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12月14日のおはなし「リスペクト・カウンター」

 「リスペクト・カウンター」は2011年12月、日本でクリスマスパーティーグッズとして発表されたが、当初ほとんど話題になることもなかった。2012年夏、日本の衆議院議員選挙で、一部マスコミがジョークツールとしてこれを使用し人気をさらい、一気に広まったのはご承知の通り。この年の後半には日本にとどまらず世界中でブレイク。アメリカ、ロシア、フランスの大統領選挙では事実上大勢を決したとすらいわれる。21世紀初頭を飾る大ヒット商品となった。現リスペクト・カウンター社CEOの大沢啓太に聞いた。

──「リスペクト・カウンター」の大ヒット、おめでとうございます。
大沢「ありがとうございます」

──彗星のように登場しました。
大沢「(笑)。自分自身がやってきたことはずっと同じなんです。世の中の評価にうまく合うタイミングがこの辺だったということではないでしょうか」

──これほどまでの大ヒットは予想していましたか?
大沢「ないですね。予想はできませんでした。でも期待はしていたんです。こういうものが広まるようなら世の中も捨てたもんじゃないんじゃないかって」

──世の中も捨てたもんじゃないとは、どういう意味でしょうか?
大沢「この商品の基本コンセプトは、要するに“お金に代わる価値基準を提案する”ということだったんです。20世紀って結局お金が多ければ良しとする、お金を集めることさえできれば何でもありみたいにしちゃったじゃないですか。それに対する軽いカウンターパンチという思いもありました」

──それが「リスペクト」を数値化するという試み。
大沢「そうです。他人からたくさんリスペクトを受けている人は金持ちならぬ“リスペクト持ち”だと表示してくれるわけです。逆にどんなに金持ちで権力を振るっていても、リスペクト・カウンターが反応しない、場合によってはマイナスの値を表示するなんてことも起こるわけです」

──衆院選で使われたときにはどう思いました?
大沢「あれはびっくりしましたね。でも結果は痛快でした。いままで我々が見ていて釈然としなかった部分が一気に表にさらけ出されて、そしてああいう結果になったわけですから。もちろん、そういう思いが表に出てきやすい時代背景があったからこそですが」

──その後、旧アメリカ合衆国をはじめ、各国の大統領選挙でも活躍しました。 
大沢「アメリカの選挙では、実は、勝手に改造された偽者のリスペクト・カウンターが出回って、結構話はややこしいことになっていたんですが、最終的には重要な大会には我が社の社員が張り付いて正常に作動するカウンターのみを使うということで事なきを得ました」

──いま、ああやって、かつての合衆国が13の独立国家に分裂してしまったのも「リスペクト・カウンター」のせいだという論評もありますが。
大沢「それは言い過ぎでしょう。我々はただ新しいモノサシを一つ提供しただけです。そのモノサシに基づいて何をどう判断するかはユーザーのみなさんにかかっていますので」

──かつての貧富の格差がいまやリスペクトの格差にすり替わろうとしているとも指摘されています。
大沢「本当にそう思いますか? いまだってお金の力はまだまだ強いですよ。わたしは貧富の格差がなくなるとは思わないし、お金が力を失うとも考えていません。以前はお金というモノサシしかなかったところにもう一つモノサシが増えただけなんです。お金にとってかわるなんて考えにくいですね」

──以前だったら鼻も引っかけられなかったような弱小国がリスペクトを集めて堂々と発言していますね。 
大沢「ええ。これは見ていて嬉しいです。鼻も引っかけられなかったとかいうと語弊がありますが、ブータンをはじめ、いままで表舞台に取り上げられることが少なかった小国が、いまや世界から尊敬を集め、国際社会に対して重要な指針を出しているのを見るとちょっと胸が熱くなります」

──カウンターこそが「最後の審判」だとも言われていますが。
大沢「冗談でしょう? やっと始まったばかりです。これを終わりだと感じるのは、その程度の世界観しかなかったってことじゃないでしょうか。ほら、2012年のマヤ暦の終わりにも世界は終わらなかったじゃないですか」

