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ぼくの世界

綿毛

 

 風に吹かれて 飛ばされる綿毛のように

 ぼくらも同じところに留まることができない

 強い強い風に ただ背中を押されて生きている

 

 

犬と猫

 

 とあるドキュメンタリーで 人類がみんないなくなったら

 犬は餓死して 猫は勝手に生きていく って言っていたよ

 

 一緒に死んでくれる犬はかわいそう

 一匹で路頭に迷う猫もかわいそう

 

 だからぼくは

 きみと心中しようかどうか 迷っている

 

 

青いばら

 

 青いばらのように 他人から「ありえない」と拒まれるぼくら

 青いばらのように 他人から「興味深い」と見世物にされるぼくら

 

 常識というものが ぼくらから色を奪っていく

 ぼくらを無味乾燥な白で塗りつぶしていく

 

 それならいっそ 二人一緒に散ってしまおうか

 

 

プリザーブド・フラワー

 

 きみがくれたプリザーブド・フラワー まだ綺麗なままだよ

 白い花びらは柔らかくて きみの肌とよく似ている

 触れたらちょっぴり冷たいところも きみそのもの

 

 それなのにきみはもういない

 ぼくに永遠は重すぎるようだ



コンクリート・ジャングル

 

 かつて人類は獲物を求めて狩りに出かけた

 かつて人類は獲物を得るために暴力をふるった

 かつて人類は新たな世界を夢見て海へ漕ぎ出し

 かつて人類は古い世界を捨ててきた

 

 今も人類は生きるために歩きっぱなしで

 今も人類は生きるために兵器を作り続け

 今も人類は電脳世界の海へ漕ぎ出し

 今も人類は手に負えない世界で迷い続けている

 

 人類は大して進化していないようだ



きみはともだち

 

 みんながぼくを知っているふりをする

 ぼくじゃないぼくを語っている

 

 でもきみだけは ぼくのことを喋らない

 ただ手を取って 温もりを与えてくれる

 だから きみはぼくのともだち

 そして ぼくもきみのともだち

 

 

街中の星

 

 夜の街に 人工の星が輝いている

 絶え間なく 「ぼくはここだよ」と叫んでいる

 月や星の光は穏やかなのに

 人間の作った灯りは 目を突き刺してくる

 

 人工の星が ぼくらを狂わせる

 夜に眠らせず 暗闇の中を彷徨わせる

 自業自得だとしても ぼくらは苦しんで苦しんで

 また人工の星へすがりつく

 そんな悪循環が どこまで続くのだろう

 

 ああ でも 空が白んできたよ

 人工の星が消えていく 「もう大丈夫だから」って

 今日もまた太陽が世界を救った


あいについて

 

 ぼくは雪だ

 

 音もなく ただ降り積もり

 人々に 煙たがられる

 子供らに こねくり回される

 

 まったく価値のない雪だ

 

 だけどきみに 触れたとき

 一瞬だけ 燃え上がり

 満足げに 散っていく

 

 きみの肌に 紅い痕を残して

 

 

ミイラの街

 

 傷ついたところに 包帯を巻こう

 これ以上 抉られることのないように

 

 そうして どんどん 包帯が巻かれていって

 ぼくらは どんどん 鈍感になっていって

 それでも だんだん やめられなくなって

 最後には お互い 臆病になって

 包帯の向こうにある肌に 触れることもできなくなって

 

 そんなミイラだらけの街が 世界中にひろがっていく

 

 

 

 細胞どうしが繋がって 心が繋がると

 子を生す

 

 細胞どうしが繋がって 心が繋がらなくても

 子を生す

 

 細胞どうしが繋がらないと 心が繋がっていても

 子は生されない

 

 細胞が止めようのない水流なら

 心はぼくらが灯す炎だ

 

 

i

 

 きみが好きで 繋がっていたかったのに

 ぼくは i しか知らない

 きみを知らない

 

 だから話が噛み合わなくて

 きみを悲しませて 傷つけて 失って

 ようやく きみの気持ちが わかる

 

 たった一人で 愛を知る

 

 

一方通行

 

 もう誰も愛さない

 そんなあなたへ ずっと手紙を送っています

 もうポストから溢れそうなほどです

 それなのに あなたは一文字も読んでくれない

 ぼくの心もくじけてしまいそうだ

 

 

 

 古傷に きみが触れる

 ぼくの傷口から 真っ赤な血が流れる

 きらきらと輝きながら

 いつまで経っても 想いは褪せない

 

 

大いなる愛

  

 愛を失って傷ついても 時間が痛みを癒していく

 気にしていた傷口が目立たなくなる

 

 周囲を見渡せば 美しい景色が広がっている

 光り輝く世界で 優しい人たちが歩いている

 

 だからぼくは 世界へと戻っていける

 だからぼくは 大いなる愛を信じる


ぼくのことば

共有

 

 ぼくの言葉 ぼくの声も

 きみのもとへ きみのものに

 そして世界を共有する

 

 

