう。
「偶像崇拝とは愚かだ。生まれながらに母を殺すとは何て罪深い」
「いいえ、信仰心は必要です。生まれて母を亡くしたのは、事故ではありませんか」
「地獄へ落とすべき、輪廻などさせない」
「天へ行かせるべき。輪廻もさせるべき」
意見は五分五分、どちらも譲らない。
ついに痺れを切らせた白い本を持った女は、マイキに向けて言葉を発した。
「マイキ、そちらのいい分を述べなさい」
割れたステンドグラスで見たことのある天使に似ていると、マイキは思い、白い翼の生えた女たちに向けて座り直した。
「わ…、私は確かに友人を裏切ったことがあり、母は私のせいで死にました。ですが…、それを償うために、病気の人には薬を、食べるのに困った人には食料を分けました…」
震えた声で、述べて涙を流す。
後ろにいる黒い翼の男たちがせせら笑う。
「人間の好きな偽善ではないのか」
「裏切りを償うことができるのか?」
本を持った女は、それを聞いて、頷いた。
「確かにマイキの慈悲によって助けられた人物は多く、薬も非合法ではない。人間の世界でも私たちの価値観でも善です」

天秤の上の女は、持っている羽を片方の天秤に載せた。
ギギ、と派手な音を立てて天秤が傾く。
「この羽より罪が軽ければ天へ、重ければ地獄へ落ちます。それぞれ、本をこの上に乗せなさい」
二人は同時に喋り、本を持った男と女は同時に天秤の上に本を置いた。
マイキはそれを涙を浮かべ、震えだした。
天秤は、と音を立てると、そのうち止まる。
羽より本は重さを示さず、天への道を示した。
マイキは善と判断された。
「天へ向かいなさい、マイキ。では案内なさい、あなたたち」
天秤の上にいる女は、白い扉の方にいる彼女たちに案内される白い扉が開けられ、その先に白い花が咲き乱れる園が広がっていた。
「あ、ああ、ありがとうございます、これが本で読んだ天の園なのですね」
マイキはぽろぽろと涙をこぼし、彼女たちに促され、園へ踏み入れた。



2.裁判-早苗、奈々子、悠木-

男は、いつも遊び呆けていました。仲間を利用しては蹴落とし、のし上がり、ついに財産を手にした。
そんな男にも愛する女が出来た。一時愛しては捨てを繰り返した男の愛する相手は、結婚すればなお権力と財産を手に入れることのできると見込んだ女だった。
二人は結婚を約束し、女は白いドレスを作り、結婚まで指折り数える。
きっと二人なら幸せ、そう信じ続ける女は手を何度も怪我しながら、一生懸命ドレスを作り続ける。
幸せな生活が始まると女は喜んで、招待状を出し、大きな教会できるためのドレスを作り続ける。
しかし男は約束を破った。
結婚直前、若い女と一緒に逃げる約束をした。
女は出来上がった白いドレスを着て、その事実に嘆き悲しんだ。
男は別の女と手をとり、逃げようと駆け出す。
女はナイフを握りしめて、その二人が落ち合う場所へ向かう。
男が遅れて着いたころには悲惨な光景が広がっていた。
ドレスを着た女は死んだ目をして、ドレスを赤く染めていた。傍らには逃げる予定の女、切り刻まれて元々美しかった顔は、肉が見え、皮がない。
男は思わず吐いた。
女は男を刺し殺すと、自分の喉もさし貫いた。


