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農耕

人間の生息域が全世界に広がった頃、一部の地域であることを始めた人たちがいました。普通、食事の後のゴミはねずみや昆虫、場合によっては飢えた肉食獣を呼び寄せるためゴミ捨て場はみんなが住んでいるところからちょっと離れた場所に作ります。そこにゴミとともに食べかすであった植物の種が捨てられ、芽を出して実をつけるまでになったのです。それを見て自分たちの家の周りに種を蒔くことを思いついた人たちがいたのです。農耕の始まりです。狩猟採集生活をしていた頃は人口の増大は人間の生息域の拡大を伴いました。しかし、農耕を始めてからは人口の増大が人口密度を押し上げることになったのです。また、人々は豊かな自然を求めて移り住む生活をしていましたが、この頃から農耕に適した土地を求めるように変わっていきます。当時はもちろん土地の改造など出来ませんから農耕に適した土地はあまり多くありませんでした。そして、良い土地をテリトリーにした共同体は人口を増やすことが出来るようになり、力を持ち始めます。こうなると人々は土地に固執するようになって行きました。より農耕に適した土地を手に入れた共同体が人口を増やすことによって勢力も増大するためです。
そして、農耕に適したいい土地は争いの元にもなって行きます。一部の地域で力を持った共同体はその増える人口のためにより多くの土地を必要としていくようになります。もう、狩猟採集生活をしていたころのように人数が増えたら他の土地に移り住むということは行われなくなっていきました。それよりも自分達の土地で増えた人口によって他の共同体に争いを仕掛け、土地を奪いながら勢力の拡大を行うようになっていきます。こうなると力で他を支配する男たちが共同体の中で実権を握るようになっていきます。共同体は次第に男たちが権力を握る社会へと変貌していきました。女性達が共同体の中心であった頃は複数の女性による運営がなされていましたが、男たちが中心になると他の共同体との争いが増えれば増えるほどリーダーシップを発揮するボスに権力が集中するようになっていきます。王国、または帝政の始まりです。
最初は他の共同体との争いごとがきっかけだったのでしょう。それまで巫女たちによって運営されていた共同体でしたが、他の共同体との争いが増えるにつれて戦闘を専門に行う男たちが現れます。この男たちの働きが共同体の命運を握るようになってくると自然と権限その他を巫女たちから男たちに移す必要が出てきます。他の共同体との争いの中で最初は仕方なく男たちをボスの座に付けたのです。巫女たちは共同体の運営を行う立場から宗教的な部分のみに活躍の場を狭めることになりました。そして、ボスの座に就いた男たちによって共同体は次第に戦闘のための組織に変わって行きます。それが出来なかった共同体はそれを行った共同体に吸収されていったのです。こうして広範囲に及ぶ王国や帝国が出現することになりました。

