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コラム② パノラマ視現象

この世の中には不思議なこと、不可解なことがは少なからず有ります。しかし不可解なことであっても必ず説明は付くはずです。SFなどでたまにでてくるパノラマ視現象という現象がありますがこれもその一つです。人間が死を前にしたときにそれまでの人生が脳裏に次々と現れてくるという現象です。心理学でこの現象がどのように説明されているか知りませんが、(このような現象自体無視されているかもしれません)私は次のように考えています。人間は身の危険を感じたとき、特に死を身近に感じたときには、思わぬ力を出すことがあります。火事場の馬鹿力などがそうです。人間は普段は自分の力を100%発揮することはできません。しかし何かのきっかけで100%の力が発揮できることがあるようなのです。これは一種のホルモンが瞬間的に脳の中にどばっと分泌されて起こるようです。かなり短時間の間に100%近くの力が発揮できるようになるのです。何かの本で記憶物質というものがあることを読んだ事がありますが、これもその一つと思われます。すごく驚いたときなどにその光景が目に焼き付いてしまう、ということがあるようですが、驚くという事がきっかけとなって記憶物質が大量に分泌されるとこういう事が起こるようなのです。そして 、こういう物質はまだあまり発見されておらず、死を目前にしたとき、脳の働きを格段によくする物質があってもおかしくはないのではないかと思うのです。パノラマ視現象が起こると、まず時間がゆっくりになり、それからその人の過去の体験が走馬燈のように頭の中を駆けめぐると言います。時間が遅くなるということはあり得ないので、脳の働きが早くなったと解釈した方が理屈に合います。そして、目前にせまった死を回避する方法を過去の体験から探そうとしてパノラマ視現象は起こるのではないでしょうか。

2章では心以外の脳の機能について考えてみたいと思います。そもそも脳の機能に自覚できない部分が有るから心とは何か、人間にとって本能とはどんな働きをしているのかが判りづらくなるのです。しかし、その部分は自覚できていないあなた自身です。そしてあなたが一軒の家の一部屋に閉じこもっているだけで、その家には他にもいくつもの部屋があるのです。他の部屋がどんな機能を持ち、どんな仕事をしているのか…それが判ればあなた自身についてももっと理解できるようになるのではないでしょうか?

自動制御室

あなたは道を歩くときに何を考えていますか?両手を交互に振って身体のバランスをとりながら足を交互に…等と考えながら歩いていますか?そんなことをしなくても脳の中には”オートドライブ”を行ってくれる機能があります。これを行っているのが自動制御室です。
脳の機能に心という判断の機能が加わるまでは本能による制御はあったものの、ほとんどは各部位を外からの刺激などによって自動的に動かしていたと思われます。この機能は人間にもそのまま残っています。歩いているときに手を交互に振ってバランスを保ちながら足を交互に…、などと考えていたらきりがありません。心は”あそこまで歩こう”と考えるだけで良いのです。後は自動制御室が身体全体を勝手に操作してくれます。
実際には歩くとき以外でも、と言うより人間の活動のほとんどがこの自動制御室の働きによる物です。よく考えてみて下さい。あなたは何も考えていない時間が1日のうちに相当あるはずです。道を歩いているときでさえ、何も考えずにボーッとして歩いていることが多いのではないですか?テレビを見ているときでも何も考えず、つまりは心が判断を行っていない状態でいることがけっこうあるのではないですか?そんな時でも心以外の部分はちゃんと働いていて、特にこの自動制御室は絶えず活躍しているのです。
ただし、この自動制御は生まれたときから備わっているわけではありません。(呼吸をするとか心臓を動かすと言った生命の維持に関する自動運転はある程度最初からそなわっています。)次に説明する”書庫”に格納されている行動パターンを自動で行っているのです。もちろん"書庫”の中身は"記憶”です。ですから自動制御室の自動運転はあなたの普段の行動が記憶され、つまりパターン化された物、と言うことです。貴方は、ただ歩くのにも最初は相当な時間が掛かっていることを覚えていますか?赤ちゃんの頃のことなのでまず覚えている人はいないでしょう。でも、どんなに運動能力がずば抜けた人でも赤ちゃんの頃には何度も転びながら歩くことを覚えたのです。最初は、それこそ両手を交互に振って身体のバランスを取りながら…とやっていたはずです。それを何度も繰り返しながら歩くことを覚えたのです。そして、一度覚えたパターンを少しずつ洗練された物にしていったのです。スポーツ選手はこの無意識の行動パターンを作るために練習を重ねます。どんなに優れた技も最初は「両手を交互に振って…」と同じレベルからスタートしたのです。そして、意識しないでも技を出せるようになって初めて自分の身についたことになります。
貴方はこうして歩くことをマスターし、走ることや階段を上ること、スキップなどを次々と行動パターンに組み込んできました。それだけではありません。箸の使い方からキーボードの叩き方、ドアの開け方まで貴方の生活に必要な動作のほとんどを自動制御室は行っています。貴方にとって欠かせない便利な存在です。しかし、行動パターンを一通りそろえる頃になると、そのほとんどを無意識に、つまり貴方の心の判断をしないで行ってしまうようになります。このため貴方がしっかりしていないと本能と自動制御室が貴方を勝手に動かしてしまうのです。貴方は一日の内どれくらいの時間をはっきりと意識して行動していますか?いつもと同じ時間に起きて、いつもと同じように朝食を食べ、いつもと同じように会社に行く…。元々は貴方が造った行動パターンではあります。しかしこの時点ですでに貴方はほとんど自分の心の判断を使わないようになっているのです。これは、貴方が本能の言いなりになって要る証拠です。何時もと同じ行動を取ることが悪いわけではないのですが、それで良いのかチェックをしましょう。そしてたまにはちょっと違った方法、ちょっと違った行動を取る自分を思い浮かべてみましょう。そこに少しでも魅力があればそれを行ってみるのです。それが貴方の心を磨く第一歩になるはずです。

