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はじめに

~キャラ紹介~



数子(かずこ):QED女子高・生徒会副会長。2年。数学に強い。博識で説明係。会長がアレなので、事実上生徒会を仕切っている。ガメついが、意外と巨乳。




素子(もとこ):QED女子高・生徒会会計。1年。数学は苦手。アタマに花が咲くタイプ。妄想はふくらみやすいが、胸はさほどふくらまないのを気にしている。



~数式表記~

この本ではテキストファイルで数式を表現するために、特殊な表記法を用いることがあります。

x^2:べき乗。xの二乗。

A-1, A^(-1):Aの逆行列。

(1 2):2行2列の行列。
(3 4)


a12:行列Aの(1, 2)成分。


A→B、↑AB:ベクトルAB。

Σ(i=1 to n) ai = a0 + a1 + ・・・+ an

∫[a to b] f(x) dx:f(x)の a から b に渡る積分







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連立方程式系1

数子「もとちゃん~もとちゃん~」
素子「なんですか」

数子「うちの学年って、各クラス何人いるのかしら」
素子「そんなの、名簿見ればいいじゃないですか」

数「その名簿が見当たらないから困っているのよ」
素「先生に聞けばいいじゃないですか?」

数「いやよ。名簿をなくした、なんて言ったら怒られるじゃない・・・参ったわね、人数が分からないと、席割もできないし・・・」
素「うーん、学年全体で百人、ってのは覚えてるんですけど」

「あ、それはわたしも覚えてる。覚えやすいのよね、百人て。あとなんか使える情報ない?」
「・・・うーん、運動会の賞品で、一位に3本、二位に2本、三位に1本、一人ずつジュースを配ったところ、200本必要だったって、会計報告に書いた気がします。でもどのクラスが何位だったかな」

「あ、それほんとは198本よ。あまった2本は会長とわたしとで飲んだから」
「今、何か言いました?」
「いえいえ、コホン。順位は校内新聞見れば分かるわ・・・ちょっと待って・・・検索するから・・・ああ、あったわ。一位Cクラス、二位Bクラス、三位Aクラスね」

「そんな情報でいいんだったら、文化祭のコンテストでも食券が配りました。一位Aクラス、二位Bで、三位がCで、それぞれ20枚、10枚、0枚でした」

「あ、それはわたしも覚えてるわ。確か生徒会に割り当てられたのが1000枚で、990枚を出したから、あまった10枚はありがたくもらって」

「今なんて言いやがりました?」
「あ、コホンコホン。なんでもないわ。合計990枚よ。情報をまとめてみるわね。つまり各クラスの人数をa, b, cとして、

     a   + b + c = 100   -①
     2a + b + 3c = 198   -②

     20a + 10b   = 990  -③

という連立方程式ができるから、これを解けば、各クラスの人数が出るということね」

「をー、先輩アタマいー」
「へっへ。これくらい朝飯前よ、じゃ、解いて」

「へ?」
「へ、じゃないわよ。わたしが式作ったんだから、もとちゃん解いてよ」

「えー、あたし?あたし数学苦手なの知ってるじゃないですか。こないだだって赤点ぎりぎりで」
「苦手なのになんで会計やってるのよ、と思ったけど、ぐっとその思いを飲み込んで」

「って、聞こえてる聞こえてる!心の声がもれてますよー、ダダ漏れ!」
「仕方ないわね。ではわたしが解きましょう。このわたしが!」

「なんで強調するんですか!」
「さりげなくアピールして、次期会長の座を獲得・・・」

「って、生徒会内でアピールしてどうするんですか!」
「念には念を入れて・・・・これは、単なる連立方程式でしょ。中学で習ったじゃない。③を10で割れば

     2a + b   = 99     -③
     2a + b + 3c = 198   -②

これと②の差を取れば

     3c = 99, c = 33

この結果を①に入れれば

     a + b + c = 100      -①
                c = 33
            a + b       = 67      -①'

だから、③’との差を取って

     2a + b  = 99    -③
       a + b  = 67      -①'
       a        = 32 

①'にこれを入れれば、

     a + b  = 67      -①'
     a        = 32 
           b  = 35 

OK、分かったわよ。Aクラス32人、Bクラス35人、Cクラス33人ね」
「をー。たしかに3クラス足すと、合計100人になります」

「へっへ~見た?連立方程式の威力をば」
「すごいすごい。でも、ちょっと面倒くさいですー」

「まあ、言われてみれば確かに面倒ね。今は3クラスだったから、わりと簡単に出せたけど、これが4クラス、5クラスだったら大変よね」
「そうそう
。もっとぱっと答えが出る方法はないんでしょうか」

