| 作者 | wlb-cafe | 状態 | 執筆中 | ||
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| カテゴリー | ビジネス・教育・社会 (政治・社会, ビジネス) | 価格 | 無料 | ページ数 | 34ページ (Web閲覧) 65ページ (PDF) |
| タグ |
ワークライフバランス少子化労働育児ビジネス |
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数年前に書かれた本であるにも関わらず、2010年3-5月にTwitter上で紹介されたこの本は、日々、子育てと仕事に奮闘する多くの方々に読まれ、共感を呼びました。一人のワーキングマザーがそのことを著者に伝えたところ、反響を大変喜んでいただけました。そこで、この問題に関心のある有志が集まり、「ワークライフバランス・カフェ」を結成。より多くのみなさんに、この本を知ってもらいたい。また、強い問題提起を行った本書を手がかりに、個人や個々の企業といったミクロの視点と、国や社会といったマクロの視点の双方からアプローチし、「より生きやすい社会、より幸せな人生」を叶える方法を考えてみたい。そんな想いから、著者を招いた対談イベントを企画。2010年10月24日に、無事に開催することができました。
開催から一年が経ち、主な活動を停止していたワークライフバランス・カフェですが、Twitter上での交流会の復活を望む声も多く、新しい仲間も増えました。そこで、対談イベントを知らない方にも、このコンテンツをシェアしたいとの想いから、今回の電子書籍の発刊に至りました。
※現在、スタッフによる用語解説を除いたプレ公開中です。
まえがき
「迷走する両立支援」は2006年に出版された本です。
この本の目的は、仕事と家庭の両立支援について追い風の中で、
2009年にこの本を読んだ私は、
2010年3月、
数名がブログで感想を書いたことでより読者の輪が広がり、
このひとかたまりの読者の存在と彼らの感想を、
そして、できればお会いしてお話を聞きたいとお願いしたところ、
さっそく交流会を企画するための有志をTwitterで募ったところ
2010年10月、
対談相手にイクメンプロジェクトの仕掛人の一人である厚生労働省の山口正
この貴重な対談の内容をぜひ記録に残したいと思い、
仕事をしながら子育てをしている方、
育休後コンサルタント
当交流会・司会 山口理栄
ごあいさつ・登壇者紹介
司会:皆さん、こんにちは。今日は休日にもかかわらずお越しいただき、ありがとうございました。ただいまより、『迷走する両立支援』対談&著者との交流会を始めます。私は本日の司会を務めます、山口理栄と申します。よろしくお願いいたします。USTREAMの中継も始まっています。
それでは、早速、今日対談をしてくださるお二人を紹介します。『迷走する両立支援』の著者、生活経済政策研究所主任研究員でジャーナリストの萩原久美子さんと、イクメンプロジェクトの仕掛け人の一人、厚生労働大臣政務官秘書官の山口正行さんです。まず、萩原さん、自己紹介をお願いします。
萩原:皆さん、はじめまして。座ったままで失礼します。萩原と申します。今日は読者との交流会ということで本当に光栄です。筆者としてこんなうれしいことはないと思っています。皆さん、読んでいただいて本当にありがとうございます。
私はそもそも新聞社で働いていたんですけれども、その後、フリーでものを書いたり、今は大学を中心に、主には労働社会学と社会調査法などを教えたり、あと研究者として研究所に籍を置いて研究したりしています。皆さんがおそらく一番聞きたいことだとは思うんですけど、子供はいるのか、と。実は書いた時点で、子供は小学校高学年くらいだったんですが、今は、早いもので高校生になりました。
自己紹介というとその程度になるわけですが、新たな出会いをいただいたことを心から感謝しています。何よりもやっぱり今回驚いているのは、この本は、4年前に出した本なんだということです。本という媒体は、ある意味、非常に長期的な息の長い媒体であり、古くからある媒体であるわけです。一方、私は新聞社の出身なので、非常に速報性のあるスタイルでもって書き急ぐ。今のことを書かなくてはと取材し、原稿に向かっていったわけですけれども、編集者の北山理子さんが、「萩原さん、急ぐことないんだ」と。「これは長期的なメディアなんだからじっくり書けばいいんだ」と言ってくれたんですね。それがとてもありがたかった。そしたら、それが今度は、ものすごく瞬発性のあるネット上のソーシャルネットワークでパッとつながって…。この、メディアの重層性も感じますし、その重層性の中で皆さんとこの本が共有されたっていうのは、繰り返しますけど、今の時代の変化みたいなことも含め、驚いています。
ですので、今日はそういう新たな出会いの場で皆さんと一緒にいろいろ考えていきたいと思いますし、改めてご意見を頂戴できたらと思います。
司会:ありがとうございました。続きまして、山口さん、自己紹介をお願いします。
