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4

水色の下着姿がよく似合う。濱尻は興奮した。

「幸奈。大好きな女の子が手足拘束されて無抵抗で目の前にいる。こんな場面て一生に一度しかないよね?」

「知らないわよ!」

「何その生意気な態度は。素っ裸にしちゃうよ」

濱尻が襲いかかる。幸奈はもがいた。

「待って、わかったから!」

「何がわかったの?」

どうすればいい。幸奈は息を乱した。

「あたしをどうするつもり?」

「どうしようかな。特に考えてないよ」

とにかく無抵抗というのは危険過ぎる。ほどいてもらうしかない。アニメではないのだ。正義の味方が助けに参上することはない。

「宝君。お願いだからほどいて」

「かわいい!」

身じろぎする色っぽい動きは、狼性を刺激して返って危険が高まる。

「でもさあ、女の子が無抵抗だとさあ。こういう意地悪したくなるよね」

「え?」

濱尻はいきなり幸奈の両脇をくすぐりまくる。

「キャハハハハハ、やめて、あははははは、やははははは・・・」

幸奈は真っ赤な顔をしてもがいた。怒り心頭だが笑うしかない。悔しくてたまらない。

「やははは、やめて、あははははは、お願い、きゃはははっははは・・・やめて・・・」

やめてくれた。

「はあ、はあ、はあ・・・」

罵倒したらまたくすぐられてしまうから、何も言えない。哀願するしかなかった。

「宝君。くすぐりはやめて。息できない」

「嘘」

「ホント」

「くすぐりは苦手なんだ?」笑顔で聞く。

「得意な人はいないでしょう?」

「幸奈はMなんだ?」

「・・・・・・」

セクハラを通り越してやりたい放題の言いたい放題。許せないが本人は卑劣な行為をしているという自覚がなさそうだ。しかし、無抵抗なのに刺激すれば、またSな意地悪をされてしまう。

「宝君、本当にやめて。お願いですから」

「かわゆい!」

 


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5

完全に酔いが回っている濱尻は、危ない笑顔で迫る。

「今なら何でも言うこと聞きそうだな」

「え?」

「結婚して」

「何言ってるの」幸奈は焦った。

「無理だよね。俺のこと男と思ってないもんね」濱尻はまた幸奈の両脇に手を伸ばした。

「男と思ってるから怖がっているんでしょ」

「嘘。俺怖い?」

「怖いよ」

なぜか満足な顔をした濱尻宝は、幸奈のおなかを触りまくる。

「触らないで」

「いいじゃん、おなかくらい」

「ダメに決まってるでしょ」

「そういう生意気なこと言うと、もう少し下に移動しちゃうよ」

「わかった、やめて!」幸奈は両膝を曲げて防御した。

濱尻はおなかを触る。諦めるしかなかった。大切なところを責められるよりはマシだ。

「幸奈」

「何?」

「付き合って」

「本気で言ってるの?」幸奈は睨んだ。

「本気だよ」

「じゃあ、ほどいて。手足縛って迫るって、男のやることじゃないよ」

濱尻は黙っていたが、急に冷たい表情に変わった。

「完全に脈なしだな。よくわかったよ。バイバイ」

おなかをポンと叩くと、濱尻はダンボールの束から下りて、さっさとドアへ向かう。幸奈は慌てて叫んだ。

「待って宝君! ほどいて!」

「おやすみ」

「待ってください! 待ってください! 宝君!」

しかし濱尻は振り向かずに行ってしまう。幸奈は仕方なく言った。

「わかった。友達からっていうのじゃダメ? 宝君!」

濱尻はドアを開けて出ていった。まさかこのまま放置されるとは思わなかった。最後はほどいてくれると思っていた。

「どうしよう?」


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6

幸奈はもがいた。何とか自力で外そうと試みたが、キッチリ縛られているから無理だった。

「どうしよう?」

手首だけならまだしも、両足首も縛られているから立ち上がることもできない。ダンボールの束は1メートルくらいの高さがあるから、落ちたら怪我をしてしまう。両手両足を拘束された状態だと、倒れたときに受身が取れないから危ない。

「朝が来る前に何とかしないと」

今は何時頃だろうか。幸奈は神妙な顔で辺りを見回した。いちばん最初に来るのは前川社長。下着姿で手足を縛られているなんて、こんな恥ずかしい格好は死んでも見られたくなかった。

