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01

Chrome GIG

桜井夕也

 

 

 

月食された俺の胸が卍をjamais-vuする。俺は「19XX、東京は青白く燃えている」をデジャヴュするLUNA SEAZEISS IKONする大水青(おおみずあお)をオーバードーズした排ガスと生ゴミでできた歌舞伎町の死亡遊戯にレゾンデートルが分からない。氷青をオーバードーズしちまった。「俺達に明日はない」。嘲笑(わら)う。朧月。俺達は月食症で、摩天楼に浮かぶネオンの陽炎にクロームな夜をHIPHOPする。

 

どうして俺達には羽根がない

 

世紀末のクロームなXに青白い蜉蝣が止まる

 

デ・ジャ・ヴュ

 

排ガスと生ゴミの饐えた臭いが猥雑に入り交じる歌舞伎町午前1時。涼を求めて出張ってきた青白い蛾が妖艶に舞っている。大水青(おおみずあお)。俺は嘲笑(わら)う。スリルに飽きて、緊張感ゼロで、表面張力を破りかけている。月食症。それが俺の病。青い鶏冠を突き立てて、頭の中のROMでメガ・インダストリアルを聴く。"PUNK'S NOT DEAD"。誰かが(うそぶ)く。それでもいいさ。俺は剃刀で自分の胸に卍を刻む。ヤクザにも、流氓(リウマン)にも、財閥にも狙われている。どいつでもかかってこい。俺は道の真ん中、元コマ劇跡で吠えている。多分今夜俺は死ぬだろう。だが最後までトンガっていたい。俺は氷青を噛み砕く。「どうして俺達には羽根がない」。

 

原罪の月食が大水青(おおみずあお)をエンジェルダストする

 

 

 ゲイのボーグがメガ・インダストリアルを演奏している。俺は彼に口づけする。速いギター・リフ、重いベース、デジタルなドラム・マシーン。それが狂ったように速いBPMで弾き出される。客達は大乗りでステージに上がってくるやつ、ダイヴするやつ、モッシュするやつで最前列は混乱状態だ。俺はそれに構わずヒステリックな絶叫をマイクに叩きつける。「俺達は絶望と死に捕えられた。紛いもののDRUGで今夜を凌ごう」。シニカルな態度は死神みたいに。中指を突き立てパンク・エンジェルを真似る。ボルテージが最高潮に達した頃、ボーグがギターをぶっ壊す。床に叩きつけ純度100%の氷青で火をつける。青白い炎が俺達を炙る。最高に冷淡な俺達をカメラが捕えてる。俺達はそれに自覚的に反抗とSM的無意識を混ぜ合わせたパフォーマンスをしてみせる。メガ・シティを高級ホテルから牛耳る豚どもよ、その座から引きずり下ろしてやる。俺はありったけの憎悪を込めて歌う。FUCK YOU。これが俺達の叫びだ。

02

HEDFUC 1999

 

偽りの天国に飼い慣らされたSLAVE達を死の天使が虐殺する

 

[HARDWIRED]SKUMMをパラノイアと結合する……死の欲望がフェイクな天国をフォーマットし涎を垂らすジャンキーの青白い頬に金属パイプを突き刺す……「俺の血は冷たく、心臓の鼓動は脳内にダウンロードしたインダストリアルのパルスだ」……誰かが共感覚幻想から目覚める……機械にアップグレードした身体を持て余す//人工の星の下機械的なダンス・ループに身を任せ冷たい氷青を飲みゲイのボーグにキスをする……テクノ・スキームなhax0r01010001なサブリミナルをハッキングする……

 

幻覚の天使が青白い悪夢に感染する

 

サイバーポリスで陰影に染まった顔のボーグが歩いている。空には真っ青な月。ジャンクな狂気で覆われている。軌道エレベーターで繋がってから地球の双生児は憎悪を高ぶらせつつある。街には最先端のヴォーグに彩られた人間たちで一杯だ。デジタル・ヴァンパイア、スキンヘッドに素子(チップ)を一杯埋め込んだボーグ、グロースティックの髪を輝かせながら熱い闇に発光しているレイヴァー達。夜の24:30。クラブから吐き出された群衆が街を彷徨う。道路には夜行性の塗料で書かれた落書がのたくり、ビルの映像スクリーンのギラつく光で照らし出されている。壁にはハーケンクロイツの落書やHELLの落書。青白く燃えている。ピルを飲んでイッちまった子供がストリート・ファイトをおっぱじめる。泡吹く口元に黄色いジャンキーの眼。手にはナイフ。ボーグの無臭の鎮静ガスでおとなしくなる。この街はHEAVENと化す。

 

 

