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第29話 パミリーコンピュータ登場!

 

 「みんな~っ!! 買ってきたぞぉ~っ!!」

 

 『ビッケカメラ』のロゴがはいった大きな紙袋を持ったモグリンさんが、勢いよく会社のドアを開けました。

 

 「キャッ♪ 早く、見せて、見せて!」
 「売り切れてなくて、よかったですワン!」

 

 ミーちゃんを先頭に興奮した会社のなかまが、いっせいにモグリンさんの紙袋のまわりに集まりました。そんなみんなの興奮をしずめるかのように「あわてない、あわてない」と冷静をよそおうモグリンさんでしたが、その言葉とは逆に、買ってきたものを紙袋から取り出すその手はふるえていました。

 

 「ジャジャーン! ついに登場! これがパミリーコンピュータだ!」
 「おお~っ!」

 

 モグリンさんが取り出したもの。それは、ニンチャン堂から発売された家庭用ゲーム機『パミリーコンピュータ』でした。

 

 家庭用ゲーム機は以前にも発売されてはいましたが、値段が高く、性能もいまいちでした。しかし、この(略して)パミコンは、ゲームセンターで人気のあった『マルオ兄弟』という人気ゲームがほとんど同じグラフィックで楽しめたり、パソコンとして簡単なプログラムが組めたり、電子銃で射撃ゲームもできたりと、まさに『夢の玉手箱』だったのです。

 

 「ねぇねぇ、ソフトは何を買ってきたの?」

 

 ミーちゃんがモグリンさんにきくと、モグリンさんは『マルオ兄弟』と『マルオゴルフ』だよ、と答えながらゲームカセットを袋から取り出しました。

 

 「あとは?」
 「あとって?」
 「このパミコンって、ゲームセンターのゲームが遊べるのが『売り』なんでしょ? 『ゼニウス』や『ルドアーガの塔』は買ってこなかったの?」
 「買うもなにも、ショップで売ってたのはニンチャン堂のものばかりだったよ」
 「じゃあ、発売の予定は?」
 「いや、特に告知もなかった」
 「え~。ニャムコのゲームが遊べると思って期待してたのに~……」

 

 ニャムコファンのミーちゃんがちょっとガッカリしていると、社長室からファルコン社長がニコニコしながら出てきました。

 

 「ミーちゃんに、いいニュースがあるぞ」
 「え?」
 「さっき、ニャムコが来年からパミコンでゲームソフトを発売するって発表したんだ」
 「ほんとうですか!?」
 「で、最初のゲームは『ゼニウス』。その次が『ルドアーガの塔』らしい」
 「キャア~ッ! やったあ~!」

 

 大喜びしてピョンピョンと小おどりするミーちゃんを見ながら、ゼロワンさんが社長にたずねました。

 

 「その他のメーカーはどうなんでしょうワン? たとえば、あの『マンベーター』や『エレベーターハクション』で有名なダイトーさんとかは?」
 「ダイトーも参入を決定したそうだ」
 「おお~っ! ワンワ~ンッ!」

 

 ゼロワンさんは大喜びして部屋の中をグルグルとかけまわりました。


 「あたしはニンチャン堂のゲームも好きだから、さっそく仕事が終わったら買いに行くわ。ねぇ、ブブくんもいっしょに買いにゆかない?」

 「いいですけど、だいじょうぶですかね? もう、売り切れてませんかね?」

 「だいじょうぶだと思うけど……」

 「いや、たぶん売り切れてるはずだ」

 

 モグリンさんが、とつぜんクールな表情でキッパリと言いました。

 

 「さっき『ビッケカメラ』に行った時はもう数台しか残ってなかったから、今から行っても絶望的だろう」

 「え~っ……」

 

 ぼくとミーちゃんは、ちょっとがっかりしました。

 

 「だいじょうぶ! こんなこともあろうかと……」

 

 そう言うと、モグリンさんは別の紙袋の中からパミコンをもう2台出しました。

 

 「もう2台、余分に買っておいたんだ」

 「へぇ~! モグリンにしてはずいぶん気がきくわね。じゃあ、1台、あたしに売ってちょうだい」

 「お値段は3割増しとなります」

 「えっ?」

 「一応、手数料ということで。だって、買ってここまで運んでくるのがタイヘンだったしね。エヘヘ……」

 「……」

 

 (え~? モグリンさん、親切心でパミコンを買ってきたんじゃなくて、最初からそれが目的で買ってきたの? そういうことしちゃマズイよぉ~……)

 

 ぼくはモグリンさんの『せこさ』にあきれながら、ミーちゃんの顔を横目で見ました。

 

 (うっ……!)

