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現代の日本人よ(2)

  「日本人が持ち続けてきた心根の美しさはどこに捨てられてしまったがよ。

  ・・・老人よ、正しき老人に戻ってくれ。

  日本の正しき心の伝統を捨ててはいかん!

  私利を捨てて生きる心の美しさを、若者に継承し、後世に残してくれ!

  そして日本が世界の手本になるがよ!」


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― その1 ―  後の先

  安政三年(1856年)、秋。

  ディヤー、トォーリャァ!

  バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ!

  「速い!」

  ビシッ、ビシシシシシッ!

  「お、重い!」

  手が痺れる。

  坂本竜馬の速剣は遠慮がない。相手が誰でも忽ちのうちに攻め達磨にしてしまうのだ。

  そしてとどめに剛剣を振り下ろす。

  グヮシャーン!!

  「・・・ま、参った」

  道場では遠慮も手加減も皆無なのだ。

  「次!」

  ビシシッ! バシッ、ビシッ! バシッ、ビシッ!

  竜馬は一心に剣を振ることが、亡き父の願いであると信じていた。

 

  サワサワ、サワワワ・・・。

  そんな竜馬の前を、千葉佐那の髪が舞っていた。剣を振る姿は、まるで穢れ無き緑髪の舞のようであり、竜馬を誘っているようにも見えていた。

  それに呼応するように、佐那へと竹刀を向ける。

  「私とて以前の腕前ではありません」

  佐那の目がそう物語っている。

  「心得ちゅう」

  竜馬も油断はできない。重太郎の妹・佐那は小太刀免許皆伝の実力者なのだ。

  「土佐の竜と鬼小町の激突だぁ!」

  門弟達が騒ぎ出した。

  「竜さん、相手に先手を取らせた上で瞬時にそれを凌しのぐ剣へと昇華させろ!」

  師範として座す重太郎の声が響く。竜馬の良さを知っているからこそ、業わざや技術の習得はもとより心の開眼、そして行く行くは心眼しんがんの会得をも期待しているのだ。

  「無の心だ! 体が自然に剣を繰り出せば、目の動きや表情からその心を悟られる事も無い。・・・無意識に繰り出せ! それが後(ご)の先(せん)になる!」

  竜馬は頷いた。

 

  「いざ!」

  ビシュッ、ビシュッ、パシ、パシ、パシ、パシッ!

  佐那の剣が舞い、竜馬の剣が走る。

  ビシュッ、バシッ、ビシュッ、バシッ! ビシュッ、バシッ、ビシュッ、バシッ、バシィッ!

  佐那の動きも剣の捌きも、以前にも増して数段速い。竜馬は防戦に追われた。

  だが、

  (心が無になる)

  こうして剣を振るっている時はだけは、坂本家の後継ぎも、『権平の弟』という煩わしい立場を忘れる事が出来るのだ。竹刀から伝わる痺れが思考を麻痺させてくれる。・・・快感だった。

  一方の佐那は、

  (竜馬様の剣には鬼気迫るような恐怖は無い。けれども、それを凌ぐ圧倒的な意志の力を感じる)

  そう気付いていた。


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奥付



竜馬外伝i-17 武士の矜持と切腹


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著者 : 中祭邦乙
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