「あることはあるわよ」
「へーどんなどんな」

「食いつきいいわね。行列よ。行列を使うのよ」
「あ・・・行列・・・」

「ん?急に元気がなくなったわね。これ素子や、しっかりおし」
「ふにゃあ。あたしは行列が苦手なんですよ~」

「行列も、でしょ」
「だって、あんな数や文字の塊なんて、見てるだけで吐き気がします!」

「否定はしないわ。確かに授業で教えているのって、行列式やら逆行列やら、もう単なる数式ゲームでしかないし」
「そうですよ。あんなのなんで学校で教えるんですか?なんでギム教育なんですか?」

「素子サン、行列には意味があるのよ」
「あ、ツッコミどころはそこじゃないです・・・」


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連立方程式系2

数子「さて行列には意味があるって話をしたわよね」
素子「ええ、どんな意味ですか~?」

数「それは『連立方程式を解く』という崇高な目的よ!」
素「ええー、なんてことですか!まさか行列にそんな隠されたメッセージがあったとは・・・」

「ちょっとちょっと、もとちゃん、あんたノリ良すぎ」
「あ、すみません。ちょっとキャラが弱いって、指摘されたもんで」

「指摘ってなによ・・・前回はこういう連立方程式を解いたわよね。

     a   + b + c = 100   -①
     2a + b + 3c = 198   -②

     20a + 10b   = 990  -③

これって、行列で表現すると、こう書けるのよ。

     ( 1   1 1) (a)    (100)  
     ( 2   1 3) (b) = (198)  

     (20 10 0) (c)   (990) 

「をー、行列にこんな使い道があったなんて。たしかにこう書くと、すっきりしますね!」
「さらに左からそれぞれの行列をA、X、Bと置くと、この行列の式は

     AX=B

になるわ」
「すごい!もっとすっきりしましたね!行列すごい!」

「まだこれで驚いちゃいけないわよ、もとちゃん。さらにAの逆行列A-1を左からかけてあげると、

     A-1 A X = A-1 B
     ⇔ E X = A-1 B
     ⇔
X = A-1 B

となるけど、このXってなんだったか覚えてる?」
「ええと・・・Xって、(a, b, c)つまり各クラスの人数のことですよね」

「そう。言いかえると、この連立方程式の解。これが求まるのよ!」
「ひー、行列えらい!副会長ばんざい!!」

「っておちょくってんのか、おのれはw」
「すいません、ちょっとノリすぎました。でもすごいですよ、逆行列計算するだけで、解がわかるってのは」

「そう。実はこれが行列が考え出された理由の一つなのよ。乱雑な連立方程式系を簡潔にまとめて、機械的に解く。そのために『行列』っていうツールが発明されたわけ」
「へー、そんな過去があったんですねぇ・・・でも逆行列って、どうやって計算するんですか?」

「3次の正方行列(注1)については、『たすき掛けの公式』があるわ」
「なんですか、『たすきがけ』ってのは。てか、そもそも『たすき』ってなんですか?」

「『たすき』って、和服の裾をまとめるのに使った紐のことよ。左右から『×』の形にまとめたんで、『たすき掛け』って『×』の形に掛け合わせる、って意味よ」
「をー、さすが時代を見てきた人は違いますね!」

「誰が見てきただ、誰が!」
「あ~先輩、やめてください、頭をぐりぐりするのは。いたい、いたいです~」

「今でも駅伝なんかで帯を掛けるでしょ。あれもたすきの一種よ。まあ、流石に今では『たすき』を知らない人が多いから、『サラスの公式』って呼ぶことも多いわね」
「『サラス』っておいしそうですね!」(アタマをさすりながら)

「それは『サラミ』!」
「ああ、あのギリシャとペルシャの海軍が戦った・・・」

「それは『サラミスの海戦』!って、もとちゃん、よく知ってるわね~」
「数学以外ならまかせてください!」

「頼もしいけど・・・でも残念ながら、この本は数学の本なのよね~・・・『サラス』は19世紀フランスの数学者よ。彼が発明した公式なので、こういう名前がついているわけ」
「数学の公式って、だれかの名前が付いているのが多いですね~」