次の裁判です。
扉が開かれた。


裁判所では、白い翼の生えた女が四人、白い扉の前に。
黒い翼の生えた男が四人、黒い扉の前に。
凍てつくほどの空気の中、三人は天秤の前に導かれた。
巨大な黄金の天秤の上、白い翼の女が立っている。大きな羽を手にし、隣には黒い翼の生えた男が鎌を持っていた。
三人は、生きていたころの姿で導かれた。
若い女は切り刻まれる前の綺麗な顔、ナイフを持っていた女は真っ赤なドレス、男もいる。
「裁判を始めます」
「嫌、何ここ、何が始まるの!?」
若い女が空気におびえ、逃げようとするが、足が動かない。何とかもがくが、そのうち彼女を男たちが囲んだ。
赤いドレスの女は、黙って座りこむ。
男はただ、目の前の巨大な天秤を眺めていた。
男のうち一人が黒い本を三冊持っている。そのうち一冊を開くと、口をあけた。
「その女を捕らえなさい。ではその女の方を。名前は…、時織早苗、年齢は十七…、出身地は東洋。間違いないですね」
全員の視線が彼女に集中する。
早苗はおびえながら首を縦に振った。
「死亡原因は、出身地が同じ渋谷奈々子にナイフで三十箇所刺された」
「何と可哀想な」
白い翼の女は呟いた。
「いやっ、なんなのよここ!」
彼女は泣き叫び、恐怖に顔を歪める。
裁判所に響き渡る悲鳴。
「お黙り」
天秤の上の白い翼の女が一喝すると、黙り込んだ。
「では続けます。早苗の罪はとても重い。渋谷奈々子の婚約者と駆け落ちをしようとした。殺した生物の数は一万ほど。六歳のとき、奈々子の大事にしていた犬を殺しています」
その言葉に、赤いドレスの女は、ゆっくり振り返る。
「…あれは貴女だったの…」
しかし顔は真っ白で、怒りを露にしていない。
早苗は何度も首を横に振る。
「嘘、嘘、だって死ぬなんて思わなかったの…、彼をとられたのが悔しかっただけ、私、死ぬなんて…」
弁解する早苗を見下ろし、鎌を持った男は鬱陶しそうに眉をしかめた。
「うるさい女だな。続けろ」
「はい。いたずらに生物を殺していています、裏切った人間の数は十三」
それに待ったを言ったのは白い翼の女、白い本を三冊持っていて、そのうち一冊を開いた。
「人間は過ちを繰り返して成長します、彼女は殺す気がなかった。両親をとても大事にしていて、特に病のある母のために家事をすべてこなしていました。彼女に罪はない」
「それならばこちらは、地獄に落とすべきだと思います。泉悠木の言葉に耳を貸し、結婚の約束を知りながら奈々子を裏切った。輪廻させるべきではない」
やはり話は進まず、しばらく本を持った男と女は無罪有罪で喧嘩をし始めた。
天秤の上の二人は、顔を見合わせると、頷く。
「では裁判を。残り二人がありますので手短にします。本を天秤に乗せなさい」
そういった白い翼の女は持っていた巨大な羽を乗せる。ギ、と音を立てて天秤が傾いた。
本が乗ると、一気に本を乗せた天秤は傾いた。
「やはり裏切りが強いかと思います」
「では地獄へ?」
傾いた天秤を眺め、白い翼の女たちは相談をする。
「ですが、殺されたという点では、彼女だけに非があるわけではないと思います。せめて輪廻だけは」
その言葉に周りの皆が頷いた。
「では地獄へ。罪の分だけの痛みを味わったのなら、魂と罪を浄化して輪廻に」
鎌を持った男が頷いた。
判決を言い渡された早苗は、黒い扉へ導かれる。
黒い扉の向こうには煮えたぎる血のような色、そこでおぼれ焼かれ苦しむ罪人たち。
それを見た早苗は悲鳴を上げ、逃げ出そうとしたが、黒い翼の男たちがつき落とす。
そして扉は閉じられた。