支配者

自然に対する対応など経験やノウハウを蓄積し、道具を発達させ、火を扱うことを覚えた人間はあっという間に全世界にその生息域を広げていきました。依然として自然は人間に対しては脅威でしたが、この頃には一組の男女が生んだ子供が二人以上成人することが当たり前になっていました。当然人口は爆発的に増えていったのです。その人口の爆発は生息域を広げるだけでなく、すでに人間が住んでいた土地の人口密度も上げることになりました。共同体の人口が増えれば今までと同じテリトリーの中では食料が足りなくなります。そして、この頃から農耕がスタートします。自然にある動植物を採ってくるのではなく、自分達の土地に種を蒔き収穫をすることを覚えたのです。このことによって、すべての人が自分たちが食べる分を確保するのに精一杯であった状態から自分たちが食べる分以上の食料の生産が可能になりました。当然、各個人または各家庭、いや共同体全体が豊かになるはずでした。
自分たちが食べる分以上の食料を生産できる人が増えると食料の生産を行わなくても生活できる人たちが現れます。この人たちは最初は少数が、そして次第にその割合を増していきました。食料生産を行わない人たちは大きく分けると3種類のグループに分かれます。一つ目が食料は作らないが、食料以外の道具を作る人たちです。家から始まり、食器などの家具類、農機具、武器などです。彼らの出現はそれまで各自が自分で作っていた道具を専門家が作るようになる事によってノウハウや技術の蓄積が一気に進みより高機能な道具の製造を可能にしていきました。また、それまで一部で行われていただけの物々交換が社会全体で行われるようになるきっかけともなりました。それは、やがて物々交換から金や銀などの代替価値を使うようになり、商業の発達のきっかけともなりました。2つ目のグループは現在で言うサービス業です。物々交換を代理で行い他の共同体の生産物を仕入れて売る、といった商業や流通業を初めとして飲食店や宿泊施設など後の世代ではさまざまなサービス業が発達しました。そして、3つ目のグループが共同体の運営を行う支配者です。
最初は他の共同体との争いのために戦闘部隊ができ、そのボスが共同体のボスになったのがきっかけとなりました。それまで指導的な立場にあった巫女たちに替わり戦闘部隊のボスがが共同体を支配するようになったのです。最初は単なる他部族との抗争があったのでしょう。その単なる抗争の結果他部族を滅ぼし、吸収し、支配することが自分たちにとって利益になることを知ったのです。こういった事がきっかけとなって抗争を繰り返す部族が現れます。そして共同体全体が戦闘部隊を支援する組織に作り変えられていきました。
男性が共同体のボスになると人間の共同体はその形を一変させます。まず中心的な女性達の合議制が一人の男性の独断に変わります。他の共同体に対抗するため、あるいは実際の戦闘の際には即決が必要になり合議制からボスの独断に変わって行ったのです。力のあるボスは周りの共同体を取り込んでさらに力を増すようになっていきました。このあたりから社会のルールは道徳などの明文化されていないルールと法律の2つに分かれていきます。道徳はその時々、またはその社会ごとにそこの人々の共通の考え方、つまり人々の常識から生まれます。これに対して法律は当初、違った常識を持つ共同体の間の取り決めとしてスタートするのですが、男が権力をつかむ頃から他の共同体を取り込んだ時に違った常識を持つ人々を従わせるためのルールに変貌していきます。最初はボスが独断で、次いで社会の幹部となった者たちによって過去の経験から社会をまとめるために必要なルールが考え出されるようになっていきました。その過程で役人、つまり共同体の運営を専門で行う人たちが登場しました。この3つ目のグループ、つまり支配者は税を徴収することでいろいろな活動を行うようになり、結果としてせっかく自分の必要とする分以上の生産が可能になった農民の余剰生産分をそのまま奪うようになっていきます。結局、生産性の向上が搾取される事と搾取する事を可能にしました。それまで共同体の運営はそれぞれの分野でのリーダーが行っていたのですが、この頃からは支配者が行うようになったのです。自分の親たちと同じ農業を選択した人たちは結局その後数千年の間社会の底辺を支える存在となり、社会から奪われ続ける存在となっていきます。