「そうね。科学だと『質量保存の法則』とか『相対性理論』とか、その内容から名づけることが多いんだけど、数学は抽象的だから、そうしづらいのかもね・・・。

『サラスの公式』ってのは、行列の成分を『左上から右下にかけて掛け合わせて足し合わせ、右上から左下に掛けて引きあわせると、行列式が求まる』、というものよ。二次のときは

a11   a12
  \  /
   /  \
a21   a22

     |A| = |a11 a12| = a11a22 - a12a21
            |a21 a22|

三次のときは

            |a11 a12 a13|
     |A| = |a21 a22 a23|
            |a31 a32 a33|

     = a11a22a33 + a13a21a32 + a31a12a23 - a13a22a31 - a11a23a32 - a33a12a21

よ。試しに計算してみるわね。

        ( 1   1  1)   
     A = ( 2   1  3)   

        (20 10  0)
だから、
          | 1   1  1|   
     |A| = | 2   1  3|  

          |20 10  0|
     = 0 + 20 + 60 - 20 - 30 - 0
     = 30


となるわ」
「四次のときは?」
「四次以上については、残念ながらサラスの方法は使えないわ。別の方法を使うけど、それについては後で説明するわね」

「じゃあ期待してます・・・ところで『|  |』ってなんですか?絶対値ですか?」
「行列に絶対値はないわ。これは『行列式』を示す記号よ。『det A』と書くこともあるわね」

「『行列式』ってなんですか?」
「色々な意味があるけど、ここでは『逆行列を作る重要なパーツ』と覚えておけば十分なのだわ」

「あ、『行列式』って逆行列じゃないんですか」
「『逆行列』は行列だから、ベクトル量ね。それに対し、『行列式』はスカラー量で、全然別の概念よ」

「『ベクトル量』ってなんですか?」
「平たく言えば、『数の塊』ね。行列やベクトルなんかがそうよ。詳しくはこの章の最後に書いておくから、そっちを見てね」


「はあ・・・で、逆行列はどうやって作るですか?」

「この行列式を使うと、三次の行列の逆行列は

             [a22a33 - a23a32 
a13a32 - a12a33  a12a23 - a13a22]
     A-1 = 1/|A|  [a23a31 - a21a33 
a11a33 - a13a31  a13a21 - a11a23]
             [a21a32 - a22a31 
a12a31 - a11a32  a11a22 - a12a21]

となるわ。実際に計算してみるわね。さっき|A| = 1/30と計算したから、これを使って

        [ 1   1  1]  
     A = [ 2   1  3]  

        [20 10  0]

              (a22a33 - a23a32 
a13a32 - a12a33  a12a23 - a13a22)
     A-1 = 1/|A|  (a23a31 - a21a33 
a11a33 - a13a31  a13a21 - a11a23)
              (a21a32 - a22a31 
a12a31 - a11a32  a11a22 - a12a21)

               ( 0 - 30  10 -  0    3 - 1)
         = 1/30  (60 -  0   
0 - 20   2 - 3)
              (20 -20 
20 - 10   1 - 2)

              (-30   10    2)
         = 1/30  (  60 
-20  -1)
              (   0  
10   -1)

となるわ。X = A-1 Bだから

 (-30  10   2) (100)            (-3000+1980+1980)           ( 960)    (32)
1/30 (  60 -20 -1) (198) = 1/30 (6000-3960-990)     = 1/30 (1050) = (35)
(   0  10  -1) (990)            (0+1980-990)                    ( 990)    (33)

「おー、たしかにクラスの人数が出ますねー。
アタマいいですね、これ考えた人・・・で、二次行列の逆行列はどう計算するんですか?」
「二次の場合はカンタンよ。こうすればいいの」

     A-1 = 1/|A|  (
a22  -a12)
              (
-a21   a11)

「ふんふん。じゃ4次は?」
「4次以上の場合は、カンタンな公式はないわ。やり方としては、余因子を使うんだけど」


注1:
正方行列って、行の数=列の数な行列のことよ!形が正方形みたいだから、「正方行列」って名前がついてるわ。

      (1 2)
      (3 4)

なんて形の行列ね!



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