山口:はい。山口正行と申します。本日はこのような場に招いていただいて大変光栄です。イベントスタッフの皆さん、ありがとうございます。
私は昭和51年に生まれまして、平成11年に当時は厚生省だった厚生労働省に入省しました。その後、平成14年に結婚をして、その年に留学、その翌年には長女を授かりまして、アメリカで1年間、勉強と育児の両立をすることになりました。上の子が1歳になるまでは学生として1年間を一緒に生活することができました。平成16年にこちらに戻ってきまして、雇用保険の担当などをした後に、平成20年の7月から今年の8月まで職業家庭両立課というところに配属になり、今回の育児・介護休業法の改正に主に携わりました。
実際には、具体的に法律の条文を書いたりなどしました。それから、ご紹介のあった「イクメンプロジェクト」という、男性の育児休業を進めていこうというプロジェクトを立ち上げて、その運営に携わりました。その後、この8月に異動になりまして、今は、厚生労働大臣政務官という、厚生労働省のトップとして入っている政治家の方にお仕えをする秘書官という仕事をしております。
ちょっと前後しますが、第二子になる長男が平成21年の10月に生まれまして、そのときに育児休業を約1か月間取りました。「イクメンプロジェクト」を進めつつ、自分でも育児休業を取ってその良さを皆さんに伝えていけるという仕事ができるのは、非常に恵まれているなあと思ったこともあり、今回この場に招いていただいて本当にうれしく思います。
今日の会は私自身もすごく楽しみにしていますので、本音で話したいと思います。今日お話しすることは私の個人の見解で、組織の見解とか役所の見解などではありません。私の個人的な思いも含めてお話したいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
(登壇者・司会者の詳しいプロフィールは、こちらからもご覧になれます。http://socio-logic.jp/meiso/meiso2.php)
ひとつのツイート
今年の3月、Twitter上でこんなつぶやきが流れました。
「数年以内に昇進しないとクビが涼しくなるといった類のことを言われた。昇進する=責任が重くなる=定時退社は無理ってことも。次男はまだ4歳。数年後の身の振り、あるいは会社の変え方を考えなくては」
このツイートをされた方は女性です。これを見て、去年読んだ『迷走する両立支援』の中に同じような境遇の方がたくさん紹介されていたことを思い出し、この本が参考になりますよと返事をしました。すると、他にもこの本を読んだという方や、読みたいという方のツイートがどんどん増えていったのです。例えばとてもいい本だったけれど気分が重くなった覚えがあるとか、思い当たる節がありすぎて胸が痛みますとか、そういった感想が次々と出てきました。
スライドでもご紹介していますが、『迷走する両立支援』のTogetter(※)というものを作りました。そうしたら今度はそのページの閲覧者数が500というように、みるみるうちに増えていったので自分自身でもすごくびっくりしました。
たぶん本を書いた萩原さんは、こんなに話題になっていることを知らないでしょう。出版されてから4年も経っている現時点での反響をぜひ著者に伝えたいなという強い思いがありました。そこで出版社の太郎次郎社エディタスの編集部にコンタクトを取りました。本の後ろに書いてあるメールアドレスにメールを出して、萩原さんの連絡先を教えてください、と。本日も会場にお越しいただいている編集の北山様が教えてくださって、萩原さんにメールを出しました。
そうしたら次の日になんと萩原さんから電話があり、私が交流会をしたいとメールに書いたことについて「ぜひ」とお返事をいただきました。交流会をするとなると、自分一人ではちょっと荷が重いということで、Twitterでこの本を読んだ人たちに呼びかけてみたんです。一緒に萩原さんと読者の交流会を企画しませんか?と。そうしたらメンバーとなる面々をはじめいろいろな方が手を挙げてくださって、この企画を運営しているメンバーが5月の中旬に集まるに至りました。
萩原さんのご都合もありすぐには交流会を開けないということがわかったので、開催までは、Twitter上で決まった曜日、決まった時間に集まっていろいろ意見交換をするというワークライフバランス・カフェのようなことをやってみようということになりました。5月29日から10月23日の前夜祭まで全部で14回。毎回テーマを決めて、土曜日の夜10時から12時までの2時間に#wlb_cafeというハッシュタグを使って、みんなで話し合う場を設けたのです。
実際に萩原さんとお会いしたのは8月で、そのときに10月に交流会をやりましょうと決めて、9月には山口正行さんとお会いして、今日に至ります。これほどまでに息長く私たちの心を揺さぶる『迷走する両立支援』という本を萩原さんがなぜお書きになったのか、そのきっかけと、この本で読者に伝えたかったことは何なのかというのをお話いただけますでしょうか?
