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9

喜ぶ純を無視して、菅葦は言った。

「俺は何人も悪党を見てきた。だから奴らの考えることは察しがつく」

純も緊張の面持ちで話を聞いた。

「最初から話そう。知っての通り、奴らは賞金100万円など払う気はない。簡単だ。二人を倒しても三人目に絶対に勝てない強い男を用意すれば済む」

「卑怯なことするわね」

「それくらい見抜けずに応募する女も無謀過ぎる。強いと言ったって上には上がいる。プロレスラーには勝てないだろう」

純は何も言わずに菅葦を見ていた。

「でも、純のような上珠を見れば、気が変わる。ただ騙すんじゃなく、ボスは欲しいと思うだろう」

「上珠?」純が小首をかしげる。

「まどろっこしい罠にはめることなく、いきなりボスの寝室に直行。そんな事態も想定して作戦を立てなければならない」

純は唇を噛んで一瞬迷いが心をよぎったが、聞いた。

「あの警部が、マイクをつけるって言ったけど」

「マイクから音が聞こえなくなって、即突入しても、間に合わないかもしれないぞ」

「何とか助けてよ。裸にされる前に」純は不安な顔色で言った。

「腕の立つ男の刑事を何人か先に潜入させればいいが、俺の調べたところ、かなりの人数だ。一人や二人では押さえきれない」

「調べたの?」

「人脈はある。顔ぶれを調べたが、敵はただのチンピラじゃない。格闘技の有段者だ。張飛や呂布じゃあるまいし、一人で何十人もなぎ倒すのは無理だ」

純が笑顔で言った。

「菅葦さんが潜入してよ。そしたら安心」

「残念ながら俺が得意なのは、ハジキだ」

「げっ」

「全員撃ち殺すわけにも行かない」

 

 


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10

菅葦は語った。

「悪党は法の網をくぐる。規制をしても、地下に潜るだけだ」

「地下に潜る?」

「女をさらって監禁するんじゃない。罠を張って、女のほうから罠に飛び込んで来たんだ。しかも負けたら何でも言うことを聞くという約束に同意している。つまり、被害者も告訴しにくい」

「法には触れていないの?」純が聞いた。

「もちろん触れている。こんなことを商売にしていいわけがない。それに、奴らが撮って売っているのは裏だ。裏で密売している以上、犯罪だ」

純は意を決したように、菅葦に言った。

「あたしも、女を食いもんにする男は許せない。その警部を呼んでよ。作戦会議を開きましょう」

菅葦は渋い顔をすると、純に聞いた。

「思っている以上に危険だぞ。大丈夫なのか?」

「菅葦さんを信じている。絶対に助けてくれるって」

「重圧だな」菅葦が顔をしかめた。

「拷問されそうになったらペラペラ喋るから。ハハハ」

「それでいい」

「冗談よ」

「いやダメだ」菅葦が真剣な顔で言った。「拷問される前に全部喋るんだ。意地やプライドを捨てて哀願しろ。謝って許してくれそうなら謝るんだ」

純は唇を尖らせると、両手を上げて伸びをした。

「気が進まないけど、でも、あたしを心配して言ってくれてるんだろうから、嬉しいわ。言う通りに懇願します」

「無茶は禁物だ。よほどの鬼畜じゃない限り、女が弱気な顔で哀願したら、攻撃は緩む。悪党は、自分を恐れる者を好きだから」

 


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