青白く燃え上がる欲望のネオン ボーグがクラブで踊る 光り輝くグロースティックの髪 発光刺青が暗闇にぼんやりと瞬く 神経ジャックから電脳空間に繋がれた[borg] 死の月が都市(まち)を照らし出す

 

快楽のネオンに照らし出された街 ビルがジャンクな空を象る 青白い死の月が浮かび上がる まるで俺達を嘲笑うかのように

 

 俺は"ZEIST GEIST"に着く……サイバー・ゴシックスが氷青の青白いグラスを傾けて、幻覚(らり)っている……「よぉ……」と声をかけると向こうは「今夜は天国だね……お前に堕天使のキスを…………そいつはオーバードーズ気味なのだろう、微かに震えている……俺は煙草に火を点け、燻らす……一筋の煙がネオンに染まった空に消えてゆく……今夜はギグがあるのだ……結線(ハードワイア)用の刺激的なライブ……俺は入口のバウンサーに手の甲の刺青(タトゥー)を見せる……青白く瞬く"Z/G"の文字……ガードマンは頷き、ドアへ促す……俺は踵で煙草を踏み潰し、狂った夜へと歩き出す……

03

堕天使がLOADする暴力と退廃……青白い死のネオンが月を照らす……

 

Zeitgeist

 

 青白い幻覚に侵された悪夢

 

メガ・トレンドとなった"gefallener Engel"が巨大スクリーンから大音量で流れ、俺達は鶏冠や棘頭を揺らしていた。パンクスは氷青で幻覚(らり)って、涎を垂らしている。スクランブル交差点ホログラフィに照らされ、月を青白く象る。"NOIR DÉSIR"と書かれたネオン管の下、青い髪を逆立てたパンクスが立っている。「世紀末最後の夜、"gefallener Engel"が暴れている……"XXX""ZWEI"が終わったところさ……。」

 

東京は燃えている

 

卍卍卍

 

青白い・培養液の中で・胎児が・眠る

 

青白い虚飾のネオンに染められた街……今夜は月が街を照らしてる……欲望が金に換えられ、暴力と退廃が支配するこの狂った街(ジャンク・シティ)……その街で俺は生まれた……今夜は"堕天使"がヒステリックな絶叫を上げる……19XX、俺は狂っている……偶像を破壊しろ……」……東京は燃えている……

 

悪夢のMad Die End 俺は凍てつく街の中青白い月を見上げる……PILLを噛み砕く……神経[gefallener Engelが染める街のスリル……[GØD]……俺は幻覚に殺される……

 

もう俺には絶望しかなくて……

 

 1999年のクリスマス・イブ、俺は氷青を打つ。腕にできた無数の針の跡。青白く、がりがりで、テック(ジャンキー)のようなGEEKらしさ。クラブでは"シックリー・スター"のボーカルがヒステリックに絶叫している。客達は様々で、青いモヒカンをドレッドロックスに束ねたテクノジャンキー、スキンヘッドにHEAVEN(サイバースペース)と繋がるためのソケットをいくつも付けたボーグ、ミラーグラスにネオンを照り返し氷青のカクテルに薄い笑みを浮かべるサイバーゴシックス、青い髪を逆立てたパンク・エンジェル達がいる。"……世紀末、東京は死んだ。俺はサディスティックなエンジェル。今夜お前を切り刻む……"暴力と退廃を煽るメガ・インダストリアルが大音響で流れる。"……19XXGØD。神ヲ殺セ……"客達は狂乱の渦に巻き込まれる。ステージに上がるやつ、ダイブするやつ、モッシュするやつ。俺は氷青を噛み砕く。ナイフを取り出しボーグやパンクスをめった刺しにしてゆく。スピーカーからの轟音はまだ続いてる。俺はナイフに付いた血を舐め取る。「ここはサディスティックな天国だろ?」

04

青白い陰鬱な街、TOKYO。焼き鳥屋"MEGA DROME"で金髪の男が店員に怒鳴っていた。「俺のこと覚えとけよ!」耳朶に安全ピン、唇にピアス、氷青にイッちまった目で。メガバイオレンスの堕天使が199Xの世紀末、第2千年紀の始まりを訃げていた。俺は"EINS, ZWEI...."の贖罪に覚醒するボーグをLOADスル悲しみのgefallener EngelXXXの悪夢は俺を苛み、月の鼓動が俺の頭に埋め込まれた[junk]をレイプする。ネオンが喧騒を灼き、クラブでは(いま)月で流行りのトランスが流れる。死に似た何かのImitation。俺は青白い鶏冠を揺らし、激しく震える。真夏の焦がれる夜に。俺は吠える。青白く染められた空に。「卍を背負わされた堕天使が今俺の身体に爪を立て、青白い血を流す……」。

 

Tokyo's dead....