書庫

その部屋には至る所に棚が乱雑に置かれています。そして棚にはびっしりと資料が積まれています。よく見て下さい。それぞれの資料にはあちらこちらに糸が張られています。また、入り口にはプリンターがあり、気が狂ったようにプリントアウトをしていますが、そのプリントはほとんどがそのままプリンターの横にあるシュレッダーに吸い込まれていっています。
気がつくとさっきまで無かった棚がいつの間にか目の前に出現しました。その棚には「ゴルフ」と書かれています。どうやらこの家の持ち主は最近ゴルフを始めたようです。いままで他の棚にあった”ゴルフ”の関係の資料が自動で「ゴルフ」の棚に移動してきました。そして入り口にあるプリンターからゴルフの資料が次々とその棚に収まっていき、それぞれの資料から出ている糸が少しずつ他の資料にからみついていっています。

 

記憶は脳のライブラリー、書庫にいろいろな形でため込まれています。そこには貴方の過去の経験、そして物事に対する知識が"記憶”として蓄積されています。
記憶には短期の記憶と長期の記憶があります。短期の記憶は毎日の行動、見聞きしたこと等が洪水のように記憶され、同時に消去されています。そう、記憶はそのほとんどが本当に短期で消去されているのです。毎日の行動などいちいち覚えていたら脳の記憶領域はすぐに満杯になってしまいます。ですから残しておく価値のある記憶以外はすぐにシュレッダー行き、つまり消去と言うことになっています。
では、長期の記憶はどうでしょうか。長期の記憶は短期の記憶が一定のプロセスを経て格上げされた物です。短期の記憶として保存された記憶が何度も出し入れされた結果、長期の記憶に格上げされるのです。
ここで重要なのは、記憶は単体で保存されているのではなく、必ずいくつかの記憶にリンクが張られていると言うことです。すべての記憶にはリンクが張られており、その繋がりを呼び出すためには"パスワード”が必要となります。"パスワード?”何のことか判りませんよね。ある記憶に張られているリンク先が"パスワード"です。それさえ思い出すことができれば、必要な記憶もリンクをたどって引き出すことができるのです。ですから1つの記憶に対してリンク先が多ければ多いほど簡単に思い出すことができる記憶と言うことになります。また、記憶力がいい人というのは、元々一つずつの記憶に対するリンクが多いのではないかと思います。ただし、このリンクは使わなければ時間とともに消えていってしまいます。そのために昔のことは思い出すのが難しくなっていくのです。
そして、このリンクで重要なことは記憶に対するイメージに繋がっていることです。小さい頃に犬にほえられて犬が嫌いになったとします。大人になって犬にほえられたことは忘れてしまっても、つまりこのリンク自体がほとんど消えてしまっていてもイメージとして犬=吠えられた、と言うリンクは残ってしまうのです。そして、犬に対するリンク(つまり犬に関係する記憶)はその後も増え続けますが一度嫌いになった物はその後も悪いイメージの記憶が多くなりますのでより嫌いになる傾向があるようです。もちろん好きな物はその反対になります。ある意味、好き嫌いはその人の過去の経験の集大成と言えるでしょう。

