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タロは仔犬の時から左目がつぶれていた。それを、幼稚園だか、小学校低学年だったかの僕が、当時のマンガに出てきたお気に入りのヒーロー「片目のジョー」みたいだと思い、僕だけがジョーと呼ぶようになった。
たまには、みんなと同じようにタロと呼ぶこともあったけど、ジョーは、タロと呼んでも、ジョーと呼んでも、同じように僕に飛びついてきて、しつこいくらい僕の顔をなめ回した。
ジョーは、おとなしい犬で、他の人には、こんな事はしなかった。
僕とジョーが抱き合って笑っているのを見るたびに、おじいちゃんは「タロは俺よりお前の方が好きだからなあ」と決まり文句のように言っていたのだ。
「お墓参りに行ってあげなさいよ」 母親が少し硬い声で言った。
「うん、わかった。夏休みに帰った時に行く」 僕が、そう答えると、母親はちょっと黙ったあと 「そうしなさい」 と言って電話を切った。

いたざわしじま・吉田哲也