 

 ああ、なんと恐ろしい……。ミーちゃんは今まで見たこともない鬼のような形相になっていたのです。ぼくはビビリました。でも、モグリンさんはぼく以上にビビっていました。

 

 「モグリン……」

 「は、はい?」

 「あなた、本気なの……?」

 「え? い、いえ! 冗談です。ジョ~ダン!」

 「それ、笑えない…………」

 「うっ……。じゃ、じゃあ、しょーもない冗談を言ってしまったおわびに、1割安くお売りしますよ。エヘヘヘ……」

 「え、いいの? なんか悪いなぁ~。モグリン、ありがとう!」

 「いえいえ、どういたしまして。トホホホ……」

 

 (ほ~ら、言ったことじゃない。ガラにもなく『せこい』欲を出すから、そういうことになっちゃうんですよ。モグリンさん!)

 

 ぼくは、うなだれたモグリンさんを見ながら、モグリンさんは絶対悪い事ができない性格なんだろうなぁと、苦笑いしてしまいました。ちなみに、もう1台はぼくが買い取りました。でも、ミーちゃんみたいに1割安くはしてくれませんでした。残念……。


第30話 トラちゃんクエスト

 

 そのゲームを手にしたのは、ぼくが『森のげえむ屋さん』に入社して2年目の春を迎えようとしたころでした。

 

 『パミリーコンピュータ初の本格RPG、ついに登場!』

 

 そんな宣伝コピーで発売されたそのゲームのタイトルは『トラちゃんクエスト』。開発したのは『株式会社フェニックス』という、あまり聞いたことのない名前のメーカーでした。

 

 モグリンさんが言うには、フェニックス社は国内のパソコンゲームメーカーの中では、わりと知名度は高いほうだそうです。でも、パソコンゲームはほとんどやったことがないし、ましてや自宅にパソコンすら持ってない自分にとっては無名のメーカーに等しいものでした。

 

 それなのに、そのメーカーの『トラちゃんクエスト』を買ってしまったの理由は、まずひとつに、キャラクターデザインがぼくの大好きなマンガ家『トリヤマアキポン』によるものだったから。次に音楽が、これもぼくの大好きな作曲家『スギヤマン』によるものだったから。そしてゲームジャンルが『RPG(ロールプレイングゲーム)』だったからです。

 

 (トリヤマアキポンや、スギヤマンがどんなゲームの世界を作ってくれるんだろう? RPGってどんな遊びだろう?)

 

 ぼくの『トラちゃんクエスト(略してトラクエ)』に対する期待は、なみなみならぬものでした。

 

 「ブブくんはRPGは初めてだったよね? オイラはパソコンでけっこう遊んでいてかなりくわしいから、わかんないことがあったら何でも電話できいてくれたまえ」

 

 帰宅途中、ぼくと一緒に『トラクエ』を買ったモグリンさんは、RPGの師匠みたいな口ぶりでそう言うといそいそと自宅へ帰って行きました。ぼくは明日が日曜日だということもあって「よし、今夜は徹夜でこのゲームをやりこんでみるぞ!」と気合たっぷりでアパートへ帰りました。
 
 アパートに帰ったぼくは、あせる気持ちを抑えながらパミコンに『トラクエ』のゲームカセットをさしこみ、電源スイッチを入れました。すると、テレビ画面に『FENIX PRESENTS』というクレジットが出たあと、電子音のファンファーレが高らかになり始めました。

 

 (おお~っ! さすがスギヤマン。今までのゲーム音楽とはぜんぜんフンイキがちがうぞ!)

 

 ファンファーレと同時に、『TORACHAN QUEST』というタイトルが、まるで映画のそれのように画面下から登場します。

 

 「おお~っ! なんかそれっぽ~い!」

 

 なにが、それっぽいのかは自分でもよくわかりませんでしたが、ぼくのハートは今までにないワクワク感でいっぱいになっていきました。

 

 そして、ゲームを始めて30分――

 

 ぼくは『トラクエ』の世界にすっかり魅了されてしまい、夕食をとることさえ忘れていました。そして最初はよくわからなかったRPGのシステムも、やっているうちにだんだんと慣れてゆきました。

 

 (すげぇ……。ほんとうにキャラクターが成長しているみたいだ……)

 

 最初はスライムという1番弱い敵も倒せなかった主人公が、ゲームを始めてから1時間後にはスライムを一発で倒せるぐらいに強く成長していました。

 

 (これが、モグリンさんが言ってたロールプレイングゲームのおもしろさかぁ……)

 

 ぼくは、モグリンさんがいつも『RPGは絶対おもしろい! いつかRPGはテレビゲームの主流になる!』と力説していたことを思い出し、モグリンさんの言ってたことは本当になるかもしれないなぁ、と思いました。

 

 それからぼくは、時間を忘れて、夕食も忘れて、でもトイレは忘れずに『トラクエ』を遊び続けました。

 

 それから――いったいどれくらいの時間がたったでしょうか? ダンジョンの中で迷ってしまったぼくはちょっと休憩しようと思い、ゲームコントローラーを床に置き背伸びとアクビをしながら部屋の置時計を見ました。

 

 (ゲゲッ!? 朝の5時!)

