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第一幕

 

 

 

 

「ウップ…とんでもないもの食っちまったな……」

 

 そう、そのバクは言いました。

 

 

 

 


タイトル

 

 

 

 

『 バクのヴァーキーと少女の“夢”』

 

 

 

 

企画 制作 75°

 

編集 75°and 遠名 奏

 


カバーページ


第二幕

 みなさんはこんな話を、聞いたことがありませんか?

 一見、ボーっとしているように見える白黒二色の地味な生き物「バク」が人間が寝ているときに見ている夢を食べてしまうという話を。

 このお話しはそんな「バク」が出てくるお話しです。

 

 

 実を言いますと…この世界は…様々な地域から厳しい試験をくぐり抜けた超一流のバクたちが、夜な夜な空を飛びまわっては人間が見た夢を食べているのです。雨の日も風の日も自慢!?の鼻を風上にかざし、お月さまの明かりを頼りに、家々の煙突から香り立つおいしそうな夢を目指しては夜空を駆け回っているのです。

 


第三幕

 ある日、三日月の夜のことです。選りすぐりのエリートにもかかわらず、ちょっとだけひねくれ者のヴァーキーがこんなことをつぶやきました。

......タイセンってやつのせいだろうか!?最近の人間の夢はどれもこれも悪夢ばかりだ。食べる夢のほとんどが『苦い』ものだったり『辛い』(「つらい」夢は「からい」のです!)ものだったり…全く胸がつかえてしかたがない!いいかげんにしてほしいぜ!」

 

 お聞きの通りヴァーキーは口が悪く少し自分勝手なところがありますので、仲間のバクから距離を置かれていましたが、その「おいしい夢にありつく嗅覚は」仲間からも一目置かれていました。ですから、グルメなヴァーキーにとって悪い夢にしかありつけない今の状況はとてもとても耐えられるものではありませんでした。

「う~む……どこかにおいしい夢はないだろうか……」

ヴァーキーはそう不満をもらすと、闇夜にまぎれる白黒の体をユッサユッサと揺らしつつ長めの鼻を宙に向けてほんのりため息をつきました。

「…ん?」

すると、どうしたことでしょう。ヴァーキーのクルクルしたしっぽがピンと伸びました。

「んん!?」

さっき宙に向けたばかりの鼻が、この何百日も嗅いでいなかったおいしそうな「夢の香り」をとらえました。とても甘くて、まろやかで、それでいてちょっと苦みがきいているその香りのせいでヴァーキーのもっちりとした頬は一瞬にしてとろけてしまいました。

「んん!この夢はきっとおいしい夢に違いないぞっ!はたしてこの香りはどの煙突から出ているのだろう?」

ヴァーキーは鼻をグルグルまわし、後ろ足のヒズメをカツカツと地面に叩き付けると、空めがけて飛び上がりました。不思議なことにさっきまで重たそうだった体は一度宙に上がるとフワフワと浮かび上がり、前足を蹴り出すとその体は前へ前へとグングン進んでいきました。

 

 



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