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ハイカラ

深夜の読書

 眠れないから暗がりに煌々と明かりを点けて読書してた
 丑三つ時 両親や近所の人に気づかれぬよう息を殺して
 部屋は冷気が充満して しんと静まり返り
 まるで誰もいないみたい
 本の中の誰かさんの声が 目の前で踊っている

 本の文字を指でなぞる 伝わる文字の感触
 遠い作者の皮膚のようで とっても冷たかった
 もはや内容なんて どうでもよくなって
 ページに頬を押しつけて 温めてみる

 そして私は目を閉じた
 夢の中では 果たして誰と出会えるだろう
 その誰かは 私にとって何者なのだろうか



きみの指先

 きみの指先が 空をなぞると
 虹が生まれる
 きみとぼくにしか 見えないけれど
 それが嬉しい

 きみの指先が 川面なぞると
 ぶどう酒が溢れる
 きみとぼくにしか 味わえないが
 それだから酔える

 きみの指先が 文字をなぞると
 意味が生まれる
 きみとぼくにしか 読めないけれど
 だから素敵だ

 きみの指先が ぼくの世界を変えていく



ジュリ

 ジュリ その瞳が曇らぬように
 人の悪意を見ずに済むように
 両手で覆ってあげるね
 それくらいしか ぼくにはできない

 ジュリ この世界はきみに相応しくない
 誰もが自分の正義を主張して
 他人に真っ赤な言葉を投げかけては
 世界を血で染め上げていく
 人の作った世界なんて もう真っかっかで
 いつ神さまからレッドカードを出されても
 おかしくはないんだよ
 お前らの存在自体が ルール違反だって
 その日が来るまで 二人で口を閉じて
 瞳も閉じて 眠っていたい

 だけれど それはできないから
 ぼくはきみの瞳が 血塗られぬように
 少し先回りして 少しでも美しい道を探そう
 赤いばらの茨や 唐辛子の実なんかは
 きみのために 取り除いておこう
 そのために ぼくが傷ついても
 気づかれぬように 道化のように笑みを張りつかせて
 ぐるぐる巻きの包帯で いつでもハロウィン気分
 お菓子だって 他の奴からぶんどってくるよ

 だからジュリ きみはきみのままで



ぼくがぼくでなくなったら

 後悔することばかりで
 自分の記憶の海に溺れるばかりで
 ぼくがぼくであることを恐れていて

 だからぼくは名前をなくし
 存在を消して ただ風となりたくて
 どこにも留まらず
 誰の記憶からも消え去りたくて

 そうしたら 過去を捨て未来を捨て
 自由に空を漂うことができるでしょうか

 でも そうしたら
 ぼくは何を考えて 何を感じられるでしょうか



ぼくのユニ

 ユニは夢を生きている
 まぶたを閉じて 額から伸びる角で物事を感じている
 ユニの髪は琥珀色
 この星の記憶が宿っているけれど 本人はそれを知らない

 ユニはいつも笑っている
 笑顔はひしゃげ 額から伸びる角がまっすぐに空をさしている
 ユニの指は桜色
 この街の桜と同じ色だけれど 本人はそれを知らない

 そんなユニに恋をして ぼくは後を追うけれど
 ユニはそれを知らない
 手を伸ばして 触れてみても
 ユニはそれに気づかずに
 一歩飛び出して ステップ踏み出して
 ただ一人だけ踊り狂う
 ぼくが真似しようとしても
 次の瞬間にはピタッと止まって
 どこか別の場所へ駆けだしてく

 ユニはずっと同じところにはいられない
 だからぼくも同じところにはいられない
 ユニ以外のものは全て 過去に捨ててきた
 それなのに ぼくはユニを捕まえられずにいる
 そんなぼくのことなど どこ吹く風で
 ユニは好き勝手に進んでいく