 

 プルルル……。プルルル……。

 

 突然、部屋の中を電話の呼び出し音が鳴りひびきました。

 

(だれだ? こんな時間に)

 

 ぼくは眠い目をこすりながら受話器をとりました。相手はモグリンさんでした。

 

 「ブブくん、今、レベルいくつ?」
 「えっ? こんな時間にかけてきて、いきなりそんな質問ですか? う~んと、レベル12ですね。モグリンさんは?」
 「オイラ? オイラはレベル15……」
 「へぇ~。さすがモグリンさん。早いですね」
 「ま、まあね。ところで、ブブくんはトロの村に入れた?」
 「そんなの、とっくにですよ。モグリンさんもでしょ?」
 「……」
 「ん? どうしたんですか?」
 「トロの村へ入る門のカギが見つかんなくてさ……。で、おなじ所をグルグル回って敵と戦ってばかりいたら、いつのまにかレベルが15になって……」
 「へ?」
 「ねぇ、ブブくん……。『トロの村の門のカギ』ってどこにあるの?」
 「え? あのカギを見つけるのって、めちゃくちゃ簡単じゃないですか」
 「…………」
 「あのぉ~、モグリンさん。まさか本当に見つけられないんですか?」
 「…………………………」

 

 ぼくは、受話器の向こうからモグリンさんが出す、なんとも言えないイヤ~なオーラを感じ取りました。そして、ここは素直にカギの場所を教えた方が賢明だと判断しました。

 

 「わ、わかりました。あのカギはですね……」
 「わかった! たぶん『バグ』だな」
 「え?」
 「ブブくんに簡単に見つけられて、ぼくが見つけられないということはありえない。こりゃ、ぜったい『バク』だな! あとでフェニックスに電話してみよう」
 「バグじゃないと思いますけど……」
 「いや、絶対『バグ』だ!」
 「ヘンだなあ……。門からちょっと離れた木の後ろにいる少年からもらえませんでしたか?」
 「木の後ろにいる少年? ちょっとまって……」

 

 モグリンさんは電話をきらずに受話器をいったん床に置き、ぼくの言ったことをたしかめるためにゲームを再開したようです。ていうか、眠いんだからカンベンしてよ~。

 

 「あ!」

 

 受話器からモグリンさんのちょっとマヌケな声が聞こえました。

 

 「あった、あった! なんだかなぁ~。簡単すぎて気づかなかったよ~。まいったなぁ~」

 

 (まいったのはこっちの方だよ! バ~カ!)と、ぼくは思わず怒鳴りそうになりましたが、こんな時間にゲームのことでムキになるのも大人げないと思い、ぼくはグッとがまんしました。

 

 「サンキュ、サンキュ! あっ、そうそう、ブブくん。あまりゲームをやりすぎるのは体に悪いから、そろそろ寝たほうがいいと思うよ。じゃあね! おやすみ~」

 

 モグリンさんはそう言うと一方的に電話をきりました。

 

 (ゲームよりモグリンさんの方が体に悪いよ……)

 

 ぼくはモグリンさんのせいで体から力がぬけてしまいました。

 

 ――しかし、ここまでぼくらを夢中にさせてしまう『トラクエ』……というか、RPGという遊びは、いったいどんな風にして作られているんだろう?

 

 (こういう、みんなを夢中にさせるゲームを作ってみたい……)

 

 ぼくは窓の外の朝焼けを見ながら、こみ上げてくる今までにないゲーム作りへの情熱をおさえることができなくなりました。


第31話 みんなの企画

 

 「ブブくん。『トラちゃんクエスト』みたいなゲームを考えてみないか?」

 

 ファルコン社長がぼくに言いました。

 

 「え?」

 

 ぼくは最初、社長が冗談を言ってるのかと思いました。そして、もう一度ききなおしました。

 

 「トラクエってパミコン用のゲームですよね? うちの会社ってアーケード用のゲームを作ってる会社だったはずですが……」

 「今ままではね。でも、これからはパミコン用のゲームにも挑戦することにしたんだ」

 「え~っ!? マジですか?」

 

 ぼくの大声に、まわりのなかまたちがいっせいに「なんだ? なんだ?」とビックリした表情でぼくを見ました。社長はぼくのあまりの驚きように苦笑いしながら話を続けました。

 

 「データーポンポコ社のカネポン社長からたのまれたんだ。パミコン用のゲームを企画してくれないかって? それで、ブブくんにトラクエみたいな大ヒットするRPGを考えてほしいってリクエストがあったんだ」

 

 「へぇ~! ブブくん、すげぇじゃん」

 

 モグリンさんが、とても『うらめしい目』でぼくをジットリと見つめました。でも、ぼくは正直言って複雑な気持ちでした。パミコン用のゲーム、それもトラクエみたいなRPGの企画はとてもやってみたかったんですが、カネポン社長のリクエストというのがなんかイヤだったんです。だって、ぼく、カネポン社長のことが大嫌いですから。