     *     *     *

 読んでいた『プレイボーイ』を投げ捨て、いまや全身がバラバラになってしまったサミュエルおじさんはうめき声をあげる。
「はかったな! 道理で貝紫の衣を気前よく貸し出したわけだ。あれは最初からこうなることがわかっていたからだな」
 岩の上のピューマはちらっと視線を向けるが何も言わない。
「あいつを骨抜きにしたと思わせておいて、こんなことをたくらんでいたのだな」 

 サミュエルおじさんは全身の力を奮い起こしてピューマにつかみかかろうとする。けれどただ寝そべっているだけのピューマに触れることさえもできない。それぞれが勝手に動く13の部分を統御しきれず、サミュエルおじさんのつける狙いは全く見当はずれになってしまったのだ。悔しまぎれにサミュエルおじさんは叫ぶ。
「さぞかしお前はたくさんのリスペクトを受けているんだろうさ。しかしこれで終わったと思うな!」

 ピューマはのっそりと起きあがるとヒトの形を取り、そしてかろうじて人の形をとどめているサミュエルおじさんの肩に手を置き、柔らかい声でこういう。
「もちろん終わりじゃない。ただの始まりだ。いいかいアンクルサム。これを終わりだと感じるのなら、それは君の世界観に問題があったってことなんだよ」

(「最後の審判」ordered by たけちゃん-san/text by TAKASHINA, Tsunehiro a.k.a.hiro)

4部作のご案内

この作品はたけちゃんさんからまとめていただいた4つのお題に対して、独立した4つのSudden Fictionを書きつつ、それぞれがリンクして行くというアクロバット的な書き方をした作品です。ですから、もちろん単独でお楽しみいただけますが、4つまとめて読むと「ああ、そういうことか!」という発見もあります。

良かったら合わせてお楽しみください。

SFP0166「間奏曲
SFP0167「リスペクト・カウンター」(この本です!)

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5つで、お気に入り度を示すこともできるようですが、面と向かって星をつけるのはひょっとしたら難しいかも知れませんね。すごく気に入ったら星5つつける、くらいの感じでご利用いただければ幸いです。


 現在、連日作品を発表中です。201171日から2012630日までの366日(2012年はうるう年)に対して、毎日「11篇のSFP作品がある」という状態をめざし、全作品を無料で大公開しています。公開中の作品一覧


 SFP作品は、元作品のクレジットをきちんと表記していただければ、転載や朗読などの上演、劇団の稽古場でのテキスト、舞台化や映像化などにも自由にご活用いただけます。詳しくは「Sudden Fiction Project Guide」というガイドブックにまとめておきました。使用時には、コメント欄で結構ですので一声おかけくださいね。


 ちょっと楽屋話をすると、71日にこのプロジェクトを開始して以来、日を追うごとにつくづく思い知らされているのですが、これ、かなり大変なんです(笑)。毎日1篇、作品に手を入れてアップして、告知して、Facebookページなどに整理して……って、始める前に予想していたよりも遥かに手間がかかるんですね。みなさんからのコメント、ツイート(RT)、「いいね!」を励みにがんばっていますので、ぜひご協力お願いいたします。


 読んでくださる方が増えるというのもとても嬉しい元気の素なので、気に入った作品を人に紹介して広めていただけるのも大歓迎です。上記Facebookページも、徐々に充実させてまいりますので、興味のある方はリンク先を訪れて、ページそのものに対して「いいね!」ボタンを押してご参加ください。


 10月からは「11篇新作発表」の荒行(笑)を開始し、55作品ばかり書き上げる予定です。「急募!お題 この秋Sudden Fiction Project開催します」のコメント欄を使って、読者のみなさんからのお題を募集中です。自分の出したお題でおはなしがひとつ生まれるのって、ぼくも体験済みですが、かなり楽しいですよ! はじめての方も、どうぞ気軽に遠慮なくご注文ください(お題は頂戴しても、お代は頂戴しないシステムでやっています。ご安心を)。


 こんな調子で、2012630日まで怒濤で突き進みます。他にはあんまりない、オンラインならではの風変わりな私設イベントです。ぜひご一緒に盛り上がってまいりましょう。


奥付



リスペクト・カウンター


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著者 : hirotakashina
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