 

黙示録の夜、パンクスが氷青を啜る……

 

19XXの世紀末、青白いネオンに灼かれた街で幻覚を叫ぶ……氷青=HAKENKREUZがオーバードーズするメガ・インダストリアル……パンクスのXが黙示録の虚像をLOADする……[borg]……

 

 氷青とHAKENKREUZ

 

パラノイアが暴走する東京バベルで堕天使が氷青の狂気を叫び続ける……それはまるでハイプとダウナーのカクテルをオーバードーズした胎児の[prototype]な苦痛のよう……俺は死の臭いを嗅ぎ付ける……NOISE塗れの青白い死のネオンが天使を切り刻む夜、月は青く嘲笑(わら)っている……

 

俺は"ANGEL DUST""gefallener Engel"のウェットウェア・カクテル―""幻視([デジャ=ヴュ])する……それは青白い月に染められた摩天楼のサブリミナルであり、世紀末のジハードだ……サイバーパンク・ナイトメア……俺は"Neuromancer"落書き(TATTOO)する……

 

クロームな夜、俺は氷青で燃えている

 

発狂したマリアは卍の胎児を中絶する

 

 クリスマスイブ……日本が一番虚飾で糊塗する日……ヴォーグがスクランブル交差点で踊り、聖夜に大水青(おおみずあお)が舞う……摩天楼のXXX……青白い月の下、歌舞伎町が世紀末をジハードする……

05

 大水青(おおみずあお)が氷青をDejavuする

 

排ガスに溺れる熱帯夜。朧月。俺はスクランブル交差点の喧騒を聞いている。生ゴミと漢方の融合した東京。氷青を噛み砕いてミラーシェードから歌舞伎町の死亡遊戯を覗いてる。卍を刺青した大水青(おおみずあお)。月光が蛾を青白に映し出す。199X、黙示録はやって来なかった。

 

パンクスが唇にピアスを突き刺している。耳にはごついイヤーカフ。瞳はチープなスリルを求めてる。氷青中毒特有の自殺願望と超暴力願望によって19XXのイコンとなっている。つまり、ストリートに渦巻く短命なメガ・トレンドある種先祖返り的な前世紀末から続くティーンエイジャーのDNAのリロードのオーバードーズ。ボーグがミラーシェードの奥から覗くのは渋谷の死亡遊戯。俺はスクランブル交差点で音の洪水を、光の氾濫を、情報の飽和を、感じる。摩天楼は一種の誘蛾灯だ。ネオンの刺青。それが欲望と誘惑の舞いを生む。

 

世紀末、今夜は月食だ。月の片鱗は青白く、まだ世紀末的な月光を投げかけている。"原罪をデジャヴュしろ"と。だがY2Kから間もなくしてサイバージハードが始まった。黙示録の亡霊はSM的なゲシュタルトに崩壊した。青いサイバー弁髪のサイバーゴシックス達が"CHROME"の前で神経電子的なフラットラインに興じている。やつらが殉教者志望者なのかは分からない。俺はヴォーグ(Vogue)を吸う。ネオンに灼かれた青白い空に紫煙が立ち昇る。排ガスと生ゴミが融合した熱帯夜。大水青が妖艶に舞っている。"Tokyo's burning……"

 

卍のCHROME

 

青白い髪を逆立てたパンクスが鶏冠を揺らしてる……俺はヒステリックに嘲笑(わら)うだけ……

 

「これは俺の神への復讐だ……」

 

展望台。摩天楼を見下ろす。妖艶なネオン。チカチカ瞬く。酸性雨の降る街、月食で、羽根のない俺達はどうすればいい。月が大水青(おおみずあお)をエンジェルダストする。

 

 青白い蛾が摩天楼を舞っている。歌舞伎町の死亡遊戯は終わらない。バベルが突き刺さった月が嘲笑(わら)っている。DOLLが時計仕掛けの幻覚(ユメ)を見る。俺は誘蛾灯に集まった蛾の死骸を踏み潰してにやりと笑う。世紀末、月食をDejavuするgefallener Engel"原罪(ギグ)"は間近で、クラブの周りには頭の中に"月食症"をインストールしたサイバーゴシックスが(たむろ)していた。青いサイバー弁髪。21世紀のドレッド。そいつらの腕には無数の注射跡がある。タナトスを氷青のスリルによって(あがな)っている骨と皮だらけの骸骨、とでも言おうか。俺は胸の卍の傷に口づけしろと叫ぶ。誰かが罵倒し、「月食だ」と叫ぶ。そうだ、全てはここから始まった。エンジェルダスト。

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