次に重要なのは経験が行動パターンに凝縮されていくことです。普段の経験は書庫に記憶として積み上がっていきます。この積み上がった経験の中で何度も繰り返し行われていることが、その平均的な行動を行動パターンとして記憶されるのです。自動制御室の所でも説明しましたが、この行動パターンがあなたの普段の行動を助け、また縛りもしているのです。通常の行動パターンは意識すればどうにか帰ることができるかもしれませんが、その行動が快感物質の分泌などに関係しているとちょっと意識しただけでは止めることが出来なくなります。酒、タバコあるいはギャンブルや女遊び…快感物質と関連し、行動パターン化しやすい物は世の中にたくさんあります。やめたいと思いながらもやめられない…。植木ひとしの名文句「わかっちゃいるけどやめられない…」となってしまうのです。この状態はあなたが本能からの要求通りに行動してしまう状態-本能の代弁者になっているということです。もちろん、多少はこの部分がないと面白みのない人間になってしまいます。しかし、コントロールできる状態でなければなりません。

そして、もう一つ。あなたは小学生の頃の1年間が今よりも長かったと思ったことはありませんか?そして、最近は1ヶ月、1年と言った期間が過ぎるのが早くなったと思いませんか?時間は誰の元でも一定なのになぜそう思うのでしょうか?それはその間の経験が積み上がっていないからです。その間に記憶に残るような行動、経験が無かったために後から思い出せない時間が多くなり、結果として短い1ヶ月、1年間に感じてしまうのです。子供の場合は書庫にある棚の数自体が少なく(つまり経験が少ない)初めての経験で新たな棚を作ることで書庫を充実させていきます。新たな棚が出来れば新鮮な記憶を次々に保存することが出来、またリンクも新しいのでその棚は鮮明な記憶で満たされることになります。そのために子供の頃の方が時間が長かった様に感じるのです。しかし、大人になったからと言って新たな棚を作ることが出来なくなるわけではありません。あなたは一生の内の貴重な1ヶ月、1年間を無為に流して過ごしてしまっているのです。ある程度の年齢になっても何かに必死で取り組んだ1ヶ月、1年は長く感じる物です。人の一生は同じ年齢まで生きたとしても長くも短くもなります。去年は短かったと思っているあなた!今年は何かに挑戦してみてはどうでしょうか?


本能の部屋

女心と秋の空

 

女性の考えていることは変わりやすくてよく判らないという文章ですが、女性から言わせると「男は何を考えているか判らない…」となるようです。これは、ある意味当然のことで、男性と女性は心に関する遺伝子が同じであっても実際に発現する遺伝子が違うからです。考え方の基本となっているソフトウエアーに違うタイプの物を使っているのです。もちろん、同じ男同士、女同士でも持っている遺伝子も違えば発現している遺伝子にも違いがありますが、傾向として男の使うタイプのソフトと女性の使うタイプのソフトは違いがあると言うことです。
では、本能の部屋とはどんな部屋なのでしょうか。

 