羽を天秤から拾い上げ、本は無くなる。すると傾いた天秤は音を立てて並行に戻った。
「この二人は?」
「女の方は先ほどの女を殺した渋谷奈々子。男の方は泉悠木。年齢は同じで二十三」
読み上げるのは黒い本を持った男。
名前を告げられた男の方は、はっと周りを見渡した。扉の向こうを見た男は、急に震えだした。
「最初に男の方。悠木は最大の裏切りをしております。奈々子と婚約しながら、早苗と逃げ出しました。今まで殺した生物の数は二万と五千。今まで裏切った数は五十を超えます、数々の女に手を出しては裏切っています。更に両親と兄弟、仲間も裏切り続けている」
男が読み上げた後、白い本を手にした女は、本を開いてため息をついた。
読みあげようにも、何も書かれていなかったからだ。
「どうしようもない、何も書かれていません」
白い翼の女は、困って首をかしげた。
それを聞いた男たちは、ゲラゲラと笑いだした
「清々しいまでに罪にまみれた人間だ!!」
「計るまでもないが、地獄へ連れて行く前に是非を聞きたい」
白い翼の女は何も言わず、首を振る。天秤の上で羽をもった女も、ため息をつくと、同意を示した。
男を引っ張って黒い扉へと連れていこうとするが、その男の腕を引いて止めたのは、赤いドレスの女だった。
「悠木は私を裏切っただなんて思ってないの…」
それを見た黒い翼の男たちは苦笑した。
奈々子は悠木の手を離そうとしない。
「連れていくなら一緒に落として、一緒にいたいの…」
「彼女が言うなら、一緒に裁判を言い渡すのがいいと思うのですが」
何も書かれていない、泉悠木の名前が書かれた本を投げ捨てた白い翼の女は、残り一冊を広くと、天秤の上の二人に提案する。
「皆の意見を聞こう」
「私も同意です」
「面白い、ではその方向で行こう」
泉悠木を奈々子の後ろに座らせると、次は奈々子の裁判が始まった。
黒い本をあけると、淡々と告げる。
「この際なので、殺した生物は無視します。もっとも彼女のも罪深いところは、二人を手にかけたことです。惨い殺害方法であり、輪廻をさせるべきではないと」
やはりそこで待ったが出る。本を開いた女だ。
「彼女は裏切られた。当然の報いではないのでしょうか、悠木と早苗の二人は。しかし殺害については、何も言えません。地獄へ落としたとしても、彼女については輪廻をさせるべき」
「有罪?無罪?有罪にしても、輪廻をさせるべか?」
「輪廻はさせるべき、しかし悠木の方は輪廻はさせるべきではない」
白い翼の女たちは、地獄行きを決定したが、輪廻の提案をする。
「輪廻はさせるべきではない」
黒い男たちは、輪廻など却下したが、そこに奈々子の声が入る。
「嫌、一緒にいたいの、輪廻なんていいわ。彼の行くところにずっといさせてほしいの」
それを見た全員は、やはり顔を見合わせた。
羽を手にした女は、鎌を持つ男と軽く相談をすると、頷いた。
「では、奈々子にせめてもの慈悲として、悠木と永遠に地獄へ落とします。良いですね?」
それを聞いた悠木は叫んだ。
「嫌だー!!あんなところに落とされるなんて、嫌だ、殺したのは奈々子なんだ!!俺は悪くないんだ!!」
暴れて叫び、奈々子の手を振り払う。しかし奈々子は爪を立てて悠木の腕をつかんだ。
暴れる悠木を、彼らは抑え込む。
白い翼の女たちはそのまま、奈々子を黒い扉へ連れて行く。悠木は何度も叫んで無罪を主張したが、捨てられた本には一切の善行が書かれていない。
二人を一緒に扉の向こうへ突き落す。
真っ赤に煮えたぎる。むせかえる血の匂い。二人は一緒につき落とされる。
奈々子は熱さに叫び声を上げる悠木にしがみついて、嬉しそうに笑った。

「ああ、悠木、私と一緒なのね…嬉しいわ、輪廻なんかしなくていいから、ずっと一緒にいたかったの…」

それらを見届けると、黒い扉は閉じられる。
これが彼女の幸せだったのかもしれない。



3.裁判-英雄テフィルス-

英雄と呼ばれた男は、沢山の軍隊を指揮し、先陣を切って闘い続けた。
土埃のふく貧しい国は他国に侵略され、領土をとられかけていた。
彼は戦い続けた。何度も怪我を負いながら、国のために闘い続けた。
自分の国を守り抜き、他国へ侵略をし、勝ち続け、ついに国は独立することができた。
しかし戦いの際の傷が原因で、皆に惜しまれながらこの世を去ることになった。