循環

 

 伝えられなかった言葉は ぼくの身体の中で腐敗する

 形を変えて悪臭を放ち やがて新たな言葉の糧となる

 ぼくは何度も同じことを繰り返す その循環の果てに

 きみへ何を伝えられるだろう

 

 

言葉の景色

 

 ぼくの目には「炎」から水流が見える

 ぼくの目には「川」から火炎が見える

 でも それは きみからは見えない

 同じ景色を二人は見ることができない

 

 ぼくには絵を描く才能がない

 ぼくには歌を唄う才能もない

 でも言葉を紡ぐ

 視力にも聴覚にも叶わない ただ人の間にだけ存在を許される

 言葉を紡ぐ

 きみへ繋がる架け橋を ともすれば崩れそうな橋を繋ぐ

 そこから見える景色を きみは気に入るだろうか

 

 

手紙

 

 ぼくの書いた手紙は でこぼこだらけで 曲がりくねってばかりで
 それでも だれかに 届くように 願っていた
 回りくどい言い回しは 素直に書くと 自分が傷つくから
 本当の気持ちは 隠したまま 何かを伝えようとしている
 少し卑怯かもしれない

 それでも きみは
 でこぼこに足を引っ掛けながら
 曲がりくねった道に息を切らしながら
 折り重なった ことばの真ん中で 途方に暮れる
 ぼくのもとへ 来てくれる

 ぼくを呼ぶ声が聴こえる
 うずくまっていたぼくは 立ち上がる
 きみの姿が 今 まっすぐに見える

 

 

 

 言葉は翼だ 言葉を操る人々が心を込めて作り上げるイカロスの翼

 やがては天上の太陽に溶かされて消えゆく運命にある 

 それでも人は言葉を紡ぐ

 どこか見知らぬ誰かの心で息づけるように願いながら

 少しでも天使の翼に近づけるように祈りながら

 青空へ たった一人で飛び立つ

 

 

 

 調子っぱずれなきみの歌を いつも聴いているよ

 誰とも似ていないメロディ 支離滅裂な言葉たち

 でも そのぶんだけ 整っていないだけ

 きみのことを余計に知ることができるのかな

 

 もしも ぼくが勇気を出して唄ったら

 きみも同じように聴いてくれるのだろうか

 

 

宇宙の果てにいるきみへ

 

 ぼくの宇宙には 色んな星があるんだ

 きらきらと赤く輝く さそりの目玉のような星や

 不健康そうに青白い まるで存在しないような星や

 他から光を受けて ようやく見えるような星も

 そのすべてが ぼくの宇宙の中にあるんだ

 

 でも どれも遠すぎて 暗すぎて 見えなくなるよ

 

 あの星には どんな人が住んでいるの?

 あの星には どんな風が吹いているの?

 あの星には どんな空が広がっているの?

 

 だから何度も交信してみるよ

 薄い空気 震わせて

 きみをずっと呼びかけているよ

 

 ぼくはここにいるよ

 きみはどこの誰なの

 どんなに小さな声でもいい

 ただ 応えてほしい


この世の果て

加速

 

 時間は加速する

 誰も追いつけない

 

 歩き疲れたとうずくまれば 周りには立ち止まった人たち

 それは嫌だと立ち上がれば また世界には私一人きり

 

 途中で力尽きても誰もそばにいない

 

 時間は加速する

 世界も加速する

 今日も誰かを遺して

 ただ加速する

 

 

質問

 

Q, きみは何が欲しいんだ

A, わかりません

Q, きみは何がしたいんだ

 

 

規則

 

 きみ纏う 服や仮面を 褒めている

 人はきみと目

 合わさずにいる

 

 きみはきっと素直に喜べない

 

 

道程

 

 きみが歩くたびに きみの手や足や目や口が 落ちていく

 いつか きみは 敷かれたレールで運ばれて 死んでいく

 きみは抜け道を探すことにした

 

 

抜粋

 

 きみはきみの指や足首を探している

 どこかに落とした自分のパーツを見つけられずにいる

 今まで回り道ばかりしていたから

 自分で道を選んだこともないから

 これまで自分が何をしていたかのさえ わからない

 だから見つけられない

 やり直せない

 

 

直線

 

Q, この直線の上に これまでの人生の出来事を書いてみて下さい

A, ぼくの人生はこんな直線で表せるほど単純じゃない

Q, ……

 

 

しるし

 

 早すぎる時の流れが きみの手足を吹き飛ばしていくよ

 原型を留めることさえできず ただ小さくなっていくよ

 

 それなら きみは時の流れになんか乗らないほうがいい

 二度と戻ってこられないくらいなら

 一歩進んで 二歩下がって

 そこに美しい模様を描こう

 生きた証を 刻み込むんだ


ハイカラ

深夜の読書

 眠れないから暗がりに煌々と明かりを点けて読書してた
 丑三つ時 両親や近所の人に気づかれぬよう息を殺して
 部屋は冷気が充満して しんと静まり返り
 まるで誰もいないみたい
 本の中の誰かさんの声が 目の前で踊っている

