閉じる


<<最初から読む

35 / 37ページ

第34話 秘密の企画


 データーポンポコ社での『イボリューション・ストーリー』のプレゼンテーションは1度は不合格となりましたが、10匹の若い新入社員たちによる評価と、ヌラリンさんのカネポン社長への説得のおかげで、もう1度チャレンジできるチャンスにめぐまれました。

 

 ぼくはモグリンさんと、プレゼンテーションでカネポン社長や各部署のリーダーから言われた意見や質問内容を整理し、そして、それらを参考にしながら、もう1度企画内容を見直すことにしました。もちろん、ミーちゃん、ゼロワンさん、ピコザさん、そしてファルコン社長の意見も大切に取り入れながら……。


 「どうだい企画のほうは? こんどは合格しそうかい?」

 

 ファルコン社長の質問に、ぼくは企画の修正作業の手を休めて答えました。

 

 「だいじょうぶだと思います。あの時、データーポンポコ社のみなさんに指摘された企画の欠点を修正し、お客が望む『ゲーム』として、そしてデーターポンポコ社が望む『商品』としても期待に答えられるようなものにしたつもりです」


 「ほぉ。『商品』として期待にこたえられるもの……か。ブブくんも、そういうことが言えるようになってきたんだな。ずいぶん成長したもんだ」

 

 社長は、まるで成人になった自分の息子を見るように、ぼくのことをやさしい目で見つめました。

 

 「ドット絵のアニメにビックリしてたころが、ウソのようですワン!」

 

 ゼロワンさんも、ぼくが『森のげえむ屋さん』の面接を受けたころを、なつかしむように言いました。

 

 「うむうむ。ゲームのこともよくわからず、企画書や仕様書の書き方もわからなかったのに、よくここまで育ってくれたもんだ。これもひとえに、オイラの愛のこもった指導のおかげだよなぁ……。モグモグ」

 

 モグリンさんは、ぼくではなく、ぼくを育てた自分のことをなつかしむように腕を組み目をつぶって感慨にふけりました。

 

 「ブブくんが1人前になれたのは、ブブくん自身が努力したからよ」

 

 ミーちゃんが、みんなに3時のオヤツを配りながら言いました。

 

 「そうだな。ブブくんは、よくがんばったと思うよ。だからプレゼンの時もゲームの女神さまがほほえんでくれたんだろう。きっと、次のプレゼンも女神さまがほほえんでくれるとオレは信じてるよ」

 

 そう言うとピコザさんは天井を見上げ、見えない女神さまに向かって投げキッスをしました。

 

 (ありがとう、みんな……)

 

 みんなの温かい気持ちに、ぼくは心の中で感謝しました。


 ぼくはミーちゃんからもらった3時のおやつを食べながら、机の引き出しを開けました。そして、ある企画書をこっそりと取り出しました。その企画書は会社の仕事とは関係のない、ぼくが個人的な趣味で作ったものでした。でも、いつか、ゲームにできればいいなぁと夢みている『秘密の企画書』でもありました。

 

 その内容ですが――

 

 『森の王国』に住む6匹の『ゲーム屋さん』たちが、それぞれが持つ不思議な心のパワーを使いながら冒険を続け、最後に『夢食いの国』に住む悪の魔王を倒します。そして、魔王にうばわれた世界中の動物たちの『夢』をとりもどして、みんなを幸せにみちびく……と、いうストーリーで、ジャンルはロールプレイングゲーム。それも、最近はやりはじめたコンピュータ通信を使って友だちといっしょに遊ぶという、今はまだ作ることができない未来のゲームでした。

 

 秘密の企画書は、その内容はほぼ完成していましたが、ゲームのタイトルだけが決まっていませんでした。

 

 そして、3ヶ月後――


 『森のげえむ屋さん』では新しいゲームの開発が始まっていました。そして、新人も5匹入社し、以前よりも会社の中はにぎやかになっていました。

 

 ミーちゃんは事務の仕事を新人の女の子にバトンタッチし、グラフィックの仕事に専念していました。

 

 モグリンさん、ゼロワンさん、ピコザさんにもそれぞれ新人の部下がつき、自分の仕事をしながら後輩の指導をするという、いそがしい毎日を続けていました。


 もちろん、ぼくにも部下ができました。

 

 「ブブ先輩! ちょっと質問があるんですが、よろしいですかチュー?」
 「いいよ。なんでも、きいて!」
 「この『進化システム』についてなんでチュが……」

 

 ぼくは後輩のネズミのチュー吉くんの質問にていねいに答え、次の仕事の指示を出しました。

 

 しばらくして、ちょっと気分転換に外の空気でもすいに行こうと思ったぼくは、仕事の手を休め、机の引き出しから例の『秘密の企画書』を取り出し、それを持って外へ出ました。


 外は家の中で仕事をしているのがもったいないくらい良い天気で、青空にうかぶ雲の白い色がとてもまぶしく感じられました。

 

 ぼくは思いっきり背伸びをし、深呼吸をしました。そして、会社の目の前にある小さな公園のベンチに腰をおろし、秘密の企画書に目を通しながらそのゲームのタイトルを考えようと思いました。

 

 ふと、ぼくは何気なく、目の前にあるぼくの会社が入っているマンションを見上げました。会社の窓からぼくに気づいたなかまたちが、ぼくに手をふっていました。ぼくもなかまに手をふり返しました。

 

 そして、その時、今まで迷っていたゲームのタイトルが決まりました。

 

(やっぱり、これが1番いいなぁ……)

 

 ぼくは、胸のポケットからボールペンを取り出し、秘密の企画書の表紙にそのタイトルをゆっくりと書きました。

 


 『ドリーム』……と。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

この物語を、ゲーム業界を目指す

すべての夢ある若者たちへ捧げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


奥付



森のげえむ屋さん


http://p.booklog.jp/book/41157


著者 : hiranobuncho
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/hiranobuncho/profile


感想はこちらのコメントへ
http://p.booklog.jp/book/41157

ブクログのパブー本棚へ入れる
http://booklog.jp/puboo/book/41157



電子書籍プラットフォーム : ブクログのパブー(http://p.booklog.jp/
運営会社:株式会社paperboy&co.



この本の内容は以上です。


読者登録

平野文鳥さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について