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8

竜佐はドアを閉めると、幸奈をダンボールの上に放り投げた。

「きゃあ!」

「おまえ、今度生意気なこと言ったらホントに外に転がすよ」

そんなことされたら、たまらない。悔しいけどしおらしくするしかなかった。

「それだけはやめてください」

「よし。低姿勢だから今回だけは許してやる。でも今度は本当にやるよ」

そう言うと、加藤竜佐はドアを開けて出ていった。

幸奈は再び、一人とり残された。プライドが傷ついた。嫌いな男に哀願するのも、偉そうにされて逆らえないのも、耐え難い屈辱だ。

「悔しい・・・」

女を何だと思っているのか。男は平気で女を脅す。また悪い男は脅し方を心得えている。裸にされると言われれば弱いし、下着のまま外に出すと脅されれば、言うことを聞いてしまう。

腕力では敵わないから、暴力をほのめかされたら逆らえない。幸奈は寝ながら目を閉じた。セクハラの根底にあるものがわかった気がする。

「パワハラだ」

セクハラとは、要するにパワハラのことだ。男女平等はもはや当たり前の時代なのに、未だに女よりも男が上という根拠のない勘違いをしている男が、女を力で押さえようとする。

女性の社会進出を歓迎するナイトも多くいるが、まだまだ男のほうが上という幻想を抱く男は、積極的な女性を「女のくせに出しゃばり」と感じる。

しかし、男女平等だから「出しゃばり」や「生意気」ということはあり得ないのだ。

思索をしていると、濱尻宝が戻って来た。

「あっ」

「幸奈。無事だったか」

酔いが醒めている感じに見える。幸奈は真顔で濱尻を見すえたが、ほどいてもらうためには、強くは言えない。

「宝君。絶対来てくれると思ったよ」

「マジ?」

「ほどいてください。ほどいてくれたら、尊敬します」

「尊敬はいらないよ。俺が欲しいのは愛情だから」


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9

幸奈は唇を結んで濱尻を見つめた。濱尻は彼女に近づくと、静かに囁いた。

「何か俺、酔っ払ってたみたいで。ここまでやったら弁解の余地はないよね。一生許さないでしょ?」

「そんなことない。変なことされたわけじゃないから。今すぐほどいてくれたら、全部忘れます」

「ホントか?」

「ホント」

濱尻は幸奈の足首をほどいた。

「ありがとう」

「うつ伏せになって」

幸奈は濱尻を信じてうつ伏せになった。あっさり両手首もほどいてくれた。

「ありがとう」

幸奈は手首をさすって深呼吸すると、ダンボールから下りた。

「幸奈」

「ん?」

濱尻はいきなり土下座した。

「ゴメン!」

幸奈は冷たく無視してロッカーへ行き、服を着た。帰り支度をして濱尻を見たが、まだ土下座していた。そのまま素通りして帰ろうと思ったが、ほどいてくれたら許すと約束したことを思い出し、肩を叩いた。

「もういいよ」

二人は一緒に部品管理室を出た。

「二度とこんなことしたらダメだよ」

「わかったよ。幸奈。一発ビンタしてもいいよ」

バン!

「あああ!」

間髪入れずに思いきり叩かれたので、濱尻はびっくりした。しかし幸奈は口を真一文字にして、泣きそうな顔で睨んでいる。濱尻は言葉が出ない。

濱尻のせいで酷い目に遭ってしまった。最悪の事態は避けられたが、心は深く傷ついた。セクハラや性犯罪をやる男の特徴として、女の誇りを全く考えていないという共通点がある。

嫌いな男に哀願するのは屈辱的だ。でも身を守るためには仕方なかった。アニメのスーパーヒロインではないのだ。意地を張ったために取り返しのつかないことをされたら意味がない。


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