 

 「おや? うかない顔だね。もしかしてカネポン社長のことがひっかかってるのかい?」

 

 ぼくはファルコン社長から心の中をズバリとあてられ動揺しました。

 

 「あたりだね。まぁ、ブブくんの気持ちもわからなくはないけど、今回の仕事はうちの会社にとってもチャンスなんだ。どうか『森のげえむ屋さん』の未来のためだと思って引き受けてくれないか?」

 

 (『森のげえむ屋さん』の未来のため……)

 

 「おいおい、ブブくん。なに悩んでんだよ? 仕事だぞ」

 「な、悩んでなんかいませんよ!」

 「あのぉ~、社長。もしブブくんがやりたくないようでしたら、オイラがかわりに考えますよ。モグモグ……」

 「やります! ぜひ、やらせてください!」

 

 ぼくは、いつになく元気な声で返事をしました。だって、「カネポン社長が嫌いだから仕事をしぶっている」とまわりから思われるのはイヤだったし、モグリンさんからワガママな奴って思われるのもシャクだったからです。それに、あの『トラちゃんクエスト』のようなRPGはとても作ってみたかったし。

 

 「そうか。じゃぁ『ザ・クマさんプロレス』のときのように、ブブくんとモグリンくんとで協力しあって考えてくれ」

 「オイラも考えていいんですか?」

 「もちろん」

 「やったぁ!」

 

 ぼくとモグリンさんの返事を確認したファルコン社長は、いつも以上のニコニコ顔で社長室へもどってゆきました。

 

 「すごぉ~いっ! あたしたちもトラクエみたいなゲームが作れるかもしれないのね!」

 

 そう言って、ミーちゃんはうれしそうに体をクルリと回転させました。

 

 「ワオ~ン! うれしいですワン。とりあえずトラクエのプログラムを研究しとこうでワン」

 

 そう言って、ゼロワンさんが部屋の中をグルグル駆けまわりました。

 

 「トラクエか……。オレも苦手なクラシックを勉強しとかなくちゃな」

 

 いつもは余裕たっぷりのピコザさんが、めずらしく緊張した表情をして言いました。

 

 さっそく、ぼくはモグリンさんといつものように2匹で企画会議を始めようとしました。でも、なぜか今回の企画に関しては、この会社のなかま全員で考えてみたいなぁ、という気持ちになってきました。

 

 「モグリンさん。今回の企画会議には、この会社のなかま全員に参加してもらうというのはいかがです?」

 「え、全員? なんで?」

 「う~ん……。うまく言えないんですが、今回の企画は『森のげえむ屋さん』の未来につながるようなものにしたいんです。だったら、ぼくら2匹だけじゃなくて、『森のげえむ屋さん』にいるみんなでその未来を考えてみたいかなぁ、なんて思って……」

 

 モグリンさんはしばらくだまっていましたが、なぜかその目はしだいにウルウル状態になってゆきました。

 

 「いいこと言うなぁ……ブブくんは。オイラ感動しちゃったよ。うん、わかった。そうしよう。みんなで考えよう」

 

 そういうと、モグリンさんは会社のなかま全員をよび、ぼくの言ったことを伝えました。

 

 「ほんと? あたしも企画に参加していいの? うれしい!」

 

 そう言って、ミーちゃんはうれしそうに体をクルクルと2回転させました。

 

 「ほんとですかワン! ボクも一度でいいから企画に参加してみたかったですワンワ~ン!」

 

 そう言って、ゼロワンさんが部屋の中をいつもより速いスピードでグルグル駆けまわりました。そして目が回ってひっくりかえってしまいました。

 

 「いいアイデアだね、ブブくん、モグリン。ありがとうな」

 

 ピコザさんもうれしそうに言いました。

 

 とてもよろこんでいるみんなを見ながら、ぼくもとてもうれしい気持ちになってゆきました。すると、社長室から出てきたファルコン社長がみんなの笑顔を見て言いました。

 

 「みんないい顔してるね。そんなにRPGに挑戦するのがうれしいの?」

 

 ミーちゃんが、みんながよろこんでいる理由を社長にていねいに説明しました。

 

 「『森のげえむ屋』さんの未来につながるゲームを、みんなの力で考えてみたいか……」

 

 社長は腕組みをして目をつぶり、なにかを考えはじめました。

 

 (あれ? なんかマズかったのかな。もしかしたら、ぼくとモグリンさんが企画に自信がないからみんなをさそった、と思われちゃったかな……)

 

 ぼくはちょっと不安になりました。みんなもその表情から笑みがちょっと消えました。

 

 しばらくして社長はゆっくりと目をあけ、こう言いました。

 

