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「ねえ、香」
 姉ちゃんにタバコを返そうと指にはさんで差し出すと、姉ちゃんの手がこっちに伸びてくる。と、俺の指を通り越した姉ちゃんの手は俺の肩をぐいっと引っ張った。塀と柵にはさまれて変な風に突き出た俺の顔に、姉ちゃんの顔が近づいてくる。そしてそのまま、姉ちゃんの唇が俺の頬に当たった。違う、キスされた。離れるときにぺろっと耳たぶもなめられる。ぞわぞわっと腰から下に刺激走った。
「あたしにはこれが精一杯だわ。あんたさ、高校行ったらちゃんと部活やりなよ。あたしもういないんだし、話相手になってくんなくてもいいから。ちゃんと彼女作って結婚するんだよ」
「……高校生で結婚とか早すぎるだろ」
「そりゃそうか」
 姉ちゃんは、くすくす笑った。ぽっちゃりみたいな、由佳さんみたいな、女らしい笑い方。ああ、俺は姉ちゃんがすごく好きだと、実感した。同時に一生無理な恋だとも。
 急激にタバコを持っていた指先が熱くなってはさんでいたタバコを姉ちゃん側のベランダに落とした。タバコは随分短くなっていて、姉ちゃんは拾い上げるといつものビールの空き缶にそれを捨てた。ついでに、くしゅんとくしゃみをして、俺もそれにつられてまたくしゃみをした。
「そろそろ寝るか。じゃ、また明日。見送ってくれるんでしょ?」
「起きれたら。……姉ちゃん、」
 ぽっちゃりがまだここに出入りしていた頃は俺の方が姉ちゃんより小さかったけど、今は姉ちゃんの方が小さい。帰ろうとして振り返った姉ちゃんは、小さくて細くて色が白くて美人だ。化粧をしていてもしていなくても、姉ちゃんは綺麗だ。きっと男にモテるはずなのに、姉ちゃんは女が好きでどうしようもなく好きで、でもどうにもならないってことも分かってる、そういう姉ちゃんが俺は。
「俺の結婚式には、ちゃんと来てよ」
「……あたしは年下キラーだから、あんたの奥さんとっちゃうかもよ?」
「……そしたら俺が姉ちゃんごと養う」
「ガキだね。ばか。おやすみ」
 姉ちゃんはひらひら手をふって、向こうに行ってしまった。窓が閉まる音がする。俺はベランダにもたれかかり、もう一度空を見つめてから部屋に入った。


 次の日、姉ちゃんはわざわざ朝早くにうちにやってきて俺の部屋に入ってくるなり、俺の枕元に何かを置いた。じゃあね、ばいばい、と言っていたような気がするけれど寝ぼけている俺にはよく聞き取れず、むにゃむにゃといっているうちに姉ちゃんは出て行ってしまった。すっきり目が覚めたのはそれから三時間後ぐらいで、もちろん姉ちゃんは出発した後だった。居間に行くと母さんと叔母さんがお茶をしていて、あんた遅いわよ、と口をそろえて言われた。姉ちゃん俺の部屋に来てたよね?と尋ねると、うちには朝来たけどあんたの部屋に行ったかはわかんないよ、と母さんに言われて夢だったのか、という気にもなってきた。
 部屋に戻り遮光カーテンをあけると、枕元に何かがおいてある。少しつぶれたタバコの箱だった。半分減っている。表に油性ペンで

『早くいい男になっていい女捕まえて私にくれ』

 と書いてあって、声を出して笑った。

 

END


あとがき

本を読んでくださった方、DLしてくださった方ありがとうございました。

初めてのあとがきです。こんにゃくと申します。

 

今回、このお話にはとても思い入れがあってあとがきを書こうと思い立ったのですが

いかんせん言葉にするのが上手くないので、やはり書かないほうがいいのかもしれない、と

こうして文字をつづっている間もとても迷っています。

 

「マイ・カズン」を書いていて、「人を愛することは当然だけど当然じゃない」

ということを思っていました。

私は妃子のように同性愛者ではありません。

でも、誰もが愛されたいと願うのは一緒です。その対象が各々あるだけで。

一般的に男は女に愛されるのを当然と思っているし、女を愛します。

女は男に愛されるのを願い、男を愛します。

でも、そうじゃないことだって多々あります。恋人同士だけじゃないこともあります。

そういうことを、少しでも書けたらと思ってはいたのですけれども、結局言い訳ですね。

とにもかくにも此処まで読んでいただいて本当にありがとうございます。

 

最後に宣伝?です。

アップしているものはサイトからの抜粋になっています。

普段は純文学のような小説や少しBLとは言いづらいようなBLをちまちま書いています。

お気軽に遊びにきてくださいね。

オリジナル小説サイト「InU」 http://sbrxsbr.web.fc2.com/

 

2011.11.18 こんにゃく 拝


この本の内容は以上です。


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