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2

夜10時を回った。ようやく片付いた。

「そろそろ帰るかな。明日も仕事だから」

幸奈は作業を終えると、ロッカールームへ行った。汗びっしょりだ。自分への御褒美に一杯飲みたくなった。飲むといってもファミリーレストランで食事しながらビールを少しだけだが、店に行くなら着替えたかった。

アパートに直行ならこのまま帰るが、作業着でファミレスに行く勇気はない。彼女は人一倍お洒落だった。

「ふう・・・」

一人だから気軽。バッと全部脱いだ。セクシーな水色の下着姿。自慢のボディ。幸奈は口もとに笑みを浮かべ、ロッカーにあるハンガーに作業着を掛けた。

部品管理室のドアを開ける音。

「え?」

ここの鍵を持っているのは社員だけ。社長か。幸奈は息を潜めた。泥棒だったら大変だ。

足音が近づいて来る。泥棒なら忍び足が基本だろう。電気が点いているのにドカドカ来るということは、社長か。

「あれ、幸奈っちいるの?」

濱尻宝の声。幸奈は安堵した。泥棒だったら怖過ぎる。

「宝君、いるよ」

「そっか」ロッカーに近づいて来る。

「待って、今着替えてるから」

「嘘!」

濱尻は歩みをやめない。いくら何でも下着姿は恥ずかしい。幸奈は大きい声を出した。

「30秒待って! お願いだから」

しかし関係なくロッカーで隠されている更衣スペースを覗く。魅惑的な下着姿の幸奈を見て、濱尻はエキサイトした。

「ワオ!」

「見るな!」

「セクハラ?」

怖い表情で歩み寄る。幸奈は慌てふためいた。両手を出して濱尻を制する。

「ちょっと待って、ちょっと待って」

「かわいい。ビビってる」

「やめなよ、ビビるに決まってるじゃん」幸奈は壁まで下がって顔を紅潮させた。

「幸奈。大好きな女の子の下着姿なんか見たらさあ。理性なんか万里の果てまで飛んじゃうよ」

かなり良くない展開だ。濱尻は酔っ払っている。

「飲んでたの?」

「そう。ぐでんぐでん。ちょっとどこかで休もうと思ってさあ」

幸奈は急いでロッカーからシャツを出すと、体を隠した。

 

 


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3

不真面目にもほどがある。会社はホテルではない。

「何度もこういうことあるの?」幸奈が睨んで聞いた。

「こういうことって?」

「酔って終電とかなくなったら、ここに泊まったりしてないでしょうね?」

「社長に言う?」

「言わないよ。言ったら首にされちゃうよ」

「それもいいかな」

濱尻がさらに近づく。幸奈は膝が震えた。

「待って、待って、きゃあ!」

濱尻が掴みかかる。幸奈は抵抗した。

「ちょっと、触ったら許さないよ」

「許さないとどうなるの、セクハラ?」

「セクハラじゃないよ、痴漢だよ」

「生意気!」

濱尻は何を思ったか、幸奈を抱き上げた。

「きゃあ!」

そのままダンボール箱が腰の高さまで積んであるところをベッド代わりに、幸奈を仰向けに寝かせた。

「待って、何をするの!」

濱尻が上に乗る。危ない。幸奈は本気で抵抗した。

「やめなさいよ! 怒るよ!」

かなり酔っている濱尻は、勢いに任せておなかを触りまくる。

「幸奈、いい体してるじゃん」

「それ以上触ったら警察に言うよ、やめな」

「そういう生意気なこと言うとスッポンポンにするよ」

よくもそんな恐ろしいことを。裸にされたら困る。幸奈は刺激しないようにした。

「待って宝君。全部冗談でやってるんでしょ?」

「本気だよ」

濱尻が幸奈のいちばん大切なところを狙う。彼女は防御しきれずうつ伏せになった。すると、濱尻は慣れた手つきで幸奈の両手首を後ろでクロスさせ、彼女が握っていたシャツで縛ってしまった。

「こらあ! ほどきなさい!」

暴れる幸奈に構わず、濱尻は千鳥足でロッカーへ行き、タオルを手にすると戻って来た。幸奈は必死に抵抗したが、足首もギュッと縛られてしまった。

セクハラどころではない。初めて味わうレイプの恐怖に、幸奈は蒼白になった。

「待ってよ、宝君、ほどいて」

 


