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2.議論をかみ合わせるスキル

議論をかみ合わせるとは、認識のズレを修正することです。複数の話し手たちが議論しているのを俯瞰していると、論点がズレていると感じることができます。そんな時は間に入って、ズレを修正しなければなりません。

 

1.言葉に含む意味のズレ


例えば「多い」。多いと判断される基準は人それぞれだったり、多いと判断された対象によりその基準は異なります。

 

そのような場合は、具体的に何件だったのか、何と比較してどれだけ「多い」のかなど、定量化(数や量での表現)を促すことが、議論をかみ合わせるスキルということです。

 

2.視点のズレ


例えば「お客様のニーズ」。対面販売と通信販売のお客様では、お客様が求める内容や、その販売チャネルが提供できる特徴により、「お客様のニーズ」は変わります。

 

今議論している「お客様」が対面販売を想定しているのか、通信販売のお客様なのか、確認することが認識のズレを防ぐ手段になります。

 


3.質問のスキル

質問のスキルは、議論にエネルギーや潤滑油を補充する役割を持ちます。効果的な質問を投げることで、活気がでたり議論が促進される効果があります。

 

ですがこのスキルを発揮させるのは、明らかに不足、つまり議論の整理や方向修正が必要と感じる場面です。問題が発生していない場合には使用する必要がありません。

 

【質問する際大切なこと】

  • 相手を主役にするインタビュー形式。
  • 率直な質問。
  • 事実を丁寧に確認。
  • 事情を探る。
  • ポイントの確認。

【5つの効果的な質問】

1.全体を意識させる質問

  • この議論の目的は何だったのか
  • 今問題になっているのは、どの時点での話なのか など

2.多様性(違う視点)を意識させる質問

  • 他部署、代理店、外部団体、他社、お客様から見たらどうなのか
  • 逆の視点で見るとどうなのか など

3.コントロールできるものとそうでないものを意識させる質問

  • 今の私たちにできることは何があるのか
  • 私たちが作用できないことはどれなのか など

4.時間軸を意識させる質問

  • 通年でその問題が発生しているのか
  • 今後どうあるべきなのか など

5.基準を意識させる質問

  • 水準値と比較するとどうなのか
  • 何を基準にして問題と判断したのか など

 


質問のスキル_質問の型

質問には、目的に応じて使い分けるためにいくつかの型があります。前ページで紹介した効果的な質問に、この型をうまく組み合わせることが、議論を推進させるスキルになります。 

 

1.クローズ質問

  • 答えが限定される質問。「はい」か「いいえ」で答えられるような質問。
  • 議論を収束させる場面に効果的。

2.オープン質問

  • 答えがいくらでもある質問。「どんな不満がありますか?」など人それぞれ違った答えが返ってくる質問。
  • 議論を拡散したい場面に効果的。

3.肯定質問

  • やる気を引き出す質問。「どうすればできると思いますか?」など行き詰ったときに視点を変える質問。
  • 「無理」「できない」という方に向いた場面で効果的。

4.未来質問

  • 未来を考えさせる質問。「今後何が必要だと思いますか?」など未来に焦点を当てた質問。
  • すでに起こってしまったことに執着している場面で効果的。

5.過去質問

  • 過去を考えさせる質問。「何が理由で苦情が発生したと思いますか?」など過去に焦点を当てた質問。
  • 原因を追及する場面で効果的だが、質問の形に注意が必要。
  • 「なぜ」+「否定形」で質問すると、人に責任があるという視点に陥りがち。
  • 効果的な型「何が」+「理由?」で質問すると、真の原因に行きつくことができます。

 


4.議論を視覚化するスキル

議論を視覚化するスキルとは、話し合いの内容を「目に見える形にする」ことです。耳で聞いているだけだとわかりにくい話や流れてしまう重要な発言を拾い、参加者と共有することが目的です。

 

【議論を視覚化する3つのポイント】

  1. 耳を傾けて興味を持って聴く
  2. 発言者の言葉をそのまま素直に板書する
  3. キーワードと発言者の意図を考える

最も大切なポイントとは、2番目の『発言者の言葉をそのまま素直に板書する』です。板書とは、ホワイトボードなど板状のものに書き、複数の人間で共有することで、「ばんしょ」と読みます。

 

板書する際、要約は不要です。発言スピードに追いつくため言葉尻を替えたり、箇条書きにすることはあっても、要約しないのが肝心です。なぜなら、要約してしまうとその場の雰囲気に見合った無難な文章になってしまい、要点が浮き彫りにならないからです。

 

最も大切な『そのまま板書』するためには、1番目のポイント『耳を傾けて興味を持って聴く』が必要不可欠になります。これをうまく達成するには、話を聞いている最中に自分の考えを挟まないということです。

 

上記ポイントの1と2の最中は「考えない」、そして3つ目の段階になって「考える」という作業に入ります。この時に、議論の目的に合致しそうなキーワードを色ペンで囲ったり、キーワード同士の関係を矢印などでつなぎます。

 

また、ありのまま板書された意見を眺めながら、発言者の意図、つまりその発言の目的には何が潜んでいるか考えると、議論の流れも見えます。すると次にどう支援すべきかも見えてくる仕組みなのです。

 

参考文献 板書の極意―ファシリテーション・グラフィックで楽しくなる会議。 八木健夫/著 


中立的な立場とは

中立的な立場とは、どの参加者にも肩入れしないということです。会議を舵取りする役割のファシリテータが一定の立場にある発言をしては、納得感のある議論にはならないからです。

 

中立的な立場で俯瞰するからこそ見えることが多々あります。話し合いの中身は参加者に任せ、そこに至る過程に注視し支援するには、議論の渦中にいては難しいのです。また、支援する立場に徹底することで、人と人との相互作用、相乗効果を引き出すことができます。

 

しかし、ときに中立を捨てて発言する必要もあります。それは、目的が果たせそうにない、この結論ではちゃぶ台返しにあうことが見えた場合です。ファシリテータは会議を成功させる責を担っています。効果的な質問でも効き目がない場合には、いち参加者として意見を言うこともアリなのです。

 

ファシリテーションも業務の成果を上げるための道具に過ぎません。常に目的を見据えてツールを使いこなさなければ、物事を推進することなどできないのです。



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