 「うん、よい提案だ。『森のげえむ屋さん』はここにいるみんなの会社だ。だから『森のげえむ屋さん』の未来をみんなで作りたいという気持ちに私が反対する理由がない。さぁ、みんなでトラクエのような、たくさんの動物たちによろこんでもらえる素晴らしい企画を考えてくれ。期待してるよ」

 

 社長はニコニコしながら、そう言ってぼくらを応援してくれました。

 

 「ありがとうございます! みんなでがんばります!」

 

 ぼくはみんなを代表して社長にお礼を言いました。みんなも笑顔をとりもどし社長にお礼を言いました。

 

 「まってください、社長!」

 

 社長室にもどろとしたファルコン社長を、ミーちゃんが呼びとめました。

 

 「なんだい?」

 「社長も、あたしたちといっしょに企画を考えませんか?」

 「え? いやぁ……、おさそいはうれしいけど、役にはたたないと思うよ」

 

 社長は照れ笑いしながら言いました。するとモグリンさんが、つかつかと社長にもとへ歩みより、フンッと胸をはってこう言いました。

 

 「だいじょうぶですよ、社長! オイラがちゃんと指導しますから! モグッ!」

 「そ、そうか。じゃぁ、よろしくお願いします。モグリン先輩」

 「うむっ!」

 

 「ワハハハハ……!!」

 

 モグリンと社長の冗談に、みんないっせいに大笑いしました。

 

 そして、その日。みんなで始めた企画会議は時間がたつのも忘れるぐらいとても盛り上がり、終電近くまで続けられました。


第32話 未来へのプレゼン~その1

 

 『森のげえむ屋さん』の社員全員が参加したパミリーコンピュータ用のゲーム企画は、みんなの自由な意見やアイデアを取り入れ、試行錯誤を繰り返しながら、1か月後に完成しました。

 

 そのタイトルは『イボリューション・ストーリー』

 

 内容は、主人公の『ある生命』が、エデンという名の目的地を目指して5億年の『進化』の冒険をしてゆくという設定の『生命進化』をテーマにした、ちょっと変わったRPGでした。

 

 「なるほど。しかし、ずいぶん斬新な企画になったんだなぁ……」

 

 ファルコン社長が完成した企画書を読みながら、そうつぶやきました。社長は、最初のころは企画会議に参加していましたが、社長業が忙しくなってきたため途中から会議に参加できなくなりました。だから、企画が最終的にどういう内容になったのか知らなかったのです。

 

 「絶対たくさんのお客さんたちに楽しんでもらえると、ぼくらは自信をもっています!」

 

 ぼくは、みんなを代表して社長に言いました。

 

 「わかった。ここまできたら、もう私はよけいなことは言わない。きみたちを信じるよ」

 

 「ありがとうございます!」

 

 ぼくは正直言って、社長から企画内容に関してもっといろいろ言われるかなと思ってました。でも、なんのためらいもなくOKを出してくれたので、ちょっと驚きました。

 

 「それで、データーポンポコ社への企画のプレゼンテーション(説明)だが、来週、データーポンポコ社内で行われることに決まった。プレゼンにはカネポン社長や各部署のリーダーたちが参加される。たぶん、20匹くらいになると思う」

 

 「え~っ!? そんなにおおぜい参加されるんですか」

 

 ぼくはそれを聞いて、もう緊張してきました。

 

 「あの会社はむかしからそうなんだ。それで、参加者全員の挙手による多数決で企画の合否を決定するんだ。その場でね」

 

 「えっ? その場って……、ぼくらがいる目の前でですか? モグッ」

 「そうだ」

 「キビシイなぁ……。まるで裁判所の判決みたいだ。ゴクリ……」

 

 モグリンさんも緊張してツバを飲みこみました。

 

 「プレゼンは、私とブブくんとモグリンくんの3匹で参加する。きちんとプレゼンできるように予行演習をしといてくれ」

 「わかりました!」

 

 ぼくとモグリンさんは緊張しつつも元気な声で社長に返事をしました。

 

 「『イボリューション・ストーリー』はみんなが全力をつくして考えてくれた企画だ。私はみんなの頑張りに本当に満足している。あとは、ゲームの女神さまが私たちの企画にほほえんでくれるのを待つとしよう」

 

 社長はそう言うと、はげますかのようにぼくとモグリンさんの肩をポンポンとたたきました。

 

 「ブブくん、モグリン、がんばってね!」

 「ボクも応援してるでワン!」

 「オレはゲームの女神さまに祈っておくよ」

 

 みんなのはげましに、ぼくは心が引き締まりました。モグリンさんも今まで見たこともない『男らしい』気合いのはいった表情を見せていました。

 

 そして――

 

 ついに、その日がやってきました。

 

 プレゼン会場となるデーターポンポコ社の会議室には、カネポン社長や各部署のリーダーたち20匹がテーブルについていました。そして、そのまわりにはプレゼンを見学にきたと思わる10匹の若い新入社員たちがイスにおとなしくすわって、プレゼンが始まるのを今か今かと待っていました。