この気持ちは男にはわかるまい。幸奈は濱尻の人格を疑った。酔っていたなど言い訳にならない。

それに社長に発見されたら大問題になる。ヘタしたら警察沙汰だ。濱尻に縛られたと本当のことを言うしかない。

再びドアが開いた。

「あ、宝君、戻って来てくれた」

近づく足音。幸奈は言った。

「宝君。怒ってないからほどいて・・・あっ!」

濱尻ではない。加藤竜佐だ。幸奈は血の気が引いた。竜佐も驚いて幸奈を見ている。セクシーな水色の下着姿。しかも手足を縛られている。加藤竜佐は怪しい笑みを浮かべると、幸奈に言った。

「いい格好してるな」

幸奈は呼吸が乱れた。嫌いな男に哀願するのは悔しい。しかし、そんなことは言っていられない。変なことをされたら人生終わりだ。

「竜佐君。ほどいてください」

「宝とか言ってたなあ。濱尻に意地悪されたのか?」

「・・・何もされてないわ」

「放置プレイか?」

「そんなんじゃない。早くほどいて」

「何その態度?」竜佐は容赦なく幸奈のおなかを触る。

「触るな!」

 


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7

幸奈が怒鳴ると、竜佐はムキになり、彼女の秘部を押さえた。

「やめろバカ! 手離せ貴様!」

激しく抵抗する幸奈。しかし竜佐はピタッと女の急所を的確に押さえて離さない。幸奈は仕方なく哀願した。

「わかったやめて、一生のお願いですから」

竜佐は手を離した。

「幸奈。無抵抗の状態で嫌いな男が目の前にいるって、スリル満点だろ?」

「別に、嫌ってなんかいないわ」

「嫌いだろ、俺のこと? 何で嫌うんだよ」

幸奈は困り果てた。嫌いなのは事実だが、この状況では強気に出れない。

「まずほどいてください」

「ほどかないよ。泣かすよ」

「泣かす?」

「大人になってから泣かされるのって悔しいだろう」

幸奈は胸のドキドキが止まらない。何をするつもりなのか。

「幸奈。セクハラとか言ってんじゃねえよ。二度と俺に逆らわないと誓うか?」

「意味がわかりません」

「意味? 教えてやろうか」

悔しいけど怖い。加藤竜佐は濱尻とは比較にならないほどのワルだ。幸奈は赤い顔で言った。

「ほどいてください。お願いします」

「だから。二度と社長にチクるとかやめろよ」

「チクる? 何語?」

首をかしげる幸奈。竜佐は急にムッとすると、彼女を抱き上げた。

「ちょっと待って、何をするの?」

慌てる幸奈に構わず、竜佐は抱き上げたままドアに向かう。

「え?」

彼はドアを開けた。幸奈は血相変えると、暴れながら叫んだ。

「わかったやめて! それだけはやめて! それだけは許して!」

 

 


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8

竜佐はドアを閉めると、幸奈をダンボールの上に放り投げた。

「きゃあ!」

「おまえ、今度生意気なこと言ったらホントに外に転がすよ」

そんなことされたら、たまらない。悔しいけどしおらしくするしかなかった。

「それだけはやめてください」

「よし。低姿勢だから今回だけは許してやる。でも今度は本当にやるよ」

そう言うと、加藤竜佐はドアを開けて出ていった。

幸奈は再び、一人とり残された。プライドが傷ついた。嫌いな男に哀願するのも、偉そうにされて逆らえないのも、耐え難い屈辱だ。

「悔しい・・・」

女を何だと思っているのか。男は平気で女を脅す。また悪い男は脅し方を心得えている。裸にされると言われれば弱いし、下着のまま外に出すと脅されれば、言うことを聞いてしまう。

腕力では敵わないから、暴力をほのめかされたら逆らえない。幸奈は寝ながら目を閉じた。セクハラの根底にあるものがわかった気がする。

「パワハラだ」

セクハラとは、要するにパワハラのことだ。男女平等はもはや当たり前の時代なのに、未だに女よりも男が上という根拠のない勘違いをしている男が、女を力で押さえようとする。

女性の社会進出を歓迎するナイトも多くいるが、まだまだ男のほうが上という幻想を抱く男は、積極的な女性を「女のくせに出しゃばり」と感じる。

しかし、男女平等だから「出しゃばり」や「生意気」ということはあり得ないのだ。

思索をしていると、濱尻宝が戻って来た。

「あっ」

「幸奈。無事だったか」

酔いが醒めている感じに見える。幸奈は真顔で濱尻を見すえたが、ほどいてもらうためには、強くは言えない。

「宝君。絶対来てくれると思ったよ」

「マジ?」

「ほどいてください。ほどいてくれたら、尊敬します」

「尊敬はいらないよ。俺が欲しいのは愛情だから」



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