その部屋は小さな小部屋がいくつも続いています。部屋全体は薄暗く、細い通路の両側が小部屋になっています。小部屋の中がどうなっているのか判りませんが、それぞれの小部屋からは数本のチューブ出ていて入り口まで繋がっています。ちょっと小部屋の中を覗いてみましょう。一つ目の小部屋はパソコンが置いてあるだけで照明もついていません。2つめも同じでした。次々に覗いていってやっと5番目の小部屋に明かりがついていてパソコンのモニターに外の状態が映し出されていました。どうやらこの部屋の主は彼女とデートの最中のようです。モニターの横にはインジケーターが付いており、上部に”飢餓”下部に”満腹”と書かれています。この小部屋は食欲の小部屋のようです。インジケーターは真ん中からちょっと上を指しています。"ショット小腹が空いた"状態のようです。外に向かったチューブには赤い液体が流されました。それと同時にこの部屋の主が彼女を食事に誘い始めました。でも彼女はあまり食事には乗り気ではなくホテル街の方に歩き始めます。同時にこの小部屋の明かりが薄暗くなってきました。と、同時に隣の部屋でビートのきいた音楽がなり始めました。隣は性欲の小部屋のようです。チューブからの液体も止まり、食欲の小部屋のモニターは明かりが消えた小部屋でちょっと薄暗くなったまま現在の状況を映し出していました。

 

人に本能があると言ってもぴんとこない人も多いでしょう。一般に本能は”ある行動に駆り立てる性質”と考えられています。”ある行動に駆り立てる”とはどうやって駆り立てているのでしょうか?本能の小部屋が持っている脳をコントロールするツールとしては、ホルモンと感情があります。ホルモンによって興奮させたり緊張させたりしながら感情によって心を制御しているのです。感情は心の判断を左右します。本能が満足すると快感物質等のホルモンが分泌され、また満足感、喜びと言った感情によってご褒美を貰い、本能が満足できなかった場合は不快感、悲しみなどの感情を罰として与えられるのです。

もう一つ重要なのは、本能の部屋はある一つの小部屋が活性化した場合に他の活動を抑えるようになっていることです。先ほどの例の場合、最初に活性化していた"食欲"を”性欲”が押さえ込みました。なぜ”性欲"は"食欲"を押さえ込むことが出来たのでしょうか?まず、食欲のインジケーターが下がりきっていなかったため、食欲自体はほどほどの活性化しかしない状態でした。おそらく性欲にもインジケーターが付いており、そちらの方が食欲よりも優先されるレベルだったと思われます。そして、性欲が活性化したために食欲の活性は阻害されてしまいました。何かに集中するときにはこの機能が活躍します。将棋や囲碁の達人は盤面と相手のそれまでの打ち方で数十手先まで読むと言います。脳が余計な活動をするのを押さえて一つのことに集中するからこそそんなことが出来るのです。この機能は他の部分でも脳に影響を与えます。興味の薄い勉強をしようとするとすぐに眠くなる人は多いと思います。勉強をすると言う”向上心”の本能が、インジケーターが上がらないままに他の機能を押さえ込んでしまうからです。

そして、先ほどの例でも見たように"本能の部屋”には多くの小部屋、つまり”遺伝情報が発現した本能というプログラム”が存在しているのですが、実際に活動しているのはその内の一部だけです。それぞれの本能は環境や活動する時期がその本能にプログラムされている状態にならないと目を覚ましません。心に関する遺伝子が同じであっても男性と女性では考え方が違ってくるのは、実際に活動しているプログラムの組み合わせが違った物になるからです。同じ理由で1卵性双生児は同じ遺伝情報を持っていますが、経験が違っているために性格が違う=発動している遺伝子が違っている、と言うことが多いようです。これは、あなた自身の本能にもいえることで、実際には眠っている”本能の小部屋”があなたにも相当数あるのです。この眠っている"本能の小部屋”は、まだあなたも知らない”あなた自身の性格”です。そのほとんどは、簡単なことでは目覚めることはありませんが、新たな経験、環境であなたの知らないあなたが目覚めるかもしれません。そう、あなたにはまだいろいろな可能性が残されているのです。そう考えるとちょっと楽しくなりますね。

ただし、個々の人間にとって本能とはわがままな存在です。その人の立場などお構いなしに複数の本能が自分本位に振る舞い心に要求を出してくるのです。こうして人は思い悩むことになるのです。



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