英雄テフィルスの裁判である。

「裁判を始めます」
巨大な金の天秤、両サイドには扉が各一つずつ。黒い扉の前には黒い翼の男、白い扉の前には白い翼の女。
天秤の上には羽をもった女と、鎌を持った男。
扉の前の男が黒い本を開き、天秤の前に立つ英雄の名前を挙げた。
「名はテフィルス=ハルゼイン。年齢は二十七」
ここはどこだ、と、テフィルスはあたりを見渡す。
巨大な天秤を前に、初めて恐れをいだいた。
「国のために犠牲を出し、間接的にも殺した生物の数は大規模、七十万を超す」
「英雄気取りか」
本を持つ男の隣で黒い翼の男が笑った。
「お黙り、続けなさい」
天秤の上の白い羽をもった女は一喝する。
天秤の上の二人は絶対的な存在らしい。
昔読んだ本では、死者には裁判があるということを知っていたテフィルスは、聖騎士として王の前に膝まづくように、天秤の前で敬意を示した。
「たった一つの国のためだけに多くの血を流した罪は深い。ここに一時期死者が多く訪れたのもテフィルスによって死んだ者たちだろう」
その言葉に、テフィルスは本を持った男を見た。
「私のやっていることが間違っていたと…!?」
動揺する彼を見ながら、今度は白い本の女が読み上げる。
本にはずらりと文字が並んでいた。
「これは全て読み上げるのは大変ですね。テフィルスは国を守った、まさに英雄と言えます。カリスマ性と騎士としての素質を持ち、国を独立させた男です。軍隊を率いて積極的に戦い、弱った兵への心遣いも忘れていなかった模様。彼がいなかったら、国はここに存在していないでしょう」
その言葉に、黒い本の男が険しい表情をした。
「それによって沢山の命が奪われた。英雄といえどここではただの人間、殺した生物は莫大すぎる。自ら策を練って出陣し、街を焼いて罪のない人間たちを地獄へ落とした」
「それもそうだな」
テフィルスは、やはり動揺したが、また座り込んだ。
腰に携えた聖なる剣は、神の加護を受けているという。
それを国王直々に頂き、その剣を以って闘い続けた。
白いマントを翻し、銀色の鎧を身につけ、戦い続けた。国のために。
「いいえ、彼がいなければさらに多くの血が流れていたことでしょう。彼は最小限に戦争をとどめたのです」
白い翼の女が対抗する。
テフィルスは彼らの威圧感に圧倒されながら、凛とした声で鞘に入った剣を手に乗せた。
「この剣は神の加護を受けています。多くの犠牲者を出したことも事実、街が焼かれたのも事実、しかし私は出来る限りのことをやりました。神の意志に従い、我が国を救い出しました」
その剣を手に取ると、黒い翼の男はまじまじと見つめた。
柄の部分に宝石が細工されている、非常に美しい剣だ。
鞘にも紋章が描かれてある。
「また偶像崇拝して心酔した結果か」
男の言葉に、う、と、小さく漏らした。
「私は聖騎士として、神の加護を受けたものとして闘った次第」
「神は全世界にいくつあるか知っているか。あんなに沢山の神がいたら天国も地獄も死者より神様であふれちまうね」
その言葉に黒い翼の男たちは頷く。
黒い翼の男に向けて、今度は白い翼の女がふっかける。
「偶像とはいえ、信仰する気持ちに変わりはないではないですか。今回の件は非常に裁判に困ります。テフィルスは大変優秀な人材です。国を守り、まじめな性格であり、慈悲を持った人間である」
「だがくだらない戦争で命を落とした数は多い。テフィルスは自分を正当化して殺しを続けただけだ。慈悲を持つのも国のものだけ、他国には容赦ないといわれている」
今度は黒い本のページをめくり、話を続けた。
「他国から見たテフィルスの評価。領地を奪い金品を絞り上げ、国で英雄といわれていても、ここでは鬼印。テフィルスの死を喜ぶものは多い。やはり地獄へ突き落すべきだ」
「国から見た評価は高いが、他国からの評価は低い、と」
鎌を持った男は低音でテフィルスに自分のいい分を促した。
緊迫した空気。
このような英雄様が現れるたびに裁判は難航する。
テフィルスは 悪魔のような翼の生えた男が神の加護を与えられたという剣を平気で持っていることに驚いていた。
あの剣は神の加護の熱いものにしか持てないはずである。
