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ガイルが居る

 『待ち』の多い生涯を送ってきました。

 自分には『攻める』というものが、見当がつかないのです。

 自分は溜めキャラでしたので、何もせずにさっと技の出せるリュウやケンの気持ちが全く ってわかりませんでした。

 遠くからは波動拳、飛び込めば昇竜拳。所謂『波動昇竜』というパターンで人々屠っていった彼らは、私を批判しました。

「待つだけなんて、なんて厭(いや)な奴なのだろう」

「女である春麗ならまだしも、あんなに髪を立ててすごんでいるのに、攻めないとは、どういう了見なのだろうか」

と、散々に嫌味を言われました。

 私はその怒りを溜めました。溜めるのは得意だったので。

 自分は、下か後ろ、または斜め後ろに溜めなければ必殺技が出せないのです。

 なので、待ちました。

 それだけのなのに、この仕打ちです。

 私は、絶望しました。

 しかも、彼らときたら、負けて嫌味を言うのならまだしも、自分達が買っても嫌味を言うのですから、たまったものではありません。

 勿論、溜めてはいるのですが。

 卑怯、卑怯と罵られ、私は雨の日も風の日も待ち続けて、数々の人を屠りました。

 そんなある時でした。

 私達に新しい必殺技が付けられるという噂が流れたのです。

 新しく加わった四天王に見劣りしない様に、という配慮がそれを実現させたのでした。

 しかもあろうことか、リュウやケンには新しい必殺技が装備されないというのです。

 私は大いに喜びました。

 嬉しくて、ついつい、立ち上がりました。

 そして、私はその日を待ちわびました。

 しかし、待てど暮らせど、連絡が来ません。

 胸に来る不安感は溜まりに溜まり、ついには爆発し、私は会社に電話をしました。

「もしもし、ガイルです。私の新しい必殺技はいつになったら発表になるのですか?」

 大きな声で、私は電話口の人に聞きました。

 電話口の人はあっけらかんと

「ガイルには、新しい必殺技は付きません。待ってもダメです」

と、言いました。

 私は、絶望しました。

 その後直ぐに私へ、映画化のオファーが舞い込みました。私が主人公の映画です。

 私はおおいに喜び、完成の時を待ちました。

 

  やっと私のブームが来る!

 

 そう確信して、映画を見ました。

 

 ……。

 

 その映画がゲームになったので、それもプレイしました。

 

 ……私は、心底絶望しました。

 

 

 その後、私はXの時にようやく新しい技を貰いましたが、それはただサマソを二回出すだけの地味なものでした。

 なんという仕打ちでしょうか。

 私は大いに怒り、会社に電話をしました。

「もう、出たくない」

 私はその言葉を口に出しました。

 それしか、方法が無かったのです。

 ああ、しかし。

「うん、わかった。では、ナッシュ君に出てもらおう」

 そう言って、会社は次の作品にナッシュを出したのです。

 私は親友を大いに憎みました。

 しかも、彼ときたら二枚目に描かれ、片手でソニックを出したのです。

 これでは、私は見劣りするではないか!

 憤り、私はサマソを空に向かって放ちました。しかし、そこには空しかありません。涙が悲しく、零れるだけでした。

 そうして、遂に『3』が発表されました。

 私は今か今かと待ちわびていました。そして、拳を上げて喜びました。

 やっと私がカムバックできる。

 そう、思ってました。

 しかし、現実は甘くありませんでした。

 『3』では、ダンディなボクサーやジジイに露出狂の女に、忍者のJK……、変態のオンパレードでした。

 

――― 勝てない』

 

 そう感じたのは、その時が初めてでした。

 そうして、私はずっとずっと地中に潜り、密かに時を待ちました。

 そう『4』が出るのを待 ったのです

 時はミレニアムを超え、私達の過去の遺産を懐かしがる人も増えてきました。

 そして、遂に『4』で私は復活したのです!

 ああ、なんということでしょう。

 絶望など、下らぬことだった。

 そう、思いました。

 そして、コマンド表を見ました。

 サマソとソニックしかありません。

 それを確認した瞬間、ザンギエフが私に襲い掛かってきました。

 それは

「久しぶりだな さあ、迎撃してみろよ

と、言っている様で、涙が出てきました。

 そ うして私は 、笑顔でこちらにこようとするザンギの顔面にサマソをブチこみました。

 

 

 

 


この本の内容は以上です。


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