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現代の日本人よ(5)

 「日本は今、瀬戸際じゃ。

  西洋列強に都合よく開国させられ、気高きサムライの心も刀も捨てさせられた。  ・・・もう骨抜きじゃ。

  それでも日本人は立ち上がったぜよ。

  そうしたら今度は原爆でボンじゃ。

  ・・・また屈服させられたがよ。

  もうトコトン腑抜けにさせられた、もう気づかないかん、もう取り戻さないかんちや。

  日本人の強さ、美しさ、清らかさ。

  失ったものを取り戻すんじゃ!」


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― その1 ―  斉彬の死と孝明天皇からの密勅

  天下太平の世にあった江戸の終焉はここから始まった。

  嘉永六年六月三日、蒸気機関のペリー艦隊が江戸沖に現れた黒船来航である。

  それから五年後、大老となった井伊直弼によって西洋諸国との間で通商条約が調印され、異人が国土に足を踏み入れるようになった。・・・人々は異国人による侵略を恐れていた。      ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

  薩摩藩主・島津斉彬(なりあきら)は立ち上がった。

  「日本を変革する!」

  その必要性を最も知る男である。

  「西洋を嘗(な)めて掛かれば、日本は食い物にされてしまう!」

  造船、兵器の威力・・・、日本が二百年以上も国を閉ざし眠っていた間に、西洋は大発展していたのだ。

  「西洋諸国の言いなりになって、開国を約束する幕府のやり方は日本を潰してしまう。悪戯(いたずら)に開港地を増やせば完全な植民地と化すだけだ。・・・このままでは日本が危ない」

  幕府判断の謬(あやま)りに気付いていた。

  「大老・井伊直弼は天皇(みかど)の御威光を軽視し、幕府専断で開国を進めようとしている・・・。だから今こそ、天下を幕府から取り戻し、天皇(みかど)の下に返さなければならないのだ!」

  島津家は関ヶ原の覇王・徳川家を憎み続けてきた。だから、

  「我等薩摩が天皇(みかど)を御守りし、異国を遠ざけるつもりのだ。西洋の科学技術を利用し、異人の侵略から神国日本を護るのだ!」

 

  薩摩軍は常日頃から、いざという日に備えて、戦(いくさ)の訓練も怠っていない。

  軍備を整え、出発の日を定めた。

  そしていざ出立というその直前、まさかの出来事が起こる。

  「島津斉彬公急逝!」

  何と斉彬が急死したのである。

  「何という事だ・・・」

  その行動を信じ、斉彬を敬愛していた西郷隆盛ら薩摩藩士は大きく落胆した。

  「よりによって何故こんな時に・・・」

  ・・・毒殺説も飛び交う。西郷は見えぬ敵に対して怒りに震えた。

 

  「薩摩は来ないだと・・・」

 

  そう聞かされ、京の孝明天皇は気落ちした。

  憔悴(しょうすい)を見せる。

  反幕府勢力の要であって、日本で最も近代兵器を備えた薩摩軍が上洛出来なくなった。京を護る事が出来なくなったからである。

  「頼りにしていた島津斉彬が死んだのか・・・、薩摩軍は動けぬと・・・」

  その落胆は大きい。

  「異人を排斥できぬではないか・・・、攘夷は如何なる・・・」

  天皇は頭を抱えた。・・・そして、ある藩に助けを求める事にしたのである。薩摩以上に攘夷を唱える大藩に。

 

 「水戸に勅を下すのだ!」

 強い尊王の水戸藩。薩摩のようなに近代戦力は持ち合わせてはいないが、京を護ろうとする意志はどの藩よりも強い。そこに心を向け、期待を膨らませる。

 そして孝明天皇は水戸藩へと勅諚(ちょくじょう)を下した。

 それは幕府を通さず、天皇から一藩への直接の勅である。・・・前代未聞であった。幕府は諸藩との直接接触を二百年以上も禁止してきたのだから。

 

  即ち、密勅(みっちょく)であった。

 

  孝明天皇は国の行く末を憂いつつも、恐怖心に苛(さいな)んでいたのだ。

  「最も頼りとする島津斉彬が・・・もうこの世にはいない。

  あれだけの人物を失ったのは国家の危機。

  そして薩摩はもう京を護ってはくれないだろう。

  ・・・もしも異国が大坂湾から京に攻め込んできたならどうなる。

  皇族、公家にはそれに立ち向かえるだけの兵も力もない。

  徳川家が天下を統一して以降、  京は徳川の下で力を削ぎ取られてきたのだ。

  ・・・京は長らく虐げられてきた、だからどこかに頼るしかない、

  それが京の弱い立場なのだ、

  幕府か、大藩に頼るしか術がない・・・。

  しかし現在は徳川幕府に逆らう象徴として諸藩の意志が集結し、京は再び担ぎ上げられようとしているのが現状なのだ。

  つまり・・・もう幕府には頼れない、

  徳川家とは相対峙する立場となったのだ。

  だが肝心の薩摩がダメだ。

  京を護ると約束した斉彬が死去したとなれば、もう薩摩は動くまい。

  ・・・困った。

  ・・・どうすればいい、

  どこに頼ればよいのか。

  尊王の藩と言えば、・・・水戸藩か、越前か・・・、

  ・・・水戸は尊王攘夷を叫び、反幕府勢力の長州藩と接近しているとも聞く。

  天下の副将軍と呼ばれながらも徳川幕府に楯突いている水戸藩ならば・・・きっと何とかしてくれよう。

  ・・・水戸藩ならば!

  水戸藩ならば反幕府の諸藩を結集し、京を護り、我等の権力を復古させてくれるに違いない。

  尊王の志厚い水戸ならばきっと・・・、

  ・・・その号令を下すしかない、

  水戸藩へ!」


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奥付



竜馬外伝i-20 戊午の密勅


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著者 : 中祭邦乙
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/nakamatsuri/profile


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