(※Togetter(トゥギャッター):Twitterのツイートをテーマごとに抜き出して、まとめることができるツールで、誰でも自由にまとめを作ることができる。)
「ワークライフバランスで解決」?
では、そもそもなぜ本を書こうと思ったのか。まずはタイトルのことからお伝えします。『迷走する両立支援』というタイトルですが、この作業に取り掛かっていた2005年、2006年というのは、少子化への危機感が非常に大きくなって、少子化に対する注目度が以前に増して高まっていたときです。一方、だいたい2003年ぐらいから行政の言葉として「ワークライフバランス」という言葉が登場してきます。新聞や雑誌等のメディアの一部ではかなり早い段階の2001年ごろから、記事等で登場するようになってきます。
ですから、少子化とワークライフバランスという2つのキーワードをタイトルに持って行ったほうが注目もされるだろうし、図書館などのキーワード検索でも引っかかりやすいのではないかということは、編集者の方と議論しました。しかし、あえて「両立支援」という、ある意味クラシックな言葉を選んだわけです。
なぜかというと、あえてクラッシックな言葉を使うことで、今始まった問題ではなく、私たち、この社会がずっと抱えている課題として考えたいと思ったからです。いわゆる「仕事と家庭の両立」と言われる状態や両立することの困難さを、いとも容易く「ワークライフバランスで解決」とか、「○○で解決」とか、そんな簡単なものだって思って欲しくなかったんです。こうしたら解決できると簡単に言って欲しくなかったっていう思いがすごくあります。
皆さんもすでに実感されていると思いますが、仕事と家庭、これらは分けて考えられるものでしょうか? それらは引っくるめたら皆さんの人生そのものではないですか。人生そのものの折り合いを自分の中でどうやってつけようかという悩みの渦中にいる人が、「ああ、制度できたから解決だ」というようなことは無いだろうと思ったのです。まさに自動販売機で100円入れたらジュース出てきてああ良かったという、そういうことではないだろうと。
ワークライフバランスと言ってしまえば、「ワーク」、「ライフ」、「バランス」という言葉が一連につながっているわけですが、ここで言うワークとは何でしょうか。ワークと言えば、雇用されて働く、賃金をもらって働くというワークのほうを思うかもしれません。しかし、ワークという言葉は英語で使う以上、ケアワーク、ドメスティックワーク、アンペイドワーク、ボランタリーワーク、とにかくいろんな形のワークがあるわけです。それを想像していただいたら、朝起きて寝るまで、皆さんはワークの連続なわけです。では、ワークとライフをバランスさせるってどういう意味なのかと考えました。
加えて、当時のアプローチの仕方も考えてみました。当時は、少子化だ、両立困難だ、お母さんたちが大変だと言っている、育児休業だ、短時間勤務だ、制度を充実させなければならない…となったわけです。2003年から2005年にかけて、今の原型になるようなものは、ほぼ出そろったわけですよね。
そこで私は、それでいいのかな、と。“さあ、制度はできた。あとはそれを利用して皆さんのノウハウを駆使しながら、いわゆるワーキングマザーたるもの明るく軽やかにいきましょう、前向きに”。そういうことでいいのだろうかと思ったのです。つまり、その制度を利用した人が何パーセントになりました、女性の就業率が何パーセントになりました、男性の育児参加は何パーセントです…。そうやって数値に置き換えられていくことで、結果的に日本は両立できる世界になった、ワークライフバランスが達成できる社会になったと言えるのかなと。そこがすごく私の中の問題意識としてありました。