それに気付いた黒い翼の男は剣を眺め、そのあとテフィルスを見つめた。
「これはただの剣だ。特殊な彫り込みをして、形だけの儀式をした、ただの剣だ」
「そ、んな。馬鹿な、神はどこへ?神の啓示を受けた聖女と共に私たちはつきすすんだ、国を守った。神の名のもとに私は」
「だから、神は人間の作り上げた偶像だ。実際には存在すらしない」
それを聞いたテフィルスは、泣き崩れた。
白い翼の生えた女たちを見上げると、すがるように膝まづいたまま、肯定してほしいと訴える。
「残念ながら、彼らのいうとおりです。各国にあるという神は存在しません」
女は憐れみを持った目で、テフィルスを見て、息をついた。
テフィルスは声をあげて顔を覆った。
 聖騎士として闘い続け、生涯をささげた彼にとってはあまりにも非情な現実だった。
「私は騙されていたのか?そして罪のない人間を殺していたのでしょうか。国の未来のためとしていたことが、ただの大量虐殺だった。私は、他国からでは悪魔のような存在だったと…」
泣き崩れるテフィルスは、罪の意識と後悔にさいなまれた。
「では、本を天秤へ。これによってあなたの罪が確定されます」
天秤の上にいた女は、大きな羽を天秤の上に置いた。
同時に本が置かれ、大きく天秤が揺れた。
テフィルスは涙にぬれた顔で、それを眺めた。
ギ、ギ、と大きく揺れ続ける。
しかしどうも天秤は安定する様子はない。
「これは一体どういうことか」
鎌を持った男は、不思議そうに地に降りて眺めた。
「これは、以前にもありましたね。実際には罪も大きいが、今罪の意識を感じ取った天秤は、判決できない状態でしょう」
やがて並行になった天秤は、時折ぐらぐらと揺れた。
どうするべきか。
相談し合う男と女。
しかし結論は出ない。
天秤も安定を見せず、裁判は長引いた。
そこで、泣き続けたテフィルスは顔をあげた。
「私に選択をさせていただけませんか」
テフィルスは大きな決意を胸に示した。
皆の視線がテフィルスに集中する。
その合間にも天秤は大きく音を立ててぐらぐら揺れ続けた。
「では言ってみなさい」
「では言うがいい」
天秤の上に女と、鎌を持った男は同時にテフィルスに言う。
テフィルスは神にしてきたように膝まづき、涙を拭くと、一礼した。
「私は大変罪深い人間、国のためと行っていたことは、確かに他国から見れば悪魔にひとしい。存在しない神の啓示に従っていた私は」
胸についた聖騎士の証の紋章を破りすれた。
剣を黒い翼の男から受け取る。剣を鞘の床につき、剣を抱く形で、選択をした。
「私は、地獄を選び、永久罪を償い続けます。しかしわがままをお許しください」
ほう、と、全員が感心し、テフィルスを眺めた。
「きっとこの先も、私についてきた者たちがここに来ることでしょう。しかしお願いします。彼らをお許しください、彼らは私に踊らされただけなのです。私が永久に償い続けます、彼らの分まで。彼らの罪は軽くしてください。私はずっと罪を胸に抱き、どんな苦痛にも耐え続けます」
「なるほど、聖騎士として他のものたちの分まで罪を受けるというのですね」
白い本を手にしていた女は、手元にあった羊皮紙に何かをつづった。
女は天秤の上の女を見上げた。
「潔い青年である、ここは天へ行かせたいところですが、その願いを引き受けましょう。貴方は永遠に業火に焼かれ続けることになるが、本当にそれでいいのか?」
白い翼をはためかせ、揺れる天秤の上にある、羽と本を取り上げた。
カクン、と音を立てて天秤は動いた。
水平になった天秤を見ると、鎌を持った男は、テフィルスに言い渡した。
「地獄へ案内しろ。ただしテフィルスには慈悲を渡す」
鎌を持った男は、膝まづくテフィルスの首をめがけ、鎌を振りおろした。
ごとんとテフィルスの首が落ちる。
「これで痛みは感じない。だが罪を償うために地獄へ落とす」
テフィルスは、体と首が離れた状態になったが、血が噴き出すことはなく、最後に小さく呟いた。
「ありがとう、ございます」
その首と体を抱えると、黒い扉を開く。
血の海の中へと落ち行き、姿が見えなくなった。煮えたぎる海の底はもっとも罪深い人間が落とされる場所であるが、鎌によって痛みは感じない。