組織化

人間はある時期から他の哺乳類と全く別の存在であると思い込み始めます。狩猟採集生活をしていた頃は人間自身が自然の一部であることを疑うものはいませんでした。それが、自然とはまったく別の存在であると思い込むようになるのは社会が階層化、組織化した頃からです。
食料生産を行わない人たちの出現は人間の共同体をそれまでとは違った共同体に作り変えました。社会が支配者や戦闘部隊、官僚と物づくりを行う職人、商業などを行う商人、そして食料生産を行う農民等に階層化したのです。階層化は後に固定したものとなって封建制につながっていきます。
初めの頃の階層化は血統を重んじることから始まりました。王や皇帝、地方の豪族たちが自分の死後も自分の血統が後を継げるように血統の大切さを訴えたのです。ボスたちが世襲制になるとボスを補佐する役目の家柄も世襲制となります。ボスは彼らの血統を守ることを担保に彼らに命がけで補佐することを命じ、補佐する側もボスの死後にはその子孫の補佐を続けることを約束しました。この関係が血統を重んじることにつながり、次第に支配階級以外の商人や職人などもこの考えを取り入れるようになっていきました。この血統を重んじる考えは社会に新たな変化を生みました。未成年に対する教育が始まったでのす。それは王や皇帝が自分の後を継ぐものに対して厳しく教育をするようになったことが始まりでした。これが血統を重んじる考えとともにボスの補佐役、地方の豪族、商人や職人などに広がっていったのです。その頃の教育はそれまでの経験や技術の積み重ねの伝承に大いに役立ちましたが、同時に自分たちの血統に対する誇りを持つことも強要されるようになります。自分は他とは違うと言う意識の始まりです。教育が始まったことは人間の経験をきちんと伝承し人間の社会が進歩することを助けることになりましたが、同時に人間に間違った考えを植え付けることにもなったのです。
そして、社会が階層化すると組織化が始まりました。役割分担を明確にしてそれぞれの分野で専門家になることが求められたのです。王家では帝王学が、それを補佐する家系では戦術論や行政に関すること等を子供の頃から叩き込まれる事になりました。これは次第に商人や職人たちの家系にも取り入れられそれぞれが専門家となっていったのです。また、共同体を強くする政策にも組織化は重要な課題となりました。国全体を一つの有機体と言っていいほどに組織化しないとライバルに勝てないからです。生き残りを掛けた競争が始まっていました。ボスを中心とする共同体は勝ち続けることで自分たちの作り上げた理論に自信を持ち、自分たちが他のものたちよりも優れていることを信じるようになりました。
確かにこの頃から人間は他の動物たちと全く違ったことを考えるようになりました。自分とは何者か、自分が生きるのは何のためなのかと言ったことを考え始めたのです。生物は行き続けることと子孫を残すことが最終目的です。自分が何のために生きるのか判らなくなるなどと言う生物は人間以外にいません。社会の階層化、組織化のためには自分の本来持っている本能を押し殺すことが求められました。社会の歯車になるにはその必要があったのです。しかし、人々は自分の中にある本来の性質―本能―に気がついていたのではないでしょうか?本能の求める姿と自分を対比したからこそ自分が何者で何のために生きているのかについて考え出したのです。

所有権の拡大

狩猟採集生活をしていた頃の人たちは自分たちの所属する共同体は全体を見渡すことが出来ました。共同体全体でも数十人から多くて100人程度の人数でしたので自分が共同体の中でどの位置にいるかもわかりやすかったのです。しかし、この時代に入ると強い共同体が他を吸収して急速にその人数を増やしていきました。それまで数十人であった共同体の人数があっという間に数千人、数万人と増えていったのです。そうなると自分が共同体の中でどの位置にいるかを知っているのはボスとそれに続く数人程度となり、大方の人たちは自分の順位がわからなくなってしまいました。人間の共同体のなかでも他の哺乳類と同じように順位争いがあります。競争本能が人にもあるからです。数十人のなかでの競争は目標もわかりやすく、また知った相手との競争ですから無茶は余りしません。ですが、人数が増えて自分の順位もわからなくなった頃からこの競争は変化していきます。順位に向けられていた競争が別の物に向けられるようになっていくのです。その中には自分の持つ所有権の拡大を目指す人が現れました。この人たちは自分たち、または自分個人の所有権を無限に求めたのです。この頃から競争本能は人間の社会の中で暴走し始めます。人間が現れる前から存在した山や森など人間がすむことの出来るすべての土地に所有権を広げ、またすべての物にも所有権がつきました。人が人を所有すると言うことまで起こります。そして自分たちの住むことが出来る土地すべてに所有権が設定されると次に当初は単に代替価値であった金などの貴金属や通貨を求めるようになっていきます。貴金属や通貨は物々交換の代替として、または単に価値の単位として使われだした物です。それ自体には価値がありません。しかし、すべての土地や物にすでに所有権が設定された状態ではそれらに変わる価値が必要だったのです。これが所有権をめぐる競争をより広げる役目をすることになっていきます。
また、所有権の獲得競争に加わることの出来なかった人たちは競争本能を自分たちのプライドに向けていきます。共同体のボスや幹部は組織をより強固にするために自分たちが周りよりも優れていることを人たちに植え付け始めていました。大勢の中で特別な能力を持っているわけでもない人たちまで自分が特別な存在であると思い込むようになっていきます。
その後、力を持った国々は自分たちが必要とする食料、道具類、労働力をはるかに超える所有権を求め世界中に進出していきました。狩猟採集生活時代に世界に進出して行った人々は豊かな自然を求めてその土地の状況に合わせた生活を取り入れながら生息域を広げていきました。しかしこの時代では先に進出していた人々と土地を支配し所有するための進出です。まだ世界のほとんどが狩猟採集生活か、やっと農耕を始めたばかりの状態だったため優れた武器を持った強国はあっという間に世界中をその支配下に組み込んで行きました。