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4

水色の下着姿がよく似合う。濱尻は興奮した。

「幸奈。大好きな女の子が手足拘束されて無抵抗で目の前にいる。こんな場面て一生に一度しかないよね?」

「知らないわよ!」

「何その生意気な態度は。素っ裸にしちゃうよ」

濱尻が襲いかかる。幸奈はもがいた。

「待って、わかったから!」

「何がわかったの?」

どうすればいい。幸奈は息を乱した。

「あたしをどうするつもり?」

「どうしようかな。特に考えてないよ」

とにかく無抵抗というのは危険過ぎる。ほどいてもらうしかない。アニメではないのだ。正義の味方が助けに参上することはない。

「宝君。お願いだからほどいて」

「かわいい!」

身じろぎする色っぽい動きは、狼性を刺激して返って危険が高まる。

「でもさあ、女の子が無抵抗だとさあ。こういう意地悪したくなるよね」

「え?」

濱尻はいきなり幸奈の両脇をくすぐりまくる。

「キャハハハハハ、やめて、あははははは、やははははは・・・」

幸奈は真っ赤な顔をしてもがいた。怒り心頭だが笑うしかない。悔しくてたまらない。

「やははは、やめて、あははははは、お願い、きゃはははっははは・・・やめて・・・」

やめてくれた。

「はあ、はあ、はあ・・・」

罵倒したらまたくすぐられてしまうから、何も言えない。哀願するしかなかった。

「宝君。くすぐりはやめて。息できない」

「嘘」

「ホント」

「くすぐりは苦手なんだ?」笑顔で聞く。

「得意な人はいないでしょう?」

「幸奈はMなんだ?」

「・・・・・・」

セクハラを通り越してやりたい放題の言いたい放題。許せないが本人は卑劣な行為をしているという自覚がなさそうだ。しかし、無抵抗なのに刺激すれば、またSな意地悪をされてしまう。

「宝君、本当にやめて。お願いですから」

「かわゆい!」

 


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5

完全に酔いが回っている濱尻は、危ない笑顔で迫る。

「今なら何でも言うこと聞きそうだな」

「え?」

「結婚して」

「何言ってるの」幸奈は焦った。

「無理だよね。俺のこと男と思ってないもんね」濱尻はまた幸奈の両脇に手を伸ばした。

「男と思ってるから怖がっているんでしょ」

「嘘。俺怖い?」

「怖いよ」

なぜか満足な顔をした濱尻宝は、幸奈のおなかを触りまくる。

「触らないで」

「いいじゃん、おなかくらい」

「ダメに決まってるでしょ」

「そういう生意気なこと言うと、もう少し下に移動しちゃうよ」

「わかった、やめて!」幸奈は両膝を曲げて防御した。

濱尻はおなかを触る。諦めるしかなかった。大切なところを責められるよりはマシだ。

「幸奈」

「何?」

「付き合って」

「本気で言ってるの?」幸奈は睨んだ。

「本気だよ」

「じゃあ、ほどいて。手足縛って迫るって、男のやることじゃないよ」

濱尻は黙っていたが、急に冷たい表情に変わった。

「完全に脈なしだな。よくわかったよ。バイバイ」

おなかをポンと叩くと、濱尻はダンボールの束から下りて、さっさとドアへ向かう。幸奈は慌てて叫んだ。

「待って宝君! ほどいて!」

「おやすみ」

「待ってください! 待ってください! 宝君!」

しかし濱尻は振り向かずに行ってしまう。幸奈は仕方なく言った。

「わかった。友達からっていうのじゃダメ? 宝君!」

濱尻はドアを開けて出ていった。まさかこのまま放置されるとは思わなかった。最後はほどいてくれると思っていた。

「どうしよう?」


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6

幸奈はもがいた。何とか自力で外そうと試みたが、キッチリ縛られているから無理だった。

「どうしよう?」

手首だけならまだしも、両足首も縛られているから立ち上がることもできない。ダンボールの束は1メートルくらいの高さがあるから、落ちたら怪我をしてしまう。両手両足を拘束された状態だと、倒れたときに受身が取れないから危ない。

「朝が来る前に何とかしないと」

今は何時頃だろうか。幸奈は神妙な顔で辺りを見回した。いちばん最初に来るのは前川社長。下着姿で手足を縛られているなんて、こんな恥ずかしい格好は死んでも見られたくなかった。

この気持ちは男にはわかるまい。幸奈は濱尻の人格を疑った。酔っていたなど言い訳にならない。

それに社長に発見されたら大問題になる。ヘタしたら警察沙汰だ。濱尻に縛られたと本当のことを言うしかない。

再びドアが開いた。

「あ、宝君、戻って来てくれた」

近づく足音。幸奈は言った。

「宝君。怒ってないからほどいて・・・あっ!」

濱尻ではない。加藤竜佐だ。幸奈は血の気が引いた。竜佐も驚いて幸奈を見ている。セクシーな水色の下着姿。しかも手足を縛られている。加藤竜佐は怪しい笑みを浮かべると、幸奈に言った。

「いい格好してるな」

幸奈は呼吸が乱れた。嫌いな男に哀願するのは悔しい。しかし、そんなことは言っていられない。変なことをされたら人生終わりだ。

「竜佐君。ほどいてください」

「宝とか言ってたなあ。濱尻に意地悪されたのか?」

「・・・何もされてないわ」

「放置プレイか?」

「そんなんじゃない。早くほどいて」

「何その態度?」竜佐は容赦なく幸奈のおなかを触る。

「触るな!」

 



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