「人間とは不思議なものだ、他人の分まで全ての罪を引き受け、自ら地獄を選ぶとは」
黒い翼の彼らが扉を閉めた。
「テフィルスの遺言は確かに引き受けました。人間は罪深い生き物であり、同時に慈悲深い生き物であるのです」
羽をもった女はそれだけ告げると、次の裁判が始まった。


終。


4.裁判-物書きリージ-

男は真面目に暮らしてきた。
そして小さな家庭を築いた。
可愛い子供が出来て、男は幸せだった。
妻と子供、三人で一緒に生きるものだと思っていた。
働いても働いても暮らしは変わらず、借金の肩代わりをさせられて、妻と子に逃げられた。
ふがいない、趣味で続けていた未発表の小説は遺言となり、男は一人小さな部屋で首をつる。
せめて貯金だけは、死ぬ前に妻と子に。
突然自分の家の前に、別れた夫から少しでもお金があればびっくりするだろうな。
男は少し微笑んで、椅子を蹴り飛ばした。
世は不況、世は食糧不足、世は自然災害の嵐、世は自殺者が増える一方。

裁判を始めます。

足を踏み入れた先は、白い羽の女が白い扉の前に四人、一人は白い本を持っている。
黒い翼の男が黒い翼の前に四人、そのうち一人は黒い本を持っている。
巨大な黄金の上には、鎌を持った黒い翼の男と、白い羽をもった白い翼の女。
男は小説の中に迷い込んだのだろうか、と、高い天井を見上げた。
不思議と怖くない。
「では、始めます。名前はリージ=ミリアス、年齢は五十七」
黒い本を読みあげる。
キョロキョロとリージはあたりを見回した。
「彼は人を一人殺しています。殺してきた生物の数は十万。食料のほかに、いたずらに生物を殺しています。ここに載っているのもおかしなことですが、人がよすぎたせいで他人の借金の肩代わりをして自滅した模様。死因は自殺です」
その言葉に、リージは首をかしげた。
「人を?」
殺した覚えはないが、と、ただそこに突っ立って、告げられる罪を聞いていた。
「裏切りの数は…三人、家庭崩壊を招いたせいで、リージの身内の生活が大変なことになっているようです」
「勝手に自滅して勝手に周りを巻き込むとは、なんて迷惑な奴なんだ」
黒い翼の男がぼそぼそと悪態をついた。
「お黙り、続けなさい」
羽をもった天秤の上の女に促されて、今度は白い本を持った女が読み上げた。
「…おや、こちらにも同じことが書かれています。借金の肩代わりをした、優しすぎる人物だったと。それゆえに自滅したようです。平凡な人生を歩んできた模様、いたずらに殺した生物には墓をつくる程度の優しさはあります。ただ、周りを巻き込んだせいか、ここから先は白紙です」
本を閉じると、女はため息をついた。
「天秤で計らなくてもこれは地獄ではないのだろうか」
黒い翼の男が話しだす。
リージは目の前の巨大な天秤を見ては、好奇心に駆られていた。
周りは天使か悪魔か。
「おお、あなたたちが天使と悪魔か?初めてだ、これで一つは小説が書けてしまうな!」
リージは喜びに満ちた声で、相談しあう彼らを見た。
今何が行われているのか、リージは理解できていないようだ。
「…、まあいい、巻き込まれた人間は?」
少し呆れて、羽をもった女が黒い本の男に聞く。
「はい、離婚する前の妻と子、あと一人は…、?おかしいですね、もう一人の名前が載っていません」
「?」
首をかしげる男に、白い翼の女が口をはさむ。
「お待ちください。おかしいです」
ぺらぺらとめくられる本には、次々と勝手に文字が連なる。
先程白紙だった所はインクで真っ黒になり、ページが勝手にめくられては記載されていく。
「素晴らしい、幻想的だ!この天秤はなんという?羽の生えたあなたたちをモチーフに、小説を書いてもいいだろうか!」
リージは目の前の天秤に感激しているようだった。
黄金色で、巨大な天秤は、リージにとって不思議で偉大な存在に映るようだ。
しかしなんていう能天気。
天秤の上にいる羽をもった女は、リージを一喝する。
しかしリージは目を輝かせ、落ち着かない。
「…お黙り!!して、何が書かれている?追加されたことを述べよ」
白い翼の女が、次々と書かれていく文字に目をやりながら、何とかして元のページに戻ろうとする。
しかし黒い翼の男が述べた。
「いたずらに命を奪った数があまりにも多すぎます。食べるためや生きるためではなく、好奇心による殺戮、命を奪ったことに変わりはありません」
ふむ、と皆は頷いた。その間にも勝手にページは白い本に記載されていく。
