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赤鉛筆の由来/五十嵐彪太

 寂しい道化師は、両手にのるくらいの木箱をもって来た。

「たからばこ」

「見てもいいの?」

 道化師は大きくうなずく。

 箱の中はすてきなものでいっぱいだった。ビー玉やビンの王冠、セミの脱け殻や新聞の切り抜き。外国の切手に、まつぼっくり、石ころ。ガラスのかけらとボタン、壊れた真空管。

 道化師はよろこぶぼくを嬉しそうに見ていた。

 その中に小指の先ほどにちびた赤鉛筆を見付けた。

「これはなに?」

 おしゃべりが苦手な道化師は身振りを交えて語る。

 まるですばらしい芝居を見ているようだった。

 それは小さくて悲しい恋物語。

黎明/白縫いさや

 世界中のごみが集まる北海の最果て島。

 目を醒ましたのは僕一人だけのようだった。おなかの綿がはみ出ているけれど、それ以外はそんなに傷ついていないようだ。目をつむれば思い出すことはたくさんあるけれど、それは、もういい。

 仰向けながら見上げるのは灰色の空。白い翼に黒い嘴を持つ海鳥の群れが横断して視界を覆う。

 

 やがて僕は、生まれたての小鹿のように、立ち上がる。

 少しだけ高くなった視点で見渡す世界は、どこまでも続いて見えた。この世にはこんなにもごみが溢れていたのだ。限界まで使い古されたものや、まだ新品同然のものもあるけれど、共通しているのは、それらはもはや誰にも必要とされていないことだ。

 彼方に一際大きなごみの山がある。そこが島の中心であったようなので、そちらへ向かうことにする。誰か他に目覚めたものがいることを、少しだけ、期待していたのだ。しかし結局それが叶わなかったのは残念だったけれど、仕方ないことだった。

 苦心して山を登る。そうして辿り着いた山の頂で、僕は、ああ、と嘆息をこぼさずにはいられない景色を見る。

 豆粒よりも小さな海鳥どもが、黒い嘴を振りおろしてごみを啄ばんでいる。あるいは群れで空を飛んでいる。その背後では、今まさに夕日が沈もうとしている。

 僕は膝を抱えてその美しい光景に見惚れる。

 げえ、げえ、と鳥どもがこの世の春を謳歌するように醜い声で鳴く。

 僕は一つの決意をする。


 ――夜が明けたら、新しい国の建国を宣言しよう。ここを新天地にするのだ。

 捨てられることはとても恐ろしいものだとみんな思っているけれど、実は案外気楽なものなのだ。

 だから夜が明けるまでの間、君たちは決して負けてはいけないのだ。そう、決して。


奥付



キンキュウジタイ、走る


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著者 : NOIFproject
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