 

 カネポン社長の横にはヌラリンさんもすわっていました。ヌラリンさんは会場に入ってきたぼくとモグリンさんに気づくと、手をふってほほえんでくれました。緊張が頂天にたっしていたぼくとモグリンさんは、ヌラリンさんの笑顔のおかげで緊張をちょっとだけやわらげることができました。

 

 「それでは今から、株式会社『森のげえむ屋さん』による、パミリーコンピュータ用ゲームソフトの新企画のプレゼンテーションを始めます」

 

 進行役のヌラリンさんがそう言うと、参加者たちはいっせいに目の前に置かれていたぼくらの企画書のコピーを手にとりました。

 

 「それでは『森のげえむ屋さん』、お願いいたします」

 
 ファルコン社長はぼくとモグリンさんをチラッと横目で見て、(がんばれよ!)と目ではげましてくれました。

 

 まず最初にプレゼンするのはモグリンさんです。モグリンさんは『イボリューション・ストーリー』のコンセプト、ターゲットユーザー、セールスポイント、おおまかな遊び方などのゲーム概要をプレゼンします。

 

 「ただいまご紹介にあずかりました『森のげえむ屋さん』企画担当のモグリンともうします。本日はお忙しい中、このようなプレゼンの場をもうけていただき、まことに感謝しております。それでは、まず、わたくしの方から『イボリューション・ストーリー』の企画概要を説明させていただきます。お手もとの企画書の1ページをお開きください……」

 

 ぼくは驚きました! (今しゃべってるのは本当にモグリンさんなんだろうか?)と、わが目をうたがわせるぐらいモグリンさんのプレゼンはすばらしいものでした。今までにない真剣な表情をし、しっかりとした口調でよどみなく説明するちょっと大人のモグリンさん……。ぼくはマジで尊敬してしまいました。


 「――以上、ゲーム概要の説明を終わらせていただきます。では、次に同じく企画担当のブブがゲーム内容を説明いたします」

 

 モグリンさんのプレゼンは10分ほどで終わりました。モグリンさんはデーターポンポコ社の社員に向かって深々とお辞儀をしてイスにすわりました。そして、フウ~と息をはくと、気合の入った目つきでぼくに(たのむぞ……)と小声で言いました。

 

 さぁ、次はぼくの番です。モグリンさんの堂々とした姿を見たぼくは(緊張して、まいあがってなんかいられないぞ!)と自分自信に言い聞かせ、心を落ちつけてプレゼンに挑みました。

 

 「エヘン……。き、企画担当のブブともうします。そ、それでは、くわしいゲームの内容に関して、ご説明させていただきます……」

 

 やはり、すこし緊張していたのか、最初はうまくしゃべれなかったぼくでしたが、ファルコン社長の(だいじょうぶ。落ちついて……)という声にはげまされたおかげで、それからはとちることなくスラスラとプレゼンすることができました。


 それから、ぼくのプレゼンは20分ぐらい続きました。プレゼンの最後の方に近づくとぼくもだんだん調子がでてきたのか、いつものように情熱をこめて説明することができました。


 「これで『イボリューション・ストーリー』のプレゼンテーションを終わります。ご静聴、まことにありがとうございました!」

 

 会場からパラパラと拍手がおこりました。ぼくがイスにすわりハンカチで汗をぬぐうと、ファルコン社長とモグリンさんが「おつかれさま!」と、ぼくをねぎらってくれました。


 「それでは、これから企画に関しての質疑応答を始めたいと思います。意見や質問のあるかたはどうぞ」

 

  進行役のヌラリンさんがそう言うやいなや、カネポン社長が手を上げました。

 

 「進化がテーマって、まるで『学校のお勉強』みたいだな。客は学校の勉強を忘れたくてゲームを遊んでいるというのに、きみたちは本気でそんなお勉強みたいなゲームがうけると思ってるのかい? え?』

 

 カネポン社長がそう言って苦笑すると、まわりの社員たちもそれに合わせるかのように苦笑しました。

 

 次に営業担当のリーダーが意見をしました。

 

 「RPGと言えば『剣と魔法の世界観』が市場的にも1番人気があります。なのに、なぜ、それに反するかのような設定にするんでしょうか? わざわざ人気のない設定を選ぶこともないと思うのですが」

 

 次にゲーム企画部の若いディレクターが意見をしました。

 

 「進化システムが、ちょっと難しいと感じました。ぼくが難しいと思ったのだから、たぶん、普通のお客さんたちも難しく感じると思うのですが……」

 

 次に、ゲームグラフィック部のリーダーが、

 

 「キャラが『地味』じゃないかな? 今どき恐竜なんか、はやらないと思うよ」

 

 次に、プログラム部のリーダーが、

 