「リージ、なぜに好奇心で殺した?たとえ小さな虫であろうと、命は命、言い逃れをしてみたいならして見せるがいい」
黒い翼の鎌を持った男が、リージに向かって問いかけた。
リージは、軽く頷くと、背をまっすぐ伸ばし、ありのままを伝えた。
「もちろん!!小説のためです。死ぬ時はどんな様子か、ずっと小さいころから見て痛かった。わざと蟻を蜘蛛の巣に引っ掛けて、蜘蛛がそれを食べていく様子を見るため。アレ?これって裁判?」
堂々と発したその言葉に、皆は呆れかえって、あるものは笑い、あるものは顔を覆い、あるものは目をそらせた。
「裁判ならどうどうと言える、私は趣味で小説を書いていました。ほら、だって医学だってそうでしょう。マウスやモルモットや兎を殺して医学を発展させる。小説だってリアリティを出すために、どんなふうに血を流すか、それを」
突然黒い本を持った男が笑いはじめた。
皆の視線が男に集中する。
「いやぁ、笑わせてもらった、言い訳しないで堂々と罪状を述べる。お、っと、罪状が増えたぞ。何、やはり罪悪感がないらしい」
黒い本にもすらすらと文字が書かれていく。
白い翼の女たちも、あまりにもストレートに罪の意識のなさに、少々嫌な表情をしている。
「ふむ…、しかしもう一人の裏切りが気になるな」
「少し、よろしいでしょうか。本が止まらないのです。この世界と彼らの住んでいた世界とは時間が極端に違うせいでしょうか」
白い本を持った女は、書かれ続ける文字を一生懸命見ながら、何とかして止めようと試みるが、今までにない早さで書きつづられる内容に、困り果てて本をそのままにさせた。
「所で、私が殺した一人とは?動物なら確かに沢山殺しました。実験とはいえ、すまないことをしたと思っています。しかし人体実験はしたことがない」
ああ、と黒い本を持った男がページを最初の方へめくった。
黒い本には、ただ一人の名前が書かれいた。
「リージが殺したのはリージ、つまり自分自身を殺したことが罪だ」
自殺が罪。
「はあ。自分自身を殺した、確かに。面白い解釈ですね!ここに紙とペンはないですかな、メモでもいいので」
リージは自分のポケットをまさぐるが、ペンと紙は見つからない。
まさか彼らの持っている本に書くわけにもいかない。
「何を書くのですか」
女が言う。
「自分自身を殺すことが罪というが面白いので、メモしておきたいんですよ」
「…」
女は絶句する。
男は笑いを必死にこらえている。
天秤の上の羽をもった女は、今までにないお気楽な性格の男に、何もいえず凝視している。
「!!失礼、見逃しているものがありました。リージは、妻子に少量ながら死ぬ前に金銭を残しているようです」
ほう、と、今度は感心した声が上がった。
女はそれを聞いて、クスクス笑いながら天秤の上の二人に向かって言う。
「彼に罪の意識はないのはどうかと思いますが、基本的に善人の様です。私はそう判断しました。天秤にかけてはいかがですか?」
「そうですね、では本を乗せなさい」
黒い翼の男は、本を乗せる。しかし白い本は、まだまだ書かれることが止まらない。
一体何だと女は困り果てて、次々にめくられていく本の扱いに困り果てた。
それから五分ほどした時、やっとぴたりとやんだ。
本は、びっしりと善行が書かれていた。しかもそれは、彼が死んだ後の行いのようだった。
「では天秤に」
白い羽を天秤に載せようとする女に、本を持った女は、ページをめくり、驚いて声をあげた。
「…、お待ちください、今本に新たに書き足されたことを述べます。リージの残した作品が、世に感動をもたらしているとのことです。救われた人間の数が、更新されていきます。現時点で全世界に。どうやら、残した作品が本になり、世界で人気になっているようです」
それを聞いたリージは、驚いて彼女の手をとった。本に書かれている内容を眺めると、リージには読めない字で、確かに書かれている。
「何と!私の小説が!?一体それどういうことですか」
「そちらの本に、裏切りの人物が一人書かれていませんか?」
女は、黒い本を乗せた男に向けて言う。ぺら、と天秤の上の黒い本はめくれ、やはり何かが書きたされたようである。
男はそれを確認する。
「裏切り、の人物が書きたされています。これはなんだ?リージを嫌っていた人間の様だ…」