「待って」とぼくは叫んだ
 ユニは答えなかった
「待って」とぼくは走った
 ユニは振り返らなかった
 それなので ぼくは
 走って 走って 走り続けて
 ユニを追い越して 振り返ると両手を広げた
 目を閉じたままのユニは それに気づかずに
 その額から伸びる角で ぼくの胸を突いた
 赤い血が噴き出す ユニの動きが止まる
 閉じられていたまぶたが見開かれた
 ユニの瞳は 真っ赤だった
 それを見て ぼくは笑った
 口から熱い血だまりを溢れさせながら

 やがてユニは何も言わずに ぼくから離れてしまった
 けれど その額にもう角はない
 ユニの角は 今でもぼくの胸に突き刺さっている
 水晶のように輝きながら 血をこびりつかせ
 キラキラと ぼくの胸を照らしている



回り道


 最短距離の道があるかもしれないけれど
 少しだけ回り道してみる

 遠回りして その間 人に追い越されても
 自分の気持ちに嘘をつかないで
 行きたい道を進んで
 きみに会いにゆく

 その最中 観た景色を 伝えるためにも



空の隙間

 

 灰色の雲の向こう
 隙間から太陽の光が漏れている
 まるで雲が濡れているように

 

 これまで楽しかったことなんて
 あの空と同じように
 少しだけ なんだけど

 

 この景色があんまり綺麗だから
 まだ生きていけるような気がした


ソラリス


 意味もない文字をつづる
 誰にとっても価値のない 文字を

 

 自分の頭だけで完結した世界は
 誰の心も動かせず
 動かしたとしても 誤解されて

 

 それでも綴り続けたら
 文字は繋がり合い 一本の糸となって
 きみのもとへ届くかも



淡い色鉛筆画

 

 淡い色鉛筆画のように曖昧な世界があればいいのにな
 細かなハッチングで絡み合い、
 指でこすればぼやけるような
 物と物の、色と色との境界線が無かったら
 悩まないのになぁ



夢現の鏡面

 

 きみは次元を飛ぶのか
 目に映る全てに 自分を映しながら
 例えば会社の行き帰りに通る公園に
 或いはそびえ立つビル街の頂点に
 過去を 未来を 覚える

 

 しかしやがて気づくだろう
 目に映るものは 自分ではないこと
 まるで別の存在であり 交われはしないこと
 我に返ったとたん きみは想う
 自分は世界の歯車の一部に過ぎないと

 

 物質に挟まれ 車輪の出っ張りを研磨され
 世界を動かす部品となる
 いや 既になっていた
 生まれたときから そうだった
 ただ自分の空想に閉じこもっていただけだ
 硝子細工の夢を追いかけて
 水泡のような煌めきに魅せられていた

 

 それでも きみの心の臓を開けてみたら
 溢れ出す輝き
 夢現の鏡面に吸いつくように 飛んでいく
 そこに映るのは かつての夢のかけら
 揺れる水面 揺らぎはきみの気持ちから
 ぼくらは夢と現実の狭間を見つめながら
 身動きが取れないままに 生きている



マトリョーシカ

 

 これは人間の歴史です
 過去も未来も すべて内包する
 人類の進化の縮図です


 

きみの色のジャム


 マーマレードにイチゴ
 キウイにピーナッツ
 トーストにつけて食べたら
 泣きたくなるような味

 

 朝食がのどを通らない
 今朝から絶不調

 

 でも、このジャムはいつまでもある訳じゃないから
 いつかは食べ尽くせる日が来るから

 

 ぼくは日々色の変わる瓶ごしに
 まだ、きみを見ている



ほんとのぼくは

 

 ほんとのぼくは 空を飛べて
 岩よりも硬い肌を持ち
 氷細工のように 冷ややかな
 そんな強固なものなんだ

 

 だからきみの手に 掴まれて
 柔らかな皮膚に包まれて
 じわり心を溶かされるような
 そんなに弱々しい人間じゃない

 

 それは ほんとのぼくじゃない
 頬を伝うのは 涙なんかじゃない



私の中のソラリス

 

 何をしていても 凪いだ海のように
 狂おしい感情にも 動かされない
 静かなるソラリスの海よ

 

 もはや芸術にも心動かされず
 しゃくり声すらあげず こぼれる涙も
 怒りすら 胸を締めつけない

 