 「自由に進化できるシステムとおっしゃいますが、パミコンの容量には限界がありますよ。あと、進化する時のグラフィックデータの転送スピードも気になります」


 それからも企画に対する意見や質問は続きました。

 

 でも、そのほとんどが否定的なものばかりでした……。


第33話 未来へのプレゼン~その2

 

 データーポンポコ社での『イボリューション・ストーリー』のプレゼンテーションに対する反応はあまりかんばしくなく、意見や質問も否定的なものばかりでした。

 

 でも、ぼくとモグリンさんはへこたれません。それら、すべての否定的な意見や質問に対し、すべて前向きな回答で返しました。だって、『森のげえむ屋さん』のみんなで力を合わせて考えて考えまくった企画ですから、負けるわけにはいかないのです。

 

 どんな否定的な意見や質問に対しても情熱をこめて前向きに答えるぼくらに対して、カネポン社長をはじめ各部署のリーダーたち全員が黙りこんでしまいました。
 
 「あのう……、ぼくも発言してよろしいでしょうか?」

 

 プレゼンを見学していた10匹の若い新入社員の中の1匹が、遠慮ぎみに手をあげました。カネポン社長は(おまえはだまってろ!)みたいな目つきでその社員をにらみましたが、それをヌラリンさんがさえぎり発言を許可しました。

 

 「ありがとうございます。ぼくはゲーム企画部の新入社員のピーノと言います。ぼく、この企画、とてもおもしろいと思います。たしかに『剣と魔法の世界観』のファンタジーも楽しいですが、進化の歴史自体をファンタジーにするというこの企画の発想には、正直、ビックリしました。そして、どんな世界になるんだろうとワクワクしてしまいました」

 

 すると、それを聞いていた別の新入社員も手をあげて発言しました。

 

 「わたしもそう感じました。たしかに、まったく問題点がないと言ったらウソになりますが、でも、それ以上に、この企画が持つワクワク感は否定できないと思いました」

 

 ぼくは意外なところから好意的な意見が出たことに驚きました。そして、社員ではなく普通のお客さんから応援されたような不思議な気持ちになりました。もしかしたら、ゲームの女神さまが彼らにそう言わせたのかな?――なんて、思ってしまいました。


 意見を言った2匹の新入社員がすわると、進行役のヌラリンさんが立ち上がりました。


 「それでは、そろそろ時間も押してきましたので、今からこの企画の合否を挙手による多数決によって決めたいと思います。参加者は全員で20匹。10匹以上の賛成があれば合格となります。棄権は認められません。みなさん、よろしいですか?」

 

 「了~解!」

 

 カネポン社長や各部署のリーダーたち全員が緊張した表情で答えました。

 

 「いよいよ裁判の判決がくだるぞ……。無罪ならいいよなぁ……」

 

 また、いつもの調子にもどったモグリンさんが、ぼくに冗談っぽく小声で言いました。でも、その手は緊張してふるえていました。

 

 「では、この企画に賛成のかた、挙手をお願いします!」

 

 手があがりました。賛成してくれた社員は……5匹でした。

 

 「賛成が5匹。残りの15匹は反対とみなし、多数決により『森のげえむ屋さん』が提案された企画『イボリューション・ストーリー』は否決されました」

 

 ぼくはショックで目の前が一瞬まっくらになりました。

 

 「まぁ、当然の結果だろうな。家庭用ゲームはアーケードゲームとわけがちがう。まぁ、プロレスも冒険だったが、この企画はあまりにも冒険しすぎて危険すぎる。期待はしたんだがな」

 

 カネポン社長がそう大声で言うと、反対したまわりのリーダーたちも「うんうん」と社長に合わせるかのようにうなずきました。

 

 (おわった……。ミーちゃん、ゼロワンさん、ピコザさん。プレゼン失敗しちゃってゴメンね。みんな一生懸命がんばってくれたのに。どうやら、女神さまはほほえんでくれなかったみたい……)

 

 ぼくは泣きそうになりましたが、泣いてしまうとデーターポンポコの社員にバカにされそうだったので、グッとがまんしました。いつもならメソメソするだろうモグリンさんも、ぼくと同じことを思ってたみたいで、ひきつった顔で涙をがまんしていたようです。

 

 「どうも、本日はありがとうございました!」

 

 ぼくとモグリンさんは立ち上がり、データーポンポコ社の社員全員にお礼をしました。そしてプレゼンの資料をかたづけ始めようとした時、ヌラリンさんが「ちょっと待って!」と言ってカネポン社長に何かを話し始めました。

 

 「う~む。新入社員の教育のためかぁ……。まぁ、プレゼンの結果もでたことだし、いいだろう」

 

 カネポン社長はそう言うと腕を組んでイスにふんぞりかえりました。ヌラリンさんは、このプレゼンを見学していた10匹の新入社員たちに大声で言いました。

 

 「きみたちも、今の企画に賛成か反対か挙手してほしい!」

 

 プレゼン会場がどよめきました。

 