 本の文字を指でなぞる 伝わる文字の感触
 遠い作者の皮膚のようで とっても冷たかった
 もはや内容なんて どうでもよくなって
 ページに頬を押しつけて 温めてみる

 そして私は目を閉じた
 夢の中では 果たして誰と出会えるだろう
 その誰かは 私にとって何者なのだろうか



きみの指先

 きみの指先が 空をなぞると
 虹が生まれる
 きみとぼくにしか 見えないけれど
 それが嬉しい

 きみの指先が 川面なぞると
 ぶどう酒が溢れる
 きみとぼくにしか 味わえないが
 それだから酔える

 きみの指先が 文字をなぞると
 意味が生まれる
 きみとぼくにしか 読めないけれど
 だから素敵だ

 きみの指先が ぼくの世界を変えていく



ジュリ

 ジュリ その瞳が曇らぬように
 人の悪意を見ずに済むように
 両手で覆ってあげるね
 それくらいしか ぼくにはできない

 ジュリ この世界はきみに相応しくない
 誰もが自分の正義を主張して
 他人に真っ赤な言葉を投げかけては
 世界を血で染め上げていく
 人の作った世界なんて もう真っかっかで
 いつ神さまからレッドカードを出されても
 おかしくはないんだよ
 お前らの存在自体が ルール違反だって
 その日が来るまで 二人で口を閉じて
 瞳も閉じて 眠っていたい

 だけれど それはできないから
 ぼくはきみの瞳が 血塗られぬように
 少し先回りして 少しでも美しい道を探そう
 赤いばらの茨や 唐辛子の実なんかは
 きみのために 取り除いておこう
 そのために ぼくが傷ついても
 気づかれぬように 道化のように笑みを張りつかせて
 ぐるぐる巻きの包帯で いつでもハロウィン気分
 お菓子だって 他の奴からぶんどってくるよ

 だからジュリ きみはきみのままで



ぼくがぼくでなくなったら

 後悔することばかりで
 自分の記憶の海に溺れるばかりで
 ぼくがぼくであることを恐れていて

 だからぼくは名前をなくし
 存在を消して ただ風となりたくて
 どこにも留まらず
 誰の記憶からも消え去りたくて

 そうしたら 過去を捨て未来を捨て
 自由に空を漂うことができるでしょうか

 でも そうしたら
 ぼくは何を考えて 何を感じられるでしょうか



ぼくのユニ

 ユニは夢を生きている
 まぶたを閉じて 額から伸びる角で物事を感じている
 ユニの髪は琥珀色
 この星の記憶が宿っているけれど 本人はそれを知らない

 ユニはいつも笑っている
 笑顔はひしゃげ 額から伸びる角がまっすぐに空をさしている
 ユニの指は桜色
 この街の桜と同じ色だけれど 本人はそれを知らない

 そんなユニに恋をして ぼくは後を追うけれど
 ユニはそれを知らない
 手を伸ばして 触れてみても
 ユニはそれに気づかずに
 一歩飛び出して ステップ踏み出して
 ただ一人だけ踊り狂う
 ぼくが真似しようとしても
 次の瞬間にはピタッと止まって
 どこか別の場所へ駆けだしてく

 ユニはずっと同じところにはいられない
 だからぼくも同じところにはいられない
 ユニ以外のものは全て 過去に捨ててきた
 それなのに ぼくはユニを捕まえられずにいる
 そんなぼくのことなど どこ吹く風で
 ユニは好き勝手に進んでいく

「待って」とぼくは叫んだ
 ユニは答えなかった
「待って」とぼくは走った
 ユニは振り返らなかった
 それなので ぼくは
 走って 走って 走り続けて
 ユニを追い越して 振り返ると両手を広げた
 目を閉じたままのユニは それに気づかずに
 その額から伸びる角で ぼくの胸を突いた
 赤い血が噴き出す ユニの動きが止まる
 閉じられていたまぶたが見開かれた
 ユニの瞳は 真っ赤だった
 それを見て ぼくは笑った
 口から熱い血だまりを溢れさせながら

 やがてユニは何も言わずに ぼくから離れてしまった
 けれど その額にもう角はない
 ユニの角は 今でもぼくの胸に突き刺さっている
 水晶のように輝きながら 血をこびりつかせ
 キラキラと ぼくの胸を照らしている



回り道


 最短距離の道があるかもしれないけれど
 少しだけ回り道してみる

 遠回りして その間 人に追い越されても
 自分の気持ちに嘘をつかないで
 行きたい道を進んで
 きみに会いにゆく

 その最中 観た景色を 伝えるためにも



空の隙間

 

 灰色の雲の向こう
 隙間から太陽の光が漏れている
 まるで雲が濡れているように

 

 これまで楽しかったことなんて
 あの空と同じように
 少しだけ なんだけど

 

 この景色があんまり綺麗だから
 まだ生きていけるような気がした



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