神話から唯一絶対の神へ

広範囲に広がる帝国が出現してもしばらくの間は共和体制がしかれる時代が続きます。各地の共同体の中では一人のボスに権限が集中していましたが自分たちのテリトリーを守るために多くの共同体が同盟を結び共和体制となっていったのです。しかし、この共和体制も次第に一人の王、または一人の皇帝が支配する帝政に変わって行きます。その頃には宗教の世界も神話の世界観が崩れて実社会を反映した物に変わっていきます。全知全能の神の登場です。唯一絶対の神を頂く宗教は人間の社会(帝政)を反映して支持された宗教です。人間の頭では神の世界も人間の世界を反映した物しか想像できないのです。
狩猟採集生活をしていた当時、自然は脅威でした。自分達の力ではどうすることも出来ない存在だったのです。だから山の神さま、海の神さまに祈りを捧げ機嫌を取るためのお祭りを開いてきました。しかし、この時代になると自然は徐々に脅威ではなくなっていきます。山を開き、沼を埋め立てて農地を広げ、治水を行うことによって川の氾濫を防ぎ、広い外洋にも乗り出すことが出来るようになって行きます。人々は、もう山の神さまや海の神さまに祈りを捧げる必要を感じなくなっていたのです。そこに唯一神の概念を持つ宗教が生まれました。山や海は脅威ではなくなっていましたが、自分たちにとって雲の上の存在である支配者―王や皇帝―に対抗できる、いやそれ以上の存在を信じ救いを求たのです。そして「唯一絶対の神」の思想は支配者にも受け入れられるようになっていきます。世の中を作り上げたのが絶対者であると言う考えは世の中を一人が支配する考え方につながるからです。その後人間の社会は階層化が固定して封建制へと変わって行きます。この頃には初期の帝国よりもさらに過酷なボスが登場します。領地の土地、物、人間はすべて領主の所有であるということになり、領主は道徳や法律を超える存在になったのです。唯一絶対の神の考えが本当に絶対になったのがこの封建制の世の中でした。ボスが過酷になるほど絶対の神の存在は支持されたのです。
それまでの神は人間の恐怖や自然のいろいろな現象に即した存在でした。それが唯一神が登場してからは人間本来の姿からは全く離れた存在になってしまったのです。そして、この頃から宗教家たちが生まれてきます。巫女たちはほんの一部を除いて自分たちで自分の食料を確保していました。それに対して宗教家となった人たちは専業になったのです。彼ら(宗教家はそれまでと違って男の職業になりました)は一般の人たちの唯一神に対する信仰を背景にして権力を握っていきます。巫女たちは没落しましたが、宗教家たちは支配者となって行ったのです。そして人間の死後の世界を担保に神の代理人である自分たちを信じ、現在の生活を神の決めたルール(宗教家たちの言う神の決めたルールです)で行うことを強制するようになっていきます。
世界に所有権を広げた国の宗教家たちは自分たちの信仰を世界に広げようとしました。唯一神に対する信仰は、それ以外の信仰や考え方をすべて否定する物だったからです。その為に唯一神の信仰は世界中をその色に染める事を是としたのです。もともと人々はいろいろな考えを持っています。違った考え方を持っているからこそいろいろな状況に対処することも出来ます。それをひとつの考え方に固定することが是とされたのです。
また、この時代の宗教家たちの秘密主義はその後の社会や人々にいろいろな影響を与えました。唯一神の考え方がまだ完全に広まっていなかった当時、宗教家はそれまでの宗教の中心であった巫女たちを”異教徒の魔女”と言うレッテルを貼ることによって迫害しました。それは唯一神に対する信仰が当たり前の時代に入っても残ってしまったのです。旧世代の巫女たちを迫害する為であることをはっきりさせていなかったからです。これが後に魔女裁判として同胞を迫害することにつながりました。このような事がいろいろな部分で起こっていますが、宗教家に説明は要りませんでした。「神のご意思」の一言ですべての説明が終わってしまうためです。

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