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連立方程式系2

数子「さて行列には意味があるって話をしたわよね」
素子「ええ、どんな意味ですか~?」

数「それは『連立方程式を解く』という崇高な目的よ!」
素「ええー、なんてことですか!まさか行列にそんな隠されたメッセージがあったとは・・・」

「ちょっとちょっと、もとちゃん、あんたノリ良すぎ」
「あ、すみません。ちょっとキャラが弱いって、指摘されたもんで」

「指摘ってなによ・・・前回はこういう連立方程式を解いたわよね。

     a   + b + c = 100   -①
     2a + b + 3c = 198   -②

     20a + 10b   = 990  -③

これって、行列で表現すると、こう書けるのよ。

     ( 1   1 1) (a)    (100)  
     ( 2   1 3) (b) = (198)  

     (20 10 0) (c)   (990) 

「をー、行列にこんな使い道があったなんて。たしかにこう書くと、すっきりしますね!」
「さらに左からそれぞれの行列をA、X、Bと置くと、この行列の式は

     AX=B

になるわ」
「すごい!もっとすっきりしましたね!行列すごい!」

「まだこれで驚いちゃいけないわよ、もとちゃん。さらにAの逆行列A-1を左からかけてあげると、

     A-1 A X = A-1 B
     ⇔ E X = A-1 B
     ⇔
X = A-1 B

となるけど、このXってなんだったか覚えてる?」
「ええと・・・Xって、(a, b, c)つまり各クラスの人数のことですよね」

「そう。言いかえると、この連立方程式の解。これが求まるのよ!」
「ひー、行列えらい!副会長ばんざい!!」

「っておちょくってんのか、おのれはw」
「すいません、ちょっとノリすぎました。でもすごいですよ、逆行列計算するだけで、解がわかるってのは」

「そう。実はこれが行列が考え出された理由の一つなのよ。乱雑な連立方程式系を簡潔にまとめて、機械的に解く。そのために『行列』っていうツールが発明されたわけ」
「へー、そんな過去があったんですねぇ・・・でも逆行列って、どうやって計算するんですか?」

「3次の正方行列(注1)については、『たすき掛けの公式』があるわ」
「なんですか、『たすきがけ』ってのは。てか、そもそも『たすき』ってなんですか?」

「『たすき』って、和服の裾をまとめるのに使った紐のことよ。左右から『×』の形にまとめたんで、『たすき掛け』って『×』の形に掛け合わせる、って意味よ」
「をー、さすが時代を見てきた人は違いますね!」

「誰が見てきただ、誰が!」
「あ~先輩、やめてください、頭をぐりぐりするのは。いたい、いたいです~」

「今でも駅伝なんかで帯を掛けるでしょ。あれもたすきの一種よ。まあ、流石に今では『たすき』を知らない人が多いから、『サラスの公式』って呼ぶことも多いわね」
「『サラス』っておいしそうですね!」(アタマをさすりながら)

「それは『サラミ』!」
「ああ、あのギリシャとペルシャの海軍が戦った・・・」

「それは『サラミスの海戦』!って、もとちゃん、よく知ってるわね~」
「数学以外ならまかせてください!」

「頼もしいけど・・・でも残念ながら、この本は数学の本なのよね~・・・『サラス』は19世紀フランスの数学者よ。彼が発明した公式なので、こういう名前がついているわけ」
「数学の公式って、だれかの名前が付いているのが多いですね~」

「そうね。科学だと『質量保存の法則』とか『相対性理論』とか、その内容から名づけることが多いんだけど、数学は抽象的だから、そうしづらいのかもね・・・。

『サラスの公式』ってのは、行列の成分を『左上から右下にかけて掛け合わせて足し合わせ、右上から左下に掛けて引きあわせると、行列式が求まる』、というものよ。二次のときは

a11   a12
  \  /
   /  \
a21   a22

     |A| = |a11 a12| = a11a22 - a12a21
            |a21 a22|

三次のときは

            |a11 a12 a13|
     |A| = |a21 a22 a23|
            |a31 a32 a33|

     = a11a22a33 + a13a21a32 + a31a12a23 - a13a22a31 - a11a23a32 - a33a12a21

よ。試しに計算してみるわね。

        ( 1   1  1)   
     A = ( 2   1  3)   

        (20 10  0)
だから、
          | 1   1  1|   
     |A| = | 2   1  3|  

          |20 10  0|
     = 0 + 20 + 60 - 20 - 30 - 0
     = 30


となるわ」
「四次のときは?」
「四次以上については、残念ながらサラスの方法は使えないわ。別の方法を使うけど、それについては後で説明するわね」

「じゃあ期待してます・・・ところで『|  |』ってなんですか?絶対値ですか?」
「行列に絶対値はないわ。これは『行列式』を示す記号よ。『det A』と書くこともあるわね」

「『行列式』ってなんですか?」
「色々な意味があるけど、ここでは『逆行列を作る重要なパーツ』と覚えておけば十分なのだわ」

「あ、『行列式』って逆行列じゃないんですか」
「『逆行列』は行列だから、ベクトル量ね。それに対し、『行列式』はスカラー量で、全然別の概念よ」

「『ベクトル量』ってなんですか?」
「平たく言えば、『数の塊』ね。行列やベクトルなんかがそうよ。詳しくはこの章の最後に書いておくから、そっちを見てね」


「はあ・・・で、逆行列はどうやって作るですか?」

「この行列式を使うと、三次の行列の逆行列は

             [a22a33 - a23a32 
a13a32 - a12a33  a12a23 - a13a22]
     A-1 = 1/|A|  [a23a31 - a21a33 
a11a33 - a13a31  a13a21 - a11a23]
             [a21a32 - a22a31 
a12a31 - a11a32  a11a22 - a12a21]

となるわ。実際に計算してみるわね。さっき|A| = 1/30と計算したから、これを使って

        [ 1   1  1]  
     A = [ 2   1  3]  

        [20 10  0]

              (a22a33 - a23a32 
a13a32 - a12a33  a12a23 - a13a22)
     A-1 = 1/|A|  (a23a31 - a21a33 
a11a33 - a13a31  a13a21 - a11a23)
              (a21a32 - a22a31 
a12a31 - a11a32  a11a22 - a12a21)

               ( 0 - 30  10 -  0    3 - 1)
         = 1/30  (60 -  0   
0 - 20   2 - 3)
              (20 -20 
20 - 10   1 - 2)

              (-30   10    2)
         = 1/30  (  60 
-20  -1)
              (   0  
10   -1)

となるわ。X = A-1 Bだから

 (-30  10   2) (100)            (-3000+1980+1980)           ( 960)    (32)
1/30 (  60 -20 -1) (198) = 1/30 (6000-3960-990)     = 1/30 (1050) = (35)
(   0  10  -1) (990)            (0+1980-990)                    ( 990)    (33)

「おー、たしかにクラスの人数が出ますねー。
アタマいいですね、これ考えた人・・・で、二次行列の逆行列はどう計算するんですか?」
「二次の場合はカンタンよ。こうすればいいの」

     A-1 = 1/|A|  (
a22  -a12)
              (
-a21   a11)

「ふんふん。じゃ4次は?」
「4次以上の場合は、カンタンな公式はないわ。やり方としては、余因子を使うんだけど」


注1:
正方行列って、行の数=列の数な行列のことよ!形が正方形みたいだから、「正方行列」って名前がついてるわ。

      (1 2)
      (3 4)

なんて形の行列ね!



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