 ゲーム企画部の若いディレクターが立ち上がってヌラリンさんに言いました。

 

 「ヌラリンさん。彼らはまだゲームという商品のことがよくわからない素人(しろうと)ですよ。はっきり言って、そこらへんにいるゲームユーザー(客)と変わりません。そんな連中にそんなことをさせて何の意味があるんでしょうか?」

 

 「そこらへんにいるゲームユーザーと変わらないから、君たちよりも参考になるんだよ」
 「えっ?」

 「みんな、今の彼の意見は気にしなくていい。さぁ、社員であることを忘れ、ユーザーだったころの気持ちにもう一度もどって、正直に賛成か反対か手をあげてみなさい」

 

 見学していた10匹の新入社員たちは全員ビックリして顔を見合わせました。

 

 「反対のもの!」

 

 10匹の新入社員たちは、だれも手を上げませんでした。

 

 「賛成のもの!」

 

 「はいっ!」

 

 10匹の新入社員たち全員が、元気な声でいっせいに手を上げました。

 

 「お~っ……」

 

 各部署のリーダー全員のどよめきがプレゼン会場にひびきました。

 

 ぼくと、モグリンさんと、そしてファルコン社長は、その信じられない光景に驚きました。ぼくはなんか目頭が熱くなってきて、10匹の新入社員たちがゆがんで見えました。

 

 ヌラリンさんがカネポン社長に話しかけました。

 

 「社長」
 「なんだ?」
 「この結果を、どう思われます?」
 「どうって……。ゲームのことがよくわからん新入社員が全員賛成しただけだろ」
 「さっき、あのディレクターはその新入社員がそこらへんにいるゲームユーザーと変わらないと言いましたが、それについてはどう思われます?」
 「そのとおりだろ、違うか?」
 「ぼくもそう思います。社長。ゲームって、いったいだれが楽しむものだと思われます?」
 「そりゃぁ、ゲームユーザーに決まってるだろ!」
 「ということは、そのゲームユーザーと変わらない新入社員の意見を無視することはできませんよね。社長?」
 「あ……」

 

 カネポン社長は、ヌラリンさんの理屈にまんまとはまってしまったことに気づきました。

 

 「社長、もう1度、あの企画にチャンスをあたえてあげましょうよ。あの企画には可能性があります」
 「う~む……」
 「あのゲーム、きっと社長を大もうけさせてくれますよ」
 「なにっ!? 大もうけ? ……ん? どこかできいたような会話だな」


 カネポン社長は腕組みして、ちょっと考えこみました。そして何かを決意したかのようにスクッと立ち上がり、プレゼン会場にいる社員全員を見回したあと大声で言いました。

 

 「今回のプレゼンは、もう一度やりなおす!」

 

 「え~っ……?」

 

 プレゼン会場がまたどよめきました。

 

 「社長! 社長もふくめ、リーダー全員の多数決で決めたものを、今さらくつがえすのはいかがなものかと」

 

 さきほどのゲーム企画部の若いディレクターが不満そうな顔で言いました。

 

 「かまわん! いやなら、君は次のプレゼンに参加しなくていい。ほかのリーダーも不満があるやつは参加しなくていいぞ。じゃぁ、ヌラリンくん。あとのことはたのんだ」

 

 そう言うと、カネポン社長は会議室からスタスタと出てゆきました。他のリーダーたちも社長のあとを金魚のフンのようにゾロゾロとついて出てゆきました。そして、ひとり残った若いディレクターはあっけにとられた顔で、しばらくポカンとしていました。


 ヌラリンさんがニコニコしながらぼくらのところまで歩いてきて、ファルコン社長に向かって言いました。

 

 「と、いうことで今回のプレゼンはやり直しとなりました。ファルコン社長や、ブブくん、モグリンくんには、またお手数をおかけしますが、もう一度チャレンジしていただけますでしょうか?」

 

 「ありがとうございます!」

 

 ファルコン社長はヌラリンさんに深々と頭を下げてお礼をしました。

 

 ぼくはヌラリンさんの心使いに感動して涙が出ました。モグリンさんも普通の顔で大粒の涙を流していました。

 

 「お礼を言うなら、彼らに言ってください」

 

 そう言ってヌラリンさんは、まだ会議室に残っていた10匹の新入社員の方へ向かって頭をふりました。新入社員たちはぼくらの方を見てニコニコしながら立っていました。

 

 「みなさん、ほんとうにありがとうございました!」

 

 ぼくらは新入社員に向かって頭を下げお礼を言いました。すると、それに答えるかのように新入社員の1匹が「お礼なんかいいですよ~! そのかわり、次回はぜったいプレゼンを成功させてくださいね~!」と言って応援してくれました。

 

 ぼくは頭を上げて10匹の新入社員たちを見つめました。彼らの後ろに『ゲームの女神さま』がほほえんでいたような気がしました。



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