 それなのに 時折襲う発作は
 心臓が破裂するほどの 鼓動は
 夜になると 見下してくる
 あの月のせいなのか

 

 ソラリスの海が 月の光を反射させる
 ちらちらと揺れる輝き
 それがどこで瞬くか わたしは知らない
 どこの誰がそれを見つめているのかも
 知ることはない

 

 気まぐれな ソラリスの海 


楽園のリンゴ

あこがれ


 夢見る隙に 去っていく

 後ろ姿だけで あとはみんなまぼろし

 ぼくの心の内にあるもの


 それがあこがれ



彼の死


 彼の目は虹色に輝いていた。

 彼の世界は七色に染まり、いつだって綺麗だった。

 彼は幸せなまま死んだ。

 周囲の人々には、彼が血だまりの中で死んだようにしか見えなかった。



さよなら地球

 

 地球の海がなくなりかけたとき 

 生きものみんな涙を流した 

 ただ彼らはとっくの昔に宇宙に避難していたので 

 その涙は地球には届かなかった  

 代わりに狭苦しい宇宙船の中に 

 涙の海が生まれた 

 そこで彼らはみんな 

 新しい生命としてやり直すことにした



楽園のリンゴ


 坊や いつも私を見上げている

 お腹を空かせて 青白い顔で

 真っ赤に熟れた 私を


 坊や そんなに私が欲しいなら

 蜜でたっぷりした身体を携えて

 この樹から 堕ちてあげる



 さぁ お食べ

 あなたは私を持ち上げて 口元へ

 けれど そばを通った女の子が泣き出して


 あなたは私をその子へやってしまった



 その子のお母さんは 私をジャムにしたわ

 長く食べられるように って

 熱い炎で コトコト煮詰められて

 想うのは あなたのことばかり



 でも 今朝 知ったわ

 あなた 飢え死んじゃったって

 瓶の中で 聞かされたの



 ねぇ 坊や

 私 あなたのために 何ができたかしら

 いずれ すぐそばへ 行く身だけれど

 今も考えているの



隠しごと

 

 大事なものは目に見えないように 大事な言葉は口にできない 

 口にしたとたん ぼくのものでなくなるから 



狂った愛


 きみの泣きじゃくる顔が好き

 ぼくのために傷つく姿が好き


 だからぼくはいくら傷ついても平気

 その分だけきみはぼくに縛られるから

 傷つけば傷つくほど ぼくはきみからは見捨てられない

 二人は離れられっこないんだ



無償の愛について


 真っ白お月さま 触れたらミルクの雫が零れるよ

 地球に降り注いで 夜の闇を和らげてくれるよ

 だってお月さまは 地球に恋をしているもの


歴史


 上下左右徹底的に閉ざされた密室で、

 みんなが地面に押しつけられていたとき

 彼はあの天井をぶち破って、

 空を飛ぶことを考えていた



正義

 

 みんなが正義と言う文字を書くと、

 後世の人々は解読することができなかった



きりぎりす

 

 ありの大人がきりぎりすを嫌っても、

 ありの子供たちは彼の歌を忘れなかった



ニュートンとリンゴ

 

 リンゴが木から落ちる理屈をニュートンが説明しても、

 リンゴが甘いことに変わりはなかった



ペンギン

 

 ペンギンが空を飛べなくても、

 特に問題はなかった

 空を飛びたいペンギンなどいなかったからだ

 そんなのは、ただの空想だ!



空と星とひと

 

 空の向こうには星がある

 星は過去の輝きをまとう

 人は現在の姿でそれを見つめる

 過去と現在と未来

 時間は本当に存在するのか?



再び、彼

 

 そして彼は跳んだ

 人々は固唾を呑んで見守った

 彼のあとに虹が浮かぶ

 それは、永遠と名づけられた


Me

Morning


 まどろむ



Noon

 

 目覚める


 

Evening

 

 迷う


 

Night

 

 無我


 

Real

 

 期限まで


 

Fantasy

 

 


 

Question

 

 どれがぼく?


 

ANSWER





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