最終的に編集者の北山さんが「仕事に打ち込み、生活と呼べるだけの経済的基盤を持ち、子供や家族との時間を大切にする」と私が書いたものに、「ただこれだけの暮らしが、なぜこんなにも遠いのか」と言葉を足して、とても良い帯を付けてくれました。これがやっぱり根本のところです。
個人ではなく社会のありよう
当時1999年から2005年にかけて、両立支援というものへの追い風が吹いていたわけですね。ところが一方で、サービス残業と長時間労働に歯止めがかからず、むしろ、この時期にどんどん増えていきます。そして非正規雇用の問題が表面化していく。そういう時代だったわけです。
雇用の柔軟化と言われ、仕事と家庭の両立と言われながら、実態は雇用劣化、雇用の基盤が崩れていっているような状態です。さらにその時期は、ジェンダーバッシングもありました。小泉政権下で構造改革が本格化し、「規制緩和」でひた走っていく。さらには皆さん、記憶に新しいと思いますが、格差社会ということがこの時期にパーンと言われるようになります。
その中で会ったお母さんたちというのは、皆さん本当にきれいで、「ああ、仕事を頑張ってらっしゃるんだな」という雰囲気で、前向きに、お子さんのことも一生懸命考えながらやっているのだろうなという感じの方ばかりでした。生き生きとはつらつとして頑張っているお母さんたち、子育ても仕事も頑張っている親っていう感じなのです。本当にそうなのです。
その方たちとお話をする中で、実は、「悩んでいますか?」と聞いたことは一度もありません。「困っていることはありますか?」と、聞いたことは一度もないのです。ただ淡々と生活やその状況を聞いていく。その中で象徴的だったことは2つあります。
職場は育児に対して理解はあります、制度もあります、と。しかし「でも」と言うわけですね。「でも」と言ってから黙られたり、あるいは考えられる。また、短時間勤務を利用して働き続けられるし、実際、私はそれでやっている、という方も、「でも…」となるわけです。「うーん」とも。
私は、この「でも」から始まる部分、この「うーん」と言った後のところを言葉にしたいと思いました。そこに彼女たちの逡巡をすごく感じたわけです。逡巡というのは、両立の悩みや困難を、ノウハウで片付けられる部分に落とし込んで語ろうとすればするほど、自分の言っていることは愚痴で無駄なことを言っているんじゃないか、私はクヨクヨして嫌なやつなんじゃないか、本当は私に能力がないことが問題なんじゃないかというためらいです。
結果、彼女たちは「私の話は悩みとか苦労というものじゃない。制度も利用できているし、実際働いているし」とか、「こんなとりとめのない話でいいんですか」ということを必ず言っていました。
中には、すごく明るく話していたのに「でも」と言って、その大きな目からポロポロポロッと涙があふれてきて、何も言えなくなるという方もいました。例えば、「昇進や昇格は難しいかもしれないよ」と上司に言われたという体験、時間にすれば人生においてたった1秒か2秒のことに過ぎないかもしれない。ですが、その瞬間の持つ意味というのは、その人の人生そのもの、生き方そのものに突き刺さってくるわけですよね。やり過ごしてしまえばいいのかもしれないけれども、生き方とか人生に刺さってきた部分に、やっぱり私は向き合いたかった。頑張っている人たちに向き合いたかったというのが一番大きかったです。
それはやはり、個人の問題なのではなくて、こうやって彼女たちが体験していることそのものが今の社会のありようだと思うからです。子供を持って働くことを自分が選んだのだから、と片付けてしまうようことなく——。いきいきと働きたい、子供を持って充実した暮らしをしたいというささやかな希望が、わがままだとか、贅沢だと言われてしまうこの社会を、やっぱりもう一回考えたいという思いが本のきっかけです。