「はい、その人物と、元妻がリージの遺品整理の際、リージの遺作であるそれを見て、本にすると決意したようです。先程本が止まらず書き続けていたのはそれに対する評価だそうです」
リージはその言葉を聞いて、天秤の前に立つと、大きく手を広げた。
「それは本当ですか!私の作品が世に出たと!おお、それならばその本は誰に対して印税が入りますか、妻と子に苦労はなくなりますか!?」
「そのようですね」
リージは胸の前で手を組んだ。そして座ると、嬉しさのあまりに涙を流す。
白い本には、リージのヒューマンドラマやファンタジックな内容に、胸を打たれたと、つづられている。
「妻よ、子よ、皆に感謝します!灰色の世界に少しでも光させば、と書き続けていたもの。少しでもこの世界に明るいものが見いだせるようにと書き続けた、しかし私にその資格はないと思っていた。だが、だが、今それが今叶った!ありがとう、死後にこんなにも嬉しいことがきけるとは。これでもう思い残すことは一切ない!」
長く書きつづられた白い本を読みあげるのには苦労しそうだ。
仕方なく、白い本を羽をもった女に渡すと、その本を見た女と、隣の鎌を持った男は、驚いて声をあげた。
「これは…」
めくってもめくっても書かれているのは、称賛の嵐。
何ということか、ここまで人を変えたとある文字がつづられた本は見たことがない。
「リージ、先ほど自身のために殺したと言っていたな」
鎌を持った男は、鎌を持ったまま、地に降りた。
鎌を向け、リージに告げる。
「自身の作品のためとはいえ、殺してきた生物の数はあまりにも多い。よって、お前には輪廻はいい渡せない」
場が鎮まった。
鎌を持った男は、本を読み続ける、羽をもった女を見上げた。
「だが、ここまで人の心をよい方向へ変えた人間はなかなかいない。して裁判は天秤に委ねられる。だが私はここに言おう、輪廻はさせない」
白い本と羽を天秤にかける。
黒い本も天秤にかけられる。
ガク、と一瞬にして天秤は傾いた。
天秤は、善を示した。
「リージ、貴方は天へ行く。しかし輪廻をさせないと言いました。それでもよいですね?」
天秤の上の女は、白い扉へ目を向けた。
それを見てとった女たちは、白い扉をあける。
 扉の向こう、花が咲き乱れ、まるで神話にあるような、石で出来た建造物。そこに、天へ言い渡された亡者がいた。
「ありがとうございます、感謝いたします!!は、そうだ、そこに紙とペンはありますかな?」
リージは扉の向こうに広がる美しい光景と陽の光に、目を細めた。
そよそよと風は流れ、それに乗って花が揺れる。
「?あるにはあるが、何をする気だ」
鎌を持った男は、リージを扉の前へ立たせる。
「私は、そこでずっと書き続けたい。ここに来る前の夢は叶った。次の世界へ歩む人たちに感動を与えたい」
「永遠ですよ?」
女の言葉に、涙をぬぐうと、晴れやかな顔と声で、リージは確かにいった。
「構いません!輪廻なく、ここでずっと作品を書き続けることができるなら、私は幸せだ!そして、ここにいるあなたたちにも見てもらいたい」
リージが振り返る。
「私の作品を、地獄にも天にも、裁判所の皆にも見てもらいたい!」
笑い声が上がった。裁判所にいる全員が、笑いだした。
それにリージはきょとんとするが、皆は相談し合う。
「短期間のうちに遺作で人の心を変えた、人間が書くものはどんなのだろう。面白い、私たちは裁判がない間は暇を持て余している、持ってくるがいい」
その言葉を聞くと、リージが手を振って園へ踏み入れる。
やがて石でできた建造物まで行くと、紙とインクとペンを手に取り、書きだした。
白い扉が閉じられた。

それからしばらくたち、リージはずっと作品を書いては、ここに来る人々に読ませている。
明るい陽の光の下、作品を書き続ける彼は、特殊な存在になった。
「面白い人間ですね。死んでから遺したものが世に認められ、まさか我々の退屈すらも変えてしまうとは」
羽をもった女は、数枚の紙を手にしていた。
リージの作品である。
亡者のいない裁判所、リージの作品を読む彼らがいる。
「ああ、面白かった!久しぶりにドキドキしました。こちらの方の続きも読みたいですね」
「それならもうすぐ出来上がるとか…」
白い羽の女も黒い羽の男も、夢中になる。
死んでもなお作品を残し続ける彼は、色んな人に感動を与えているという。







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